書き起こし/異聞録

Last-modified: 2016-01-10 (日) 04:14:03

ふぁいわく「もういやだ、こんな世界」
???「おぬし、何をしようとしている」
ふぁい「おっ、お前誰だよ?また妖怪か。もううんざりなんだ、僕はもう死ぬんだ」
???「ほう、死ぬとな。お前が死ぬには一億年早いわ!」
ふぁい「うわっ!おっ、お前何をした」
???「お主が生きるべき世界に向かわせるだけのことよ」
ふぁい「なんだよ、僕が生きるべき世界って」
???「いまにわかるわ、ほぉら、行け!」
ふぁい「うわぁーっ!」

ふぁい「いたっ、ん、ここ、どこだ?」
猫又「あっ!気づいた!おはよう、君はだあれ?」
ふぁい「ぎゃっ!お前が誰だよ」
猫又「失礼なやつだな。ボクは猫又!さっ、君はだあれ?」
ふぁい「ねっ、猫又?また妖怪か。なんでこんなに、妖怪ばっかり……」
猫又「ん?おかしいな。君は妖怪じゃないの?僕らの世界には妖怪しかいないんだけど」
ふぁい「どっ、どういうことだよ」
猫又「そういうこと!君も妖怪なんだろ?何の妖怪だい?」
ふぁい(たしかに俺も霊感が異常に強くなった気がする……でも、この世界に送られたのは、変な奴のせいで……)
ふぁい「そうだ。俺をここに飛ばした奴は?」
猫又「それより、ここに来たからには、長にご挨拶しなきゃ」
ふぁい「おっ、長って?」
猫又「知らないのかい?ここの集落の長、九尾の狐さまさ!」
ふぁい「九尾の……狐?また妖怪か?」
猫又「さっ、決まったら行くよ。あっ、おあげ持っていかなきゃ」
ふぁい(なんでおあげなんだ?)

ふぁい(でかいなぁ……)
猫又「さっ、入るよ。九尾さまー!新入りを連れてきました。」
九尾「よろしい、入るがいい」
猫又「失礼します」
ふぁい「失礼……します」
九尾「ほう、その者が新入りとやらか」
猫又「はい!」
猫又(ほら、自己紹介)
ふぁい「よろしくおねがいします」
九尾「うむ、この香りは」
猫又「九尾様が大好きなおあげ持ってきました」
九尾「ほう、お主気が利くのう。どれ、見せてみよ」
猫又「どうぞ、新入りからです」
ふぁい「おっ、俺からか?」
九尾「芳醇な香り、その感触、ああ、わらわが求めていたものがここに」
ふぁい(こんなもので喜ぶのか……)
九尾「そなた」
ふぁい「はっ、はい」
九尾「気に入った。そなたの力になろうぞ」
ふぁい「あっ、ありがとうございます」
猫又「九尾様、ありがとうございます」
九尾「これ、朧車」
朧車「はい、お嬢様、いかがいたしましょうか」
九尾「この者を連れて町を巡回するぞ」
朧車「かしこまりました、お嬢様」

町の妖怪「盗人じゃあ!盗人が出たぞぉ!」
猫又「盗人ですって、何があったんでしょう?」
ふぁい「とりあえず、見に行こう」
九尾「お主、また盗みを働いたのかい?」
河童「すいません、ああすいません、もうしません!」
猫又「ああ、また河童か」
ふぁい「知ってるのか?」
猫又「河童だよ。ふだんは川で獲物を調達してるんだけど、最近不漁みたいでね」
ふぁい「おい、お前!」
河童「すいませんすいません……お前誰だ?」
ふぁい「盗みは良くないと思うぞ、人を困らせるな」
河童「しょうがねえだろ、俺だって生きるのに必死なんだ」
ふぁい「しょうがなくなんかない、相手を大切にしろって言ってるんだ」
河童「そんなこと言っても……」
猫又「騙されんな、こいつの常套手段だ」
河童「そういうことでいいんだって本当だって……」
ふぁい「そんなに盗みばっか繰り返すんだったら、俺とこないか?」
河童「そりゃどういう意味だ?」
ふぁい「俺と一緒に、まあ、俺もどこに行けばいいのかわからないけど、一緒に何かしているうちに、盗みをしなくていい理由が見つかるかも、って思って」
河童「何だ、お前なにげにいい奴だな。俺で良かったらついていくよ」
九尾「盗人騒ぎも収めれるとはやりおる。少年よ、わらわもその旅路、共に行こうぞ」
ふぁい「ありがとうございます」

ふぁい(あっ、こんなところに手紙が……)
鬼「ありがとう、お兄さん」
ふぁい「あっ、いや、これ……」
鬼「ふふふっ、見えるよ、お兄さん、行く道がわからないんだね」
ふぁい「えっ?」
鬼「大丈夫。あの雪山へ向かってごらん。きっといい出会いがあるよ」
ふぁい「お前、何か知ってるのか?」
鬼「なーんにも。ただ、お兄さんをここへ呼んだ人は知ってるかもね」
ふぁい「何だと?誰なんだ、ここに俺を呼んだのは」
鬼「なーいしょ。それじゃあね。また今度」
ふぁい「まてぇ!」

猫又「どうしたのさ、一人でつったって」
ふぁい「お前、見えてなかったのか?」
猫又「何のこと?」
ふぁい(他のやつには見えてなかった、あの少年は……)
ふぁい「九尾様」
九尾「何じゃ?」
ふぁい「俺、雪山へ向かいたい」
九尾「ほう、そうか、ならば家臣に連絡する。しばし社を開けると」
ふぁい「ありがとうございます」
猫又「僕もついていっていい?いい?」
河童「俺も当然連れてってくれるんだよな?」
ふぁい「お前ら、ありがとう。目指すは雪山だ」

朧車「ここから先、結界が張ってあって私は進めません。ご自身の足でよろしいでしょうか」
ふぁい「ああ、ありがとう」
九尾「ご苦労であった」
朧車「では、またお呼び立てくださいませ」
猫又「やっぱり寒いねぇー」
河童「皿が凍りそうだぞ」
ふぁい「ここへ行けって言われたんだ、何かあるはずだ」
雪女「ここから立ち去れー」
ふぁい「ん?今立ち去れって」
猫又「雪、強くなってない?」
河童「凍え死ぬぅ……もういやだ!」
九尾「うむ、妖気を感じるぞ、注意せよ」
雪女「立ち去れと言ったでしょ、聞こえなかったの」
河童「ゆ、雪女だ!殺されちまうぞ!逃げろ!」
ふぁい「どうしてそんなに立ち去らせたいんだ?」
雪女「不思議ね、そんなこと聞く人、今までいなかったわ」
ふぁい「一人でここにいるのか、寂しくないのか?」
雪女「そうね、寂しいといえば寂しいかもしれない。でも、私はここに一人でいなければいけない」
ふぁい「どうしてだ?」
雪女「私といると、相手が寒さで死んでしまうからよ」
ふぁい「なるほどな……」
九尾「ほう、妖力の制御ができないとな。わらわの力でお主の妖力、抑えてしんぜよう」
雪女「そんなことできるの?」
ふぁい「なら大丈夫じゃないか。お前はここに縛られなくていい、もう一人じゃない」
雪女「いいえ、妖力がなくても所詮一人よ」
ふぁい「なら、俺とこないか?」
雪女「えっ?」
ふぁい「俺も行く先なんてわからないけど、仲間になるんならいい」
雪女「今までそんなこと、言ってくれる人いなかったわ」
ふぁい「で、どうするんだ?」
雪女「いいのね、後悔しない?」
ふぁい「しないよ。な、皆」
猫又「僕は賛成!」
河童「し、仕方ねえなぁ」
九尾「わらわは構わぬぞ?」
ふぁい「決まりだ、ほら、行くぞ」

鬼「また会えたね。ちゃんと僕の言うこと聞いて、偉いね」
ふぁい「お前、一体何者なんだよ?」
鬼「僕かぁ……強いて言えば、鬼、かな。君を導いた人の、お使いをしているだけだよ」
ふぁい「鬼?」
鬼「そう、鬼。次は山を降りて、森のなかへ入ってごらん。そうすればまたいい出会いがあるよ」
ふぁい「まてっ!」

ふぁい「森、かぁ」
猫又「どうしたんだい、ぼーっとして」
ふぁい「次は森だそうだ」
河童「森?あそこは危険だって有名だぞ!」
九尾「お主にしか見えておらぬ何かと話をしておるようじゃ、そこへ行けと言われたのか?」
ふぁい「はい。次は森へ行こう」
雪女「そろそろ夜が来るわ。ここの夜は寒いわよ。一度、どこかで宿をとった方がいいわ」
ふぁい「そうだな。そうしよう」

座敷童子「やっぱ寒いなぁ……おいよそ者!」
猫又「んにゃ、な、なんか聞こえなかった?」
座敷「お前たちのことだ!どうしてここに入ってきた!」
河童「どうしてって、無人の小屋だろ」
座敷「私が!ここに!いるだろうが!」
雪女「あら、可愛い女の子ね」
猫又「おんなのこーおんなのこー」
座敷「うるさいうるさーい!もうあんたらうるさいのよ!ここは私のテリトリーなの、早く帰ってよ!」
雪女「もしかしてあなたも、ずっと一人でここに?」
座敷「うっさいわね、そうよ。どうせ独り者よ。悪かったわね、ぼっちで」
ふぁい「お前も一人だったのか、寂しくないか?」
座敷「ん、な、何よ、そんな憐れむような声出さないでよ」
ふぁい「よかったら、俺と一緒に来ないか?」
座敷「一緒に……あんたと?」
ふぁい「そうだよ」
座敷「……っ別にいいわよ、あんたと一緒に行っても」
ふぁい「よし、じゃあ朝が来たら出発だな」

朧車「お嬢様、お呼びでしょうか」
九尾「うむ、今度は森じゃ、行けるか?」
朧車「かしこまりました。皆様、お乗り合わせください。」
ふぁい「着いたは良いが、ここには何があるんだ?」
河童「お前そんなことも知らねえのか。ここはな、悪名高い閻魔大王を祀ってる祠があるんだよ」
ふぁい「へぇ、閻魔ねぇ」
朧車「ここの結界もかなり手強い、私では太刀打ちできませrん、どうかご健闘を祈ります」
九尾「ご苦労であった、朧よ」
朧車「お嬢様、どうかお気をつけて」
九尾「うむ」

猫又「うわぁ、なんだか薄気味悪い森」
雪女「そうかしら、私は落ち着くけれど」
河童「こんな森に何の用なわけ?」
ふぁい「鬼に呼ばれたんだ、ここに来いって」
河童「鬼だぁ?そりゃ閻魔大王の手先だぞ!」
ふぁい「そういう事か、あいつ、俺を閻魔大王に会わせようとして……」
河童「あった、祠だ」
閻魔「誰じゃ、我が眠りを妨げるものは!」
猫又「ひぃーっ!」
河童「な、なんだなんだ」
ふぁい「お前の使いとやらに連れて来られた。ようやくわかったよ、その声。お前、俺をこの世界に連れてきたんだな?」
閻魔「よくわかったな。お主、前の世界より自分が活き活きとしているのを自覚しているか?」
ふぁい「何っ、どういうことだ?」
閻魔「言ったであろう、お主が生きるべき世界に向かわせるだけの事と」
ふぁい「ここが、俺が生きるべき、世界……」
閻魔「そうやって、お主の生を長引かせる事こそ、この世の秩序を保つこととなろう。さあ、向かうがいい、お前たちの生きる世界へ!」

ふぁい「こうして俺はひとりぼっちでみじめだった人生から、閻魔大王によって沢山の仲間とともに、飽きないであろう人生を送るのであった。俺、生きててよかったよ。ありがとう、閻魔大王様」
鬼「閻魔様、これで良かったんですか?」
閻魔「鬼よ、気にかけるでない、これからもっと面白くなるでのう」
鬼「じゃあ、これからを楽しみにしますね」

※配役
ふぁいわく:ふぁいわく
???、閻魔:望月迴
猫又:ぽち。
九尾:こちこ
朧車:ぽち。
河童:こちこ
雪女:望月迴
鬼:ぽち。
座敷童子:こちこ
町の妖怪:こちこ