裏切りの海賊

アンナ

この海域です。
いまだに水兵と海賊が戦いを
続けているのは……。

今、人間同士が争っている場合では
ありません。
すぐに止めさせないと。

兵士

報告！　この先で水兵と海賊が
戦闘中です！

水兵

……あぁ、みんなどうしましたか？
生きてますか？
まさか私以外、全滅ですか！？

わわっ！　誰ですかあなたたちは？
まさか海賊ですか！？

アンナ

われわれは海賊ではありません。
この争いを止めるためにやってきました。
他の水兵はどこですか？

水兵

それがどこにも見当たらないんです。
もしかして、全滅したんでしょうか……。

海賊

いくぜ野郎ども！
水兵どもを蹴散らせぇ！

アンナ

あなた方は海賊ですね。
どうか話を聞いてください！

海賊

誰だてめぇらは！
水兵の仲間か？
かまわねぇ、やっちまえ！

水兵

あわわっ……！
助けてー！

水兵

あれは！　紅の海賊、ベアトリカ！

アンナ

彼女は……？

水兵

海賊たちのリーダーです。
ただ見た目が女だからって
油断しちゃだめです。

アンナ

王子、油断なさらないよう、
お気を付けください。

マリエ

改めまして、さっきは手を貸してくれて
ありがとうございました！
私は水兵のマリエといいます。

さっき見たと思いますが、あの人が私たちの
宿敵である海賊のリーダー、ベアトリカなんです。

私たちは長年、領海争いが絶えなくて
敵対関係にあるんです。

だけど魔物がでてからは、ひとまず停戦をしようって
話になったんですけど……。

停戦協定の日、停泊していた私たちの船は
攻撃されました。

協定を結ぼうとした島には、私たち水兵と
相手の海賊しかいなかったんです。

なので、犯人を考えるまでもなかったんです。
……私たちは海賊を許さないです。

わざわざ来てもらったのにごめんなさい。
でも、今この戦いを止めるわけにはいかないんです！

だけど、襲撃のせいで、もう水兵は数名しかいなくて……。
残っている私以外の水兵は非戦闘員なんで、
これからの戦いは正直厳しいんです。

……王子さま、どうか私に力を貸してくれませんか！？
このままじゃ海賊にやられちゃいますぅう！
海賊討伐の為に、私たちに協力くださいです……っ！

アンナ

王子、海賊が再び攻めてきたようです！
彼女の話……。もし本当なら、海賊を
止めなくてはいけません。

彼女に力を貸し、この戦いを
終わらせましょう！

おそらく海賊は襲撃時と同じく、
奇襲をしかけてくるでしょう！

ここは、不意を突かれないように
守りを固める方が得策です！

マリエ

……大事な私の仲間に傷を負わせたこと
絶対に許さないです……っ！
私が……っ！

マリエ

王子、多分そろそろ大将のベアトリカだけじゃ
なくって、幹部の人たちとかも出てくるかも
しれないです。

気を付けてください！

アンナ

こちらからもご報告が。
近隣で魔物を見たとの報告がありました。

一応、こちらにも注意したほうが
良いかもしれません。

兵士

報告！　魔物の出現を確認！
こちらに攻め込んできています！

アンナ

そんな！　まっすぐこちらに向かってくる！？

マリエ

海賊には攻撃しないなんて……。
まさか海賊が魔物と手を組んで！？
そんなぁ……。

アンナ

どちらにしても、早急に応戦したほうが
よさそうですね。

マリエ

海賊が魔物と手を組むなんて！

やっぱり海賊は勝つためなら
手段を選ばないんですね……。
ひどいですっ！

アンナ

これは一筋縄ではいかないようですね。

マリエ

あんな所から現れるなんて！

アンナ

どうやら侵入を防ぐにはわずかなポイントを
守るしかないようです。

抜かれぬよう注意してください！

アンナ

……海賊の姿を見なくなってきましたね。
なにかあったのでしょうか。

兵士

報告！　どうやら海賊はどこかに向かって
引き上げを開始しているようです。

アンナ

……急に引き上げた理由が気になりますが、
とりあえず一帯の魔物はいなくなったようです。
このまま海賊を追いましょう！

マリエ

次で海賊と決着をつけるです……！

マリエ

ここが海賊のアジト……。いざっ！

アンナ

これは……。

マリエ

はれぇ！？　誰もいないです！

アンナ

この荒れよう、どうやら何者かに
襲撃されたようですね。

マリエ

魔物と仲間割れでもしたんですか？

アンナ

それはまだ……。

兵士

報告！　魔物の姿を確認！

アンナ

どうやら今はこちらを片付けた方が良いようです。
王子、参りましょう！

マリエ

これで魔物はいなくなったです！

アンナ

しかし、海賊たちはどこに消えたのでしょう。
兵士からの報告によると被害は大きく、
ベアトリカの生死も不明です。

マリエ

きっと魔物にやられちゃったんです。
魔物なんかと手を組んだんだから、自業自得です。
結局悪は最後はやられる運命なんですよ！

でも、これでやっと戦いが終わったです……。
水兵のみんなも、きっと喜んでくれます！

海賊手下

船長っ！
もう後がありません……！

ベアトリカ

情けねぇ声出すんじゃねぇよ。
最後まで戦え！

海賊手下

えー！　もう最後決定スか！？
それは嫌っス！！　誰か助けてくださいーっ！

ベアトリカ

こんな海の片隅で泣き言言ったところで
誰かが助けてくれるわけねぇだろ！
甘えんな！

アンナ

王子、海賊です！
どうやら魔物たちと戦っているようですが……。
いかがいたしますか？

ベアトリカ

お前らは水兵どもの仲間だな……。
こんなところまで追ってくるとは
しつこいヤツらだ。

いいだろう。
相手になってやろうじゃねぇか。
かかってこい！

海賊手下

船長、やめてくださいよ！
あ、すいません。
とりあえず助けてください！

ベアトリカ

やっと片付いたか。
さて、これで邪魔者はいなくなった。
お前らとも決着をつけようじゃねぇか！

アンナ

あなた方を追ってきたわけではありません。
帰路の途中で、かすかな銃声が聞こえたので
立ち寄ったまでです。

それよりも聞きたいことがあります。
なぜあなた方は魔物と手を結んだのですか。

ベアトリカ

あぁ！？
誰が魔物と手を結んだだって？
魔物と手を結んだのは水兵たちだろ！

アンナ

水兵さんから聞いた話では
海賊が魔物と手を組んで休戦協定の日に
水兵の船を沈めたと聞きましたが……。

ベアトリカ

そんな馬鹿なことがあるか。むしろ逆だ！
水兵どもが魔物をけしかけて
俺たちの船を襲ったんだ。

海賊手下

水兵と戦ってるときとか、
急に魔物が現れたんスよ。

なんか水兵の味方をするって感じで
俺らだけを襲ったことだって何度もあったし。
くっそ、水兵のやつら……！

アンナ

ですが実際に私たちは水兵たちと共にいましたが
水兵たちも魔物の襲撃を受けました。
まるで海賊の味方をするような動きでしたよ。

兵士

大変です！
船底に穴が・・・！
浸水しています！

ベアトリカ

ちっ。急いで船を岸に寄せろ！
野郎ども、手を貸してやれ。

半魚人

ギョギョ？
沈めそこなったか……。

同胞たちに連絡を。
人間どもを皆殺しにするのだ……。

半魚人

ギョー！
こんなに強い人間がいたなんて……。

この海にいるマヌケどもとは
比べ物にならない強さ……。

ベアトリカ

おい、そのマヌケって
もしや俺たちのことか！？

半魚人

海賊も水兵もお互いを疑うことしか
しらないマヌケぞろい……、
ギョギョ！　殺さないでー！

アンナ

これまで敵同士だったんです。
信じあうことができないのも無理ないですね。
ですがその弱さを利用された……。

ベアトリカ

……信じあうこと、か。
おい、半魚人。この場は見逃してやる。
そんで仲間たちに伝えろ。

俺たちのアジトで待っている。
そこで決着をつけようじゃねぇかってな。

半魚人

ギョギョギョ……。馬鹿な人間め。
もう隠れる必要もない。
全軍で叩きのめしてやる！

ベアトリカ

俺たちだって逃げも隠れもしねぇ……。

おい、王子。
海賊に手を貸すのはシャクかもしれねぇが、
ここはいっちょ、俺たちに手を貸してくれねぇか。

王子と海賊、世間的にゃ善と悪だが、
手を組むのも、悪くねぇだろ？

マリエ

海賊たちには恨みしかないですが
お花くらいは供えてあげるです。

ちゃんと天国に行ってくださいね。
……でも悪い人たちだから天国には
行けないのかな。

ベアトリカ

ハッ。水兵だって同じようなもんだろ。
自分たちだけいい子ちゃんぶってんじゃねぇよ。

半魚人

ギョギョ……。
このまま終わってたまるか。
我らにも誇りがある。

お前たち！　今こそ、その志を見せるのだ……！

マリエ

きゃあっ！
そんな、まだ魔物が……！

ベアトリカ

チッ。おい、俺の側から離れんな！
じたばた暴れられても面倒だからな。
しかたねぇから守ってやる！

マリエ

……ハイですっ！

マリエ

これで終わったんですね。
あの、ありがとうございます、
です。

ベアトリカ

ったく……。
危なっかしくて見てらんねぇ。

めんどくせぇが、なんかあったら呼べ。
そんときゃ助けてやるからよ。

マリエ

ハイです……！

ミネルバ

こんにちは王子。
私はミネルバ。海賊よ。
ちょっと私も混ぜていただいていいかしら？

魔物には私も色々とお世話になってるから、
お返しにきたの。

魔物の生き残りはこの先のようね……。
そろそろこちらにも向ってくるかもしれないわ。

アンナ

もしかしてベアトリカさんを
助けに来たのですか？

ミネルバ

勘違いしないで。
海賊同士は仲間じゃないのよ。
むしろライバルだわ。

手助けする理由もなければ
助けてもらいたいとも思わない。
とくにあの娘なら尚更だわ。

アンナ

助ける気がないのなら、
あなたは何をしにここへ……。

ミネルバ

決まっているでしょう。
ベアトリカの誇りを傷つけた者に
お仕置きするためよ。

あら、魔物たちのお出ましのようね。
動きが鈍い魚風情には私の『魔弾』が
よく効くの。覚えておくのね。

ミネルバ

それにしても、
私の手助けを拒んでおきながら、
あなたたちを信用するなんて……。

私を差し置いても王子を信用したのよ？
あまり泣かせるようなことはしないことね。