反応中の操作
実験準備
撹拌子のチョイスをミスった。攪拌がショボいと収率下がる?
- 反応が進むかどうかは、当然重要なファクターだ。均一系なら問題なく終わるだろう。しかし単離はどうするか。
分液だけですむなら反応設計がうまい証拠。小スケールならカラムもいい。
しかし安く綺麗に大量に作るなら系中からの結晶化がベスト。
わざわざ塩にしてでも固体で落とす方が圧倒的にイイ。
固液平衡を伴うから攪拌状態によって純度、収率、粒度その他物性が大きく変わる。
だから攪拌が重要。
- 溶液化学の専門家に聞いたのだが、分子レベルで均質に混ざった溶液というものを作るのは結構大変で、数日撹拌子で撹拌したり、超音波をかけたりする必要があるそうだ。反応というものは分子の衝突によって起こるから、普通は均一溶液であることが前提になっている。
だから均一系の反応でも、安定した攪拌をすることによって再現性は確保できると思ったほうがよい。もちろん、短時間で完結する反応では攪拌が影響する余地がない例も多いとは思われるが。 - 撹拌の重要度は反応によって全く変わる。一概に収率が下がるとも変わらないとも言えない。
収率は下がらないが反応速度が落ちる場合もある。
それを踏まえた上であえて言うなら、次のような場合は、撹拌の影響を受けやすい傾向にある。- 不均一系(例: 塩基がK2CO3、THF/H2Oの2相系反応、水添等の気相を含む反応)
- 発熱反応
- 局所的に高温になる事による副反応
- 冷却効率の悪化による温度上昇
- 温度計を挿しても、正確な温度が判らなくなるので、再現が取りにくい
- dean-starkによる水の除去を伴う反応
- 撹拌子の選択ミスの際は、ネオジム磁石を使うのも手。
バスやスターラーを どけた後、磁石で撹拌子を壁に這わせながらフラスコの口元に持っていく。
(面倒でもスターラーは、必ず どけること)
フラスコの口元まで来たら、溶媒で軽く洗いだ後に、清浄なピンセットでつまみ出す。
よっぽど湿気や酸素に敏感な反応でない限り、これで撹拌子を交換できる。
ただし、スケールが大きい場合はやらないこと。
うっかり磁石を落としてフラスコが割れたら、大変なことになる。
いろいろな温度の冷却バスを作りたい
還流の冷却水はしばらくしたら流れているか確認する
水道の蛇口はパッキンで押さえて止めてある。
冷却水を流すときのように「蛇口を少しだけ開けて水を流す」と、押さえていたパッキンが戻ってくるから、徐々に水の勢いは弱くなることがある。
だから必ず反応開始後しばらくしたら水の勢いを確認する。
冷却水の出口は流しに水没させず、ちょっと持ち上げて水の流れが見えるようにする。
封管実験をやってみたい
- 沸点+20℃位までの少量実験だったら、ネジ付き試験管(黒いフタのやつ)で十分。なるべく小さいのを選び、キャップをしたらテフロンテープで、フタはぐるぐる巻きにしておく。万一、圧力がかかっても破壊されるのはフタ部分だが、一応防爆シールドはおいておきましょう。
- 上記の他に以下の点にも注意
- ガスが出る反応は厳禁
例: 脱炭酸反応、AIBNを使うラジカル反応、塩基にK2CO3やNaHCO3 - 使う試験管は傷の少ないものにすること
ガラス器具は、傷があると脆くなる - 外温の安定見届けること
温度設定を間違えて破裂したらシャレにならない
- ガスが出る反応は厳禁
反応中
最初の5分でTLCを見ろ!
予想した反応時間が数時間に及ぶ場合でも、最初の5分でTLCを見る癖をつけておこう。予想外の反応が進行したり、試薬を間違えた場合でもリカバリーがきく。TLCは1cmも展開すれば十分だ。
- ただし、厳密に酸素や水を絶っていてTLCを見るだけでも影響する場合を除くが。
"激しく撹拌"とは
300 rpm くらいで vigorously
↑すみません。これってモーター攪拌機の場合でしょうか? マグネチックスターラーで300rpmに設定すると、明らかに遅すぎる気がします。
- vigorouslyと指示があるということはしっかり溶液を混ぜる必要があるということ。上にも出ているが、有機溶媒・水の二相系なら界面が見えなくなって、水層が有機溶媒中に分散するようにするし、溶媒に溶けない固体がある場合は、粉末が溶液全体を舞うぐらいの速さで攪拌する。水添も攪拌速度が重要で、溶液が跳ね散るぐらい激しく回していい。反応容器と攪拌子の大きさにもよるが、自分の感覚では最低でも5〜600 rpmぐらいは回さないとvigorouslyという感じはしない。
反応温度は、バスの温度?容器内温度?
反応とスケールによる。温度制御が重要そうならまずは内温で合せてみる。
でも溶媒量が2mLとかだったら外温しか計れない。
低温反応で選択性を出す技術
低温反応で選択性がイマイチ出ないとき、試薬や溶液を直接低温の反応液へ滴下していませんか。
少し大きめのナスフラを用い、冷却バスへ深めに漬ける。
原料溶液や n-BuLi などの試薬はシリンジを用いて、キンキンに冷えた器壁を伝わらせてゆっくり加える。
小スケール(反応液 10 ml 以下程度)では意外に大きな差がでることがあります。
加熱還流中、キャピラリーを突っ込むときに蒸気が吹き出してきて熱い。ヤケドしそう。
- 二口ナス使って、コンデンサーじゃない側はセプタム付ける。あとはチェックするときに注射針刺せばいい。
- 加熱還流中、セプタムって溶けたりしない?
- 溶媒による。芳香族系溶媒には使えない。セプタムが使えないか嫌なら、ガラス製の二方コックを使う。
実験によっては固まるから要注意。あとグリース混入にも。テフロン製のを使うのもあり。
- 溶媒による。芳香族系溶媒には使えない。セプタムが使えないか嫌なら、ガラス製の二方コックを使う。
- 長めのキャピラリー作れば良いんでね?
- 冷却管の上からキャピラリー突っ込むのか・・・
- お前面白いよ
- 冷却管の上からキャピラリー突っ込むのか・・・
- 一旦冷やすことを勧める
冷やすと言っても、5分くらいオイルバスを外せば十分。
TLC打つのが下手すぎる。コツとかない?
- スポットする溶液は薄めにする。
- スポットする大きさは2 mmが目安。
- 薄い試料を濃く打つときはスポットを広げないように細かく重ね打ち。打ててるかわからないときはUV見ながら打つ。
- うまくスポットが打てないからとキャピラリーを押し付けると表面のシリカが剥がれるので、軽くポンポンと当てる程度で良い。スポットが広がるのも防げる。
- 自作のキャピラリーを使うんだったら、先端をアンプルカッターで切って平滑にする。これだけで全然違う。
- キャピラリーの太さ。自分が使いやすいものを用意する。
- TLCをチェックするつもりだったが枝付きにしなかった!でも空気との接触は避けたい。どうしたらいいか?
風船付き三方コックのスリにテフロンテープかパラフィルムをきつく1周巻いてから、そのまま上に引っ張りスリを外す。伸びたフィルムにキャピラリーを刺しスリの隙間から反応液をサンプリングすればいい。
原料がなかなか消失しない。収率が思わしくない
- 原料が残ってる
- 温度をあげる
- 試薬を増やす
- 時間を伸ばす
- 反応系が汚くなってる
- オーバーリアクションで、目的物が分解してるかもしれない
- 反応がうまく行かないときには、闇雲に温度かけたり試薬を足しても何の情報も得られないことを知れ。再現性が取れないときには、通常何か理由がある。特に水が発生する反応では水を系外に除去しないと平衡反応によりいつまでも反応が終了しないことがある。
特にスケールアップしたときに思ったように反応が進行しなかった場合、条件を強くして原料が分解してしまったら泣くに泣けない。
一旦反応を止めて、原料を回収する勇気を持つべし。