永琳は本当に賢者なのか 浦島編

Last-modified: 2023-07-20 (木) 13:20:27
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        !"〈╋〉 !
          ゝ-─-イ
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   /  _ノ  ヽ、_  \
  / o゚((●)) ((●))゚o \  ほんとは浦島は殺さなきゃならないんだお…
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   /  _ノ  ヽ、_  \
  /  o゚⌒   ⌒゚o  \ でも弟子が「匿っといて殺すのは流石に可哀想」とか言ってるお…
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  /::::::⌒(__人__)⌒::::: \   だから死なすお!
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問題提起

小説三話の浦島エピソードは、豊姫の価値観を描き出す重要なエピソードではなく、
単にYYSするだけの材料となってしまっている。
そこについて今更どういっても始まらない。好意的に見れば月人SUGEEEにより紫SUGEEEが強調される
良エピソードだと言ってもいい(言わなくてもいい)
だが問題が一つある。それは
「浦島を300年後に送り飛ばし絶望させた後、歩けないほど老衰させて死なす」という策が
別に優しくも何ともない上に、浦島が有名になるってむしろ問題じゃないか
と言うことである

まず、豊姫の要求

結論から言うと、豊姫は
①「月の都」の噂が権力者に広まらないようにする
②浦島を殺さずに済む、優しい方法
の二つを満たす案を永琳に要求していた

 

【①「月の都」の噂が権力者に広まらないようにする】
豊姫はとにかく「月の都の存在が、地上人に広まること」を恐れていた。
それは、月人が一番恐れているのが地上人の襲来である以上、当然である。
なので、月の都を蓬莱国だと考えていた浦島に対しここは「竜宮城だ」と嘘をつき
その上でもなお
「浦島がこの場所のことを喋ったらまずいのではないか」と心配した。
この時点で、「月の都=蓬莱の国として伝わることも、マズイと考えていた」ことが分かる。
だから、竜宮城だと言い聞かせたと見られる。

該当部分

実際は月の都だったのだが、それが蓬莱国だと思い込んでいたのだ。
私はそれは違うと訂正した。
``お前が今居る場所は蓬莱国などではなく海底に存在する『竜宮城』である``と嘘を教えた。
五色の亀は迷子になっていた私のペットであり、
探していたら貴方が背中に捕まっていたという事にした。
嘘を教えたのは地上の人間が月の都への興味を持ち、
権力者が月の都を目指すことを恐れたからだ。
今思うとこの判断は間違っていたと思う、その間違いは後に八意様の手で修正されることとなる。
(小説三話)

私としても帰りたいという人間を帰さない理由はない。
そもそも黙って月の都に穢れのある人間を入れていたのだから、ばれる前に帰したほうがよい。
だが一つ気がかりなことがあった。
彼を地上に帰して三年間も何処に行っていたのかを問われれば、彼はここで過ごした経験を語るだろう。
そうすれば竜宮城────月の都に興味を持つ者が出てくるかも知れない。
それは月の都のピンチを招きかねないのでは無いか。
(小説三話)

余談になるが現在の地上の人間の科学力の発展はめざましく、数十年前からミクロの世界は
可能性で出来ていることに気付いているという。その事実は月夜見様を驚愕させた。
なぜなら月の民が一番恐れている事は、地上の人間が月に来ることだからである。
(小説三話)

 

【②浦島を殺さずに済む、優しい方法】
そして、そのことについて、つまり
「浦島が月の都(竜宮城と思っている)について言いふらさないようにするには、どうすればいいか」
という相談を永琳にした。
永琳は「即断で殺せ」と答えた。が、豊姫は「さすがに可哀想」ということで、別の案を要求する。
すると永琳は「貴方は優しいのね」と言い、コールドスリープを提案する。

該当部分

私は八意様に全てを打ち明け、そしてどうすればいいかを相談した。
意外にも八意様は人間を匿っていた事に関しては何も怒りはしなかった。
八意様は即断で``そのような人間は亡き者にするのが一番です。海に出てから三年も姿が見えなければ、
地上では死んだ人間として扱われているでしょう。大体、地上から来た生き物を興味半分で匿うから
そのような事態に陥ってしまうのですが…``と言った。
依「そうそう、筒川大明神ね。あんな罪深き凡庸な人間を神として祀っているなんて、
私達から観たら滑稽ですけどね」
豊「八意様は即断で殺せって仰ってたけど、流石にそれは可哀想だしねぇ」
私は流石に自分が匿った所為という事もあり、とても殺す気にはなれなかった。妹も同様であり、やはり殺す気にはなれなかった。
仕方がなくそれ以外の方法はないのですかと聞いてみた。そうすると八意様は微笑んで``勿論ありますよ。
貴方たちは優しいのね``と言って、別の案から最善のものを教えてくれた。(小説三話)

そして永琳の策と、結果

永琳の策は、
『水江浦島子を、覚えている人間が存在しない300年後に送り返した上で、
一歩も歩けないレベルまで老衰させ、死なす』
という物である。

該当部分

別の案とは、『水江浦島子を覚えている人間が存在しない時代に送り返す』という物である。
つまり、竜宮城と地上では時間の流れが百倍近く違うと言うことにし、
三百年後の地上へ送り返すという物だった。
当時の私達は何故その案が最善なのかはよく判っていなかった。
自分の事を知っている人間が誰もいない世界に送り返されたら、人間は途方に暮れるだろうし、
竜宮城のことを皆に言いふらすことには変わりないのではないか。
だが、八意様は間違ったことを言わないのである。私達は絶対の信頼を置いていた。
だからその案を採用することにした。(小説三話)

彼は砂浜に着いたときから何か違和感を感じていた。白い砂、松の木、青い空、漁をしていた頃と何一つ変わらぬはずなのに、海風に違和感を覚えた。不安になった浦島子は自分の家に戻ったが、家があるはずの場所には何もなく草が生えていた。さらに知人の家を訪ねても、そこに住んでいる者には見覚えはなく、それどころか村の誰一人、浦島子の事を知っている人はいなかった。彼はあまりの絶望に悲嘆した。
(中略)
物語はそこで終わらない。八意様は地上にお隠れになる前に、浦島子に手土産として「玉くしげ」を渡せと言っていたのだ。さらに彼には``この玉くしげは地上での生活に困ったら開けなさい、しかし再び竜宮城に来たいのであれば決して開けてはいけません``と伝えろと言われていた。あの玉くしげに何が入っていたのだろうか。八意様の居ない今となっては、確かめる手段も中身を再現することも出来ない。
どうやら浦島子は地上に降りてからすぐに玉くしげを開けてしまったようだ。自分を覚えている人が誰もいない世界に余程絶望したのだろう。泣き叫びながら玉くしげを開けた。しかし不幸はまだ終わらなかった。玉くしげを開けた彼の肉体はみるみる間に若狭を失い、そこに歩くこともままならない老体が残された。その玉くしげは
肉体を老いさせる何かがつまっていたのだ。

結果として、浦島が老人となったことで説得力が増し、彼が語る「月の都」の話は
すでに半ば陳腐化していた「蓬莱国(不老不死国)伝説」として村人に信じられ
さらには地上の権力者、淳和天皇に認められた。そして
蓬莱国──「月の都信仰」が確固たるものになった。
豊姫はこれを受け「八意様は優しい」と判断した。

該当部分

しかし、老人となったことが幸いした。三百年前の話を知っている老人は、
村では生き神様のような扱いを受けるようになった。
彼の不思議な話は神の世界の話と信じられ村では伝説となった。
当時の人間には彼ほど老いられるまで生きられることは少なく、また文字も読めなかったため、
話が出来る老人は持て囃されたのだ。浦島子が若い姿のままだったら、ただの与太話と思われただろう。
さらに浦島子の伝説は時の天皇、淳和天皇の耳にまで届いたのだ。
淳和天皇は浦島この竜宮城の話を聞き、それこそが常世の国──蓬莱国であると予想し、
非常に関心を持った。
蓬莱国は不老不死の国であり、当時の権力者は誰しもが疑うように探していた。
ただ、伝説は既に陳腐化し始め蓬莱国の存在は疑われ始めていたから、
浦島この存在は天皇を大いに喜ばせたのだ。
淳和天皇の予想は的を射ていたが時は既に遅かった。
浦島子は一歩も動けぬほど老いており、天皇の遣いが到着してまもなく息を引き取ったのだ。
天皇は水江浦島子に蓬莱国から帰還した数少ない人間という威徳を認め、
彼のために神社を造らせ、さらに彼に筒川大明神という神号を贈った。
偶然神隠しに遭った水江浦島子。彼は神様の仲間入りを果たし、
それと同時に蓬莱国──月の都信仰も確固たるものとし、
地上の権力者に蓬莱の民の威厳を知らしめたのである。
お師匠様にはこうなる未来が見えていたのだろうか。愚かな疑問である。
当然見えていたのだろう。でなければ、三百年余り眠らせた人工冬眠も老いてしまう玉匣も、
ただの戯れとなってしまう。お師匠様は厳しそうに見えて、一番優しかったのである。

要求と回答が噛み合ってない

【①「月の都」の噂が権力者に広まらないようにする】

【①「月の都」の噂が権力者に広まらないようにする】についてだが
見事に真逆の結果を導き出すという賢者っぷりを発揮している。
原文では

偶然神隠しに遭った水江浦島子。彼は神様の仲間入りを果たし、
それと同時に蓬莱国──月の都信仰も確固たるものとし、
地上の権力者に蓬莱の民の威厳を知らしめたのである。(小説三話)

と、まるで月の都信仰を確固たる物にするのが目的だったように語っているが
そもそもは「浦島が、月の都について言いふらさないようにする」のが目的だったはずだ。
なのに「月の民の威厳を知らしめる」とか完全に目的を見失っている。
だいたい「月人が信仰を必要とする、力に変える」なんて設定はどこでも語られていない。
つまり信仰を得たって特に意味はない、というか侵入される危険性だけ増すのだ。

 

もっと言うと、原文では

蓬莱国は不老不死の国であり、当時の権力者は誰しもが疑うように探していた。
ただ、伝説は既に陳腐化し始め蓬莱国の存在は疑われ始めていたから、
浦島この存在は天皇を大いに喜ばせたのだ。(中略)

とある。これは、蓬莱国(月の都)伝説は陳腐化しており、放っておけば消える噂だったということだ。
つまり、地上の権力者が月にやってくる、という状況は起こりえなくなりつつあった。
それをワザワザほじくり返しているのである。

 

好意的に解釈すれば、
蓬莱国の仮面を被って崇められる優越感は欲しいけど、月の都とバレるのは勘弁
ということか。もはや豊姫の依頼とは全く関係のない目的が付け加わってしまった形になるが。

【②浦島を殺さずに済む、優しい方法】

そもそも、豊姫は「殺すのが可哀想」という優しさから出発していたはずだ。

豊「八意様は即断で殺せって仰ってたけど、流石にそれは可哀想だしねぇ」
私は流石に自分が匿った所為という事もあり、とても殺す気にはなれなかった。
妹も同様であり、やはり殺す気にはなれなかった。
仕方がなくそれ以外の方法はないのですかと聞いてみた。
そうすると八意様は微笑んで``勿論ありますよ。貴方たちは優しいのね``と言って、
別の案から最善のものを教えてくれた。(小説三話)

なのに、永琳がとった策は
「友人、家族、知人が誰一人存在しない世界へ送り込み絶望させた上で
一歩も歩けない程まで老衰させ、死なす」という鬼畜きわまる物だった。

自分を覚えている人が誰もいない世界に余程絶望したのだろう。泣き叫びながら玉くしげを開けた。
しかし不幸はまだ終わらなかった。玉くしげを開けた彼の肉体はみるみる間に若さを失い、
そこに歩くこともままならない老体が残された。(小説三話)

苦痛で比べれば殺す方がよっぽどマシだろう。
しかも小説だと変にテンポがいい文なのでよけい悲惨である。
なにより、けっきょく殺してるじゃないかという疑問が残る。
月人的には直接手を加えていなければセーフなのか、最終的に神になれば殺されてもおkなのか、
殺しはするけど普通に彼岸に渡るよりも幸せな死後を用意してやれば問題ないだろという価値観なのか。
死なせることには違いないが、侵入者として殺されるという不名誉な最期を、
生き神様として村人たちに看取られて死ぬという幸せな最期に変えようという妥協案だったのか。

 

ついでに、永琳は「絶望することを見越して」この策を提案している。

八意様は地上にお隠れになる前に、浦島子に手土産として「玉くしげ」を渡せと言っていたのだ。
さらに彼には
``この玉くしげは地上での生活に困ったら開けなさい、しかし再び竜宮城に期待のであれば
決して開けてはいけません``と伝えろと言われていた。(小説三話)

豊姫曰く「お師匠様は一番優しかった」らしい。
たぶん月夜見はフレイザードみたいなやつなんだろう。

豊姫まで狂ってる

わずか2ページで矛盾

だが一つ気がかりなことがあった。
彼を地上に帰して三年間も何処に行っていたのかを問われれば、彼はここで過ごした経験を語るだろう。
そうすれば竜宮城─月の都に興味を持つ者が出てくるかも知れない。
それは月の都のピンチを招きかねないのでは無いか。

                  

しかし、老人となったことが幸いした。
三百年前の話を知っている老人は、村では生き神様のような扱いを受けるようになった。
彼の不思議な話は神の世界の話と信じられ村では伝説となった。
当時の人間には彼ほど老いられるまで生きられることは少なく、また文字も読めなかったため、
話が出来る老人は持て囃されたのだ。
浦島子が若い姿のままだったら、ただの与太話と思われただろう。 

じゃあ、それでいいじゃねーか! 

「優しさ」って何だ

依「今なら…すぐに追い返すか殺すと思います。あの頃ほど私達は愚かではないですから」
豊「千五百年前のあの頃ほど優しくない…と?」(小説三話)

「私達は八意様が居なくなってから様々なことを学びました。」
依姫は海の方を見て言葉を続けた。
「学んだ事は、私達にはそこまで深い考えを持つ事は出来ない。思慮の浅い優しさ
人間も月の民も不幸にすると」
私は少々強張った依姫の肩に手を掛けた。
豊「ならば、もうすぐ来るであろう人間が攻めてきた時、私達は追い返す事に専念すれば良いのです」
(小説3話)

「昔、浦島を優しさから匿ったが、それを思慮の浅い優しさだったと反省し、今ならばすぐに追い返す」
と語っているが、そもそも豊姫は、侵入者はすぐに追い返していたのだ。
浦島を匿ったのは優しさからではなく、興味からである。

それはもう千五百年以上昔の話であるが、水江浦島子と名乗る人物が水に映った青い星から
出てきたことがあった。神隠しにあった大抵の人間はすぐにパニック状態になり、
自分の理解できる世界に帰りたがるものである。
だから見つけ次第私の力ですぐに帰してやることにしていた。

だが、彼は違った。栄華を極めた月の都を観るなり地上に帰ることも忘れ、
もう少しここにいたいと言い始めた。彼はもしかしたらアタマが少し弱かったのかも知れない。
ただ私も地上の人間に興味があったので、八意様には内緒でうちの屋敷で匿うことにした。

八意様は即断で``そのような人間は亡き者にするのが一番です。海に出てから三年も姿が見えなければ、
地上では死んだ人間として扱われているでしょう。
大体、地上から来た生き物を興味半分で匿うからそのような事態に陥ってしまうのですが…``
と言った。

なので、反省するなら「興味本位で生物に接するのは傲慢だし、不幸を招く」あたりが妥当なはずだが
なぜか優しさが招いた不幸のような言い回しになっている。

まとめ

永琳が絡むと、真逆の結果で返ってくるということが分かった。
・「噂が広まらないようにしてくれ。特に権力者に」
→噂が広まり、よりによって天皇の耳に届く
・「殺すのは可哀想だから、殺さずに済むようにしてくれ」
→ひとりぼっちの時代に飛ばされ、深い絶望を与えた上で強制的に老衰死させる
・「始まるわね 月の都を我が物にしようと増長した月の民同士の穢れなき争い──月面戦争が」
→始まらない
・「そして、確実に来るでしょう 月の都の使者と罪人が」
→来ない
・「月の都の人は表の月を弄れなかったはず」
→兎が余裕で侵入
・「私の言う通りにすれば、永遠亭には何一つ問題は起こらないでしょう」
→事実上のトップ、というか発言者本人が忘れられない恐怖を刻まれる
・「これで月の民も地上に来れないはず。これが私の最大の秘術の一つ。地上は大きな密室と化したのよ」
→豊姫がマスターキー持ってた
・「うまく行きすぎると不安になるのは心の病かしら」
→なにひとつ上手く行ってない