西行寺 幽々子

Last-modified: 2023-09-10 (日) 14:58:44

体質について

亡霊には生死が無い。その事が、穢れのない月の都と相性が良かった。
幽々子は月の都にひと月ほど滞在し、誰にも怪しまれることなく行動していたのだ。
そして堂々とお酒を盗み出すと、次の満月の時に紫に再び月面と地上の通路を空けて貰い、
地上に降りてきたのだ。
月の都に亡霊の姿など、誰が想像しただろう。
だが、秘密裏に行動するのにこれ程便利な組み合わせもなかった。
亡霊は元々浄土に住む者である。つまりは生死に関わる穢れが少なく、
その結果そこに居たという痕跡を残さずに行動出来たのだ。
そのことを知っている妖怪はあまりいない。かつて妖怪が月に攻め入ったとき、
偶然気付いた妖怪が居たくらいだ。その穢れの少ない亡霊が、
ここの屋敷にいることも偶然なのだろうか?居やこれも偶然ではなかったことは誰の目にも明白だ。
ある妖怪──八雲紫が導いたのである。無事付きの都に潜入した亡霊はどういう行動を取ったのか。
それが紫の計画の総仕上げとなるのだが、はたして。(小説最終話)

紫「幽々子を選んだ理由はそれもあるわ 私が再び月と地上を結ぶことができる次の満月まで 
  月の都に忍び込んでいても目立たないから」
妖夢「どういうことです? 十分目立っていた気も」(兎と幽々子がキャッキャしてるコマ)
   月の都は穢れを嫌うけど 貴方たちはすでに浄土の住人だからね」
藍「さすが紫様です」(漫画版最終話)

雨月とは

妖「最近の天気を見ていると 今夜も雨になると思いますよ」
幽「そんなことわかっているわよ(溜息)」

幽「だいたい中秋の名月って言うけど この時期って昔から天気が悪いのが普通なのよ
 十年のうち九年は雨が降って見られないと言われるほどなの 
 つまり 実際はほとんど見られないのも名月たる所以…」
妖「じゃあ今 私は何のためにお団子を捏ねているのでしょう?」
幽「お団子を食べるため以外に用途はあるのかしら?」
妖「まあそうですけど ただ食べるだけなら今日でなくてもいいじゃないですか」
幽「他にもお月見をするためよ 十年のうち九年は行ってきた方法で」

幽「雨月と言ってね 特に雨が長引きやすい中秋の名月は雨が降って月が隠れても
  雲の上の名月を想像してお月見を楽しんだのよ」
妖「苦し紛れの楽しみ方ですね」
幽「いやいや そのほうが風流なのよ 昔から名月そのものを見るより 
   丸い物を見て名月を想像することが風流とされたの 
   昔の人は 実物より想像の方が何倍も大きく何倍も美しいことを 経験から知っていたのね
   料理にお団子一つついてるだけで 名月を想像できたんだから 簡単でいいでしょう?
   そしてその究極の形が──底にあるはずの名月を想像する 雨月というわけ」
妖「なるほど そうでしたか でしたら 団子も実物を食べるより想像の方が何倍も
  おいしいんじゃないでしょうか?  
  そんなにお団子を食べられたら 想像できる名月も想像できなくなってしまいますよ」

走尸行肉

幽「走尸行肉」

 

幽「毎日はしゃいでいるのも結構だけど… どうでもいいことばっかりしているのなら
  走る屍動く肉と 何の違いもないの」
魔「動く屍のお前が言うな」
霊「珍しいじゃないの 二人お揃いで」
幽「そろそろロケット完成記念パーティの時間なので」
霊「迎えに来たっていうの? 珍しいじゃない」
幽「今から神社で宴会をしようかなぁと」
魔「…いや そんな時間はないぜ」
(紅魔館に到着 ごった返してる)
魔「これはまた 大勢呼んだんだな」
幽「まさかあの吸血鬼が月に行く時代が来るなんて 思ってもいなかったわ
  ほんと 困った動く肉ねぇ」

妖夢に求めること

思えばこの妖狐の訪問辺りからだった。私の周りで起こっている事が理解できなくなったのは。
私は理解できないことはすぐ訊く癖がついていた。訊くは一時の恥訊かぬは一生の恥、
と教えられてきたからである。だが、それが理解を阻害している様な気もした。
何でもかんでも誰かが教えてくれると思ってしまい、真剣に自分で考えようという気を失わせるからだ。
私がいつものように幽々子様に質問をしていると、こんな教えを頂いた事があった。
妖夢は口を開けば、それは何ですか? どういう意味ですか?って。 
その辺の喋らない幽霊の方が含蓄ある話をするわ』
『すみません。ですが、訊くは一時の恥訊かぬは一生の恥、と』
『ふふふ。妖夢、貴方は訊く事を一時の恥だと感じているの?
『えっ?』
『恥を感じる様な質問というのは、知っていて当然なことを知らない時だけです。
そのような質問は大いにしなさい。知ったかぶりは大きな損をします』
『……』
『しかし、自分が知りたい事を訊くのは恥ではありません。恥を感じない質問は、
必ずしも答えを得られるとは限らないのです。自分が知りたいことは自分で考えなさい。
いつでも知りたいことを訊くことが出来る環境は、知りたいことを減らしてしまうものよ。
知りたいことを失った人生は、不幸以外の何物でもないわ。そう……永く生きていると特にね』
言うまでもないが、幽々子様はとうの昔に亡くなって、亡霊として冥界に留まっているのである。
しかし、幽々子様は『生きている』という表現を多用する。
私は幽々子様の言っている事をどれだけ理解できているのか自信がない。
判っていることなのに教えてくれないのは、ただ意地悪しているだけなのではないかとさえ思う。
しかし、最近は誰に訊いてもまともに教えてくれない事が増えた。もしかしたら、質問に答える事を
面倒に思っているのかもしれない。そう考えるとやはり恐縮してしまう。
「…そうですか。幽々子様は月面戦争を見たことがあるからすぐに理解できるはず、
と紫様は仰ってましたが」
藍は「紫様の言っている事と違う」とぶつくさ言いながら帰っていった。
私が考え事をしている間に、幽々子様は依頼を断ったようだ。
私には紫様が吸血鬼の監視の話を持ちかけてきた理由も、幽々子様が断った理由も判らなかった。
判らない事だらけだった。
「紫様は何故、あのような話を幽々子様に持ちかけてきたのでしょう」
何気なくそう質問してしまって後悔した。もっと自分で考えろと言われてしまうのではないか。
「聞いての通りじゃないの? 紫は困っているのよ」
「そ、そうですね」
私は決めた。ここ白玉楼の庭師、魂魄妖夢として単独で行動する事を。吸血鬼達の監視、
及び何が起きようとしているのか調べることを。勿論、誰にも訊かずに、自分で理解することを、
出来るだけ……。(小説七話)

 

妖夢に求めないこと

「で、妖夢。何の本を読んでいるのかしら?」
「あ、幽々子様。き、今日は雨が降っていますので、少し勉学にいそしもうと」
そう言って、読んでいた本を隠した。幽々子様は監視しなくていいと言っていたのに、
私は内緒で吸血鬼達の監視を行っていたのだ。この本を読んでいることは不自然である。
勉学! 呆れたわ。つまんないの。そんな事より、今日は中秋の名月だからお団子捏ねておいてね」

幽々子「本当に分かっていないのね。
    そんなだから雨月を楽しむ想像力も持てないのよ。
    これからは私の言うとおりに行動しなさい」(漫画四話)

「幽々子さまは何を企んでいるのです?」
雨月の楽しみ方も分からない貴方は私の言うとおりに動いていればいいのよ
(漫画4話)