訪問調査
調査員が対象者の自宅・職場等を訪問して調査を行う。対象者に負担のある質問でも、調査員のフェイス・トゥ・フェイスの協力依頼によって、ほかの方法に比べ、高品質で高い回収率が期待出来る。また、調査員に商品や写真を持たせてその評価を行うなどの対応が可能。特定の商品・サービス利用者や、特定属性該当者などの、調査対象者の条件に適合する人物を調査地点で選別し調査依頼することもできる。訪問調査の種類としては、面接法(対象者に調査員が質問し、回答を質問紙に記入する)、留置法(調査員は対象者に質問紙を渡し、回答が記入された質問紙を回収)、面接・留置併用法(一部の質問は面接、残りの質問は留置する)がある。
【問題点】
- 調査の正確性を期すために、一定の技量のある調査員を揃える必要がある。
- 有名な「国勢調査」でさえ回収が困難なように、アンケート協力率が低い。
- 紙ベースの回答を電子化する作業が必要。
訪問面接調査
調査対象者を抽出し、調査員が対象者宅を訪問し、質問紙の順に口頭で回答を得る方法。
サンプルの代表性確保を必要とする調査や、性別・年齢別などの母集団構成に従ったサンプル確保を必要とする調査などが実施可能。また、商品や広告の純粋想起質問(ブランド名の浸透度などを調査する際の質問)も可能である。例えば、対象者に何のヒントもなしで「テレビのブランドで思い出すブランドを挙げてください」といった質問をすることで、ブランド力の強さを調査することができる。
【メリット】
- 調査員本人が記入するため誤記入が少ない。
- 先に出た質問が別の質問の回答に影響を与えることを最小限に抑えられる。
- 実際に対面し質問をするため、対象者が確実に特定可能。
- 調査票の流れの通りの回答が得られる。
- 呈示物を見せたり、設問ローテーション等、質問の設定をコントロールできる。
【デメリット】
- 多数の調査員を必要とするため、他の調査と比べるとコストがかかる。
- 調査員の態度が対象者の回答に影響を与える可能性がある。
- 在宅率の低下やオートロックの普及による調査環境の悪化。
- 他の調査と比べると調査期間が長い。
留置調査
対象者を抽出し、調査員が対象者宅を訪問。 ↓ 対象条件に合う方に1対1の対面で調査への依頼を行う。 ↓ 調査票を対象者に渡し、記入方法などの説明を行う。 ↓ 一定期間(数日から数週間)の間に対象者に自記入で調査票に回答してもらう。 ↓ 調査員は一定期間の後、再び対象者宅を訪れ調査票の回答に抜けがないか確認のうえ、回収する。
調査票を郵送し、回収は調査員が訪問する場合は郵送留置き調査と呼ばれる。
留置調査は低コストだが、身代わり回答や無回答が多く、データの質は面接法と比べ、やや落ちるといわれる。ただし、家計調査や生活時間調査などにおいて、家計簿や日記などを見て、回答者が考えながらやや長時間答える場合は有効である。
【メリット】
- 対象者の都合のよい時間に回答できるので、訪問面接調査よりボリュームのある調査が可能。
- 調査の注意点を対象者に説明することができる。
- 日記式など、ある期間継続して記録するような調査が可能。
- 対象者が質問に対して熟考して回答できる。
- 留置期間に新製品を試してもらい(ホームユース)、その評価を得ることができる。
- 訪問面接調査とは異なり、調査員との対面では回答しにくい質問も可能。
【デメリット】
- 在宅率低下やオートロックの普及により戸別訪問がしづらくなっている。
- 調査期間が最もかかる。
- 回答が対象者本人によってなされたものか確認が困難。
- 他者の意見が加味される可能性がある。
- 長期期間の場合、回答途中で対象者が脱落する可能性がある。
【調査例】
- 金融商品の利用実態や金融資産の保有状況把握のための定量調査
(株式や保険などの金融商品の利用実態、預貯金や金融資産の保有状況の把握など、調査対象者にとって調査員との対面回答しにくい調査)
- 試作商品、新商品の評価調査
(調査票に新製品の試作品やサンプルを同封し、調査対象者に日常生活で実際に試用してもらい、その商品の評価や利用状況を把握)