JOKER FINAL MISSION

Last-modified: 2008-10-19 (日) 20:48:02

JOKER/原作:麻城ゆう  漫画:道原かつみ

271 名前:Final Mission 序 投稿日:04/07/06 23:39 ID:???

ジョーカー・シリーズ第8巻「Final Mission」 著:道原かつみ(原作:麻城ゆう)  新書館

〈登場人物などの紹介〉
ジョーカー  性別不明
特捜司法官(合成人間) コード名LB(ルナベース)‐2150‐JOKER‐1 変身能力を持つ
六道リィン(リクドウ リィン)  男
日本州警の警部補(別に偉くはないらしい)
S‐A(スペード‐エース)  男
特捜司法官 男のジョーカーと同じ顔をしている ジョーカーとは双子のようなもの 変身能力はない
バーリー  男
日本州警の刑事 リィンの先輩
ナイル  女
日本州警の刑事 リィンの同僚
飛騨ジェンクス(ヒダ ジェンクス)  男
元日本州警資料管理室室長 頭はいいが性格は悪い
犯罪予測プログラムの研究をしており、そのせいで『赤のキャラバン』に狙われていた
表向き犯罪者として特捜司法局に連行され、そこで研究を続けている 特捜司法局を嫌っている
狩カルスト(カリ カルスト)  男
『赤のキャラバン』の幹部クラスの少年
赤のキャラバン
大規模なテロ組織 特捜司法局の宿敵
合成人間
人間の遺伝子をモデルに造られている 人権は無い
民間のものは特捜司法局に技術が及ばず、また促成培養されるため、知能は低く感情も乏しい
補助脳に様々なプログラムが施されている


272 名前:Final Mission 序 投稿日:04/07/06 23:41 ID:???

〈特捜司法官とは?〉
あらゆる種類の電磁波を認識し、天体望遠鏡並みの照準機能を備えた銀色の人工眼球を持つ合成人間。
四大惑星系に各13人が配置されており、地球系がスペード、火星系がダイヤ、木星系がクラブ、
金星系がハートのコード名を持っている。
ジョーカーのコード名を持つ者は、対象者の唾液や血液から遺伝子情報を得る事で対象者に変身することが
できるため、普段は主に潜入捜査などをしているが、本来の仕事は特捜司法局の内部監査である。
(何人いるかというと、2人は確実ですが4人かもしれません。JOKER‐2は火星担当らしいので、
木星や金星にもいそうですが出てこないのでわかりません)
司法コンピュータと同等の判決能力を有する彼らは、刑事であり検事であり裁判官であり、
そして死刑執行人でもある。
また身体機能も優れており、聴力、腕力、回復力など、常人の及ぶところではない。
だが、高度な能力を有する代わりに細胞機能の低下も早く、その寿命は45年程だが、
能力劣化防止のため、寿命を待たず早めに解体処分される。
TVドラマなどの影響で存在自体は有名だが、実際の特捜司法官や特捜司法局のことは
極秘とされる部分も多く、詳しくは知られていない。


〈7巻までの話〉
正義感あふれる日本州警の警部補・六道リィンは、女性の姿をした特捜司法官のジョーカーと知り合った。
やがていくつかの事件を通して彼女と愛し合うようになったが、
男にも女にも変身して現れるジョーカーに、リィンはふりまわされっぱなしだった。
リィンにとっては立場上おおやけにできない関係な上、特捜司法官には機密扱いの部分が多い。
いつどこで再会できるのかわからないために、すれ違いの日々は続いた。
それでも二人の関係はうまくいっているように思えたのだが、
ジョーカーは一方的にリィンに別れを告げ、彼のもとから姿を消してしまうのだった。
(以上、7巻までのあらすじでした。次回は8巻に入ります)


273 名前:マロン名無しさん 投稿日:04/07/07 00:03 ID:???

変身能力があるけど、「基本の形」はあるってことかな?


274 名前:Final Mission 序 投稿日:04/07/07 01:22 ID:???

あります。 自分のDNAはあるので。
だから本当は男か女かも決まっているはずですが、作品中には出てこないのでわかりません。
ちなみに、男の場合は背の高いカッコイイ青年、女の場合は清楚な感じのかわいい女性です。
どちらの場合も黒いストレートな髪で、腰のあたりまである長髪です。(でも髪や髭は伸縮自在なんですけどね)


293 名前:Final Mission 1 投稿日:04/07/07 23:33 ID:???

第1話「本気の恋はいらない」
新たな任務に赴くこととなったジョーカー(女)は、必要な遺伝子情報をもらうためS‐Aに会う。
(与えたのかもしれないし交換したのかもしれませんが、見た目はキスするだけなのでわかりません)
その時S‐Aは「リィンを好ましく思う気持ちはわかるが、恋したい気持ちはわからない」と言う。
ジョーカー(女)はS‐Aの頬に優しくキスした。
「今のは人生の先輩としてのキス」 そう言って微笑んだジョーカー(女)は、夜の街を翔けて行く。
――人間が好きだから恋がしたい  でも本気の恋はいらない  人間ではないのだから――


7巻までのことも考えると、
特捜司法官は人間に好意を持つようプログラムされているが、恋はしない。
いよいよ解体処分が近くなってきたジョーカーは、恋に憧れてリィンに近づいたのだが、
そろそろ期限なので別れた。 が、本当はリィンを愛している。
…という感じだと思われます。                    


305 名前:Final Mission 2 投稿日:04/07/09 01:52 ID:???

第2話「運命の恋人」
〈あらすじ紹介〉
『エデンのリンゴ』という占いの店で、客に暗示をかけ財産を乗っ取るという事件が起こる。
リィンとジョーカーは偶然出会い事件を解決するが、ジョーカーは再び姿を消してしまう。
〈ストーリー紹介〉
リィン達の管轄区内で殺人事件が起こった。
被害者は50歳位の男性で、1ヶ月前に結婚したばかりの16歳の妻の前で首を落とされて死ぬという悲惨な事件だった。


その頃日本州警では、ジョーカーに「さよなら」と言われた六道リィンが激しく落ち込んでいた。
そこへ事件の第一報が入る。
犯人は合成人間。 工場用に筋力強化されたタイプだが、従順で殺人など犯せるはずも無い。
専門家は偶発的な事故ではないかと言うのだが…。


その夜、リィンはナイルに連れられ『エデンのリンゴ』という占いの店へ行く。
そこではヘビ様と呼ばれる女性が『運命の恋人』を占ってくれるのだ。
通された部屋にはキャンドルが灯り、ハーブのような香りが漂っていた。
その部屋で理想のタイプについて質問され、リィンはジョーカー(女)を思い浮かべながら答える。
長い黒髪、たくましく(体ではなく腕っ節)、マイペースで物事を腕力に訴えてでも解決するタイプ、と…。
リィンは「3日後の午後7時半、忠熊モモの銅像の前でウサギのぬいぐるみを持って立っていると、運命の相手に出会える」という宣託を受ける。
行く気はあまりなかったのだが、「実は犯罪がらみの可能性がある」と言うナイルの言葉に、リィンは当日現場へ向かった。
熊の銅像の前で、体長1㍍以上はあろうかという巨大ウサギを担いで相手を待つリィン。
バーリーとナイルは影に隠れて様子をうかがっている。
ところが、やって来たのはなんとジョーカー(男)だった。
別れ話など無かったかのように平然と振舞うジョーカー(男)にリィンは戸惑う。
だがジョーカー(男)の笑顔を見るとなぜか赤面し胸は高鳴り、抗いきれず人前でキスさえしてしまうのだった。


306 名前:Final Mission 3 投稿日:04/07/09 01:53 ID:???

翌日、恋に落ちたウブな少年のようにフヌケたリィンを前に、ナイルは首をひねった。
最近少女達の間で、年上の金持ちと恋をするというのが流行っており、
それを聞いたナイルは売春の可能性を考慮して、あたりをつけていたのだ。
しかしリィンの相手は立派な大人でしかも男…これは予想外のことだった。
その時、特捜司法局八王子支部からリィンへ協力要請が入る。
はたと我に返ったリィンは、ジョーカー(男)が事件がらみで近づいてきた事に気づき、
「ヘビ様に相談しなくちゃ」と泣き崩れるのだった。


再び『エデンのリンゴ』を訪れたリィンは、相手が男だった事について相談する。
ヘビ様はなぜかうろたえるが、「フラれた相手を忘れられない」とリィンが言うと、運命には逆らえないと諭すのだった。
その帰り、リィンは店の廊下で見知った少女に出会う。
それは先日合成人間に殺された男の妻であった。


州警に戻ったリィンのもたらした証拠品は、瞬く間に分析された。
特捜司法局から事前に情報を得ることができたリィンは、『エデンのリンゴ』を探るために店へ行ったのである。
『エデンのリンゴ』では占いなど行ってはいなかった。
ハーブの香りの薬物と光の明滅によって客に暗示をかけ、出会えば恋に落ちるよう仕組んでいたのだ。
特捜司法局が介入したからには、この一件は凶悪な事件であるはずだ。
合成人間による殺人事件が関係しているのではないか――?
『エデンのリンゴ』で見かけた少女のことを思い出しながら、リィンはそう考えていた。


339 名前:Final Mission 4 投稿日:04/07/13 01:37 ID:???

こうしてリィンとジョーカー(男)の合同捜査が始まった。
ジョーカー(男)の情報によると、次の殺人ターゲットは工事用機械などを扱っている会社の社長・山菱だった。
彼とその妻はもちろん『エデンのリンゴ』で知り合った運命の恋人同士である。
ジョーカー(男)は火星北極自治区の地底開発局副局長レッド・ブリザード、リィンはその恋人の山田太郎として山菱夫妻に近づいた。


夜、4人はホテルの一室で歓談していたが、山菱夫妻はジョーカー達の仕込んだ睡眠薬によりいつしか眠り込んでいた。
いよいよ作戦決行である。
リィンは護衛役として、爆睡中の夫妻と共に部屋に残る。
そしてジョーカー(男)は山菱氏に変身し、狙われやすいようホテルの外へ出て行った。
即座に3人の男が山菱氏(ジョーカー)を取り囲み、彼の体に深々とナイフを突き刺して逃げていった。
山菱氏は重体、夫人もショックで寝込んでいると世間には発表されたが、夫妻は保護され、変身していたジョーカーも無事である。
こうして病院に張り込み、再び犯人が来るのを待つのだ。


その夜、『エデンのリンゴ』には、ヘビ様に不安を打ち明けるリィンの姿があった。
恋人・ブリザードから1万坪もの土地をプレゼントされること、山菱氏の一件から自分の恋人もそんなことがあるかもしれないという不安だ。
事がうまく運んでいると思ったヘビ様は微笑んで、「どんな事態が起ころうと必ず良い方向に導いてやる」と言う。
それを聞いたリィンは不敵な笑みをたたえ、『エデンのリンゴ』の実体を暴いていった。
『エデンのリンゴ』は暗示にかかりやすい少女達を操り、金持ちの未亡人にしてはその財産を吸い上げていたのだ。


340 名前:Final Mission 5 投稿日:04/07/13 01:40 ID:???

リィンに暗示が効いていないことを悟ったヘビ様は、隠してあった合成人間達をけしかけリィンを殺そうとする。
だが合成人間達は次々とリィンの手で倒されてしまった。
筋力強化された合成人間が、いとも簡単にやられてしまうなど信じられないことだ。
実はジョーカーがリィンに変身していたのだが、ヘビ様はそれを知らない。
驚き怯えるヘビ様の首にリィン(ジョーカー)の手が伸び、ゴキッと鈍い音をたてる。
乱闘の音を聞いて駆けつけて来た『エデンのリンゴ』スタッフは、その場の光景に凍りついた。
黒い長髪の男がヘビ様の死体を抱えあげようとしていたのだ。
男が振り向きその顔が見える。
スタッフを見つめる男の瞳は銀色の人工眼球だった。


同じ頃、病院を襲撃していた3人の男は、本物のリィン達州警の手のよって取り押さえられ、事件は無事解決した。
しかしジョーカーは再びリィンの前から姿を消してしまい、リィンはまたも落ち込んでいた。
だが、ジョーカーとの出会いは数多くの出会いの一つでしかない。
このままジョーカーと会わなければリィンはそのうち彼女(彼)を忘れ、新しい恋を見つけるだろう。
そうとはわかっていても、本当の運命の恋人になるにはどうすればいいのだろうかと、リィンはジョーカーに思いを馳せる。
たとえ別れを告げられようと、リィンはジョーカーを愛しているから。


「運命の恋人」完   第3話につづく


341 名前:Final Mission 6 投稿日:04/07/13 02:12 ID:???

第3話「ファイナル・ミッション」
〈あらすじ紹介〉
特捜司法局が動き、ジョーカー達の活躍によって『赤のキャラバン』は壊滅する。
だがジョーカーは無理をしたため記憶を失ってしまう。
リィンはそんなジョーカーを受け入れ、残り少ない時間を共に過ごす。
数十年後、合成人間達は人権を得、明るく生きていた。
〈ストーリー紹介〉
映画館で『特捜司法官S‐A』の映画を見た直後、リィンとバーリーは合成人間の死亡事件に遭遇した。
死んだ合成人間の目には金属片がはめてあり、特捜司法官を模しているらしい。
それは、このところ日本州各地で続発している合成人間損壊事件(合成人間は人でなく物扱い)の一つだった。
事件はその後も続いた。
州警は、州議会選挙区一つにつき一つの損壊事件が起こっていること、そして特捜司法局が介入した事件現場もそれに重なることをつきとめる。
それでいくと損壊事件が起こっていない場所はただ一箇所、富士樹海自然パークだった。
そこには世界会議場があり、1ヵ月後各国の要人が集まって惑星間法整備会議が開催されるのだ。
それはあたかも『赤のキャラバン』から特捜司法局へのテロ予告と見て取れた。
しかしなぜそんな手間のかかった予告をするのか、リィンには今ひとつしっくりこなかった。


365 名前:Final Mission 7 投稿日:04/07/16 00:24 ID:???

仕事を終えて帰宅したリィンは、アパートのドアの前で飛騨ジェンクスに出会う。
彼は特捜司法局を脱走してきたので、匿って欲しいと頼む。
リィンが断ると、ジェンクスはジョーカーの解体処分の話を持ち出し、恋人を死なせたくなければ特捜司法局を潰す手伝いをしろと言うのだった。
だがそれは犯罪である。
リィンは、ジョーカーを救うためなら何でもするつもりだが、犯罪者となってジョーカーを悲しませることだけは絶対にしたくないと思っていた。
するとジェンクスは、特捜司法局の特別任務だと言いだす。
ジェンクスの話のどのあたりが本当でどこがウソなのか、と言うよりそもそも真実なんてあるのかどうかさえわからなくなったリィンは、心底途方に暮れるのだった。


その頃月では、ジョーカー(男)が新たなミッションに取り掛かろうとしていた。
『赤のキャラバン』中枢への潜入、それが今度の任務である。
失敗はできない。  やり直しは効かないのだから。
なぜならこれが、解体前の最後のミッションとなるからだ。


一方、損壊事件で死んだ合成人間は自殺したものと判明。
だが合成人間には自己を破壊するプログラムなど入ってはいない。
本来は書き替え不可能な基本倫理回路が、ウィルス・プログラムによって書き替えられていたのだ。
ウィルスの内容を変えれば大規模なテロさえ起こせる、犯人はそんな技術を持っているということだ。
そんなことが出来る人物をリィンは一人知っている。
それは彼の家に居候している飛騨ジェンクスである。
リィンはアパートへ駆けつけ、ジェンクスを問い詰めた。
ジェンクスは嫌味でひねくれていて、大胆且つ何をするかわからないような性格の人間だが、決して倫理観の抜けた悪い人間ではないはずだ。
リィンはそう思っていたが、ジェンクスは取り澄まして自分が犯人であると告白する。
『赤のキャラバン』に接触しその一員となるため、自分の頭脳をアピールしていたのだ。


366 名前:Final Mission 8 投稿日:04/07/16 00:27 ID:???

告白後、ジェンクスはいきなりリィンを蹴り倒し、彼の腹に手を這わせた。
傍目にはじゃれ合っているようにしか見えないが、その陰でジェンクスはリィンに、指文字であることを伝えた。
驚くリィンにジェンクスは「次は富士樹海自然パークだ」と、犯行予告をして去って行った。


そして予告通り、世界会議本会議場に合成人間の死体が忽然と現れた。
見回る警官達の隙をつき、わずかな時間に放置されたのだ。
「寝てたんじゃないか!?」と警官を叱責するバーリー。
しかし手品のような状況に当惑していたのはバーリーだけではなかった。
「自分でもそう思う。見落としは無かった筈なのに」と言いながら、『赤のキャラバン』幹部・狩カルストが現れる。
その場にいた警官達は一斉に銃を上げ、リィンとバーリーに狙いを付けた。
彼等は皆『赤のキャラバン』の人間だったのだ。
リィンの部屋に仕掛けた盗聴器でジェンクスの事を知ったカルスト達は、州警内部に潜入していたのである。
だがその時、死んでいたはずの合成人間が立ち上がり、カルストは額を撃ち抜かれて死んでしまう。
死体に扮し、カルストを射殺したのはS‐Aだった。
S‐Aはジェンクスと『赤のキャラバン』の接触を阻止するため、ジェンクスの行方を探しているという。
リィンが知らないと答えると、S‐Aは一組のイヤリングを取り出し、ジョーカーから預かった物だと言ってリィンに渡した。
それは以前、リィンがジョーカーにプレゼントしたイヤリングだった。
「ジョーカーは昨日付けで解体処分されました」と言うS‐A。
つまり、今さらジェンクスを庇い特捜司法局を潰したところで、もはや手遅れだということだ。
S‐Aの言葉にリィンは愕然とし、呆けたようにイヤリングを握り締めた。


この様子を盗聴している者がいた。
若い男である。  その男の横にはカルストの側近・サディムが付き従っていた。
(マンガでは目の部分が影になっていて正体はわかりませんが、さっき死んだカルストに似ているなー、と思わせる程度に描いてあります)


367 名前:Final Mission 9 投稿日:04/07/16 02:33 ID:???

テロの可能性は未だ十分にあるため、世界会議場の警備は続いた。
そしてその中には、率先して指示に当たるリィンの姿もあった。
その夜人気のない公園の入り口で、リィンはビールを飲みながら一人静かに泣いた。
とはいえジョーカーの死を完全に信じることは出来なかった。  その知らせはあまりにも唐突過ぎたのだ。
その上、幸か不幸かじっくり考える時間もなかった。  
帰宅したリィンを思いもよらぬ人物が出迎えたのである。
それは死んだはずの狩カルストであった。
カルストは2つの肉体を持っており、その脳は常にシンクロしていて精神的には同一人物という、極めて特殊な人間だったのだ。
カルストはリィンに美しい少女の写真を見せた。  もちろんただの少女ではない。
彼女こそはカルストの母親、そして『赤のキャラバン』の総裁・マムであった。
魅せられたようにマムを見つめるリィン。
異変を感じた時にはもう遅かった。
洗脳され自由意志を奪われてしまったリィンは、命じられるままジェンクスを呼び出す。


ジェンクスと『赤のキャラバン』はついに接触した。
ジェンクスの妻子は、特捜司法官と『赤のキャラバン』との銃撃戦に巻き込まれて死んでいる。
そのことを知っているカルストは彼に真意を問う。
するとジェンクスは「『赤のキャラバン』も潰したいが、まずは特捜司法局を潰す。 (いつ敵となるかもしれないという)リスクを考慮しても、買い得なはずだ」と悪びれもせず言ってのけた。
だが『赤のキャラバン』にとって魅力的なのは、ジェンクスの頭脳であってジェンクスという人間ではない。
ジェンクスはリィンに薬を嗅がされ、気を失ったまま宇宙へ連れ出されてしまった。
『赤のキャラバン』のアジトである宇宙ステーションに着いたカルストは、手術室にジェンクスを運び込んだ。
そこからはグロテスクな巨大コンピュータが見える。  それはマムの半身とも言うべきものだった。
マムもまた特殊な人間であり、1つの身体に2人分の脳を持って生まれたのだ。
その1つは身体から切り離され、コンピュータに接続された。  だが、2つの脳はシンクロしている。
人間のマムとコンピュータのマム、2人合わせて1人のマムなのである。
そしてコンピュータ・マムは、他人の脳を次々取り込み今なお増殖しているのだった。


368 名前:Final Mission 10 投稿日:04/07/16 02:39 ID:???

同時刻、地球某所では、人間・マムが惑星間法整備会議に集まった各国要人の様子を窺っていた。
だが彼女の狙いはもっと大きい。
人間・マムはモニターに映った富士山を見ながら微笑んで言った。
「花火を上げてやろう。 大きな花火を、世界中に見えるように」


一方宇宙ステーションの手術室では、カルスト達が見守る中、科学者(?技師?医師? とにかく脳ミソとコンピュータを扱う人)がジェンクスの脳を取り出そうとしていた。
しかしそれは当のジェンクスによって阻止される。
「この場に飛騨ジェンクスは存在しない」
そう言って飛び起きたジェンクスは、素早く科学者を捕らえた。
その時、傍観していたリィンがいきなり苦しげにうめきだす。
わけのわからないことの連続にうろたえるカルスト。
そのカルストに側近・サディムが追い討ちをかける。
「六道リィンには前もってシールドを施してあったので、洗脳が解けかけているのだ」
サディムはそう言ってカルストの首を折り、ジェンクスもまた科学者を殺していた。
洗脳の解けたリィンは、目の前でジェンクスとサディムが変身するのを見た。
ジェンクスは科学者に、サディムはカルストになる。
2人とも特捜司法官だったのだ。
リィンはジェンクスの正体がジョーカー2であったことを知っている。
以前本人が指文字でそう知らせてきたのだ。(アパートで腹を触られた時)
では今カルストに変身したのは…?
「リィン、無事ですか?」
そう言って心配そうな顔をしているのは、見た目はカルストでも紛れもなくジョーカーだ、リィンはそう確信した。


379 名前:Final Mission 10.5 投稿日:04/07/18 09:44 ID:???

※ 事件についての説明です。
  (マンガでははっきり書いてないけど、多分こうだろう・・と想像した部分も少し入ってます)
今回の件は、特捜司法局が飛騨ジェンクスの計画に基づき仕組んだものだった。
ジェンクスは『赤のキャラバン』が、要人の集まる世界会議場を狙うと予測した。
そこで、犯行を阻止し『赤のキャラバン』を壊滅させようとしたのである。
特捜司法局は以前にも潜入捜査を行っており、かなり詳しく『赤のキャラバン』の内状を把握している。
つまりマムについても知っていたわけで、ジェンクスの天才的頭脳は恰好のエサになり得た。
そこでまず連続合成人間損壊事件を起こし、ジェンクスの存在をアピールした。
そして、リィンが『赤のキャラバン』にマークされていることを利用し、ジェンクスに変身したジョーカー2が『赤のキャラバン』内部へ潜入するという段取りになっていたのである。
ただし、特捜司法局の行動は極秘であるため、州警はもちろん、リィンにも詳しいことは知らされなかった。
一方で人間・マムに近づくための計画も進行していた。
彼女に疑念を抱かせず近づくためには、カルストを利用するのが最良の方法だったが、それには問題があった。
2人のカルストはシンクロしているため、一方に成りすましてももう一方にバレてしまうのだ。
そこで一方のカルストを殺すための罠が仕掛けられた。
それが世界会議本会議場の一件である。
カルストがジェンクスを捜して行動していることを利用したのだ。
ここでS‐Aがジェンクスを捜している云々と言ったのは、もちろん盗聴されていることを知った上での芝居である。
(ジョーカーが解体処分されたと言ったのは、リィンにさっさと諦めさせるため。 ジョーカーが頼んだのかも?)
こうしてほぼ計画通り、2人の特捜司法官が『赤のキャラバン』に潜入した。


380 名前:Final Mission 11 投稿日:04/07/18 16:15 ID:???

『赤のキャラバン』壊滅作戦はいよいよ最終段階に入った。
科学者(ジョーカー2)はコンピュータ・マムを停止させるためその場に残った。
そしてカルスト(ジョーカー)は人間・マムに接触するため、リィンは世界会議場守備のため、共に地球へ向かう。


地球へ向かう船艇の中で、リィンは再び会えた喜びからカルスト(ジョーカー)を抱きしめる。
カルスト(ジョーカー)はそれに応え本心を告げた。
「私を忘れて幸せになって欲しい。 私を一生忘れないで欲しい。 本当はどうして欲しいのかわからない」
合成人間であるジョーカーの体はすでに劣化が始まっており、2人の別れは避けられないことだった。
リィンは「君を忘れないで幸せになる」と答える。
「君と出会ったことが現在の僕を形造っている。 ジョーカーに触れたことが、ジョーカーと話したことが、
心のDNAに刻みこまれて、次に僕と出会った人がジョーカーの心のカケラを受け取って、
そうして君の生きた証は受け継がれていくんだ。 君がいなくなっても、僕がいなくなっても、未来までずっと――」
(うまく要約できなかったので、セリフそのまま書きました。 何だかすごくいい事言ってるような、どんどん恋愛するぞーと開き直っているような…)


カルスト(ジョーカー)は人間・マムに会うため、彼女のいる潜水艦内へ入った。
コンピュータ・マムと人間・マムは、誤差2秒以内でほぼ同時に殺す必要があった。
どちらが遅れてもコンピュータ・マムは自爆し、大量の汚染物質が地球に降り注ぐこととなるのだ。
意を決したカルスト(ジョーカー)は人間・マムに近付いた。
カルスト(ジョーカー)を本人だと信じて疑わない人間・マムは、楽しそうに富士山噴火計画を語る。
それは有史以来最大規模の噴火となるはずだ。
地震により日本列島は壊滅し、津波は環太平洋の各地を広範囲に巻き込むだろう。
すでに富士地熱発電所への仕掛けは終わっている、と。
カルスト(ジョーカー)は人間・マムの顔に優しく手をかけ、首をひねって殺した。
科学者(ジョーカー2)の手により、同時にコンピュータ・マムも停止する。


381 名前:Final Mission 12 投稿日:04/07/18 16:18 ID:???

残るは噴火の阻止であり、リィンは地熱発電所へ急行した。
カルスト(ジョーカー)は発電所のメンテナンス・ロボットが、時間になると暴走し爆発するよう仕組まれていることを探り出し、リィンに通信を送る。
だが時すでに遅く、2体のロボットが行方不明、その上発電所のシステムは正常に機能しなくなっていた。
残る方法は直接ロボットを探し出すことだけだ。
耐熱服を着込んでの地下捜索が始まる。
しかし高熱の中での作業は過酷なものだった。
時間ばかりがむなしく過ぎ、体力も気力も限界に近付いた時、リィンは問題のロボット1体を発見する。
それには爆弾が仕掛けられており、リィンは解体作業に入るが、高熱に朦朧とし倒れこんでしまう。
窮地を救ったのはS‐Aだった。
別の1体を処理し、リィンのもとへ駆けつけて来たのだ。
2体の処理を終えたS‐Aは、リィンを助けて地上へと戻っていった。


潜水艦の中、任務を終えたカルスト(ジョーカー)は、苦しげに顔をゆがめてその場に倒れてしまう。
変身も解け本来の姿に戻ってしまったジョーカーは、薄れてゆく意識の中で、生きてきて良かったと心の底から思うのだった。


『赤のキャラバン』は壊滅し、議会は無事開催された。
リィンは事後処理に忙しく同僚達と働いていた。
そんなリィンの前に飛騨ジェンクスが現れる。
今回は本物のジェンクスであり、彼は壊滅作戦で総動員した特捜司法官の調整のため地球に来ていたのだ。
特捜司法局嫌いのジェンクスらしからぬ仕事内容に、リィンは首をかしげた。
確かにジェンクスは特捜司法局を嫌っている。
だがそれは妻子を殺されたからというわけではない。  その在り方、制度などを嫌っているだけだ。
気に入らなければ作り変えればいい、変えるにはそれなりの力を持てばいい、それがジェンクスの考え方だった。
というわけで如才ないジェンクスは、特捜司法局内でかなりの地位を得ていたのである。


382 名前:Final Mission 13 投稿日:04/07/18 16:48 ID:???

ジェンクスはリィンを特捜司法局八王子支部へ連れて行った。
そこには解体処分されたはずのジョーカーが居るという。
解体処分制度はすでにジェンクスが無くしていたのである。
けれど嬉しい知らせばかりではなかった。
劣化しつつある能力をフルに使ったため、ジョーカーは記憶を失っていた。
加えて余命は僅か1~2年。
「それでも会いたいか?」と尋ねるジェンクスに、リィンは躊躇なく頷いた。


案内された部屋で、ジョーカーはベッドの上にいた。
今のジョーカーにとってリィンは見ず知らずの他人でしかない。
リィンは微笑んで「はじめまして」と挨拶した。
もう一度恋をするために。
限られた時を2人で生きるために。


数十年後、州警を定年退職したリィンは、月で合成人間の保父をしていた。
合成人間の扱いは飛躍的に改善されており、将来を語る子供達は明るく無邪気だった。
彼らの未来には等しく無限の可能性が広がっているのだ。
ジョーカーと出会って生まれ、受け継いだ想い。
それは今リィンの傍らで笑う子供達にも受け継がれていくだろう。
そうしてその先の未来へつながっていく――


END