PEACE MAKER鐵

Last-modified: 2014-10-21 (火) 02:34:37

PEACE MAKER 鐡/黒乃 奈々絵

343 名前:PEACE MAKER 鐡 前置き[sage] 投稿日:2005/11/18(金) 23:20:40 ID:???
【前作(新撰組異聞~)までの流れ】
新撰組に入隊した市村鉄之助は、池田屋事変で両親の仇と思われる吉田稔麿と戦うが
過去のことを問いただすも吉田はしらばっくれたまま沖田総司に殺される。
鉄之助と親しくなっていた吉田の小姓・北村鈴は、鉄之助が吉田を殺したものと思い
狂気に陥り吉田の首を抱えて失踪する。

【前作で残った謎】
・鉄之助の父親の正体
・明里の正体
・鉄之助の両親を殺した犯人
・土方が鉄之助について何か知ってる様子



344 名前:PEACE MAKER 鐡 登場人物[sage] 投稿日:2005/11/18(金) 23:21:43 ID:???
【前作からの登場人物】
市村鉄之助 土方の小姓。二刀流。すばしっこい実戦派。人を殺さないのが信条。
市村辰之助 心配性な鉄之助の兄。父・龍之助と瓜二つの容姿。ソロバン隊士。
沖田総司  一番隊隊長。女顔。優しいが敵には容赦ない。結核を隠している。
土方歳三  鬼の副長。色男。冷酷で結果のためならなんでもするタイプ。
山南敬助  仏の副長。土方と意見が合わずに苦しんでいる。
近藤勇   局長。優しい上司。
山崎烝   監察方。冷静沈着。変装が得意。鉄之助の友達。
永倉新八  二番隊隊長。小さいが隊内でも有数の剣士。頭が良い。
藤堂平助  八番隊隊長。お調子者で口が悪い。隊長の中では最年少。
原田左之助 十番隊隊長。大男。豪快で物事をあまり考えない。

北村鈴 吉田の小姓だったが彼の死後失踪。剣の腕はすごいらしい。
沙夜 置屋で小間使いとして働く鉄之助のGF。口がきけない。
明里 島原で働く遊女で山南の恋人。今作のヒロインかも。

【今作加わる登場人物】
坂本龍馬 土佐を脱藩し、海援隊を結成した浪人。市村兄弟をスカウトする。
斎藤一  三番隊隊長。総司と張る剣豪。霊感があり未来が見えるためか厭世的な面も。
伊東甲子太郎(大蔵)新たに外部から入隊した隊長。新撰組を乗っ取ろうと画策する。
松本良順 幕府医学所頭取。烝を新撰組の隊医に任命し修行させる。
勝海舟  幕臣だが龍馬とは懇意にしている。市村龍之助とは長崎で知り合う。
桂小五郎 長州藩士。変装の名人。龍馬と共に西郷と会談し薩長同盟を締結する。

膕(ひかがみ) 鈴に処刑されるところを救われた罪人。吉田に瓜二つの無口な剣豪。
腦(なづき)頭(つむり)双子の幼女。猫を操る。どんな声色も再現することができる。



345 名前:PEACE MAKER 鐡 1[sage] 投稿日:2005/11/18(金) 23:23:25 ID:???
池田屋事変から三ヶ月。

藤堂平助は、新撰組の新幹部として旧知の伊東大蔵を推薦。
土方は伊東を警戒し、伊東とは馬が合いそうにないからと山南に頼もうとするが
山南は自らの降格を土方に申し出る。前局長・芹沢鴨を暗殺してからというもの
山南は刀を握れなくなっていた。土方は山南の申し出を断り、刀を振らせようと
挑発するが、山南は自分は土方のコマではないと反発。土方は後悔する。

ひょんなことから市村兄弟と知り合った坂本龍馬は、辰之助の顔を見て、彼らが旧知の
市村龍之助の息子だと気付く。新撰組の屯所に忍び込んだ龍馬は、辰之助と再会。
市村兄弟は新撰組にいるべき人間ではない、自分と一緒に来て日本を立て直そうと誘うが、
辰之助は日本も幕府も世界もどうでもいいのだと突っぱねる。
同じ顔(父親)とは逆の言葉が出てると気を落とす龍馬だが諦めきれない。
巡回から総司(一番隊)が戻り騒ぎになるが、龍馬は拳銃を使い屯所から脱出する。

鉄之助を連れ立って、山南はよく明里のいる置屋に来ていた。
明里の付き人をしているのが沙夜だからだ。仲良さげな鉄之助と沙夜に微笑む二人。
しかし沙夜は今は小間使いだが、年頃になれば客を取らなければならなくなる。
鉄之助はそんなこと知らない。可哀想だとぼやく山南に、明里は沙夜は夢を持てるだけ
幸せだと言う。女を磨いていつか惚れた男が迎えに来る夢を、明里も持っている。
「夢じゃない、本当に迎えに来る」山南は言う。例え明里が何者であっても。
「夢じゃないよ嘘じゃないよ。必ずここから連れ出して、そうしてやっと…君を抱くんだ」



346 名前:PEACE MAKER 鐡 2[sage] 投稿日:2005/11/18(金) 23:24:54 ID:???
明里は店で男達の会話に聞き耳を立てながら、山南のことを考えるのだった。
「血の怨みより刹那の恋か」
どこからか聞こえた。覚えのある声。その声は…。
北村鈴は豪商「大和屋」の養子になっていた。悪趣味な主人を強盗に見せかけて殺した
鈴は、大和屋を乗っ取る。買い取った罪人・膕と、鈴と同じく主人のオモチャにされて
いた腦・頭と共に動き始める。
明里の前に現れた鈴は、もう長州も幕府もどうでもいいと言う。やりたいことはなんでも
出来る。アンタも楽しませてあげる、役立たずのくの一さん。
明里は山南のことを心配するのだった。

元治元年十月。伊東大蔵ら七名が入隊。新撰組は第二次変革期を迎える。
名を甲子太郎と改めた伊東は、実は男色趣味で土方に目をつける。変な目で見られている
ことに気づいた土方はげっそりするが、近藤や山南は鈍いので気付いてくれない。
伊東は山南に近付き、土方とソリが合わずに居た堪れなくなっている山南の心情を指摘。
不満を吐露させようとするが、山南は自分が悪いのだと土方を責めない。

長州征伐のため徳川慶勝が出立し、遠征を見据えて隊内では新たに法度が発表される。
手狭になってきた屯所を西本願寺に移転させる計画には、山南が屯所内で殺生沙汰を考慮し
反発するが、土方は今は揉めている場合じゃないからと幹部も含め同志の誹謗中傷を禁止
する。これは隊内で妙な動きを見せ始めた伊東への牽制だった。
土方が隊の幹部が伊東派に移ることを恐れていると斎藤一は言う。伊東に取り入り様子を
伺うよう土方に頼まれた斎藤。



347 名前:PEACE MAKER 鐡 3[sage] 投稿日:2005/11/18(金) 23:27:14 ID:???
総司は、土方の言うことも正論だが、山南さんのほうがもっと正論だと言う。総司の言葉に
山南はかつて日野で土方と話したことを思い出した。
嬉しいことを思い出せたから、これからは頑張れそうな気がする、と山南はふっきれるが、
置屋で襖越しに聞いた土方と近藤の声が、自分を暗殺する話だと気付き失踪する。
しかしこの「声」はかつての土方と近藤のやり取りを編集して作りかえられたものだった。
鈴の指示で、声色を再現なづきと腦(なづき)と頭(つむり)が仕組んだことなのだ。

脱走は切腹――。
既に三日が経過し、隊内は騒然としていた。山南と落ち合った明里は、見付かったら
切腹ではと心配するが、脱走しなくても近々死ぬ予定なのだと山南は溢す。
明里が新撰組の情報を得るために近付いてきたことを山南は知っている。
明里は風魔のくのいちと同一人物なのだ。それでも明里は自分を心から愛してくれた。
自分と一緒に京から逃げようと言う明里。山南の行方を追っていた烝の制止も聞かず
山南は明里の待つ場所へ行くが、鈴の策略で、二人は会えず終い。

烝の報告を聞いた総司は、自分が連れ戻してくると一人馬を走らせ、山道の途中で休む
山南を見つけた。総司は事情をでっち上げて切腹を免れさせようと訴えるが山南は断る。
「…どうして、脱隊なんてしたんですか…」
「そうだなぁ…ただなんとなく"外"に出てみたかったんだ」
それは日野から浪士組に加わったときに、山南が言った言葉と同じだった。

なぜと問う近藤や土方に、自分の胸に訊けと返す山南。だが、二人の苦悩した様子に
違和感を感じる。自分が早まってしまっただけなのか。しかし、もう引き返せないところ
まで来てしまった。山南は自ら切腹を申し出、土方は以前山南が置いていった刀を持ち出し、
せめて最後はこれで武士として切腹しろと言った。だが山南は腰に刺していたほうの刀を
振り上げ、土方に切りかかった。
側にいた総司が反射的に山南に一撃を入れる。それは脇腹に直撃した。
「…実に見事な早業じゃあないか。君(土方)に牙をむく者は…例え…同志であろうと…
 一瞬の躊躇もなく切り捨てる。君の教育の…たまものだ…」
山南の手から滑り落ちた刀…いやそれは刀ではなく、刀の装飾をした竹光だった。



348 名前:PEACE MAKER 鐡 4[sage] 投稿日:2005/11/18(金) 23:29:30 ID:???
かつて日野で、土方は山南に言った。自分は結果のためならなんでもやるから、自分の
正論の縄は山南が握っていてくれと。後悔するのは大嫌いだから。
山南は血を吐きながら、これ以上後悔を重ねないために後悔してくれと言う。
見かねた近藤は嫌がる総司に介錯を頼むのだった。地に転がった竹光。返り血に塗れた手
で土方は山南の刀を掴んだ。
自分達百姓が欲しくてたまらなかったこれが、あんたにはそんなに重かったのか。
そんなに…

屯所に出向いた明里に、総司は自分が山南を殺したと告げる。泣き崩れる明里を鉄之助は
抱きしめ、明里は号泣するのだった。置屋に一旦戻った明里は、沙夜を連れて行こうかと
考えるが、結局一人で置屋を去り、明里の名を捨てかつての忍に戻っていった。

屯所は西本願寺に移り、鉄之助と沙夜は境内で消えた明里の無事を祈る。置屋へ送った
帰り道、鉄之助は膕に襲われる。そこに現れたのは鈴だった。鉄之助は鈴の無事を喜ぶが
やがて鈴が狂い自分を恨んでいることに気づく。自分を殺すのかと問う鉄之助。鈴は言う。
死んで楽になんてさせない、と。天国に勝る幸せも地獄に勝る苦しみもこの世にある。
手足の一・二本なくして泥水すすってここまでおいで。
ああ、今日まで生かしておいて良かった、そう思えるその日まで。

三度、龍馬に遭った辰之助は、成り行きで共に京都見廻り組から逃げるハメになる。
巧みにピストルを使う龍馬。辰之助はピストルを譲ってくれと龍馬に頼むが、龍馬は
刀も使いこなせない男が、それ以上の力を加減して使うことはできないと言い断る。
「"殺られる前に殺る"ゆう生き方はな、おまんに相応しぅない。」
諦められない辰之助は、自作しようと篭って独学する。

近藤の頼みで医師の松本良順が訪れ、隊士の三割が怪我や病気など問題を抱えている
現状を指摘し、定期回診と環境改善に乗り出す。そして烝を指名し隊医になるよう説得、
烝は弟子入りする。診察すると、意外にも精神的に問題を抱えている隊士も多い。
藤堂平助は山南の死のショックから立ち直れず、元気のないままだ。
良順は総司が結核であることを烝に伝える。



349 名前:PEACE MAKER 鐡 5[sage] 投稿日:2005/11/18(金) 23:31:42 ID:???
今日も今日とて、龍馬は追いかけ回されていた。
危ないところを勝海舟に助けられた龍馬は、勝に市村兄弟のことを話す。
新撰組に入隊していると聞き、勝は驚く。犯人を長州の人間だと思っているのか――。
五年前(1860年)勝海舟は使節団護衛の名目でサンフランシスコへの船に乗っていた。
そこで出会った龍之助は、ジョン万次郎と同様の境遇に晒された人物で、英語はあまり
上手くないながら揉め事の仲裁や調停が上手い人物だった。
彼は自らを「ピースメーカー」と名乗っていた。



勝のところに泊まった龍馬は、勝への刺客に気づき屋根に上って追いかける。そこで
見たのは夜目にも映える金髪碧眼のくの一(※明里=サラ・フウマ)だった。彼女は
山南の死後、生気のない暗殺者になっていた。
龍馬に捕まったサラは暗殺失敗の代償として、歯に仕込んだ毒で自害しようとするが
龍馬はサラの口に手をつっこみ阻止。自分のボディーガードにならないかと強引に誘う。



十一月、近藤・伊東らは長州へ視察に来ていた。途中別行動を取った伊東は鈴と知り合う。
師走、平和にも似た静けさで、殊更ゆっくりと時代は進む。振り返る者達に漠然とした不安を
はらませたまま1865年の冬を終えようとしていた――…



慶応元年正月、大阪では坂本龍馬と桂小五郎らが潜伏し、薩摩との会談のために京都へ
入ろうとしていた。将軍護衛のために大阪には藤堂平助(八番隊)が出向いており、用心棒
になったサラ(明里)と同門の龍馬は顔見知りだと頭を抱える。船の出港のチェックで平助は
龍馬に気づく。拳銃をチラつかせ、見逃すよう龍馬は頼むが、平助は最初からそのつもり
だった。事前に伊東から頼まれたことでもあり、また山南のようにこれ以上同門が死ぬのを
見たくないのだ。
あっさり見逃した平助を見て、新撰組がもう崩壊に差し掛かっていると龍馬は思う。
正月二十一日夕刻、薩長同盟が成立する。


350 名前:PEACE MAKER 鐡 6[sage] 投稿日:2005/11/18(金) 23:38:10 ID:???
新撰組は分離し、藤堂平助・斎藤一ら古株までもが伊東と共に孝明天皇御陵衛士になる。
斎藤責める鉄之助に、斎藤は今は選択の時なのだと言う。龍馬は鉄之助の前に現れ、
龍之助の話をし、新撰組を辞めて自分達と来るよう説得する。
幕府は近く消滅する。小さい幕府なんかのために死ぬな。世界を見ておくべきだ、と。
しかし鉄之助も今まで共に過ごしてきた新撰組の皆のことを思うと踏み切れないのだった。



大政奉還が成立し、海援隊は活気に沸く。
1867年霜月、鉄之助を連れて行こうとする龍馬の存在を邪魔に思った鈴は、龍馬・中岡・
サラが滞在する近江屋を鉄之助の扮装をして訪れる。鈴は龍馬を惨殺し、膕は中岡を
故意にすぐには死なない程度の怪我を負わせる。サラは鈴だと気づくが昏倒させられ、
京から離れた場所に捨てられてしまう。



長くスパイ活動をしていた斎藤は、近藤の暗殺が計画されていることを伝える。先に伊東の
ほうを暗殺しようと近藤・土方は、伊東を妾宅に招き酔わせて油小路に隊士を遣った。
伊東の死体で衛士達を誘き出し一気に叩く算段だ。しかしこの計画は鈴の入れ知恵と斎藤の
裏切りでだだ漏れになっており、伊東は隊士の一人を抱き込んで、暗殺されたと見せかけて
罠に嵌った振りをした。衛士達を囲んだ新撰組の周りを更に傭兵で囲み追い詰める。
屯所では火矢が射かけられ周囲が包囲された。奇襲ではない、明らかに計画的な襲撃だ。
現れた伊東は土方に降伏するよう言う。近藤の首と有能な隊士を衛士にするのを条件に。
土方はこの人数相手なら負けないと拒否する。



屯所の戦闘では鉄之助が大活躍していた。試合ではそれほどでもない鉄之助だが、実戦向き
なのだ。しかしそこに鉄之助を龍馬の仇と信じる海援隊が乗り込み場は混乱する。



油小路の二番隊(永倉)と十番隊(原田)は窮地に追い込まれていた。半数以上を殺されな
がらあばら家に逃げ込んだ隊士達。原田を先頭に永倉を後尾に、突破を図ろうとする。
後ろの追っ手を全滅させた永倉の前に平助が現れ緊迫した雰囲気になるが、平助は抜け道を
教えるから囲まれてる左之助を助けに行くよう言う。計画を知っておきながら、と永倉は
疑惑の目を向けるが、平助は信じるかどうかはどちらでも良いと言う。
(5巻まで)