楽園

Last-modified: 2008-09-22 (月) 13:11:33

楽園

52 :楽園1 :04/05/04 04:27 ID:???
「さむい。あ、そうだ。ぼくは、おいていかれたんだ。」
屋敷を走り誰かを探す男の子。
「ここにはだれもいない。ぼくはひとりだ。」
泣いている男の子の肩に執事が手を置く。


「もー信じられない!まぁたこのまま眠ってましたね~~~~~~~!?」
アップルビーの大声で目が覚めるジョシュア。
「まったく!なんの!ために!
わざわざ書斎にベッド入れたんです。ほらすぐ横にあるでしょう。
ちょっと移動すれば済むことじゃないですか。じゃなきゃせめて毛布被るとか。
少しは反省して自衛して貰わないと!また風邪こじらせちゃうんですからね。
知りませんよ肺炎起こしてうんうんうなされたって」
「あの」
「もーあんな大変な看病御免ですから!」とまくしたてる。
「あのねえ君」そっと本の間に青い封筒を挟み隠し
「ここには入ってくるなって」と逃げ腰のジョシュア。
ジョシュアの部屋で酒の空き瓶を見つけ太陽はとっくに頭の上だと更に怒るアップルビー。
食事はどうするのか聞くアップルビーに食欲はあまりないと答えるジョシュア。
「え?」と心配そうに顔を覗き込む。
「本当に風邪ひきました・・・?」ジョシュアの額に手を当てる。
「二日酔いだよ。ただの」
「でも少し熱い」
「軽いものなら食べたいな。甘いやつ」というジョシュアに
だと思って今、婆やさんがケーキを焼いてるから庭で食べようと誘う。
昨日の雨のおかげで花が満開なんですよとアップルビーは言う。



53 :楽園2 :04/05/04 04:30 ID:???
「ね、綺麗に咲いたでしょう」
庭にはテーブルが用意してある。
「それで仕上がったんですか?」お茶の用意をしながら執筆状況を聞くアップルビー。
「出版社から催促状が届いたら君が破っておいてくれ」
「こっちはどうします?今朝着きました。いつもの青い封筒」と執事が尋ねる。
「・・・・・・ああ」と困り顔で答える。
「こんなに今期良く手紙を出す元気があるならまだくたばらないかな」と言うジョシュアに
「まあ酷いですね。御心配なんですよ」
「じゃあここに出向いて直に僕に言えばいいのに」とつぶやく。
「え?」
「君も?僕が「道楽」の物書きなんてやめて早く落ち着けばいいと思ってる?」
「いいえ。私あなたの書くお話は好きです!」
ジョシュアの頭の中に『戻っておいで』と一文が響く。
「何です?ちゃんとお花見てるんですか?」
「見てるよ」
「私じゃなくて!」
「見てるじゃないか花を」とアップルビーに笑いかけるが
『戻っておいで』『お前の場所へ』手紙がこだまする。
真っ赤になるアップルビーに
「赤毛ッ。ケーキが焼けたよとっととお運び!」と婆やの怒鳴り声が聞こえる。
「ではこれは私がお破きしましょう」と執事が青い封筒を両手に持ち替える。
執事に見透かされ照れるジョシュア。
「ちゃ・・ちゃんと名前で呼んで下さいって言ってるでしょう!!」
「何だい。髪と同じくらい赤い顔して。風邪ならうつさないでおくれよ」
遠くで婆やとアップルビーの声が聞こえる。

終わり