軍靴のバルツァー

Last-modified: 2013-12-15 (日) 23:20:10

01

第一次ノルデントラーデ戦役による戦功により佐官に昇進したベルント・バルツァー少佐は、ある日、上官から突如として祖国ヴァイセン王国の同盟国、バーゼルラント邦国の王立士官学校に軍事顧問として出向してくる。
両国は関税撤廃条約を結んだことで関係を深めているところである。
「軍事後進国」であるバーゼルラントは、装備は古くお粗末な訓練を行なっていた。
バーゼルランドでは砲撃演習に反対する勢力がおり、バルツァーとヘルムート・マルクス・フォン・バッベルはその勢力の集会所を突き止めるが、捕えることはせず様子見とする。

軍事演習が開始される。第二王子ライナー・アウグスト・ビンケルフェルトは密集隊形による運用を主張し、バルツァーは散兵戦術を説く。アウグストは囚人部隊を用意し密集隊形50人を散兵5人で迎え撃つべしとバルツァーに命ずる。バルツァーは辛くも50人を退けることに成功する。

その頃ヴァイセン議会ではバーゼルランドの弱体ぶりからこれを併合すべしとの議論が巻き起こっていた。
一方、アウグストが宮殿に戻ると軍事費増額に反対の第一王子フランツ・テオドール・ビンケルフェルトとの間で論争が起きてしまう。

02

バルツァーの散兵戦術を目の当たりしたアウグストは軍制改革に着手する。
アウグストは兵器廠に乗り込み「株と債権を抑え会社を買収した」と宣言する。その購入資金は王室の宝物を換金したものであり、テオドールはこれに激怒する。

バルツァーとバッベルは市街地の巡回するが関税撤廃によりヴァイセンの製品が入り込みそれに対する不買運動が起こっていた。商業組合を名乗る乱暴勢力と争う羽目になったバルツァーは警察に連行されてしまう。そこへ現れ救い出してくれたのは旧学友のルドルフ・リープクリヒト。彼は今はアウグストの顧問であるが、かつてバーゼルランドで反議会クーデターの首謀者として青年兵を扇動したことがあり、バルツァーが上官にこれを知らせたため多くの青年兵らが殺害されてしまうという経緯があった。
実はルドルフはクーデターが元々無理なものであり、青年兵の国に殉ずる思いを新聞記事にして世論を動かしていくという策を企図していたのだ。
彼はバーゼルランドを脱出する際、そのことをバルツァーに告げたのであった。
リープクリヒトは今、宮廷音楽家としてテオドールに仕えている。
リープクリヒトの思惑通り議会の力は削がれ、軍部が台頭し、第一次ノルデントラーデ戦役へと繋がっていくことにる。

バーゼルランド各地の工場でデモが起こり、労働者らは首都に向けて行進を始めていた。そこにはデモを煽動する政治勢力(自由労働党)も紛れ込んでいた。
アウグストは自ら士官学校生徒を率いて鎮圧に向かう。砲兵科のディーター・シュトルンツは動揺する。彼の父のシュトルンツ鉄鋼所もデモに参加しているからだ。
バルツァーは騎兵科を率いてデモ隊の渡河地点にある橋の破壊に向う。
アウグスト率いる歩兵隊はデモ隊の銃撃に苦しめられる。デモ隊はライフル銃を装備していたからだ。窮地に陥った歩兵隊を救うべくバルツァー率いる騎兵隊が突撃を開始する。

03

騎兵隊の活躍によりデモ隊は撃退されたがその様子は自由労働党新聞社により撮影されてしまう。バルツァーは憤慨し、これをリープクリヒトの仕業であるとアウグストに告げる。
宮廷内ではリープクリヒトがテオドールに“殺戮”が行われたと報告、バルツァーの排除を訴える。

バルツァーは対抗措置として士官学校にマスコミと生徒の親族や市民を招き入れ催しものを開催する。功績のあった生徒らに勲章を与え、犠牲になった生徒らの葬儀を行った。
そして市民が生徒らの犠牲に対し同情を寄せることを計算し、葬列は町中を進んだのである。
すると突如としてリープクリヒトが現れ、暴徒討伐の功労によりバルツァーにテオドールが勲章を授与すると告げる。

バルツァーと上官そしてアウグストは王宮に入り、テオドールから最大級の賛辞を受ける。
バルツァーはテオドールに「ヴァイセン進駐軍の動員をアウグストに委任」するよう訴える。
すかさずリープクリヒトが現れ、これに反対を唱える。ここでリープクリヒトが大帝国エルツライヒのマリア・ルドヴィカ・フォン・アドラフェストンが遣わした陸軍大臣であることが明らかになる。デモ隊のライフル銃はエルツライヒから送られてきたものであった。
テオドールは「エルツライヒと盟を結ぶか、ヴァイセンとの協定存続か」を決める枢密会議を五ヶ月後に行うと宣言する。
ここでバルツァーは訴える。「今回の騒乱の発端となった鉄鋼所にヴァイセンの工業技術を与え産業構造の改革を通して、バーゼルランド国民に誠意を示したい」と。
テオドールはこれを容れる。

バルツァーの恐るべき才能が発揮される。
ヴァイセン駐屯地を訪れたアウグストにバルツァーは「対立を緩和させるべくヴァイセン駐屯軍は撤退する」ことを告げる。
暴動で囚われとなったシュトルンツ鉄鋼所の社長を会社に戻し、バーゼルランドとヴァイセン共同出資の子会社「バーゼル鉄道㈱」を発足、息子であり砲兵科学生のディーター・シュトルンツを社長に据える。
集まった議員らは鉄道計画がもたらす経済効果の大きさに興奮し、バルツァーは枢密会議での票に繋がると満悦するのであった。
また、バルツァーは鉄道規格(線路の幅)をヴァイセンとバーゼルランドで同一のものとし、異なる鉄道規格のエルツライヒを排除することが出来ると目論んだのである。

ディーターはヴァイセンに招かれ鉄道施設を見学するが、そこに軍事施設もあることに愕然とする。バルツァーはディーターに「両国の同意の上であり、鉄道の最大の権利者はアウグストである。軍事協定は続ける。ヴァイセン側としても両国に戦争が起これば鉄道事業が破壊され損失を被る。経済的利益が両国関係を密にする」と語るのであった。

かつて貴族は領土の保全を図るべく分家作りに専念したが、ヘルムート・マルクス・フォン・バッベルは女子でありながら男子として領土を継承し、今日騎兵科に入隊したのであった。
先の暴徒鎮圧にバルツァーの配慮によりヘルムートは参加できず、そのことで仲間から嘲笑され喧嘩騒ぎを起こしてしまう。

バルツァーは講義で生徒らに説く。「銃や大砲は進化し、遂に各国は城壁を取り壊すようになったが、騎兵は進歩がない。騎兵は廃れ行く運命にある」ことを既に彼は論文に著していたのであった。講義に参加していたアウグストは町中での馬と代替品(機械)との競争を命ずる。
バルツァーとヘルムートは自転車で競争に臨む。両人は坂道で騎馬を追い越し、建物並び立つ隘路を抜けて順調に進んで行く。バルツァーの自転車は故障してしまうが、ヘルムートが先んじてゴールに到着し勝利する。

アウグストに反フランツのクーデター疑惑がかかっていた。計画書も存在している。
その頃、町中に騎士の幽霊(甲冑の音)が出現するという噂が起こり、バルツァーと生徒らは調査に乗り出す。甲冑の音が地下から聞こえることを突き止めた生徒は捕らえられ、救出に向かったバルツァーは地下に印刷工場があることを発見する。バルツァーは生徒を救出し、証拠の品を押収することに成功する。

押収品の一部(文書)をアウグストに見せると意外にも、「これは私が10歳のころ書いたものである。父母に疎んじられていた兄テオドールのための父母殺害の計画書である。兄は感謝するが、計画書は地中に埋めて封印しよう」と答えたのであった。そして「今の兄はエルツライヒの傀儡に落ち下がってしまった。兄を追放するためバルツァーの力を得たい」と願い出るのであった。

04

バルツァーはアウグストの申し出をそれとなく断り、ヴァイセンとの極秘会談をセッティングしたいと返答する。
バルツァーとアウグストは汽車に乗り、ヴァイセンへ向かうが汽車には何とリープクリヒトも同乗していた。リープクリヒトはアウグストにヴァイセンが周辺国との軋轢に腐心し、バーゼルランドとの同盟は優先事項ではないはずと告げ去って行く。

バルツァーとアウグストは会談場所であるヴァイセン保養地のホテルに到着するが軟禁状態に置かれてしまう。三日後になって漸くヴァイセン参謀総長が到着、狩猟場へ向かう。
そこでアウグストは「バーゼルランドが攻撃された時のみにヴァイセンが軍事行動を起こす」という盟約を取り付ける。
するとそこへ急使がかけつけホルベック海軍がヴァイセンへの海上封鎖に踏切り戦争状態になったことを伝える。ホルベックはヴァイセンがノルデントラーデ公国から撤退することを欲しているのである。
全ては三日間、二人を釘付けにし情報を遮断していた間に決まったのであった。
バルツァーはすかさず「先程の密約は皇子が王位を継承してからの話で現時点では士官学校生徒しか動かせない」と話す。参謀総長はこれに頷き、形だけの参戦とする。

一方、北の強国ホルベックの首都デントハーゲンをリープクリヒトが訪れ、エルツライヒとの軍事密約を得てヴァイセンを撃つ旨を確認し合う。
そんな中、ヴァイセン軍艦2隻はホルベック海軍の攻撃を受けて沈んでしまう。

ヴァイセンの士官学校ではバルツァーが選抜した5人の学生らに派遣決定を伝える。学生らは動揺しつつも派遣に応じ、最終的には6人(全員士官候補生)が参加することになる。
バルツァーと学生らは合流地点のヴォセドルフに到着し、そこで大掛かりな汽車輸送の様子を見て圧倒される。
一方、アウグストは会談場所保養地で過ごしていた期間の新聞を取り寄せ情勢を分析していた。ホルベックの大使がヴァイセン国王にノルデントラーデからの撤退を求め、ヴァイセンが戦争準備に入っていく過程を把握していった。

ヴォセドルフにはバーゼルランド義勇兵200名も勢揃いし、選抜学生らが指揮することになる。バルツァーは200名を50名に分散させ宿泊させる仕事を学生らに学ばせようとする。
学生らは宿探しに奔走するがどこも兵で満杯、そこに二人のヴァイセン軍人が現れ、宿の案内をしてくれる。
二人の名はユーリー・ヘーゼンとティモ・バウマン。共にヴァイセンの士官候補生である。

制海権を失ったヴァイセンは海岸に大砲を並べ、ホルベック軍のノルデントラーデ上陸を牽制していた。
バルツァーとアウグスト、ヴァイセン兵らは前線から100km後方の村に到着、“客人”として扱われる。バルツァーは地図を見て、防衛の不備を司令官に伝えるがこれが両者の間に溝を作ることになってしまう。
実はノルデントラーデ公国は半島であるため東海岸沿いには海岸砲を並べていたが、西海岸沿いは手薄であった。バルツァーはこの時、西海岸への敵上陸を不安視したのであった。
仕方なくバルツァーは自らの部隊のみで軍事訓練を行い、防備の構築、地形や水深の測量を実施する。
そんな中、突如として砲撃音が鳴り響く。敵海軍による艦砲射撃で距離10kmと判断された。偵察兵が戻るとホルベック軍が東海岸に上陸作戦を敢行中、味方沿岸砲は壊滅との報告。
司令官は救援に向かうべしと唱えるが、バルツァーは「敵の目的は海岸堡を築くこと。そのため周辺勢力の排除を行いこの村にもやがて押し寄せてくるはず。防備に務めるべし。」と反論する。
結局、司令官の部隊のみが救援に向かい、バルツァーの兵は村の防備に残ることになる。
アウグストはバルツァーに「港の防衛が第一なのになぜ残るのか?」と疑問を唱える。バルツァーは「王族のあなたの安全が第一だから」と。

救援に向かった司令官らは敵が密かに上陸を開始している所を捕え射撃を実施。
ところが敵艦砲射撃により逆に大きな損害が生じてしまう。
村には遂に敵軍が押し寄せてくるが、バルツァーは射撃戦の末これを撃退する。
そこへ大損害を被った司令官らが戻ってくる。司令官は戦場に残された者たちを救って欲しいとバルツァーに懇願するが既に手遅れであった。
司令官はこの場にいる者たちだけでも連れて行ってもらいたいとバルツァーに申して出て指揮権を委譲する。バルツァーはこれを容れる。
対するホルベック軍のニールセン大尉は村を奪取するべく再攻撃を決意するのであった。

05

村に入ったニールセン軍は略奪を始め、負傷兵を虐殺してしまう。
バルツァーは撤退するが途中の橋は敵に占領されていた。バルツァーは橋をあきらめ迂回しての進軍を選択する。
そこをニールセン騎兵隊が全面横隊で襲撃する。バルツァーは森林に逃げ込もうとするが、途中判断を変え邀撃戦に転換する。方陣を敷き辛くも攻撃に耐えるも敵騎兵隊は再突撃を敢行。
バーゼルランド近衛隊は盾となってこれを迎え撃ち全滅、その間バルツァーらは森林に逃げ込む。
ユーリー・ヘーゼンとティモ・バウマンは敵偵察兵を手際よく殺害する。二人はバルツァーを監視するため参謀総長が遣わした諜報員であった。
バルツァーは二人に「バーゼルランド併合」を語るのであった。
バルツァーらは漸く駐屯地に到着するとそこは既に敵兵の蹂躙の跡であった。
アウグストは自ら捕虜となりバルツァーらの助命嘆願を行うと言い出す。さらに「ヴァイセンは予想より貧弱であり、同盟関係を誤ったのでは?」とも。
ニールセン騎兵隊は遂にバルツァーらを捕捉し、突撃を開始する。逃げるヴァイセン軍の左右に有刺鉄線を載せた荷馬車が展開し、騎兵隊を包囲、これに斉射砲を浴びせ完勝する。
ヴァイセン軍は兵站線を回復し、ノルデントラーデのホルベック軍要塞攻略を開始するのであった。