夜叉御前

Last-modified: 2013-11-06 (水) 21:19:22

夜叉御前/山岸凉子

527 名前:夜叉御前 投稿日:04/11/08 14:32:18 ID:???

出だしはオカルト物だが、読み進めていくうちに、
父親による性的暴行のために気がふれてしまった少女の話であるとわかる。
15歳でありながら、自分の身に起きている真実が認識できていないことからも窺える。
恐らく暴行は以前からのことで、一家は醜聞を世間から隠すために引っ越してきたのだろう。
母親の嫉妬と狂気が哀しくも恐ろしい作品。


540 名前:夜叉御前 投稿日:04/11/09 18:22:12 ID:???

主人公は家族と共に山奥の古びた家に越してきた。家に入った途端、何か嫌な物を感じる。
その夜主人公は、鬼のような、恐ろしい女の顔を見る。
しかし、幼い弟妹や腎臓が悪く寝たきりの母、老いた祖父母を怖がらせまいと、主人公はその事を告げずにおく。
それからも毎日、その鬼のような顔に監視するように見つめられ続ける。


主人公はこの所食欲がない。主人公は、あの鬼は人が弱るのを待っているのだ、と感じる。
主人公は食べた物をよく吐くようになった。誰かが食事に変な物を入れているのではと怪しむ。
最初に狙われているのは自分だ、母や祖母も越してきてから食欲が落ちた、今ここで私が負けてなるものか。
弱い気持ちを持てば付け入られる。主人公は吐き気をこらえ、平気なふりを装い生活した。
まもなく吐き気は出なくなった。以前ほど鬼を恐れない主人公に、鬼は苛立っているように感じる。


夜中、主人公は苦しみに目を覚ます。何か黒い物が体の上に乗っていた。
跳ねのけようとしてもその黒い物はビクともせず、主人公は黒い物をどかそうと必死に抵抗するが無駄だった。
それから毎晩黒い物が体の上にのしかかるようになった。
そんな時、ふと横を見るとそこには鬼がいた。鬼は押入れの中からじっとこちらを覗いている。
なぜか主人公には、黒い物よりも、その鬼の方が恐ろしく思え、以後鬼のほうは見ないように努めた。


主人公は少し太った。最初は、鬼が変な物を入れなくなったせいだ、鬼に勝ったと喜ぶ。
しかし、じきに主人公は食べ物を際限なく食べるようになり、歩くのが辛くなるほどに太りだした。
鬼は今度は自分を太らせ、身動きできないようにするつもりだったのだと主人公は思う。
油断した、そんな方法もあったのか。主人公は危機を感じるが、食欲を抑えることはできない。
私は鬼に負けそうだ、とさらに不安を募らせる。


ある晩、また重苦しさに目を覚ますと、黒い物がのしかかっていた。
苦しさに思わず横を見やると、やはり押入れからは鬼が。
目が合うとついに鬼は立ち上がり、黒い物に向かって手斧を振りかぶった。
次項では、裸の主人公に覆い被さる裸の中年男性の脳天に、
恐ろしい顔をした中年女性が手斧を振り下ろす図で描かれ、中年男性は頭から血を流して倒れる。
「お前も死ぬのだよ紀子!」鬼の形相で襲いかかる中年女性。
けれど主人公の目にはやはり中年女性は鬼と映っている。主人公は裸のまま夜の戸外へ逃れた。


再び気づいた時、主人公は病院にいた。医者が「生まれたよ」と言い、赤ん坊を見せる。
「きみと…さんの子だよ」と言われるが、主人公にはよく聞き取れない。
主人公にはその赤ん坊に鬼のような角があるように見える。
祖母が言うには、父は死に、母は病院に入り、そこで毎日泣いたり笑ったりしているらしい。
主人公には一連のことが鬼のたたりとしか思えず、ただ泣き続けた。
我が家はめちゃくちゃになってしまった。だからこの家は嫌だったんだと。
今までのことを話すと祖母は泣き出し、主人公を母と同じ所に連れて行ってあげると言った。
しかし主人公にはそこにこそ、あの恐ろしい鬼がいるような気がしてならないのだが…。