第02話【機動六課】

Last-modified: 2009-10-12 (月) 14:33:21

機動六課とフォワード隊の入隊手続きが終わった2人は一緒に部屋を出ようとすると
「ちょって待って、メイちゃん」
メイははやてに止められた。
「何でしょうか?はやてさん」
「同い年なんだからこの面子では公の場以外は敬語しゃなくてもいいんよ。入隊早々悪いんだけど、今からシグナムと一緒に新隊員二人を迎えにいってくれん?」
「シグナムさんという方は?」
「えと、シグナムはライトニング分隊の副隊長さんや。迎えに行く2人はメイちゃんと同じ隊になる新人や。顔合わせしとくんも悪ないやろ」
メイは納得した。
「確かに。顔合わせも悪くないかも。その方はどこに?」
「うちが呼び出すから、一階のホールで待っといたらえぇ」
「分かりました。失礼します」
2人は部屋を後にした。
「シグナム副隊長はいるんだよね?」
「はやてさんが呼び出すから合っているよ」
2人が歩いているとエレベーターに出くわした。
「ホールに行くんだろ?俺はこの施設でも探検しようかな」
「分かったわ。行ってくる」
メイは下に行くエレベーターに乗っていった。
「行ったか」
ヤマトは記憶のことについて考えた。
「記憶喪失はここの世界だけかな?元の世界の記憶は全てあるのに。ここの知識や魔法もいくつか覚えている…なのはさんや、フェイトさん、はやてさんのことも。てかここの世界の10年前だ」
悩みの種を植えたみたいに考えながら歩くと、曲がり角から出てきた青い髪をした、少年を思わせるような髪型をした少女にぶつかった。
「きゃっ!!」
「うわ!」
ぶつかった時のバランスの崩れで尻もちをつかんとする少女の腕を掴み、引き寄せて抱きとめる。
「ごめん、考え事をしてたんだ。ケガはないか?」
「はい。探しましたよ!一条寺ヤマトですね?」
「俺がヤマトだけど。あっごめん」
ヤマトは少女の手を放した。
「私は、スバル・ナカジマ。機動六課ではスターズ分隊、フロントアタッカーです。ヨロシクお願いします」
「俺は一条寺ヤマト。本日付けで機動六課・スターズ分隊に入隊。特攻型そして君たちのサポート役だ」
互いに手を差し出し、握手をする。
「これから、一緒に頑張りましょうね!ヤマトさんでいいでしょうか?」
「呼び捨てでいいよ。違和感ある。同じ隊だし、堅苦しいので普通に喋ってもいいよ。こっちはスバルで呼ばせて頂くよ」
「よろしくね!ヤマト!」
「ああ、こちらこそよろしく」
「はぁ、スバル、やっと見付けた…。何やってんのよこんなところで」
廊下の曲がり角から1人の少女がやって来た。
「あっティア、いいところに!」
廊下の角から手招きするスバルへと不審に思いながらも向かって行くと、そこにはスバル以外にもう一人いた。
「スバル、そちらの方は?」
「こちらは一条寺ヤマト。聞くところによると、隊も私達と同じらしいよ?一等空士だってさ」
「ヤマトだ。よろしく。君の名は?」
「私はティアナ・ランスター二等陸士。よろしくね。名前で呼んだほうがいいかしら?」
「ヤマトでいいよ」
ティアナにも握手をしたヤマト
「じゃあ、よろしく。ヤマト、試験見させてもらったけど」
「なのはさんと一緒に見たっていっていたな」
「ヤマトのパンチとキック、凄かったよ!」
「パンチとキックだけなの?」
ヤマトは少し苦笑いをした。
「10歳の時から格闘技をやっていたんだ。護身用に」
「へぇ~でも私、剣のことあまり知らなくて…でも迫力あったよ。銃にも変形できるし。メイさんの接近戦も凄かった」
「まぁ、あいつは頑丈だけが取り柄だからな」
「スバル、あんた黙ってて」
「はぁ~い…」
少しショボくれたスバル。
「何か、聞きたいことでも?」
「あなたの銃ざはき、凄かったわ。多数の敵を一瞬にして破壊したり、背後から来る敵をすぐに感じ取れたりのいっぱいで聞きたいの」
「相当な戦闘訓練をしたんだ。嫌になるくらいにね。人を殺さない。他人を守るためをモットーに戦闘をしていた。人を殺さず、所どころを無効化にするにつれて精密射撃になった」
「ふーん。そういうことなの」
「俺でよければ射撃に関することを教えるけど。もちろん、格闘術もね」
ヤマトは自分がモビルスーツのパイロットであることは絶対秘密だ。
「ところでこれから、模擬戦室にいかない?ヤマトの戦い方を」
突然スバルが言い出した。
「また見たいわ、ヤマトの射撃戦」
どうやら二人はヤマトのデバイスに興味があるようだ。
特にティアナは彼の射撃をもう一度見て見習って彼みたいになりたいと思っている。
「模擬戦室空いてるといいね?空いてたら使わせてもらおうよ」
「そうだね」
ヤマトは若干不安がるが、まぁいいかと思った。

変わって、ミッドチルダ渡航施設付近

「一応、主から聞いてはいるが、ここの記憶がいくつか欠けているとはな」
「すみません…」
「謝るような問題ではないのだ。いくつか取り戻してくれて嬉しいと思う」
シグナムは八神家についての質問をするとメイはいくつか答えた。
「さて、着いたぞ」
入り口をくぐるシグナムのあとをついていくメイ。
それから、エスカレーターを使い、二階の待合ロビーに向かう。
どうやら新人隊員二人とはこのエスカレーターの付近で待ち合わせているとのことだ。
「まだ来てないみたいだな…」
「新人隊員とはどういう人ですか?」
メイの問いに答えるシグナムはポケットから携帯端末を取り出す。
画面に触れると電子音を立て起動し、少年少女、合わせて二人の幼い顔写真が表示された。
少年の名前はエリオ・モンディアル。
少女の名前はキャロ・ル・ルシェ。
「えっ?」
2人の写真を見てびっくりするメイ。
幼いけど低年齢で選抜されるほどの実力者だと心で思うメイ。
「気を抜いていると2人に追い越されるぞ」
「私も負けてはいられませんね!」
「その意気だ」
「お疲れ様です。遅れてすみません。エリオ・モンディアル三等陸士です」
突然の声に顔を向ければ、赤毛の、涼しげな雰囲気の少年がこちらに向かって敬礼していた。
「いや、私は遺失物管理部、機動六課のシグナム二等空尉だ。長旅ご苦労だったな。」
「いえ。……あの…」
エリオの視線がメイへと移動する。
「一条寺メイ一等空士です。よろしくね、エリオ君」
「こちらこそよろしくお願いします!」
メイとエリオは向かい合わせで会釈をした。
エリオは周囲をキョロキョロした。
キョロキョロと辺りを見回す。
「もう一人は?」
「はぁ、自分も今来たばかりなんで…。
あの、地方から出てくるとのことなんで迷っているのかもしれません。
探しに行ってもよろしいでしょうか?」
「頼んでいいか?」
「はい!」
と元気よく返事をするエリオ。
「それなら私も探してきます。いいでしょうか?シグナム副隊長」
と提案するメイ。
「シグナムさんでいいよ。これだけ広い駅だ。頼めるか?」
「はい。私は上の階を探すから、エリオ君はこの階をお願いできるかな?」
「いいですよ。探しましょう」
メイは身近なエスカレーターへと向かい、エリオは駆け足で人混みの中へと姿を消した

「ルシェさ~ん!ルシェさ~ん!!管理局機動六課、新隊員のルシェさ~ん!いらっしゃいませんか?」
と声を上げながら探しているのはエリオ。
一旦足を止め、辺りを見回しては再び走り出す。
「見つからないなぁ~どこにいるんだろ?」
一通り、三階を全て回ってきたメイであったが見つからない。仕方なくエリオと合流するため一番近いエスカレーターを探した。
「ルシエさ~ん」
エリオの声が上の階まで響く。
「はい!私です!」
と駆け足で大きな荷物を持ったフードを被った少女がメイの前を通過する。
(もしかして…)「待って!」
メイの制止は空しく少女は駆ける。
一方、そんな少女、つまりキャロ・ル・ルシェの声を聞いたエリオは自分が何者であるか説明しようとするが、
「キャロ・ル・ルシェさんですね?僕は…っ!?」
「きゃっ!!」
名乗る前に、キャロは階段から足を滑らせ、誰かに腕を捕まれる。
「危なかったね。だいじょ…」
『Sonic Move』
そんな言葉を響かせ、閃く金色の閃光がメイとキャロに向かい、人と人との合間を縫って目にも止まらぬ早さでやって来る。
「…ッ!メイさん!?」
「エリオく…!?」
慌ててメイはその場から跳びのき、エスカレーターに逆らって三階に戻り着地するが、目の前にエリオとキャロも着地する。
「わっ!?」
バランスを崩すメイ。
こちらのエリオとキャロもバランスを崩し、メイの方へとやって来る。
倒れる際に、なんとか自分を下にしようと、無理な体勢で、自分とキャロの体を入れ換えるエリオ。
それが不味かった。
メイの足を踏み、そしてそのまま三人は重なるようにして倒れた。
「あっ、いててて…、すみません。失敗しました。」エリオが素直に自分の失敗を謝ると、エリオの体の上に伏せるようにして倒れていたキャロが体を起こし、「いえ、ありがとうございます。助かりました。」
と笑顔でお礼を言った。

「んっ?」

キャロが何かに気付く。同時に、エリオも彼女の表情の変化に気付いたのか、何かに気付いた。
エリオの両の手がキャロの両の胸にあてがわれていた。
「あっ!!」
上がるエリオの声。一瞬、両者の間に沈黙が走る。
その合間に三人は思考した。
キャロ(私がこの方達を見下ろしてるって事は…、そっか、私が上にのっかってるのか…。そっか、そっか。早く退かないとね。)
エリオ(し、しまった。悲鳴をあげられたらどうしよう。
素直に謝ろうか、でも、これは事故なわけで、逆に意識して謝ったほうが、変に誤解をうんで事態をややこしくするのでは?)
メイ(このぐらい大丈夫よ!牛乳毎日飲み続けているから、頑丈だけが取り柄なのよ!でも2人の雰囲気を壊しちゃいけないような…両足に2人とも乗っているから少し身動きが…)
「あっ、すみません。今退きますね。」
「あぁ!あのこちらこそ、すみません。」
キャロは体を起こし、メイの足の上だが…。
エリオもメイに手をついて体を起こす。
「…あ、あの…二人とも?」苦しそうなメイの声にようやく気付く二人。
「「す、すみません!」」
「いいの。2人が無事であれば。頑丈だけが取り柄だから」
すると、近くに落ちているキャロの鞄がもぞもぞとうごめきだした。
しばらくその様子を眺めているとバックの口が開き、「クー…。」
と可愛らしい鳴き声を漏らす生き物が姿を現した。
「あぁ、フリードもごめんね、大丈夫だった?」
キャロの問いにフリードは元気よく鳴く。
「ドラゴン…竜の子供?」
驚いているエリオ。メイも当然驚いているわけだが、この世界には魔法が存在するのだ。ドラゴンやその子供が存在しても不思議ではないといった感じだ。
もちろん希少価値などは分からないのだが…。
「あの~、すみませんでした。エリオ・モンディアル三等陸士と……?」
返事をするエリオから、メイへと視線を移すキャロ。
「私は一条寺メイ一等陸士。よろしくね。キャロちゃん」
「よろしくお願いします。私は、キャロ・ル・ルシェ三等陸士であります。
それからこの子はフリードリヒ、私の竜です。」
「クゥーゥ!」
こうして自己紹介も終り、ライトニング分隊の新人隊員は皆揃いシグナムとともに管理局へと向かった。

075年四月

「今日は機動六課の本格的始動だ。まずはロビーに集合か」
自室(ヤマトとメイ共通)でヤマトは鏡で服装チェックをした。
「なんだか緊張するね…」
「俺だって緊張はしているよ。お前、昨日、フェイトさんの執務室に行ったろ?何かあったのか?」
「私の隊の新人のこと」
ヤマトは最終チェックをクリアし、メイにこう告げた。
「服装よし!ルールよし!敬礼よし!俺、先行ってるね」
ヤマトは自室を後にした。
「生地もいいし、動きやすいな。はやてさんのオーダーメイドなんだけどね」
制服を評価するヤマト。するとそこでスバルとティアナがやって来た。
「おっはよーヤマト!」
「おはよう、ヤマト」
「おはよう2人とも」
「なんだか、動きにくくない?この制服」
少し不満なスバルを見てヤマトは
「俺は問題ないけど…」「スタイルの問題じゃないの?」と言うヤマトとティアナ。
管理局の制服は皆同じなのだ。
「でも出撃する時は着替えるからこれでいいじゃないの?」
「そんなものなの?」そんな会話をしながらスターズ分隊三人はロビーへと向かった。

「おはようございます。」
キャロは自分を待っていてくれたメイとエリオに声をかける。
「おはようございます。」
「おはよう、キャロちゃん。ッ?タイ曲がってるよ?」
「え、あ、本当です。」
メイがキャロのタイの結び目を軽く握り、引っ張って調整する。
「これで、よし。」
「ありがとうございます。」「うん、どういたしまして。じゃあ二人ともいこうか?」
「「はい!」」

メイが面倒を見ているのか見られているのかは分からないがこれにはちょっとした理由がある。

つい先日、メイはフェイトに呼び出されていた。
何でも大事な話があるとか。
フェイトの執務室のブザーがなる。
フェイトはデスクにあるボタンを押してから
「はい。」
と答える。
『一条寺メイです。』
スピーカー越しに聞こえる声はメイのもの。
それを確認すると、フェイトはメイを執務室に入れた。
「あの、それで用件は?」
取り合えずメイにはソファにかけてもらい。
お茶とちょっとしたお菓子をだすフェイト。
「うん、今日、メイを呼び出したのにはちょっとしたお願いというか…、頼みがあるからなんだ。」
「頼みはと言うと?」
「うん、メイはうちのフォワード部隊のメンバーとは自己紹介とかした?」
「一応はしたよ。なのはさんとヤマトの隊から見ると平均年齢が離れているんだよね?」
フェイトは頷き、カップの中のお茶を一すすりする。
「うん、あの子たちはまだ幼い。いくら優れていようが、それは変わらない…だから…」
「だから…?」
「その…もし、何かあの子たちにどうしようもないことが起こったら守ってあげてほしいんだ。」
フェイトの目は真剣そのものだった。
「負けた…それはどういうことなの?」
「それから、仕事の関係上、私はあまりあの子たちとコミュニケーションがとれないから、ヤマトにそれをお願いしたいんだ。」
何だかそわそわし始めるフェイト。
「本当はこういうことは部隊長であり、あの子たちの保護者でもある私の仕事なんだけど…。」
一息ついてから
「同じ分隊の仲間であり、メイは最年長だから…引き受けてくれると助かるなって…。ダメ…かな?」
とメイに尋ねた。

「分かりました。私も初めて見た時は何が何でもしっかりしなきゃと思った。フェイト隊長いやフェイトさんの代わりに見てあげるから。それにヤマトも付いているから」

以上の様なことがあって、メイは二人の面倒を見ることになったのだが、正直な事を言うと、このミッドチルダという世界の右も左も分からないメイにとってはどう面倒をみたものかと悩まされている。
そこで、とりあえずは空中戦が出来る分、二人の援護、それから、暇なときの話相手にはなろうと決めた。
「まぁ、出来る限り、全部はしたいなぁ」

指定された場所に結構な人数が集まっている。
機動六課技術班、医療班、補佐班、ライトニング分隊、スターズ分隊、その他etc...。
そしてその前にはスターズ分隊隊長高町なのは、副隊長のヴィータ。ライトニング分隊隊長フェイト・T・ハラオウン、副隊長シグナム。
そして機動六課を束ねる課長にして部隊長、八神はやて。
はやてが壇上に上がり挨拶を始めた。

機動六課遺失物管理部。
ロストロギア関連を専門とする部隊だ。
対策、捜索から封印、または確保、破壊までこの部隊に課せられる仕事は熾烈を極める。
「長い挨拶は嫌われるんで…、以上ここまで。機動六課課長及び部隊長、八神はやてでした。」
一通り、顔合わせし、フォワード陣やバックヤード、メカニック陣に挨拶を終え、はれて、機動六課は活動を開始することになった。

シグナムとフェイトは通路を会話しながら歩いている。こうして二人で顔を合わせて話をすることはじつに半年ぶりである。
「シグナム…、本当、久しぶりです。」
「あぁ、テスタロッサ。直接会うのは半年ぶりか?」
「はい…。同じ部隊になるのは初めてですね。
どうぞ、よろしくお願いします」
と挨拶するフェイト。
「それはこっちの台詞だ。
大体、お前は私の直属の上司だぞ?」
ちょっと上司らしくないんじゃないか?っと言う感じでシグナムが言った。
「はぁ…それがまたなんとも落ち着かないんですが…。」
無理もないだろう、実際、フェイトが九歳の頃から、シグナムは変わらない大人の姿のままだ。
それが違和感の元だろう。
半困ったように笑うフェイトに対し、シグナムはいたずらっぽく笑みを浮かべながら
「上司と部下だからな。テスタロッサにお前呼ばわりはよくないか?
敬語で喋った方がいいか?」
こんなことを言う。
「ぁ…ぅ、そういう意地悪はやめてください。いいですよ、お前で…、テスタロッサで…」
「そうさせてもらおう。ところで、一条寺ヤマトはどうだ?記憶のほうは…」
挨拶もそこそこ、シグナムがヤマトのことをフェイトに聞いてきた。
「それが…、ここ最近、忙しくて…まともに会話すらしてないというか…。メイのほうはどうなんですか?」
「半分取り戻したと言っている。速い回復力だな。ヤマトも同じだと言っていたな。それを聞いた主は半分だけでも戻ってくれて嬉しいと言っていたぞ」
フェイト、シグナムの歩いている通路とは別の通路でフォワード陣六名はなのはに連れられて歩いていた。
「え、えっと…?」
スバルが言い淀む。
「名前と、経験やスキルの確認はしました」
代わりにティアナが答え、さらにエリオが続ける。
「あと、部隊わけとコールサインもです」
「そう、じゃあ、訓練に入りたいんだけど…いいかな?」
はいっと全員が一斉に返事と敬礼。

管理局本部周辺海。
「なのはさ~ん!」
と陽気な声に呼ばれ、フォワード陣六名を一人待つなのはが振り向くと、鞄を持った女性がこちらへと走ってくる。
「シャーリー!」
なのはが手を降ると、別方向から複数人数が駆けてくる足音がする。
そちらに視線を向けると六人と一匹、スバル、ティアナ、ヤマト、エリオ、キャロ、フリードリヒ、メイが向かってくるところだった。
なのはの前までやって来てから、整列する六人はまず、技術部に預けていたデバイスをそれぞれ渡される。
「今返したデバイスにはデータ記録用のチップが入ってるから、ちょっとだけ、大切に扱ってね。」
それから、なのはは視線を六人からシャーリーに移し
「それから、メカニックのシャーリーから一言」
「えぇ~、メカニックデザイナー兼機動六課通信主任のシャリオフィニーノ一等陸士です。みんなはシャーリーって呼ぶので、よかったらそうよんでね。
皆のデバイスを改良したり、調整したりもするので時々、訓練を見せてもらったりもします。
デバイスについての相談とかあったら遠慮なくいってね」
六人ははっきりと返事をする。
「じゃあ、早速訓練に入ろうか?」
「は、はぁ…」
なのはとシャーリー以外は目をパチクリとさせる。
訓練をするとは言え、視線の先に広がるのは辺り一面青い海。
一体どこでやるの、って感じだ。
「ここでやるの…痛い!」
ヤマトはメイの足を踏み、黙らせた。そして代表で
(空気読めよ)
(わかってるよ!)
「ここでやるのですか?訓練隊長殿」

そんな六人の反応を楽しんでいるのか、楽しそうに微笑みながら、
「シャーリー!」
と、彼女の名前を言うと、何やら準備をしていたシャーリーは右手をあげて
「は~い」
元気よく返事をし、空間をなぜるようにして右手を滑らすと、複数のキーパネル、モニターが現れる。
「機動六課自慢の訓練スペース。なのはさん完全監修の陸専用空間シミュレーター」
陽気に話ながらも指は絶え間なくキーパネルを走る。「ステージ、セット」
ほぼ言うのと同時に海の真ん中に浮かぶ何もない平地に街が出来ていく。
口々にうわぁ~、とかへ~とか感嘆の声が漏れ、ヤマトとメイも口を開けたまま、その光景にみいっている。

そんな光景を別の場所で見ている少女が一人いた。
「ヴィータ、ここにいたか…。」
「…シグナム。」
「新人たちは早速やっているようだな。
お前は参加しないのか?」
「四人はまだよちよち歩きのヒヨッコだ…、ヤマトとメイにいたっては相当なブランクがあるし…。私が教導を手伝うのはもうちょっと先だな」
「そうか…。」
それに、とさらにヴィータが付け加える。
「自分の訓練もしたいしさ。同じ分隊だからな、私は空でなのはを守ってやらなきゃいけないんだ。」
「頼むぞ…、だが、同じ分隊には一条寺ヤマトが入った。お前の負担も、少しは減るだろう…。あまり、無理はするな、任せられるところは一条寺ヤマトに任せればいい…」
フン、と鼻で笑うヴィータ。当てにするところ当てにしてもらおうと思った
「ところで、ヴィータ、お前は一条寺メイと話をしたか?」
「あぁ…」
「どうだ、様子は?」
「私のことも覚えてくれて嬉しいぞ。はやても喜んでいたからな」
「そうか」

『よしっと、皆、聞こえる?』
なのはから入る通信に六人はそれぞれ答える。
ちなみに、六人は先程出現した空間シュミレーターの中にいる。
『じゃあ、早速ターゲット出して行こうか…。』

通信をいったん切ったなのははシャーリーに指示を出す。
「まずは軽く12体から。」
は~いと返事を返し、パネル上に指を走らすシャーリー。
「動作レベルC、攻撃精度Dってとこですかね。」
シャーリーによって素早く準備は整えられていった。

空間シュミレーター内部。
『私たちの仕事は、ロストロギアの保守管理。
その目的のために私たちが戦うことになる相手は…。』
六人の付近に発生する複数の環状魔法陣。
『…これ!』
なのはの声とともに現れる12体の楕円形の機械。
『自律行動型の魔導機械。これは、近付くと攻撃してくるタイプね。攻撃は結構鋭いよ?』
シャーリーの解説に、六人は気を引き締める。
『では、第一回模擬戦訓練。ミッション目的、逃走する12体のターゲットの破壊、または捕獲、15分以内。』
さらに、ミッション目的、内容をなのはが告げる。

そして、
『それでは、』
『ミッションスタート!』シャーリーとなのはの言葉を合図に、模擬戦訓練が始まった。
12体が一斉に動きだし、逃走を開始した。

時空管理局、ミッドチルダ地上本部、中央議事センター。
はやてとフェイトは今そこにいた。
とある会議室、その会議室には窓がなくあるのは最低限の明かりとモニターのみ。
はやてとフェイトはモニターを使い、他のお偉い方に。
「捜索指定失物、ロストロギアについては、皆さんよくご存じのことと思います。
様々な世界で生じたオーバーテクノロジーの内、消滅した世界や、古代文明を歴史に持つ世界などで発見される危険度の高い古代遺産。
特に大規模な事件や災害を巻き起こす可能性のあるロストロギアは正しい管理を行わなければなりませんが、盗掘や密輸による流通ルートが存在するのも確です。」
次々と切り替わっていくモニター。
着席している多くの者も、はやての言葉に耳を傾け、資料に目を通している。
「さて、我々、機動六課が設立されたのには一つの理由があります。
第一種捜索指定ロストロギア、通称レリック。」
ここからはやてにかわり、フェイトが口を開く。
「このレリック。外観はただの宝石ですが、古代文明時に何らかの目的で作成された超高エネルギー結晶体であることが判明しています。
レリックは過去に四度発見され、」
画面の中央に大きく表示される真っ赤な画面。
空港が火の海に包まれている。
「そのうちニ件は周辺を巻き込む大規模な災害を起こしています。」
切り替わる画面、火に包まれる峠。
この場にいる全員が悲痛な表情を浮かべている。

「そして、後者二件では…」
再び切り替わる画面。
「このような拠点が発見されています。」
画面に写る光景はどこか研究所を彷彿とさせ、液体の入ったカプセル、宙につられている球体などが写っていた。
「極めて高度な魔力エネルギー研究施設です。
発見されたのはいづれも未開の世界。
こういった施設の建造は許可されていない世界で、災害発生時に、まるで足跡を消すように破棄されています。」
切り替わる画面には倒壊した建造物が必ず写っていた。
「悪意ある、少なくとも、法や、人々の平穏を守る気のない何者かがレリックを収集し、運用しようとしている。
広域次元犯罪の可能性が高いのです。」
モニターが消え、ただでさえ薄暗い部屋がさらに暗くなる。
「そして、その何者かが使用していると思われる魔導機械がこちら、通称ガジェットドローン。」
再び開かれるモニター。
「レリックを初めとし、特定のロストロギアを発見、発掘し、それを回収しようとする自律行動型の自動機械です。」
フェイトはそういって、目を細めた。

空間シュミレーター内部。
舞い散る緑色の粒子。
爆砕するターゲット。
「3機撃破!あっけない。私の敵ではないな!」
ヤマトはとある人のセリフを言った。何故、短時間で3体のガジェットドローンを撃墜したのは理由がある。
ヤマトとメイは一時的に別行動していた。
(こいつらは素早い。まずはドラグーンでやるんだ。当たらなくても牽制には使える)
(うん、もし、よけられてもヤマトがするんだよね?)
(そういうこと)
メイはヤマトの指示通りにグリフォンから5基のドラグーンを展開させると同時に自分も飛翔した。
ドラグーンから魔法陣が発生し、魔力弾発射。
予想したとおり、相手は回避する。
(動きは機敏だからな。予測射撃が必要か…いけるか?ファーウェル?)
(Yes,my master!)
それぞれの手にライフルソードのライフルモードを持つヤマト。自分の眼前にレーダースコープを展開させて相手の動きを先読みする。
(ここか!?当たれー!)
魔力弾が一機のガジェットドローンの障壁を貫通し爆砕する。そして背後から2機のガジェットドローン。
(ヤマト、後ろ!)
(これくらいならまだまだ序の口だな!)
ヤマトが前進すると消えて、目にも見えないスピードで二機のガジェットドローンを撃墜する
(終わったかな?みんなに合流しなければ)

回想終わり

その頃、スバルはガジェットドローンを追いかけていた。
「ちょっ、何これ、動き早ッ!!」
だが、スバルの役目はこれだけではない。
ターゲットをある地点まで誘導することだ。
そしてその地点にはエリオとメイが待ち構えている。槍型のデバイス、ストラーダ、剣型デバイス、ファフニール(ソードフォルム)、二人はそれぞれ自分のデバイスを構え、突進する。
無論、ターゲットもただ逃げるわけではない。
砲撃を放ってくる。
エリオとメイが近付けないように弾幕をはるが、エリオはそれをかいくぐり、一旦、弾幕外に跳躍。
壁を蹴ってさらに上昇、風の刃を二発放つ。
しかし、ターゲットが速度をあげたため、割合あっさりと回避された。
「はぁ…はぁ…。
駄目だ、ふわふわ避けられて当たらない…。」

一方、メイ。
エリオとは別に跳躍して、対象の背後をとったのち、グリフォンに乗り、ソードをドラグーンにチェンジして『ドラグーン・スパイク』
ドラグーンに魔力刃を発生させ、対象を追いかける。
「これなら行ける!」
尚も直進するターゲットが、突然方向転換し、角を曲がった。
ドラグーンは削岩機みたいに建物を破壊し、その建物を掘られたみたいな跡を残す。
「小回りも利くの!?」
『前衛三人、分散しすぎだ!後ろの事も考えて!それからメイ!ドラグーン、ドリルみたいになっているよ!』
「なんで、ヤマトが指揮するの!?」
『細かいことはいいの!仕方がない…行けるか?ティアナ!君の戦い方を拝見したい』
『まずは足止めをしなければ…サポート頼むわ!』
すると5機のドローンがやってくる。
「お手並み拝見だ。行くぞ、ファーウェル!」
『Yes,my master!』
ヤマトは高速低空飛行をし、片手のライフルモードからソードモードにする。
一つにまとめるために追いかける。そして動いの遅い一機がいた。
「よし、こいつなら…」

二つのビームダガーブーメランを投げつけ、動きを束縛させる。自らもガジェットドローンの動きを封じる。
「チビッコ、威力強化お願い!」
後ろに控えているキャロに指示を出す。
「はぃ、ケリュケイオン!」ピンク色の環状魔法陣を展開。
『Boost Up, Barret Power』
キャロがティアナに手をかざす。足元にオレンジ色の環状魔法陣が発生、ティアナの魔力弾がその大きさを増す。
「シューーート!!」
ヤマトが足止めをしているターゲット、それから逃亡を図るターゲット三体に魔力弾を放つ。
ダガーに異変が起こり、爆発をした。
「しまった!使い方を酷使してしまった」
ヤマトの脇をすり抜け、足止めしていたターゲットが逃亡を開始。
「くっ!」
追跡しようとするヤマトに
『Warnning!!』
警告するファーウェルに振り向いてみれば、目前に迫るティアナの放った魔力弾。
「あっ…。
ティアナは間の抜けた声を上げた。

ヤマトは障壁を張ってティアナの射撃を防御。残りの三発は対象に当たる前にかき消えた。
「バリア?」
「おわっと!?」
「魔力がかき消された!?」
スバルが驚きの声をあげる。ここで、なのはから説明が入る。
『そう、今回のターゲット、つまりガジェットドローンにはちょっと厄介な性質があるの。攻撃魔力をかき消すアンチマギリンクフィールド、通称AMF。普通の射撃は通じないし…』
スバルの目の前を付近から現れた四体のガジェットが通過し、建物を乗り越えていく。
「あっ!?この…。」
ウィングロードを展開。
飛翔魔法を持たないスバルはこれによって、空中を移動できる。青色に光る一筋の道が、建物屋上への架け橋を作る。
「スバル!バカ!!危ない!」ティアナが制止をかけるが、スバルに声は届かなかった。

そんな様子をみていたなのは、口元に笑みを浮かべ、
「AMFを全開にされちゃうと…。」
シャーリーがキーを叩く。

途端にAMFの効果範囲が増大。スバルのウイングロードは途中で断絶していた。
「えっ?あっ、嘘ぉ!!」
悲鳴をあげてビルに突っ込んでいった。
『飛翔系や足場造り、移動魔法の効果も消されちゃうからね。スバル、大丈夫?』
「な、なんとか…」

「AMFを展開されたら厄介事になってタイムロスにつながる…全員、俺の通りに動いてくれ!策がある」
ヤマトがいい策を思いついた。
「AMFのこと?」
「俺とティアナが思いついた。行けるなら…」
エリオ「行けます!」
キャロ「こっちも大丈夫です!」
スバル「頑張ろうね!」
メイ「やってみるしかない!」

ヤマトは具体的に指揮をとった。
「メイ、スバル、エリオ君の前衛3人は散開して逃げるガジェットドローンを一つにまとめて挟み撃ちにするんだ」
「分かった。行くわよ、みんな!」
3人はヤマトの指示通りに追いかける。無論、相手は曲り道があるなら、個々でそこへ逃げるだろう。そして3人は逃げた各地に散開する。
それをみていたなのはは、
「ヤマト君、ナイス指揮」
逃げるターゲットを追いかける3人。目標はターゲットをT字路の彼方此方にに来させて3人で挟み撃ちにするトライアングル作戦。
「とりあえず、T字路のとこまで来させるんですよね?」
「そうだよ!」
「ヤマトの指揮は当てにできる!モビルスーツ隊の隊長だから!」
3人はターゲットの弾幕をかいくぐり、無事に一つにまとめて目標地点ら到達する。
ビルの屋上にいるヤマトとティアナとキャロ。
「ティアナが新しいことを試したいと言っているからここで攻撃を凌いでくれ!俺も参加する!時間稼ぎにね」
ヤマトはビルの屋上から飛び降り、3人のサポートに回った。
その言葉に真っ先に火がついたのはティアナである。
「チビッコ、名前、何て言ったっけ?」
「キャロであります」
「キャロ、手持ちの魔法と、そのチビ竜の技で何とか出来そうなのある?」
「試してみたいのがいくつか…」
「私も…(スバル!)」
(オーケー、ティアが何か考えてるから、エリオと私、ヤマト、それからメイで足止めするよ!)
残り9機のガジェットドローンの相手をする4人。

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