※Demon HunterのSSです。全11ページあります
原文:http://us.battle.net/d3/en/game/lore/short-story/demon-hunter/1#read
Hatred and Discipline
by Micky Neilson
遠く離れていても、Vallaは腐敗した死を嗅ぎ取った。
今では廃墟と化したHolbrook ―かつては、小さくとも活力に溢れていた田園だった― に辿り付いた時には、
カンデュラスはどんよりと曇に覆われていた。
大気は生暖かい。
…ふむ、腐敗の匂いから判断すると、ここにはまだ残された者がいるようだ。
最も、生きているモノだけではないだろうけど。
村の中央、何かの残骸の前で師匠のJosenが思案している。砕かれた石材、ひっくり返った岩だろうか。
師匠はデーモン・ハンターの正装に身を包んでいる。
身体の半分近くを覆う、鈍く光るプレート・メイル。
すぐに使えるよう、足にぶら下げている2丁クロスボウ。
下げたフード。クロークは風にはためく。
Vallaも同じような衣装を纏っている。
違うのは、顔の下半分を隠す、長くて黒いスカーフを身に着けていること。
Vallaは馬の歩みを止めて降り、しばし考え込んだ。
かろうじて物音が聞こえる。
生きているモノが経てる音は、Josenとその他2人のハンターのものだけだ。
一人は廃屋でガサゴソと、もう一人は荒れ果てた店の近くに立っている。
ここで何が起きたにせよ、食い止めるには手遅れだった。
今やるべきは、生存者を探すこと。
そして、次にやるべきこと。筆舌に尽くしがたい災厄から残された彼らに、食料を確保し、仮住まいを探してやること。
彼らを導き、励まし、癒し、教え込み、仕込み…
そう、全てはこのために。彼らがその道を選ぶように。
その道とは、デーモン・ハンターとなり、地獄の悪鬼を殺し尽くすこと。
「急いで来たのだけどね」
Vallaはスカーフを降ろしながら言った。Josenは何かの残骸を前に考え込んでいる。
かすかな物音が響いた。Josenの眼差しは動かない。
「ここに居るべきでは無い」
彼は呟いた。
「Deliosは任務を果たしたのだとすれば、我々はここに留まっても仕方が無い」
JosenとVallaの目が合った。
「お前はどう見る」
Vallaは瓦礫を見つめている。石材と木材、見慣れたものだ…黒い液体の斑点がある。
しかし、そこらじゅうにある黒い物体は何だろうか。タールにも見えるが、よく分からない。
「町の井戸」
Vallaは答えた。
「悪魔はそこから這い出した。悪魔の血を与えられて。
Deliosはやるべきことを果たしたのだろう。彼がハンターとしての最後を迎えられたことを祈るだけね」
Josenが地面を蹴ると、表面の少し下は、まだ濡れていた。
「まだ一日も経っていないか」
VallaはJosenが続けるのを待った。
…彼が話さないので、促した。
「この後は?」
師匠の表情からは何も読み取れない。
「付いて来い」
彼は返した。
2人が荒れ果てた店に近づくと、物音が大きくなった。ぶーんという音が聞こえる。
物音が大きくなるにつれ、腐臭もきつくなってくる。
ぶらぶら揺れているドアの前に、ハンターの一人が立っている。
不快なハエの一団が逃げていった。腐敗した肉の臭いは慣れているはずだが、それでもきついものがある。
Vallaはスカーフを締め、胃液にむせた。
納屋程度の部屋に、人間が無造作に積み上がっている。
男性も、女性も…皆膨れ上がった死体。
破裂し、中身をぶちまけたものも。ウジが臓物を食んでいる。
眼から、鼻から、口から液体が流れ出ている。
紛れも無い糞尿の臭いも嗅いで取れる。無数のハエが屍体に群がる。
Vallaの表情が険しくなった。死体の傷、確かにおぞましいものだが…悪魔の付けた傷とは違う。
ここにあるのは、正確に突き、刺し殺された頭蓋骨だ。
砕き、切り殺す悪魔の殺戮ではない。
Josenが口を開いた。
「1日前、Bramwellの外近郊でDeliosが目撃されている。
彼は娼館に押し入り、皆殺しにして…姿を消した。
昨夜、またも虐殺が行われた。阿片窟で15人だ。
クロスボウと刃物で殺されてな」
信じられない、と言うようにVallaの眼が見開かれた。
Josenは無言の問いに答える。
「奴は堕落の道に陥ったか。今や、我々の知っているDeliosではない。只の悪魔だ」
それは恐ろしいことだが、善と悪の間を行き来する、全てのデーモン・ハンター一人一人は向き合うことになる。
ちょっとしたことで、恐怖と憎しみを制御する術は容易に失われる。
しかし…しかし、これはDeliosの仕業では無い。何かがおかしい。
Vallaは自らの不安を隠すように言った。
「多分その通りなんでしょう。でも、これはハンターがやったことかは分からない。悪魔がやったことかも分からないけど」
「ふん、その意見には賛成しよう」
「ハンターと悪魔が、お互いに殺しあったとは考えられない?」
「恐らくな」
短く言い放ち、Josenはその場を離れた。
もう一度死体の山を調べたVallaは、奇妙なことに気が付いた。
―死体は数あれど、子供の死体が無い。
店の外では、Josenが馬に乗っていた。
駆け寄ったVallaが尋ねた。
「私は最後の修行を終えている。次は、何をすればいい?」
「我々は生存者を探す。夜が明けたら、私はBramwellに行ってDeliosを探す。
多分…奴のために、遅すぎるということはないだろう」
Josenはそう言ったが、躊躇いも見て取れる。
Vallaは肩を張った。
「それなら、私も発つ。悪魔を探し出す」
「いかん」
師匠が鋭く返す。
「お前にはまだ無理だ」
「どういうこと?」
Vallaが詰め寄る。
Josenは彼女に向き直り、冷静な口調で答える。
「お前にはまだ無理だと言った。我々は、立ち向かうべきものについて殆ど知るところが無い。どんな手段で、ということもだ。
恐怖を糧にするのは悪魔ども、と信じている…だが、Deliosは更に多くを知っている。
ヤツに対する備えは不十分だ。ヤツのような悪魔にはな…」
Josenはゆっくりと眼を閉じた。
「お前の心の奥底の、恐怖や疑惑、後悔を掘り起こしてくる。どれほど心の奥底に仕舞い込んでいたとしてもだ。
お前は自分自身に、奈落に落とされることになるだろう」
そして、眼を開き、Vallaを見据えた。
「あの遺跡での、お前の失態を忘れたか」
「あれは違う。怒りの悪魔の…」
Vallaが反論する。
「怒りに憎しみ、恐怖。お互いを糧としている。デーモン・ハンターは、憎しみの矛先を向ける術を学ぶ。
だが、そのバランスは危うい。一旦崩れてしまえば、連鎖が始まる。
憎しみが破壊を呼び、破壊が恐怖を呼び、恐怖が憎しみを―」
「もう何回も聞いた!」
Vallaが叫ぶ。
「ならば、心に刻め。お前はまだ未熟、学ぶことが多い。
デーモン・ハンターならば、常に憎しみを規律で制御しろ。心を平静に保て。これが私の教えられることだ。
件の悪魔は手負いのはずだ、今は動けんだろう。そいつには別のハンターを送り込む」
Josenは立ち去りかけたが、Vallaは動かない。
「なら、私はDeliosを追う」
Josenが振り返る。
「お前はここで生存者を探す手助けをしろ。Deliosは私が片付ける。指示は以上だ」
師匠は立ち去ったが、Vallaは更に怒りに震えていた。師匠に訴え、感情をぶちまけたかった。
まだ未熟? 私はまだ未熟? 私は全てやり遂げたはず…
「師匠、なぜ、私が未熟…?」
Vallaは呟いた。
少しして、彼女は馬に跨っていた。
―さて、どこへ?
例の悪魔はどこに行った?
Vallaは残骸に残された血の跡を見つめた。
血の跡は、残骸の外には無い。手がかりにはならないだろう。
東には山脈があるだけだ。西にはWestmarch湾。はるか南には、新しいTristramだ。
しかし、悪魔は手負いだ、延々と南に行くか?
そうでなければ北西か…ここのような、小さい農村が見つかるか?
楽な「餌場」があった。
Havenwood、一番近い村で、ここから1日も掛からない。
彼女の選択は決まった。
- とりあえず訳してみた。…が、怪しいところが沢山。 -- ページ作者? 2012-05-16 (水) 14:05:27
- おつ -- 2012-05-16 (水) 17:18:13
- 原文リンク付けたが、直リンOKかね? -- 2012-05-17 (木) 01:18:04
- 直接でも大丈夫だと思います。 -- 管理人 2012-05-17 (木) 10:33:43