【おまえ、こいつ、べるの】

Last-modified: 2022-06-16 (木) 12:19:57

概要

かつて『週刊ファミ通』の前身誌『ファミコン通信』に連載されていた桜玉吉のマンガ『しあわせのかたち』で、隔週刊時代に登場していた3人組。
隔週刊時代の『しあわせのかたち』では主に当時のゲームを元ネタにしたギャグマンガを載せており、その中で1987年に掲載されたDQ2編での主人公たちとして、この3人が初登場した。メンバー構成は以下。

ドラゴンクエストII編

1987年に全7回に渡って連載されたほか、開始前の号にも桜玉吉のDQ2購入体験談とともに予告編が載った。
このDQ2編の中では、おまえとコイツはゴーグルの形など細かい違いはあるものの原作ゲームに近い格好であったが、べるのは頭巾が無く髪や服も違うなど原作のムーン王女のイメージとはかけ離れていた。
世界観やストーリーの基本「【ロトの子孫たち】3人が【ハーゴン】を倒しに行く」は原作にほぼ忠実であるものの、ストーリーはギャグマンガとして大幅にアレンジされていた。

第1話
日々トレーニングに励むローレシアの王子おまえ。ある日、【ムーンブルク】の傷ついた兵士がやって来るが、王様の話が終わらないうちにおまえは城を飛び出していく。【サマルトリア】ではに蹴飛ばされて気を失った状態のコイツ王子が仲間になる。
第2話
気絶したままのコイツを連れて【ムーンペタ】に辿り着いたおまえ。そこで可愛い町の少女に話しかけられた途端、コイツが起き出してベラベラと演説開始。その話に感動した町の人が集まり、ムーンブルクの王女べるの(原作と違って姿を変えられていない)もその中に混ざっていた。
ここにロトの子孫3人が揃い、コイツがいつの間にやら手に入れていた【かぜのマント】を持って【ルプガナ】へ向かう。
第3話
ルプガナに着いた3人は港で道を塞ぐ老人を無視して【船】を強奪。腹が減ってきたところで【メドーサボール】など海のモンスターたちが現れるが、哀れ3人に料理にされて食べられてしまう。一行は北北西に進路をとり、【ザハン】の町に辿り着く。
第4話
ザハンに着いた3人を待ち受けていたのは若い女性たち。しかし彼女らの口からは男たちがハーゴンの魔の手により海の藻屑になってしまったと聞かされる。アイテムを一挙に数点貰った一行は散々迷った末、【ラダトーム】に向かう。
第5話
(この回より「しあわせのかたち」が2ページから3ページに拡大)
【アレフガルド】に上陸した一行は【どろにんぎょう】たちの猛攻を突破し、ラダトーム城に到着。出会った老人によるとロトブームが起きているらしく、一行は同じくロトの子孫を名乗る3人組と出会う(ニセモノではあるが、「おまえ」たちよりも原作に忠実な格好をしている)。
第6話
おまえ一行vsニセ王子たちのやりとりの末、ニセ王子は正体を現す。その正体は【ラゴス】ならぬ「パゴス」という男。彼から【じゃしんのぞう】【ルビスのまもり】(日本の神社等で買えるお守りに「ル」と書かれた外見)が一気に貰えてしまい、一行はいきなり【ロンダルキア】に突入する。
ロンダルキアのほこらの老人が「天空の城ラピュタ」ネタを喋るあたり、当時の時代を物語っている。
最終話
【ギガンテス】を打ち倒し、ついに一行はハーゴンのところに辿り着く。しかしハーゴンは大人の事情により、ガラスの板に隠れた状態で戦うことに。こちらの呪文をことごとく跳ね返すハーゴンだったが、最後は後ろに回り込んだおまえの【会心の一撃】が決まりハーゴンは倒れ、世界に平和が訪れる。なお【シドー】は登場せず。
ラストはおまえ王子が「北北西に針路を取れ」と決まり文句を言って終了となった。

 
このようにブッとんだ内容ではあったものの、【ドラゴンクエスト4コママンガ劇場】などといった公式のDQコミカライズがまだ無かった当時は、この作品がDQの世界・ストーリーをマンガで表した数少ない作品でもあった。
このためか印象に残っている人は多いようで、現在でもパーティを組む際の名前例としてこの3人組が挙がる事も多く、人によってはDQ2の3人組と言えば鳥山明絵よりもこちらが先に頭に浮かぶらしい。
『週刊ファミ通』2016年6月16日増刊号の雑誌30周年企画では、【天野シロ】がこのDQ2編での3人組のイラストを披露している。
なお、雑誌掲載時のシリーズタイトルは「ドラゴンクエストII」だったが、単行本に収録された際、大人の事情のためか「ゆうめいRPG II」に改題された。

その後

「おまえ」たち3人組はDQ2編終了後も『しあわせのかたち』で他のゲームネタにも常連として登場するようになった。
 
DQ3はタイトルとしては使われなかったが、同時期より一年近くに渡ってこの3人を主人公とした「しあわせのかたちスペシャル」という長大ストーリーが描かれた。その際には「アリアはん」という女性キャラが登場したが、名前の由来はおそらく【アリアハン】から。
 
DQ4編は最初『ふぁみこんむかし話 遊遊記』のパロディ『遊遊夕月』として始まったが、いつしか『遊遊有名RPG IV』へと変わっていった。配役は【勇者】=おまえ、【ライアン】=コイツ、【アリーナ】=べるの。
このDQ4編ではDQのモンスター名でしりとりをしながら変身を繰り返して「デ□□□□」を目指すという、【進化の秘法】ならぬ「しりとり進化法」が登場している。
 
しかし『ファミコン通信』が1991年に週刊化を迎えると『しあわせのかたち』は作者の日記風の内容に方針転換され、「おまえ」たち3人組は誌面から姿を消した。その後『しあわせのかたち』自体は時々休載を挟みながらも1994年3月4日号まで続けられた。

タワードリーム

連載終了後、3人組は1996年アスキー発売のSFCソフト『タワードリーム』、1998年アクセラ発売のPSソフト『タワードリーム2』にそろって登場。ゲームパロディ漫画のキャラが本物のゲームへの出演を果たした。キャラクターデザイン・イラスト担当はもちろん桜玉吉。
ジャンルはモノポリータイプのボードゲーム。ゲーム内ではプレイヤーの分身となる「コマ」としておまえ、コイツ、べるのが選択できる。CPU操作の対戦相手としては登場しない。
 
『タワードリーム』のパッケージイラストは青い鎧を纏い剣を持ったおまえ、TシャツGパン姿のコイツ、ローブ姿のべるのを大きくメインに据えた構図で、さながら『しあわせのかたち』のゲーム化作品のような印象を与えている。広報活動においても桜玉吉デザインを売りとしていたので、3人組がメインを飾るのは必然といえるだろう。
 
しかし『タワードリーム2』ではイラストメインの座をどういうわけか大根を掲げたおばさんキャラ「みつよ」に明け渡してしまった。3人組は他のキャラクターとともにみつよの周囲におり、主要キャラとしての面目は保っている。
こちらは2000年にサクセスよりSuperLite1500シリーズの廉価版も発売された。ジャケットイラストは一新されキャラクターはおまえとコイツのみとなったが、そこは廉価版。イラスト自体かなり小さく地味なデザインのため、2人は全く目立たない。

ダンジョンランド

桜玉吉は【エニックス】によるゲームボーイ参入第1弾ソフト『ダンジョンランド』のキャラクターデザインも担当している。基本ルールはボードゲームの【ドラゴンクエスト ダンジョン】と同じで、DQ要素を抜きつつ1人用モードやアクションバトル、モンスター収集などを加えたコンピュータゲーム版と言える作品となっている。
 
説明書のゲーム概要では「キャラクター&モンスターデザインは、ファミコン通信連載の「しあわせのかたち」で大人気の桜玉吉。」と紹介された。3人組は登場しないものの、主人公はおまえのような太い眉、ライバルはコイツに似た目と髪型をしており、セリフ回しやモンスターのネーミングも隔週刊時代の漫画作風に沿ったユルいものとされた。
DQキャラクターと同名のモンスターもいるが、【スライム】はデザートのプリンそのもの、【ミミック】は顔の付いた石鹸箱と、当然デザインは異なる。