【でろりん】

Last-modified: 2023-12-28 (木) 19:47:36

偽勇者一行
【でろりん】―【ずるぼん】【へろへろ】【まぞっほ】

ダイの大冒険

概要

漫画【ドラゴンクエスト ダイの大冒険】に登場する人物。20歳。【ロモス】王国出身。
逆立った黒髪に宝玉入りのサークレットを被り、マントを翻す外見は【主人公(DQ3)】そっくりの男だが、やけに目つきが悪い”自称”勇者。
その正体は、勇者を名乗りつつ悪事を働く不逞の輩である。
初期は悪人面なりにイケメンな雰囲気であったが、再登場以降はすっかりギャグキャラと化してしまっている。
初登場は読み切り版の「デルパ!イルイル!」。
原作及び新アニメでのカラーリングはFC版DQ3勇者を踏襲したものだが、旧アニメでは変更されている。
 
2021年末に発行された『ダイの大冒険オフィシャルファンブック』の三条先生の談によると、ずるぼんとは腐れ縁のカップル的な感じとのこと。
「まー他にもっといい女(男)いたら乗り換えるけど、こいつは自分にメロメロだからしょうがないよねー」
と互いに思っているらしい。
 
旧アニメのでろりんを担当した声優は緑川光。
【CDシアター ドラゴンクエスト】のDQ3の主人公アレルを演じた人物であり、狙ったのかどうかは定かでは無いが何とも皮肉なキャスティングである。
新アニメでは少年【ヤンガス】を演じた下野紘が担当している。

戦歴

過去にどういう活動をしていたかは描かれてないが、劇中では勇者を自称して「魔物が巣食う怪物島」と言われる【デルムリン島】へ乗り込んで来た。
実際のところ島のモンスター達は魔王の邪気から解放され善良な性質になっていたのだが、でろりんは褒美目当てに無抵抗なモンスターを狩り、希少な珍獣とされる「ゴールデンメタルスライム」を捕まえての一攫千金という身勝手な理由で攻撃を開始。勇者の様に卓越した剣技と呪文を使いこなして容赦なく一方的に打ち倒すと、目的のゴールデンメタルスライムである【ゴメちゃん】を捕まえてロモス王国(新アニメでは島近海に停泊しているロモスの船)に帰還する。
 
冒険者パーティーが「魔物退治」や「珍獣捕獲」で富や名声を得ようとする動機の方は普通ではあるが、でろりん一味の場合は無害な存在と判った上で一方的にモンスター達を痛めつけ、ダイの親友であるゴメちゃんを無理矢理連れ去っている行動の方に問題があり、さらに国王に向かって平然と嘘の報告をして褒美を騙しとろうとしている辺りが悪役の面目躍如といった所。
 
ロモス国王の【シナナ】にゴメちゃんを献上して、国王から褒美を受け取り、勇者として賞賛されるが、ゴメちゃんを助ける為に【ダイ】とモンスター達(新アニメでは【ブラス】も)がその場に駆け付け逆襲を開始。初めは素人同然だったダイを完膚なきまでに叩きのめすが、ダイが【ブラス】から託された特殊な【魔法の筒】から出した魔界のモンスターに一味は翻弄される。
旧アニメでは魔界のモンスターは登場せず剣を奪われ形勢逆転され、新アニメでは巨大【ドラゴン】に圧倒される中、仲間のずるぼんがキングスライムに押しつぶされている姿を見て隙を晒したのが決定打となり、でろりんもダイがかざした魔法の筒に閉じ込められてしまった。
事情はともかく国王の目の前でモンスターを暴れさせたダイ達はなおもロモス兵に詰め寄られたが、戦闘中のでろりんやずるぼんの言動とダイの言い分を見ていた国王みずからが話を訊くべしと止めに入り、一件落着となった。これによりダイはでろりん達が貰うはずだった【覇者の冠】を授かり、仲間達の為に大人に立ち向かった「小さな勇者」として認められることとなる。
 
当のでろりんはと言えば、穏やかな存在になっていたデルムリン島のモンスター達を褒美目当てに一方的に甚振っていた件やゴメちゃんの誘拐を隠し、都合の悪いダイの事を魔物の手先扱いした嘘などの件もあり、勇者を名乗るに値しない輩だと露見してしまった。
原作及び旧アニメではどうなったのか不明だが、新アニメでは船から降ろされ、小舟で海原に置いて行かれるという流刑同然の恐ろしい処罰をくらっている。
しかし後々【ロモス】の宿で平然と「勇者パーティー」を騙って滞在していることから罪人として手配はされていないようだ。
でろりん一味の行動のうち、誘拐や暴力は被害者が野生のモンスターたちだったので、人間社会の犯罪にあたるのは主に「王に嘘をついた」と「ダイとの喧嘩沙汰」のふたつ。王の目の前で成敗され、即決で罰を与えられた事もあってか、その場で解決した扱いなのだろう。

 
同じくニセ勇者一味の戦士へろへろ僧侶ずるぼん魔法使いまぞっほと共に、魔物の島で平和に暮らしていたダイが乳児期以来初めて出会った人間であり、生まれて初めて戦った悪役でもある。

その後の活動

その後はしばらく【ロモス】王国で活動。少しは懲りた様で、大きな悪事からは流石に足を洗っており、一応は本物の勇者を目指す様になっていた。
しかし実際にやっている事と言えば、自分より弱いモンスターを倒して褒美をもらったり、廃墟と化した町で廃品回収と称して火事場泥棒を働いていたりと情けない実績ばかりで、結局以前の生活とそれ程変わっておらず、ダイ達から冷たい目で見られた。ただ、美味しい格下を狙って安全に経験値やゴールドを稼いだり、廃墟で(それどころか普通の民家でも)物色などは世の多くの勇者達がやってきたであろう行為なので、ある意味彼らは間違ってはいない。
 
【クロコダイン】のロモス王国への襲撃時も外の百獣魔団と戦うといった事は無く、火事場泥棒に力を入れていた。
ちなみにフレイザード編の途中に行われた第1回キャラクター人気投票では、108票を獲得し14位にランクイン(なお13位はその【フレイザード】で138票)。「う~ん…まだこんなにオレのファンがいるとは…! ちょっと改心して、がんばっちゃおうかな~~っ!?」とコメントしている。
これが布石になっていたのか、バラン編とロモス武術大会編を挟み1年以上を経て再登場。
ダイ達の活躍を見て今度こそ勇者になろうと思い立ち【パプニカ】王国に名声を求めて旅立った…が、その時は【鬼岩城】の襲撃もあり、一目散に逃げてしまった。
引き際を見極めるという点では正しい判断なのだが、まるで成長していない…。
 
その後、一度魔王軍の侵攻を受け滅びた土地なら逆に安全だろうと誰もいない【オーザム】王国跡で文字通りの素寒貧に耐えながら隠れ住んでいたのだが、地上を崩壊させる「」の落下に吹っ飛ばされ、否応なしに世界の危機に巻き込まれる事になる。
その後、ゴメちゃんの最後の願いを聞き届け、世界を救うために「こんな北の果てにも勇者はいるから安心しろい!…ニセ者だけどなあ!」と自嘲混じりながらも高笑いして真っ先に名乗り出た。
自ら「ニセ者」と自嘲するくだりは、見ようによってはポップがシグマ戦で言い放った「臆病で弱っちいただの人間さ」にも通じるものがあり、以前までとは少し違うぞという自信すら感じさせる。
流石に【ジャミラス】相手に戦いを挑む度胸はなかったが、仲間のまぞっほがここ一番という局面で尻込みしたところにパーティーリーダーらしく発破をかけ、更に彼の魔法を魔力で後押しするなど、文字通り仲間に勇気を与えるという意味での勇者の役割をこなしており、彼もまた世界を救う為に必要不可欠な人材だったと言える。
読み切り当時のしょっぱい小悪党から、誰もが辿り着けなかった世界を破滅させる極北の「柱」に挑み、その機能の停止を達成して本当の意味で「勇気ある者」へと出世した事を誰が想像出来たであろうか。
 
エンディングでは、命の恩人かつ自分達を英雄にしてくれた仕掛け人でもある【マトリフ】に金品(盗品?)を巻き上げられて苦い顔をしていた。
 
旧アニメ版では出番が増えており、相変わらず勇者の名を騙って村人から食べ物を巻き上げるなど悪さをしている。
しかしたまたま現れた強い魔物に対しては「私は勇者ではありません、どうかご勘弁を」と土下座して「こいつはダイじゃないから勇者じゃない、とんだ無駄足だったわ」と一蹴されるなど、相変わらず情けない姿を見せる。魔王軍から見逃され喜ぶ一味だったが、結局「ワシらを騙したな!」と激怒した村人にボコボコされた。それ以降も、サーカスを開いて路銀を稼いでいたりと地味に登場している。
 
新アニメ版では、2021年になんとアニメ公式Twitterが「ドラゴンクエスト でろりんの大冒険」になるという【エイプリルフール】ネタが行われた。メッセージボイスもそのための新録であった。

能力

公式ガイドブック「JUMP COMICS PERFECT BOOK 1 ダイの大冒険」によれば、レベルはわずか13らしい。
 
他のキャラたちが強敵と戦いレベルアップし成長しているのに比べると、弱い相手しか狙わない彼のレベルが低いのは当然と言えるが、低レベルの割には作中ではそれなりに高位の呪文である【イオラ】を使いこなし、複数のモンスターをまとめて倒す【ギラ】のごとき特別製の【メラ】を撃てるなど、妙に魔法の扱いに長けている。
更に「オレに弱点等無い」と豪語する程度には白兵戦もこなし、実戦経験も結構あるのかダイやモンスターの襲撃にも動じず剣と魔法を使い分けて余裕で捌いてみせるなど、メインキャラ達にこそ遠く及ばないものの一般人やその辺の兵士より遥かに強いのは確かだろう。
真面目に生きていれば本物の勇者になり得る人材であったかもしれない。
 
ちなみに世界観の原案であるDQ3ならイオラの習得レベルは勇者で31、魔法使いで23程度。でろりんはわざわざ魔法使いとしてイオラを覚える迄レベルアップしてから戦士にでも転職したのだろうか?
DQ3の勇者パーティーでレベル13ならだいたい【シャンパーニの塔】から【アッサラーム】位が適性な到達エリアになるのだが、勿論この時点でイオラが使えれば【カンダタ】も楽勝で突破出来てしまう。
一応、【ポップ】がギラを習得するよりも先に【メラゾーマ】を習得していたりと、ゲームでの習得レベルは作中にあまり厳密に反映されてはいないようだが、描写を見る限りは高レベル魔法使い並に使いこなしているのは間違いない。
 
ゲームで覚える呪文や特技を基準にするなら、勇者職の特徴であるデイン系はダイ大世界だと【竜の騎士】専用呪文であり、でろりんはもちろん【ドラゴラム】を使う【大勇者アバン】【マヒャド】を使う【北の勇者ノヴァ】でも習得不可能であるため、「勇者」は能力と結びつく職業というよりは立場や振る舞いに対しての称号となっている。
呪文の習得も本人の適性に強く影響を受けて契約の是非が決まるので、魔法も剣技も使える【ニセ勇者でろりん】に職業をあてはめると何に相当するのかは謎である。
ダイ大世界には腕力に優れ回復呪文を使える僧侶戦士なんて職業の名乗りもあるが、ゲーム上で言えばでろりんは【魔法戦士】辺りだろうか。
 
連載中の特集記事の一つとして「作中のキャラクターに職業を当てはめると勇者と呼べるキャラクターは何人いたか」という旨の問題が出されたことがあり、その正解が「勇者ダイ」「大勇者アバン」「北の勇者ノヴァ」「ニセ勇者でろりん」の4人だったことはある。
ただ、この問題は「人からそう呼ばれている者」や「自分でそう名乗っているだけの者」も含むとなっていたので、そもそも「職業を当てはめる」という質問が成り立っていないのだが…。
 
また、クロコダインの発言によれば「勇者を名乗る者と星の数ほど戦った」らしく、実力や善悪はともかく、登場しなかっただけででろりん以外にも「自称勇者」は沢山いたようだ。