【ゾクッ……! す すごい殺気ですよ○○○○様。】

Last-modified: 2020-01-13 (月) 18:19:57

DQ5(リメイク版)

【フローラ】と結婚した場合(DS版以降では【デボラ】も)に、【山奥の村】で暮らすビアンカに会った後、【ピピン】と会話すると聞けるセリフ。
全文は

「どうしてあんな美人がいまだにひとりで? ボクがもらってもいいですか!?
 ゾクッ……! す すごい殺気ですよ◯◯◯◯様。じょうだんですから怒らないで!」

味方のみならず敵に対してすらもひたすらに心優しい主人公が、人間相手に本気で怒りを見せる、恐らくただ一つのシーン。
自分が仕える君主の目の前で、国王が懇意にしている異性に手を出そうとするピピンもピピンだが、別の相手と結婚してから石化中を差し引いてもかなりの時間が経った青年時代後半においてなお、ビアンカに近寄る男に本気で怒る主人公も主人公ではある。
嫁に選ばなかったとしても、それだけビアンカは彼にとって(姉のように慕う)特別な女性ということか、それとも余程ピピンを男として信用していないのか。
まあ軽薄なピピンの態度的には仕方無い部分もあるか……。
青年時代前半にビアンカが滝の洞窟で痴漢に遭った時は、おそらくこの時以上に鬼の形相になっていたことだろう。そちらでは彼の心情や表情などは一切描写がなかったが……。
 
おそらくビアンカの方が5歳以上は年上な訳で、青年時代後半の彼女の年齢はどう考えても26歳は下回らないだろうし、劇中の時間経過を考慮すると三十路。一方ピピンは青年時代前半は少年だった為、およそ二十歳くらいと思われる。
主人公にしてみれば、部下であり、しかも(石化期間を考えなければ)自分より一回り若い一兵卒な若者に大切な友人の伴侶が務まるのか単純に不安にもなるだろう。
まして主君と親しい女性を「ボクがもらっていいですか!?」なんて気安く語り鼻息を荒げられてはなおのこと信用できないというものである。
 
ピピンは一応王に仕える兵士であるわけだが、一定の地位に就いてる将校や重臣、王政への発言力の強い貴族などならまだしも、彼のような一兵卒となるとそこらの一般庶民と扱いは大差なく、余程の手柄か事件がなければ本来謁見すらかなわないのが普通。
【グランバニア】の王族と兵士や国民の距離感は比較的近いようではあるが、それでもピピンの言動が身の程をわきまえていないのは明白であり、その場で叱りつけるか、最悪その場で討たれても文句を言えない程の非礼に対し殺気による威圧程度で済ませる主人公はまだ理性的だったとも言える。
ビアンカの前なので怒りを抑えたか、もしくは主人公が自分の出自を知った時期や【ラインハット】の暴政の話、奴隷も経験した自身の境遇諸々から、ふざけた軽口に立腹こそしても「王である自分に無礼を働いたので処刑、断罪する」ほど厳しい処断に至れなかったのかもしれない。
 
なおピピンは別の場面でも主人公の怒りを買っている。 
【カボチ】村の【キラーパンサー】のイベントがそれで、思い出の品を「ボロボロのひも」呼ばわりした挙句「とてつもなくにおいがひどかったから」魔物がおとなしくなったなどと言っていたのだ。
これでは主人公が怒るのも無理はないが、こちらでは殺気の威圧はなかった様子。
 
…とにかく、冒頭のあの台詞は見方によってはかなりの問題発言なのだが、さらに見方を変えれば一種のブラックユーモアとも言える。
ピピンも主君一家の辛く苦しい旅路を少しでも和ませようと敢えて道化を演じていた面もある。上記の通りビアンカのリボンを馬鹿にして主人公を怒らせたピピンだが、その後にカボチ村の人々に主人公が罵倒されると主君への侮辱に激怒し「叩き切ってやりたい」とまで言い出す通り、ピピンは問題発言の多さに反して実際の忠誠心は非常に高い。
この発言も本気で手を出そうと狙っているのではなく、王の知り合いが綺麗であることを誉めつつの冗談半分のピピン流ユーモアと見るべきであろう。
あまり深く考えず、生温かく受け流すのが大人の対応というものである。
 
一兵士が地雷を踏んで主君を激怒させる流れはDQ8の【レティシア】の一件で再登場している。
ただし、こちらは、主人公が兵士で同行者が主君でありこちらとは逆。