【ドラゴンクエスト ファンタジアビデオ】

Last-modified: 2022-03-26 (土) 22:42:43

概要

【ガイナックス】制作、東北新社とCBSソニー(当時)が発売したドラゴンクエストの世界観を実写映像にて再現したオリジナルビデオ作品。VHS・ベータマックス版は1988年12月21日、レーザーディスク版は翌年1月1日発売。
設定はそれまで発売されていた【ロトシリーズ】の世界観がもとになっており、オーケストラによる演奏シーンと、実写映像シーンから成る。登場人物は一切しゃべらず(厳密に言うと口は動かしているが、BGMのみで音声がない)に物語が展開していくのだが、シリーズをプレイしたことのある者なら、何となくストーリーはつかめるだろう。
 
このビデオ、出演庵野秀明(「演出」ではない)、制作費は1億5000万円と、バブル期に制作されただけあってかなり豪華な作品なのだが、その一方でツッコミどころが満載でもある。一例を挙げると、

  • 街の住民や【王様】がどう見ても外国人顔。その一方で主人公一行は普通に日本人。
  • 庵野演じる【りゅうおう】(変身前)や【ヒミコ】の特殊メイクが印象的。
  • 主人公はDQ3の勇者に近い容姿だが、仲間の【賢者】【魔法使い】はDQ2の【サマルトリアの王子】【ムーンブルクの王女】に似た姿(ちなみに賢者役の子役は女の子であり、男装しているらしい)。
    そしてラスボスはDQ1のりゅうおう(BGMは【死を賭して】【勇者の挑戦】)。
  • 【スライム】が原作の姿を保ちつつもネバネバしたイメージになっておりグロい。ただでさえグロいのに鍋に放り込まれて溶ける。
  • そのスライムが溶けた鍋を何故か主人公が持って(しかも火傷しそうになりながらも)逃げる。
  • 賢者が魔法使いに出会って握手した後、右手を手袋から外して丁寧にぬぐっている。
  • 圧倒的に強い魔法使い。敵の八割方は魔法使いの呪文で倒している。勇者はせいぜい最初のスライムとラスボスを倒した程度。とんだ【女尊男卑】である。

 
以上のようにいろいろと突っ込みどころは満載だが、CGや特殊撮影を駆使するなど、当時としてはかなりの技術で作られているので、一度見てみる価値はあるだろう。
見所としては、以下のようなものがあげられる。

  • クオリティの高い【モンスター】:上述のスライムや、【キメラ】はトラウマもののキモさであるが、中盤に連続して登場するモンスター達は、総じてクオリティが高く、ゲームの世界をそのまま現実にもってきたと言っても過言ではないほどである。特に、特殊効果で表現された【あやしいかげ】【フレイム】は必見。これらのモンスターはイメージ映像のような形で登場するのみで、主人公達との直接的な戦闘シーンがないのが惜しまれる。
  • 再現度の高い街中の風景:巨額の予算を投じただけあり、町や城といったシーンの再現度は高い。特に【武器と防具の店】に並んだ数々の武器防具は劇中イメージそのものであり、特に【てっかめん】がかっこいい。
  • まさかのあらくれ:何と、シリーズ髄一のインパクトを誇る【あらくれ】までも、忠実に再現されている。後にDQ8において等身大のあらくれが登場しプレイヤーを驚かせたが、それよりも15年以上前にまさかの実写版が存在していたのである。スタッフロールに名前がないため、誰が演じていたのかは不明だが、その無骨な肉体はあらくれそのものである。

ちなみに、この作品で使用された【ロトのつるぎ】の塩ビレプリカも市販されていたが、すでに絶版になっている。
 
なおFC版DQ1~DQ4の【公式ガイドブック】に掲載されている武器や防具、アイテムのイラストは、この作品を担当したガイナックスによって描き起こされた。
 
ドラゴンクエストシリーズとしては、貴重な実写作品である。これ以降、実写作品は、クラシックバレー作品や実写CMを除けば、20年以上後の【勇者ヨシヒコと魔王の城】を待つことになる(あちらはあくまでもパロディ作品であり、公式な実写化作品ではない)。全体に漂うB級臭などからは、今見るとヨシヒコに近いものが感じられないこともない。しかし、方や1億5千万円もの巨額の制作費を投じた作品、方や低予算を売りにした作品であり、それらにある種の共通点が見られるのは皮肉な話である。
あくまでドラクエシリーズの世界観をもとにしたオリジナルのイメージ映像作品としてみたほうがよいだろう。

楽曲

この作品内で演奏されたオーケストラ楽曲の一部(【序曲】やDQ2の曲)はそれまで出ていたサントラとは異なるアレンジが使われ、これらのアレンジが後にDQ5やリメイク版DQ1・2のサントラ以降でも採用されている。
 
使われた楽曲は以下のようにDQ1~DQ3の中からの選りすぐり。
【序曲】
【アレフガルドにて】
【遥かなる旅路】
【戦闘(曲名)】
【王宮のロンド】
【街の人々】
【村(曲名)】
【街】
【冒険の旅】
【洞窟(曲名)】
【戦い】
【戦闘のテーマ】
【果てしなき世界】
【ほこら(曲名)】
【海を越えて】
【おおぞらをとぶ】
【ダンジョン(曲名)】
【塔(曲名)】
【死を賭して】
【勇者の挑戦】
【フィナーレ】
【そして伝説へ】