【ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君】

Last-modified: 2024-04-09 (火) 12:13:16

・DQ本編シリーズ

DQ1DQ2DQ3DQ4DQ5DQ6DQ7DQ8DQ9DQ10DQ11

DQ1・2DQ1・2・3BSDQ1DQ10オフライン

DQ8関連一覧
キャラクター&声優 - 地名 - スキル - 呪文 - 特技 - 装備品(武器/よろい/たて/かぶと/装飾品) - 道具 - モンスタースカウト) - 称号 - 音楽 - 台詞 - 裏技

作品データ

『ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君』
オリジナル版
発売日2004/11/27
対応環境PlayStation 2
媒体DVD-ROM
型番SLPM 65888
価格(税5%込)9,240円
CERO区分全年齢
移植・リメイク
対応環境発売日
iOS, Android2013/12/12
ニンテンドー3DS2015/8/27
廉価版(アルティメットヒッツ)
対応環境発売日
PlayStation 22006/7/20
海外版
対応環境発売日
PlayStation 2北米 2005/11/15
豪州 2006/4/12
欧州 2006/4/13
iOS, Android2014/5/28
ニンテンドー3DS欧米 2017/1/20
豪州 2017/1/21

海外版タイトル
(英語)DRAGON QUEST VIII Journey of the Cursed King
(PS2欧州版英語)DRAGON QUEST The Journey of the Cursed King

公式サイト

概要

【ドラゴンクエストシリーズ】第8作。対応機種はPlayStation 2(DVD-ROM)。開発は【レベルファイブ】が初担当。
2002年(平成14年)11月29日に発表され、2年後の2004年(平成16年)11月27日に発売された。21世紀最初のDQシリーズ本編新作。
開発は【エニックス】単独時代から行われていたが2003年4月1日にスクウェアと合併し、結果として【スクウェア・エニックス】として発売された最初の本編新作となった。
当日の発売開始時刻は午前7時とされた。また、当時のスクエニのゲームソフト(DQ関連ではPS2版DQ5・スラもり・いたストSP)を宣伝する「SQUARE ENIX DVD PRESS 2004 WINTER」が購入時に付属された。
 
ドット絵を用いていた前作までとは一線を画し、PS2の性能をフルに活かしてキャラクターをトゥーンレンダリングによって等身大のポリゴンで描写し、アニメを意識した完全3Dのグラフィックとなった。
これによってイベントシーンの迫力が大幅に増したほか、冒険感が出て色々なところに行って探索ができるような仕組みが取り入れられた。
グラフィックの進化だけにとどまらず、戦闘での心地よさを実感できる「テンション」、キャラごとの個性を活かした育成ができる「スキル」、アイテムの合成など、以降の作品の礎となる新システムを多数導入した。
一方、これまでは章立て・親子三代・夢と現実・過去現代とスケールの大きいストーリーが展開されてきたが、探索に重点が置かれた今作ではストーリーを複雑にすると迷ってしまうという理由で、比較的シンプルなストーリーになった。
 
本作の完全3D導入を機に、モンスターズやバトルロードなど外伝を含めたDQシリーズ全体で完全3D・トゥーンレンダリング化の流れが加速することになった。
 
2005年にはスクエニ時代のDQとして初の海外展開が行われ、北米のほか欧州などにも進出した。
2006年7月20日には「アルティメットヒッツ」のレーベルで【廉価版】が発売されている。
後の2010年代にはスマートデバイス(スマートフォン・タブレット端末。以降スマホ版と表記)とニンテンドー3DS向けに移植された。

開発

本作のプロジェクトは、『いただきストリート3』の制作が終了した後の2001年末より始まったと見られる(『月刊Vジャンプ』2002年1月号(発売は前年11月)記事の【堀井雄二】の発言より)。
これまでDQシリーズを7作品を出してきた堀井は、この頃になるとさすがにネタが枯渇しかけており、次回作をどのようなテーマにするか悩んでいた。
その末、ゲーム機の進化によってゲームの表現も変化してきていることを踏まえ、「頭でイメージしたものをそのまま表現する」という方向性を決定した。
そこにエニックス社員によるコンタクトをきっかけにレベルファイブが開発会社の候補に挙がり、同社を含めた複数社によるコンペが行われた(詳しい経緯については【レベルファイブ】の頁を参照)。
同社の作った完成度の高いプロトタイプを見た堀井はその出来に感動し、その結果レベルファイブが本作の開発会社に決定した。
『週刊ファミ通』2002年3月1日号掲載ニュースによれば、遅くとも2002年2月までには開発会社が決まっていたようであり、同時期に前作に関わっていた【ハートビート】が開発からの撤退を表明している。
対応ハードにPS2を選んだ理由については、発表当時のエニックス社長【本多圭司】が「PS2ありきでDQ8を作るのではなく、出てきた案を実現するのに適したハードは何かを検討した結果、PS2での開発となった」と語っている。
なお、前作開発終了時から構想にあったオンライン対応については、本作では見送られている。
 
本作の制作にあたって、制作スタッフは全てのDQシリーズを遊び研究し尽くしている。
たとえばフィールドマップについては最初、大陸1つ完成したところで一旦すべてボツにして、どんなフィールドがDQらしいかを過去のDQで徹底研究してから作り直している。
戦闘時における効果音についても、魔法がかかりヒットし音がするまでの時間を、ストップウォッチを使用し過去作品と比べるなどした。
このほかにも、ウィンドウを閉じる際にはFC時代に合わせてわざと閉じるスピードを遅くするなど、旧来からのDQファンを意識した演出が採り入れられた。
 
【鳥山明】のキャラクターを3D表現で動かすにあたっては、アニメ版【ドラゴンボール】シリーズをひたすら研究。この影響でリアクションの仕方など鳥山作品独特の仕草が見られる。
動物やモンスターの動きについては実際の動物の動きを観察し、戦闘中のキャラの動きはレベルファイブの社員が実際に剣を振るなどの動きをすることで表現方法を練っている。
戦闘はこのような主人公たちやモンスターの動きを楽しんでほしいということで、【エンカウント】率は低めに【トヘロス】の持続時間も長めに設定された代わりに、戦闘自体はあえて長めに調整している。
イベントではキャラが表情を変えたりリアクションをしたりする関係上、それとシンクロさせるために台詞の作り方を変更しており、BGMに合わせてシーンを作ったところもある。
また、レベルファイブは最初、主人公にもかなり演技をさせていたというが、堀井のNGが入り、アクションを減らしている。
 
堀井の想像以上にフィールドが広くなってしまい、このことから規模が削減されたダンジョンなどもある。例えば最初のダンジョンである【滝の洞窟】はさらに2層ほどあったのだが、迷ってしまうことから削られた。
また町では従来1マスの記号表現だった【階段】も今回はリアルな大きさで描かなくてはならなくなり、このことなどから従来のような町の作り方ではマップが大きくなりすぎてしまったために、こちらもサイズダウンを行っている。
 
シナリオの全体像の制作では、まずラスボスの設定から取りかかっている。
 
快適なプレイのために、高度な技術によってゲーム中のローディング時間の短縮も図られている。全体を見れば前作ほど短いわけではないが、エンカウント時の画面遷移時間はROMカセット時代とほとんど変わらないような感じになっている。
 
メーカーからの第一報は2002年11月29日にエニックスのウェブサイトで発表され、これは同社とスクウェアの合併が発表されたすぐ後のことであった。さらに12月3日発売の【週刊少年ジャンプ】2003年1号で画面が1点のみ公開された。
翌2003年にはレベルファイブが求人広告を『週刊ファミ通』に掲載しDQ8開発スタッフを募集。8月には主人公の公式イラストと多数の画面が公開された。
2004年3月に【サブタイトル】【タイトルロゴ】、そして仲間キャラクターが正式に発表され、同月に出たPS2版DQ5に、本作のゲーム映像を収録したCD-ROM「プレミアム映像ディスク」が付けられた。
6月17日には発売時期を「今冬」とアナウンスし、そして9月17日に「2004年11月27日発売」と正式決定。
延期の発表は無かったが、初回発表時に発売予定時期をアナウンスしていたDQ6・DQ7・DQ9などと違い、今作の発売予定時期については先述の2004年6月17日に至るまで一切公表されなかったので、それ以前に内部で計画の延期が本当に無かったかどうかまではわからない。
 
(参考:【月刊Vジャンプ】2004年12月15日増刊号、『週刊ファミ通』2002年12月20日号・2004年12月10日号・2014年12月25日号(PS20周年特集)、『GAME WATCH』2005年1月11日付記事 など)

作品の特徴(オリジナル版)

移動中・戦闘中ともに完全3Dとなったため、それに伴う変更点が多く見受けられる。
移動中の仲間会話のボリュームは前作よりも縮小されたが、表現がリアルになったのに伴い、イベントシーンでの仲間たちの台詞は仲間同士の会話も含めてかなり増えている。
一方で、【パルプンテ】【しょうかん】のように文字だからこそ簡単に表現ができた要素がボツになったりもした。
 
システム面では、パーティ組み換え・スタンバイや転職システムが全て無くなりパーティ面・育成面とも自由度は低下した。代わってキャラごとに異なるスキル制の導入によって【特技】【武器】と関連付けられるようになり、その結果DQ5以前のようにキャラの能力的個性が活きるシステムに戻っている。
また【MP】を使う特技が大半を占めるようになった。
戦闘の難易度面は序盤から終始高めであり、強力な全体攻撃を行うモンスターがかなり早い段階で出現したり、ズーム機能を活かして小型に止まらず大・中型モンスターまでもが多数で群れを成して出現したりすることも多い。

演出面

リアルに表示されるようになった分、全体的に【鳥山明】色がとても強くなっている。
キャラクターの動きが細かくなり、扉を開ける、宝箱を開ける、本棚の本を読む、壷や樽を持ち上げる、天井に頭をぶつけるなど一つ一つの動作が丁寧に表現されるようになった。ドット絵時代のような足踏みはしなくなった代わりに、立ち止まっていると手を組んだり背伸びをしたりといったキャラごとに異なる動きをする。
フィールドマップ上の町や城などは等身大の表現に変化。家の中の飾り絵などオブジェクトもかなり細部まで凝った描き込みがなされている。町の看板などでは独特の形状をした文字が使われるようになり、これも以降のDQ作品で共通化された。
イベントシーンは、キャラクターの配置や視点変更の都合上などで一旦画面が暗転し、リアルタイムムービーという形で展開されるようになった。船入手時など一部シーンではプリレンダリングムービーもあるが、画面のリアル度については通常画面と変化なく、装備が無くなっているなど細部を除いては違和感のない描写になっている。
 
戦闘ではこれまでの一人称視点での文字メッセージを重視した演出から脱却し、3D空間による三人称視点のビジュアル重視演出になった。DQで初めて主人公たちの姿が映るようになり、味方と敵が画面内で対峙する。
戦闘開始時とコマンド入力時は従来と同じ一人称視点でウィンドウの配置もDQ2以来のものと同じだが、待機中もモンスターは一定時間ごとに特定の動きを見せる。
そしてターン中はウィンドウ類が一切排除され、画面全体でアニメーションが描かれる。敵味方双方に各種行動時のモーションが用意され、それに合わせて視点も目紛しく切り替わる。
単体への物理系攻撃の場合には標的に飛びかかって攻撃をする様子が描かれ、その際のカメラアングルはランダムに変わる(待機位置は固定で、行動後は元の位置に戻る)。それ以外では行動者→標的の順に正面からのアップが映される。
ダメージ値や回復量などの数字も対象キャラから飛び出す形で表示され、ダメージ・HP回復・MP回復・テンションでそれぞれ数字の色とフキダシの形が異なっている。
複数対象の呪文や特技の使用時は、ダメージ技や各種息攻撃の場合はエフェクトが全員一度に表示されるが、それ以外の回復や補助・即死などは従来のように左側から一体ずつエフェクトが入る。
【眠り】【混乱】などの状態変化の描写も細かくなり、残りHPの低くなったキャラは苦しそうな顔・体制になる。
従来のようなメッセージ表示は画面下にテロップ形式で表示される。前作同様一度に2行までの表示で、ダメージも表示されるが、複数攻撃の場合は平均値、連続攻撃の場合は合計値だけが出る。
画面隅にHP・MPを常時表示する仕様は無いため、味方の残りHPも変化時にキャラの頭上に表示される。
 
解像度が細かくなり文字を読みやすくなった影響か、DQ5以来メッセージウィンドウとそれ以外とで異なっていた文字の大きさが統一された。フォントはウィンドウの文字に「DFP中太丸ゴシック体」、戦闘でのダメージなどの数値に「Popジョイ」を使用。
カーソルの形は点滅する三角形から、剣の形に変更された。
シリーズで初めてワイドテレビ(16:9)での表示にも対応し、ゲーム内でカスタマイズすることでキャラなどの横幅が伸びることなく表示させることができる。
 
なお、今作からは日本国内での発売当初より海外展開を考慮し、あらゆる場所の【十字架】の形状がΨ型に変更されている。
 
楽曲の数も今回はイベント曲などが大幅に増加。エンディング曲の【大聖堂のある街】【空と海と大地】のメドレーがシンセサイザー音源、それ以外はPS2の内蔵音源を使用している。
効果音は屋外にいると鳥のさえずりや虫の声、夜間にはフクロウの鳴き声などが聞こえ、主人公が走るときの足音も石畳の上・木の板の上・草の上・砂の上とでそれぞれ違うなど細かく作り込まれている。
一方、【キャラクターボイス】は日本語版では採用されていない。
楽曲の一覧はこちらを参照。

主なシステム

パーティ・プレイヤーキャラクター

登場する【プレイヤーキャラクター】は4人。今作はNPCの【トロデ】が操縦し【ミーティア】の引く【馬車】とともに旅をするが、組み換え・スタンバイのシステムは無くバトルメンバーは完全固定である。馬車は錬金釜(後述)の使用可否にのみ関係する。
仲間キャラはストーリー進行により加入や一時離脱がある。
今作では職業・肩書きともシステムとしては存在しないが、DQ5以来曖昧になっていた勇者系・戦士系・僧侶系・魔法使い系といった各キャラの役割が今作でははっきりと分けられ、バランスのとれたメンバー編成になっている。
 
また装備が外見に反映されるようになり、武器は移動中・戦闘中双方、盾は戦闘中のグラフィックに反映される。胴体や頭部は基本的にキャラデザインに準じているが、ゼシカと主人公にはいわゆる「おしゃれ装備」があり、一部の装備(単品あるいは組み合わせ)により服装が変化する。

スキルマスターシステム

転職システムに代わって【スキル】システムが初登場し、旧来からのレベルアップ成長システムと共存する形になった。
各キャラはそれぞれ武器3種・格闘・固有スキルの計5カテゴリーのスキルを持ち、格闘以外のスキルはキャラごとに異なっている。
レベルアップの際にはステータスアップや呪文習得に加えて「スキルポイント」が一定数得られ、それを成長させたいスキルに振り分ける。そしてスキルポイントが一定値まで上がると関連した特技や呪文を習得したり、能力が上がったりする。
これに伴って今作からは【武器】が系統別(剣・槍・杖など)に分類され、キャラごとに扱える系統が決められるようになった。武器のスキルや格闘スキルで覚えた特技の大半は、該当する装備状態でないと使えない。
レベルアップで覚える呪文は固定されているが、それ以外の呪文や特技はスキルの上げ方によっていろいろと変わり、それによって戦術も変わってくるのが本作の特徴。
 
ただし今作ではスキルポイントを所持する概念が無く、得られたポイントはすぐに使わなければならない。そのうえ一度振るとやり直しはできないので、慎重に振る必要がある。さらにレベルによって1つのスキルに振れるポイントの上限が決められているため、完全な一点集中はできない。
移動中にスキル振り分けができるアイテム【スキルのたね】もあるが、レアアイテムとなっている。
 
スキルの一覧はこちらを参照。

フル3Dの移動画面

本作では、トップビューだった前作までとは大きく異なる後方視点の3Dマップとなった。
移動画面ではパーティに何人いようとも、表示されるのは先頭に設定しているキャラのみであり、「なかま」コマンドを使うと仲間キャラ全員の姿を見ることができる。なお同行するNPCは操作キャラの後についてくる。
 
キャラ移動は従来の十字キー主体からアナログスティック主体(十字キー操作も可能)に変わり、操作により歩きと走りを使い分けられるようになった。
カメラは水平方向だけでなく垂直方向の角度もある程度変更可能。画面左下には向いている方角を示すコンパスが表示される。
また一人称視点(先頭キャラの目の位置からの視点)で前後左右上下を見回す機能も搭載され、これを使った謎解きも用意されている。
 
【便利ボタン】(△ボタン)で従来と同じく【宝箱】【タンス】【袋】を調べる、【本棚】の本を読むといった各種アクションを行う。【壷】【樽】は前作と同じく持ち運ぶ仕様が続投されたが、運んでいる時は動きが遅くなる。この他【扉】も便利ボタンを押して開ける方式に戻った。
【地図】(□ボタン)はフィールドマップのみならず町・ダンジョンでも見られるようになった。世界地図は従来同様アイテムの入手が必要で、ダンジョンでは内部の宝箱から地図を入手することで利用できるようになり、町の地図は最初から表示できる。
 
今作では【昼と夜】のシステムも3作ぶりに復活。
今作からは静止中であっても時間が流れるようになった。また町の中でも屋外なら時間が流れ、昼夜が切り替わる。
道具や呪文・特技で時間を操作することはできないが、【宿屋】で「泊まる」と朝になるほか、【休む】ことで昼間から夜にすることも可能になった。
 
なお通常の雑魚敵との戦闘は従来どおり非シンボル式エンカウント(【歩数エンカウント】)である。

フィールドマップ

視点が変わったことによりフィールドマップの仕様も変化し、従来は通り道でしかなかったフィールドマップ自体にも価値観を持たせる工夫がなされた。
町から町までの間には街道や案内標識が設けられ、これに沿っていけば大抵は目的地に辿り着けるようになっている。
しかしフィールドマップには貴重なアイテムの入った宝箱や、チームとして味方に付けられるスカウトモンスター(後述)が特定の場所に点在し、隅々まで探索することでこれらを発見できる。
地上を高速で移動できる乗り物も初登場し、中盤のイベントをこなすとキラーパンサーに騎乗できるようになる。
 
今作のフィールドマップでは地続きであれば画面切り換えを伴わずにどこまでも行くことができる。
その一方、船がリアルサイズで描かれるようになった関係などで、乗船や飛行の際は地上とは別の専用マップに切り替わるようになった。
 
モンスターの生息は、前作までは地形に関係なくエリアのみで分けられていたが、今作は平地と森・砂浜といった地形によっても現れるモンスターが異なるようになった。さらにDQ3・DQ4と同じく昼間と夜でも違いがある。

錬金釜によるアイテム合成

2種類または3種類の【アイテム】を合成させて別のアイテムを生み出すシステムが【錬金釜】として初登場。合成の材料専用のアイテム、いわゆる「素材」も多く登場した。
錬金釜は馬車があればいつでも利用でき、合成するアイテムを放り込んで一定時間移動すると「チーン」という音とともに目的のアイテムが完成する。必要な移動時間は強力なアイテムほど長い傾向がある。
この錬金釜を使わないと入手できないアイテムも多い。
 
目標物と必要なアイテムを記した「レシピ」は各地で得られるが、一部は曖昧な表現になっており、そのアイテムが何かはプレイヤー自身が推測する必要がある。
今作ではレシピを入手しなくても合成が可能であるため、あらかじめ材料を知っていれば強力な武具を早期に入手できたりするが、中には一度実行してしまうと取り返しのつかなくなる貴重品を消費するレシピも存在する。

テンション

戦闘では、前作までの【ちからため】などの発展形として【テンション】が導入された。
テンションは【ためる】コマンドなどで高めることができるほか、特定のアイテムなどで全員のテンションを上げることも可能。1回上げるごとに「5あがった」「20あがった」「50あがった(ハイテンション)」「100あがった(【スーパーハイテンション】)」となる。
テンションが上がっている時に行動するとその効果がテンションの段階に応じて大きくなる。物理攻撃だけでなく攻撃呪文・特技、回復・補助呪文、【ぼうぎょ】など様々な行動に適用され、テンションの効果を発揮した後は元の「ふつう」の状態に戻る。
【ベホマ】のように効果が固定された行動やアイテム使用などはテンションの対象とならず、これらは行動後もテンションが維持される。
もちろんテンションの概念は敵側にもあるほか、状態異常や敵の【いてつくはどう】などによりテンションが解除されることもある。
 
今作の【エレメント系】【ゾンビ系】など一部の敵はダメージカット能力を備えており、テンションが上がっていないと倒しにくくなっている。

モンスターチーム

DQ5などで登場した【仲間モンスター】システムのアレンジ版。
ただし今回のモンスターは命令不可のNPCであり、パーティに加わるのではなく、パーティとは別の「チーム」として戦わせるシステムとなった。
 
一定条件を満たした後、フィールドマップ上の特定の場所で【スカウトモンスター】に接触して戦闘し(この戦闘に限り【シンボルエンカウント】である)、勝利すればそのモンスターをスカウトできる。そしてスカウトしたモンスターは最大3体組み合わせてモンスターチームを組み、闘技大会である【モンスター・バトルロード】に参加させることができる。
バトルロードはランクを勝ち抜いていくことで賞品がもらえて上位ランクへの挑戦権が得られるほか、持てるモンスター数が増えたり新たなスカウトモンスターが出現したりで結成の幅が広がっていく。
さらにEランククリアで習得する【チーム呼び】を使えば、外部の戦闘でもチームを呼び出して一定ターンの間戦闘を任せることが可能になる。
モンスターの組み合わせによっては一定確率で【必殺技】が発動する場合もある。
 
スカウトモンスターの一覧はこちらを参照。

戦歴画面

PS版DQ4で登場した【戦歴】システムが、今作からのナンバリング作品では標準搭載となった。今作では「戦いのきろく」という名称。
勝利・全滅・逃走などの回数や走破距離・1ターン最大ダメージなどが記録され、画面下部ではトロデが各数値や状況に応じたコメントを話す。
また、前作の【モンスターずかん】が今作からは【討伐モンスターリスト】として戦歴内に記録され、従来の図鑑で記録された討伐数などのほか、生息地や【系統】【まめちしき】なども閲覧できる。
これに加えて新たに【収集アイテムリスト】【錬金レシピノート】も戦歴に記録される。
 
戦歴画面とは別に、【つよさ】コマンドで「ぜんいん」にカーソルを合わせると、【プレイ時間】に加えて現在の預金額【ちいさなメダル】カジノコインの所持数が表示されるようになった(こちらはPS2版DQ5からの採用)。

その他の変更点

キャラ・育成・呪文特技関連

アイテム関連

  • 入手時のポップアップやアイテム収集リストではすべてのアイテムに対して専用のアイコンが用意され、どんな形のアイテムかが画面で確認できるようになった。
  • 入手したアイテムの格納先は、前作まではキャラの持ち物が優先だったが、今作からは一部イベントアイテムを除いて【ふくろ】に入るようになった。
  • シリーズで唯一、【売値変動】システムを導入。主に錬金で作成できるアイテムが対象で、一度目はかなり高値で売れるが、数回売り続けると値下がりする。

移動中

  • 【しらべる】コマンドが削除され、便利ボタンに一本化された。
  • 表示される台詞は×ボタンでGB版DQ1・2と同様に一括表示できるようになった(店などの定形台詞は除く)。
  • アイテムやゴールドを拾得した時は、メッセージウィンドウを消すことなくそのまま動けるようになった。
  • 【仲間会話】は専用コマンド【なかま】で会話画面を呼び出し、話す相手を選ぶ形式になった。
  • 【どうぐ】のサブコマンドの「そうび」は装備中のものに対しては「はずす」に変化するようになった。また、どうぐ整理とふくろ整理コマンドが「さくせん」から「どうぐ」配下に移動した。
  • 【さくせん】の各サブコマンドについての簡易な解説が表示されるようになった。「せってい」では画面とサウンドの設定が可能。

施設・寄り道関連

  • まとめ売りが導入され、さらに本作独特の仕様として複数種のアイテムを一度に売却できる。
  • 【カジノ】のミニゲームは3種類。
    • 【スロット】:リーチやボーナスゲームが廃止され、DQ4と同じ3列5ライン方式に回帰した。
    • 【ビンゴ】:新ゲーム。10回以内に列が揃えば勝ち。
    • 【ルーレット】:新ゲーム。どこにボールが入るかを予想して賭ける。

戦闘関連

  • フィールドマップやダンジョンに場面を切り替えて最初の戦闘やボス戦の冒頭では、主人公たちが武器を構えるアニメーションが挿入される。逆に戦闘に勝利した際は毎回、武器を収めるアクションが見られる。
  • 伸縮拡大機能により、戦闘画面のスペースに関係なく、従来よりも多数の敵が1度の戦闘で現れるようになった。
  • メインコマンドには「はなす」に代わり【おどかす】が登場。成功すれば敵を追い払うことが可能で、アイテムを落としていくこともある。
  • 作戦には【おれにまかせろ】に代わって【テンションためろ】が登場。
  • 個別のコマンドは【そうび】が「ためる」に代わって削除され、装備の変更は【どうぐ】内で行う。ターンは消費せず、武器以外も変更可能で、移動中同様「はずす」ことも可能。
  • ターゲットを選択する際、従来のリスト形式のウィンドウに加えてモンスターの直上にもカーソルが出るようになった。また単体攻撃の際は、敵を【グループ】内の単体単位で指定できるようになった。
  • 味方PCが【息】攻撃を自在に使うことはできなくなったが、戦闘中に主人公が【チーズ】を使うことで【トーポ】がさまざまな息技を使うようになった。
  • 同じ姿・名前のモンスターでも出現場所によってステータスが異なるパターンが登場した。討伐モンスターリストには同じモンスターとして登録される。
  • 【ドロップアイテム】がノーマルとレアの2種類設定されるようになった。複数モンスターが一度に落とす現象も見られるようになった。
  • 【全滅】した場合は、パーティ全員が復活するようになった。

設定

舞台

本作の舞台も前作と同じく、他シリーズとの時間的・空間的な繋がりは示されない。
ただし、神鳥【レティス】のエンディングでの台詞でDQ3の固有名詞が登場し、本作を含めたすべてのシリーズが「別次元に存在する異世界として相互に関わりうる」という可能性を示唆した。
 
今作からはエリアごとに「◯◯地方」「◯◯国領」などのエリア名が設定されるようになり、討伐モンスターリストで確認できる。また、大陸ごとに草木の形や色などに違いが見られる。
施設面を見ると王国の数が3つのみと前作までより減少しており、代わりに【世界三大聖地】と呼ばれる聖堂や修道院が登場して【教会】がストーリーに大きく絡んでくる。
高い崖で船の上陸を拒む辺境の地域もあり、【隔絶された台地】には神鳥レティスを崇める民族、【人跡未踏の森】には善良な魔物や【エルフ】が暮らす。
 
乗り物は海上で古代船、陸上で高速移動用のキラーパンサーが登場。飛行手段は【神鳥のたましい】を使って鳥になって空を飛ぶというもので、【翼を持つ者の場所】と呼ばれる高い丘の上などに着陸可能となる。
 
設定上は今回も二重構造の世界であり、主人公たちの住む「光の世界」と、地形が光の世界と同じで色だけモノクロの【闇の世界】がある。
しかし2つの世界を何度も行き来したDQ6やDQ7と違い、今作ではほとんど光の世界のみで物語が進む。
闇の世界は中盤の一時期に訪れるのみであり、行動範囲も【闇のレティシア】周辺に限られるが、最終盤のいわゆる【異変後】にはこの世界のモノクロモンスターが光の世界を通常のモンスターに混ざって徘徊するようになる。
この他にフィールドマップの無い異世界としては【イシュマウリ】の住む【月の世界】が登場する。
 
クリア後に行ける【隠しダンジョン】は、天空に浮かぶ【竜神族の里】を中心とした【竜神族】の住む世界となっている。
 
地名の一覧はこちらを参照。

キャラクター

オリジナル版におけるPCは以下の4人。ゲーム開始時は主人公とヤンガスの2人パーティ。

 
上の4人以外に、パーティにNPCとして終始同行する以下の2キャラもメインキャラに含まれ、【鳥山明】によるイラストが設定されている。

  • 【トロデ】:トロデーンの国王。緑色の魔物の姿に変えられた。旅の途中で主人公に指示を出したり、戦歴画面でコメントを述べたりする。
  • 【ミーティア】:トロデの娘で、馬の姿に変えられている。中盤以降は夢や【ふしぎな泉】で一時的にではあるが本来の人間の姿を見ることができる。

 
さらに今作の制作にあたっては上記のメインキャラ以外にも、町のさまざまなNPCの容姿が鳥山によって多数描き起こされ、以降のシリーズ作でも基本的にそれらに基づいた外見が使用されている。
各国や町の重要人物に関しても、前作まではモブキャラと共通のグラフィックがほとんどだったのに対し、今作からは多くの人物に固有グラフィックが与えられた。
 
キャラクターの一覧はこちらを参照。

ストーリー

プロローグ

ある日、道化師【ドルマゲス】がトロデーン城内に封印されていたを奪い、その呪いの力で王女ミーティアを馬に、トロデ王を化け物の姿に変え、城中をイバラで覆ってしまう。
城の兵士であった主人公は奇跡的に呪いを免れ、トロデとミーティア、そして途中出会ったヤンガスとともに、ドルマゲスの手掛かりをつかむべく、彼に魔法を教えたという【マスター・ライラス】のもとへと向かう。

シナリオ

ライラスの住む【トラペッタ】の町を訪れた一行だったが、彼は既にドルマゲスによって殺害されていた。
主人公たちはトロデの助言に従い、人々の話に耳を傾けながらドルマゲスを追っていくが、行く先々でも特定の人物が殺害される事件が起き、彼を仇敵とするゼシカとククールが一行の仲間に加わる。
やがて【サザンビーク】王家の宝である【太陽のカガミ】を使って潜伏先の【闇の遺跡】に潜入しドルマゲスを討伐するが、それでもまだトロデたちの呪いは解けない。
この後ドルマゲスの杖を手にしたゼシカが操られてしまい、主人公たちによって正気を取り戻した彼女の口から、杖に封じられた【暗黒神ラプソーン】とかつてそれを封じた【七賢者】とその子孫に関する事実が明かされる。
杖はさらに他の者の手に渡っていき、主人公たちは暗黒神復活を阻止すべく、神鳥【レティス】の協力も得て杖の持ち主を追っていくが、【マルチェロ】の策略にはめられてしまい七賢者の子孫は全滅。杖を奪い返そうとする主人公たちだったが、最終的に暗黒神の復活を許してしまう。
主人公たちはやレティスや賢者たちの魂の力を借りて、暗黒神ラプソーンに立ち向かう。
 
本作では、行動範囲を制限する要素はDQ5~DQ7に比べると少なく、船入手後は海峡間の【浅瀬】も無いため行動の自由度が一気に高くなる。キラーパンサー関連や後半のカジノ関連などクリアしなくても良いサブイベントもある。
ただしメインストーリーは「邪悪な者を追う」という話の都合上、ほぼ一本道となっている。このあたりはDQ4の第五章に近い。
序盤の【マイエラ地方】【パルミド地方】ではククール加入を後回しにして先の町まで進むこともできるが、本来4人で攻略できるダンジョンを3人で攻略しなければならないため難易度が上がり、ククールのレベルが上がるのも遅れるため、メリットはあまり無い。
 
DQ6以来増加している「特定の人物の心情を追うストーリー」は今作も健在だが、主人公たちやラスボスとは関連の薄い話が多かった前作までと違い、今作ではその話の多くがラスボスやエンディングと直結する重要な位置づけとなっている。
また、人々の話を聞いているといわゆる王族や貴族の権力が強いことも窺える。マルチェロ周辺の話では、しばしば平民である彼の出世にからむ黒い話やそれを嫉視する感情が見え隠れする。
 
今作の【エンディング】ではラスボス戦や世界平和とは直接関連の無い部分での話が展開されるが、条件によって結末の異なるマルチエンドが採用された。
ゲームクリアした冒険の書では主人公の出生の秘密が明かされるショートストーリーが体験でき、それをクリアして再度ラプソーンを倒せば従来とは違ったパターンのエンディングを見られる。

反響

前作のムービーのせいで、発売前には3D化に対する批判の声が上がっていたことがあった。
『週刊ファミ通』2002年12月27日号によると、2002年末の画面発表時における本作の第一印象は「びっくりした」というものが多く、「3Dになってよかった」「鳥山明の描いたキャラが魅力的」という肯定的意見と、「DQらしくない」「2D表示は無いの?」という否定的意見とが真っ二つに分かれていた。
 
しかしさまざまな点で賛否両論が多かった前作に比べ、グラフィックの大幅強化やストーリーがコンパクトにまとまった本作の発売後の評価は概ね高くなっている。【鳥山明】タッチの絵を上手く3D化できていたため、結果的に否定派の人たちも堂々納得という評価となった。
出荷本数は約370万本。国内のPS2ソフト第1位を記録し、前作に続いての快挙となった。
2005年にはCESA GAME AWARDS最優秀賞を受賞し、【日野晃博】が感極まる光景が見られた。
 
その後の『週刊ファミ通』の記念読者投票企画では以下の順位となっている。

  • 900号記念 心のベストゲーム(2006年) :4位(シリーズ中2位/8作。最新作であることが影響?)
  • 1000号記念 未来に伝えたいゲーム(2008年):17位(シリーズ中4位/8作)
  • 印象的だったPSタイトルTOP50(2014年):11位
  • 30周年記念 機種別 思い出のゲーム PS2部門(2016年):2位
  • 1500号記念 ゲーム総選挙(2017年):52位(シリーズ中4位/10作)

 
2021年12月27日にテレビ朝日で放送された『テレビゲーム総選挙』では54位(シリーズ中7位)にランクインした。

海外版・移植・リメイク

欧米版(PS2)

海外では前作まで【DRAGON WARRIOR】のタイトルであったが、今回からは【DRAGON QUEST】に統一されて【サブタイトル】も付くようになった。
北米版は2005年11月15日に発売され、合併により同一会社の製品となった『ファイナルファンタジーXII』の【体験版】が同梱された。
2006年4月にはナンバリングタイトルで初めて豪州・欧州にも進出。テキストは英語のほかにフランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語に対応している。
DQの国外売上としては初めてミリオンセラーを超える120万本を販売した。海外展開に苦戦していたDQシリーズの知名度を上げた作品であり、後に海外でDQ11を展開するときには看板役として本作の主人公のコスプレ装備が特典として採用された。
 
日本語版と比べると多くの点で仕様変更が行われている。
演出面では、声優による【キャラクターボイス】をシリーズで初めて導入したことが大きな特徴である。発声するのはイベント時が中心。なおボイスは英語のみ。
BGMは【東京都交響楽団】によるオーケストラ演奏版が用いられた(『交響組曲ドラゴンクエストVIII』に収録。未収録の曲は日本語版と同じ内部音源)。
 
インタフェース面での変更点も多く、メニューは文字のみで構成されている日本語版に対し、欧米版では視覚的にわかりやすいUIを導入。
移動中のメニューや買い物時は従来のマルチウィンドウ方式ではなくサブ画面に切り替わる形式となり、上部のタブで「Item(どうぐ)/Magic(じゅもん)/Attributes(つよさ)/Misc.(さくせん)」あるいは「Buy(かいにきた)/Sell(うりにきた)」のいずれかを指定する。アイテムは文字表記のリストではなくアイコンで指定する方式で、後にDQ9の装備画面にも活かされた。
パーティメンバーのステータス表示にはキャラの顔イラスト(鳥山明の公式イラストに準拠)とHP・MPゲージをナンバリングタイトルで初導入。
呪文や特技のリスト、及び戦闘中のアイテムリストでは、種別を表すアイコンが名称に併記される。
メッセージウィンドウでは、台詞を話している人物の名前が、ウィンドウ左上に突出して表示されるようになった。これは以降の日本国内作品にも採用されている。
 
その他、以下の変更が行われた。◆印は後述のスマホ版に、★印は3DS版に継承されている。

スマートフォン版

PS2版から約9年後の2013年12月12日、DQ1からDQ8までのスマホ展開の一環として配信が開始された。
DQ1に続いて2作目のスマホ作品となり、NTTドコモとのタイアップ商品「SH-01F DRAGON QUEST」にはプリインストールされた。
Android版はGoogle Playのほかに、2016年9月からはAmazonアプリストアでも配信されている。
開発にはゲームエンジン「Unity」を使用。なおレベルファイブは移植には関らず、開発は【トーセ】が担当している。
海外各国でも配信が行われているが、スマホ版は海外版も同一仕様であり、ボイスは無い。
 
配信当時は既にスマホが広く普及していたが、スマホ版DQ8の開発については、まだガラケーが多数派だった2010~11年頃から行われており、研究に1年以上を費やしている。
従来はなかなかできなかった「1つのプラットフォームでDQ全作品を出す」(DQ9が対象外なので本当に全作品ではないが)をスマホで実現するため、DQ7までの作品と合わせて制作が進められていたが、どの作品から出すかについては「PS2レベルのゲームがスマホで動く!」というインパクトの強い本作を早期に発表することになった。(『週刊ファミ通』2013年12月19日号)
F2P(free to play=基本無料・追加課金制)方式の多いスマホゲームの中、本作を含むDQシリーズ本編は従来のゲームソフト同様に買い切り式の方針を貫き、その結果スマホアプリとしては破格の2,800円(リリース当時)という値段が話題になった。
容量は約1.8GBで、これも当時のスマホアプリとしては巨大な部類であった。古い機種で購入する場合は空き容量にも注意のこと。
 
内容はほぼPS2版のベタ移植だが、一部上述の欧米版(PS2)での変更点が反映されており、またDQ9以降のシステムからの反映も見られる。
【中断】機能のほか、万一のためのバックアップ機能として【オートセーブ】も搭載された。
画面上のコンパスは削除されたが、地図を画面上の枠内に表示させたまま移動することができるようになったほか、PS2版と比較して高めの視点から操作できるようになり、若干迷いにくくなっている。ただしGoogle Mapsのストリートビューなどとは視点変更の操作方法が異なる。
 
解像度の関係上、トゥーンレンダリングによるキャラ描写はPS2版や3DS版よりも綺麗に見える一方、プリレンダリングムービー部分はPS2版の映像をそのまま使っているため、ややボケたようにも見える。
音楽や効果音は画面タッチ音を除いてPS2版からほぼそのままだが、走行中の馬車の音、風の音、虫やニワトリの声、草むらのチョウなどPS2版に存在した細かな演出が一部削除されており、影の描写も丸影に簡略化されているなど、完全再現には至っていない。
またスマホ版DQ8のみの特徴として、メッセージ以外の各種ウィンドウの枠が金色の装飾の施されたデザインとなっている。ウィンドウ・メッセージのフォントはフォントワークス社の「学参丸ゴM」を使用。
 
主な仕様変更内容は以下のとおり。多くはこの1年半後に発売された3DS版にも受け継がれているが、スマホ版独自となった要素もある。
 
3DS版にも継承されている仕様

  • 【冒険の書】選択画面では、全キャラの顔とレベルが表示されるようになった。
  • ルーラやキラーパンサー・神鳥のたましいをすぐに使えるショートカットアイコンを搭載。
  • マップ上のNPCやオブジェに近づくと【アクションアイコン】が表示されるようになった。
    • スマホ版ではアイコンをタップすることで会話や調査ができ、NPCの場合は周囲に表示される円の中に入ると自動で会話が始まる。
  • ストーリー上で主人公たちに同行しているNPCは顔アイコンとして表示される形式になり、アイコンをタップすると会話可能。
  • 壷と樽は調べると持ち上げてその場で壊す仕様に変更され、持ち運びが不可となった(【ジョロの実】のみ持ち運び可)。
  • 【世界地図】を最初から所持しているほか、ダンジョンマップも最初から表示されるようになった。PS2版で地図が入っていた宝箱は中身がゴールドに変更。
  • 【つよさ】画面および教会訪問時に次のレベルまでの経験値が表示されるようになった。このため【おつげをきく】が削除。
  • DQ9以降と同様にスキルポイントの所持が可能となり、振り分けが強制ではなくなった。移動中にも振り分け可能で、振り分ける時には各スキルの習得内容も確認可能になった。
  • 【主人公】にも作戦を設定し、AIに自動判断させることができるようになった(シリーズ初)。
  • ククールの【グランドクロス】の名称が【天国への階段】に変更、エフェクトも欧米版のPearly Gatesのものに。マルチェロのグランドクロスはオリジナル版と同じ。
  • 【錬金釜】がDQ9に近い仕様に変更。待ち時間がなくなり、またレシピを指定すると自動的に材料が選別され、作成する数量の指定も可能に。
  • 【地雷錬金】への救済措置が施された。

スマホ版独自の仕様

  • ステータス表示はDQ10オンラインに似たフォーマットで、顔イラストとHP・MPのゲージが数値と併せて表示される形式である。表示位置は画面左下。
  • 移動中のメインコマンドは「はなす」が削除され「ちゅうだん」が追加された。
  • 呪文・特技の選択時は一度タップすると説明文が表示され、「つかう」ボタンで実行となる。【どうぐ】コマンドでは【すてる】が廃止されている。
  • 戦歴画面のトロデのコメントが削除、および表示内容が一部変更。
  • ON状態で自動的に走り続ける【オートラン】機能をDQ10オンラインに次いで搭載。
  • 【ゴールド銀行】に1ゴールド単位で預けたり引き出したりできる。
  • 戦闘のコマンド入力時はジョーカー以降のモンスターズシリーズに類似した、他のナンバリングタイトルとは異なる本作独自の方式を導入。
    各キャラのステータスと作戦ウィンドウが縦に並んでおり、「おどかす」「にげる」ボタンも同画面に配置。最下部の「これで戦う」ボタンで指示が確定されターンが開始される。
    作戦の【めいれいさせろ】は存在せず、命令・作戦変更をしたいキャラは作戦欄をタップして個別コマンドか作戦の指定を行い、指定後は次のキャラに移る。変更が無かったキャラは予め設定されていた作戦(2ターン目以降は前ターンの作戦・命令)で行動する。
    命令中はDQ9のように各キャラのターゲットが色付きマークで示される。
  • プレゼントコードによる配信アイテムとして超スキルのたね・【超せいすい】【元気玉】が追加(2015年9月で配信終了)。受け取りはタイトル画面で冒険の書を指定して行っていた。

ニンテンドー3DS版

2015年8月27日に、ゲーム機における本作の初移植として登場。パッケージ版とダウンロード版()の双方で発売された。開発はスマホ版から引き続き【トーセ】が担当。
出荷本数は約86.4万本。スマホ版から日が浅いこともあってか、DS天空シリーズや3DS版DQ7よりも勢いは劣っている。なお【廉価版】は発売されなかった。
2017年1月には欧米などでも発売された。
 
オリジナル版でNPCとして登場していた【モリー】【ゲルダ】がストーリー後半で新たなPCとして仲間になるようになったほか、アイテム・モンスター・シナリオ・ダンジョンなど追加要素満載の作品となった。
3DSならではの【すれちがい通信】を利用したお楽しみ要素や、冒険の書と連動可能なWeb上のメンバーズサイトも用意され、【メンバーズクエスト】も実施された。
クリア後のやり込みにも重点が置かれ、新特技によって【メタル狩り】による【レベル上げ】が容易になっていたり、従来と比べて【スキルのたね】【命のきのみ】をはじめとした増強アイテムが集めやすくなったりで、これまでのDQシリーズと比べても最強キャラ育成が格段にやり易くなっている。
システム面はスマホ版での変更点を多く引き継ぎ、さらに改良が加えられている。
一方元来DQ8のウリだったグラフィックは、ハードの性能や解像度の事情でPS2版やスマホ版より劣化している。
なお今回のキャライラストは、新規加入のモリーとゲルダは改めて描いているが、既存プレイヤーキャラの公式イラストの描き直しは行われず、PS2版時代のイラストをそのまま使い続けている。
 
HOME画面でのアイコンは鳥山明原画の主人公。カーソルを合わせると敵が特技で奏でる【レベルアップの曲】が鳴る。上画面にはロゴとともに【トーポ】の走り回る姿が表示される。

演出面

サウンド面では欧米版(PS2)と同様に【キャラクターボイス】を導入し、日本国内のナンバリングタイトルでは初の採用例となった。
BGMも欧米版(PS2)同様にオーケストラ音源を採用(オーケストラ未収録の曲、MEはシンセサイザー音)。ただし使い回しではなく新規撮り下ろしで、若干透明感で劣っている。
SEはスマホ版と比較すると馬車や風の音など一部はPS2版のものを継承しているが、ニワトリや虫の声、戦闘開始・終了時の武器の金属音などはスマホ版と同じく削除されている。
 
PS2版から存在するキャラクターやオブジェクト、マップなどには大きな描写の変化は無く、等身もそのまま。
ただしCERO対策か、女性キャラや着せ替え装備のグラフィックが変更されている。基本的にハイレグがすべてホットパンツになったり、足を隠すようになった。
 
画面は3DS版DQ7と同じく、戦闘中・移動中とも上画面がメイン。ただし3DSの立体視機能には装備画面と戦歴画面のみ対応している。
下画面はステータスウィンドウや地図などの補助的な機能に使われるが、タッチ操作で地図メニューを表示させてスマホ版と同様のショートカット機能を使用できる(アイコンではなく文字による表示になり、「れんきんがま」「なかま」が追加)。
ステータスやコマンドのウィンドウデザインも基本的に3DS版DQ7のものを引き継いでおり、カーソルの指すキャラやアイテムのイメージが適宜枠内に表示される。ただし、全ウィンドウを一度に閉じる機能がなくなっている。
文字は大小サイズに分けられ、メッセージにはDQ9や3DS版DQ7のようにルビが振られている。フォントは従来のような丸ゴシックではなく角ゴシック体(イワタ新ゴシック体M)が採用された。
 
欧米版(3DS)はボイス有りだが、BGMはオーケストラ不採用でシンセサイザー音源が使われているバージョンと、日本語版と同じくオーケストラ音源を採用しているバージョンがある模様。
インタフェースは日本語版と同じマルチウィンドウ式であるが、個々のステータスウィンドウが横長スタイルになっている。

主要な追加要素

●パーティ人数の増加
登場PCが6人に増加。パーティが5人以上になるとスタンバイシステムが利用可能になるが、天空シリーズとは仕様が違い、バトルメンバーは必ず主人公+仲間3人。
また、モリーとゲルダが覚える新たな特技が追加された(一部はDQ9以降から逆輸入)。
新たな仲間2人の概要は以下。

 
●写真
【写真】システムをDQ10オンラインから輸入。移動中の風景を撮って保存し、飾り付けをすることも可能。【ポストカード】としてすれちがい通信での交換と評価もできる。
提示された人やモノを写真に収める【写真クエスト】も登場。一定条件下で出現するクエスト対象の【幻のモンスター】が追加された。

シナリオの変更点

●新たな回想シーン
PS2版では語られなかった過去のエピソードが追加された。

 
●ダンジョン・ボスの追加

 
●エンディングのパートナー選択
後半戦の【ゼシカ】復帰後に【リーザス村】【サーベルトのよろい】を受け取るイベントが追加された。
これをこなすと【エンディング】では通常パターンと真EDの双方で、従来のミーティアとゼシカのどちらをパートナーとするかを選択できるようになり、結末は計4パターンとなった。

その他の変更点

欧米版(PS2)やスマホ版から引き継いでいる事項については、上記の欧米版(PS2)スマホ版の「3DS版にも継承されている仕様」も合わせて参照。
 
全般

  • 【冒険の書】は2つ。DL版ソフトの場合は3DSに基本搭載されているバックアップシステムに対応しているため、擬似的にはセーブファイルは増やせる。
  • 【中断】が町などでも使用可能になった。

キャラ・呪文特技関連

  • ステータスの上昇はヤンガスのちからとククールのスキルポイントが調整された。
  • 既存の特技は【双竜打ち】の弱体化やMP消費特技の増加などのバランス調整が行われた。
  • 【戦歴】はPS2版と同じくトロデのコメントがある。

アイテム関連

  • 装備品が増加し、モリー用のとゲルダ用のが新たに武器の分類に追加。また外見が変わるおしゃれ装備が追加され、6人全員分が揃った。
    • 関連して、一部のモンスターのドロップの変更や錬金レシピの追加もされた。
    • 提携店舗や特典での配信限定アイテムも登場。一部は【装備レベル】が設定されている。
  • 錬金釜は、釜に入れられるアイテムが明確に表示され、それ以外は入れられないようになった。レシピは曖昧な表現がなくなり、全てのアイテム名が最初から明示されるようになった。
  • 【錬金術】がほぼ対策され、売値が下がったり、売り続けると赤字になるようになった。ただし【激辛チーズ】は除く。

移動中

  • 【仲間会話】画面がYボタンでも呼び出せるようになった。
  • メインコマンドはPS2版のものに【そうび】【せんれき】(どちらも「さくせん」コマンド内から移動)を追加した8択。そうびコマンドは3DS版DQ7と同仕様でキャラ外見を見ながら装備の変更ができる。
  • フィールドマップ上に、中身が復活・変化する【青宝箱】が追加。追憶の回廊には【紫宝箱】も登場した。
  • 【ルーラ】の行き先候補が増加(リーザス像の塔など)。

寄り道要素

  • 新たな【スカウトモンスター】が多数追加された。最終的に持てる匹数も12匹から21匹に増加。
  • 【モンスター・バトルロード】にSSランクが追加。
  • カジノでは【スロット】の柄が調整され、異様に777が揃っていた100コインスロットは儲けの期待値が1/4程に。【ビンゴ】はルールが一部変更された。
  • 一定条件を満たすとフィールドマップの特定の場所にランダムでDQ9の【サンディ】が出現する。アイテムをもらえるほか、写真クエストの対象でもある。
  • ストーリー後半以降の【ちいさなメダル】の入手可能枚数が増加し、景品も追加された。
  • 配信アイテムの受け取りや冒険の書のアップロードは、Wi-Fi環境下であれば移動中にさくせんコマンドでいつでも行えるようになった。

戦闘・モンスター関連

  • 海上以外でのザコ戦が【シンボルエンカウント】に変更された。【スカウトモンスター】はアイコンを表示することで区別されている。
  • 戦闘中の下画面は3DS版DQ7と同様のスタイルで、ステータスと作戦・指示内容が表示される。
  • コマンドUIはPS2版とほぼ同じ方式だが、カーソル記憶の仕様が独特で、前のターンで選択した行動がコマンドも含めて記憶される一方、一度戦闘が終わるとすべて初期位置に戻る。
  • メインコマンドに【いれかえ】【はやさ】が追加。「はやさ」で戦闘アニメーションのスピードを速くする高速モードへの切り替えが可能になった。
  • 【ぼうぎょ】してもテンションが下がらずに維持されるようになった。
  • 雑魚敵から貰えるゴールドが1.5倍に増加。また、序盤のモンスターの経験値が微増した。
  • レベルアップ時にHPとMPが全回復するようになった(シリーズ初)。
  • 後半以降の【ボス級モンスター】を中心にステータスや仕様が強化された。

マップ・イベント描写関連

関連作品

権利表記

PS2版
© 2004 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/LEVEL-5/SQUARE ENIX All Rights Reserved.
 
スマホ版
© 2004,2013 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX All Rights Reserved.
 
3DS版
© 2004,2015 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX All Rights Reserved.