【交響組曲ドラゴンクエストシリーズ】

Last-modified: 2023-03-18 (土) 07:52:16

概要

【ドラゴンクエストの楽曲】をシリーズごとにまとめた一連のオーケストラ組曲。
本編シリーズはDQ11まで【すぎやまこういち】自らの手により録音・リリースされており、ファンにはおなじみのアイテムとなっているが、DQ10のVer.2以降は未リリースである。
 
「交響組曲」と銘打たれたのは 【NHK交響楽団】によるフルオーケストラ演奏で1988年にリリースされたDQ3からで、以前にリリースされたDQ1は小編成のため単に「組曲」、エレキギターなどを交えた編成のDQ2には「ドラゴンクエストの世界」という副題が付けられていた(後の再販盤ではDQ2も「組曲」とされている)。
DQ1・DQ2いずれも後のリメイク版発売に合わせ再編曲され、交響組曲として発表された。
 
中にはいくつかの場面の音楽をメドレー形式で繋いだ楽曲もあり、新たに書き起こされる繋ぎ部分が楽しめるのも交響組曲版の醍醐味。
リメイク版での音源は基本的に交響組曲版での編曲を準拠としている。また、本編では流れない楽曲の"続き"に相当するパートも書き下ろされることがあり(主に容量の限られていた初期作品において)、そのパートがリメイク版で反映された例もある。
PS2版DQ5ではNHK交響楽団の演奏による音源がゲーム内で初めて全曲使用された。その後の作品においても【東京都交響楽団】の演奏による【序曲】などのオープニングテーマが使用されるほか、リメイク・移植版では全楽曲が使われることが多い。
 
DQにおける作曲は「頭の中で鳴るオーケストラの音楽をゲームの音に落とし込む作業」だとすぎやまは語っており、その意味ではこのオーケストラ版こそが楽曲本来の姿であるとも言える。
初期のFC作品において、たった3トラックのピコピコ音で表現されていた音楽が、フルオーケストラの演奏により命を吹き込まれ、真の姿を表す。その豊かな表現力に多くの人が圧倒され、興奮と感動に震えたことだろう。
N響の演奏による交響組曲DQ4のCDはアルバムチャートで1位を獲得。また交響組曲DQ3もロングヒットを続け累計60万枚を売り上げた。
そうした大ヒットを受け、日本レコード大賞の特別企画賞(DQ1,2,3まとめて)や日本ゴールドディスク大賞(DQ3、DQ4それぞれ)を受賞するなど、ジャンルの域を超えた快挙を成し遂げている。
 
生のオーケストラコンサートも各地で開催されており、かつては基本すべての公演がすぎやまによる指揮だった。その後は「自分が亡くなってもずっとDQのコンサートが続くように」というすぎやまの意向もあり、専門の指揮者による公演が増え、自作自演の機会は大変貴重となっていた。

1987年から2019年まで毎年夏に開催され、すぎやまが全曲タクトを振っていた「ファミリークラシックコンサート」のチケットは発売後数時間で(ナンバリング新作初演に至っては数分で)完売するなど、人気アーティスト公演並みの争奪戦となっていた。
またすぎやまは「青少年のオーケストラ入門になれば」「DQファンに”音楽のごちそう”の味を知って欲しい」と度々話しており、実際にDQコンサートで感動を覚えたファンがクラシック曲の公演に足を運ぶケースも多い。

すぎやま没後も本人の願い通り各地でコンサートが開かれており、翌年の2022年にはNHK音楽祭にて都響が準メルクルという世界的指揮者の元ドラクエを演奏し、その録画がNHKで全国放送もされた。このコンサートは前半が「交響組曲ドラゴンクエスト」のセレクション、後半がブラームスの交響曲第一番という異例の取り合わせになっており、ドラクエの楽曲がゲームという括りを超えて一つの古典的名曲としての道を歩みだしたとも言えるかもしれない。今後も時代を超えて末永く演奏されていくことを願うばかりである。

 
CDの演奏・録音を担当した楽団はNHK交響楽団(フルオーケストラ化以前の「組曲」1・2はN響の選抜メンバーからなる【東京弦楽合奏団】)、【ロンドンフィルハーモニー管弦楽団】、東京都交響楽団とそうそうたる顔ぶれ。
交響組曲はN響によりDQ3~5が、その後ロンドンフィルによりDQ1~7が録音・リリースされた。現在まで関係が続く都響に関してはシリーズ組曲が全て録音され、毎年主要なコンサートにおいて生演奏を披露する。
楽団ごとの特色や録音環境も様々であり、その違いを楽しむのもまた大きな醍醐味と言えよう。
 
交響組曲への編曲に当たっての編成は、以下の通り。
木管楽器:フルート2、オーボエ2、クラリネット2、バスーン2
金管楽器:ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、チューバ1
弦楽器:第1バイオリン14、第2バイオリン12、ビオラ10、チェロ8、コントラバス6
打楽器:パーカッション4
いわゆる変則2管編成(通常の2管編成に比べると、トランペットが1本多い)である。
また、フルート奏者はどちらもピッコロへの持ち替え、第2フルート奏者はさらにアルト・フルートへの持ち替え、第2オーボエ奏者はイングリッシュホルンへ、第2クラリネット奏者はバス・クラリネットへ、第2バスーン奏者はコントラバスーンへ、第1トランペット奏者はピッコロ・トランペットへの持ち替えがある。