Top > Backstory > Chronicles > Methods_of_Torture_The_Minmatar

Backstory/Chronicles/Methods_of_Torture_The_Minmatar

Last-modified: 2009-04-07 (火) 22:58:42

Copyright © CCP 1997-2009
原文はCCPに著作権があります

 
methods_minm.jpg

Methods of Torture - The Minmatar
拷問法 - Minmatar

 

しかし全てが終わり、血がぬぐい取られ、道具が掃除され元の場所へ戻され、犠牲者の残したものが運び去られると、Songは師に向き直って言った。「私にできるとは思えません」

 

はるかに年長のMalachaiは、彼を無言のまま見やった。二人は、尋問用の木造の小屋の外にあるベンチに腰掛けていた。小屋の中には藁が敷き詰められていた。外側には、様々な尋問道具が掛けられていた。

 

「その…血ではありません。痛みでもありません。そのようなものは問題ではありません」Songは言った。

 

Malacaiは黙ったままだった。

 

「ただ、その時が来たときに、上級拷問官 (a senior Tourturer) としての役目を全うできないのではないか、ということです」Songは土の上の跡をなぞった。

 

「このことについては随分時間をかけて考えましたが、結局全てを受け入れることはできませんでした。根本的な所で、我々のやっていることは間違ったことなのだ、という思いを捨てきれないのです。必要なことなのでしょうが、その中での自分の役割が納得できないのです」

 

Malachaiは手を伸ばし、小屋の壁から、棘の付いた星状の、木製の道具を取り上げた。「これは道具だ」彼は言った。「ある目的のために作られたものだ。ものを言わず、そして、上手く使ってやるならば、そのつとめを立派に果たす」彼はため息をついて、それを元の場所に戻した。

 

「だが我々は、このような物言わぬ生まれながらの道具ではないし、そのことを忘れることもある。確かに、我々のなしていることは悪しきことに見えるかもしれぬ。文明人に期待するものではありえぬし、我が弟子たちにしても、求められるつとめを上手く果たす以上の喜びを得るようなことがあってはならぬと思っておる」

 

彼はSongの肩に手を置いた。「誰もが己自身の道を見いださねばならぬ。何人もその壁の道具のように、強いられることがあってはならぬ」

 

「ですがそれは…つまり、私は手伝いたいのです。この革命に加わりたいのです」Songは言った。

 

「それに弟子として長年過ごしてきて、私がこの道に向いていることはわかっています。私は誰であれ、必要以上には一瞬たりとも苦しめることはありません。才能という点では、私はまさにこれ以上の道はないと思っています」

 

「だがその才能だけでは不十分だ」Malachaiは言った。

 

Songは暗い表情で頷いた。「縛られているような気分です」彼は言った。「ここでの行いが牢獄となり、我々の行いの重みが鎖となって私を縛っているかのようです」

 

Malachaiは彼をしばらく見つめ、立ち上がった「待つがよい」彼は言った。

 

Songは再びうなずき、頭を小屋の壁にもたせかけた。陽光が顔に降り注いでいた。彼はMalacaiの足音が去り、静寂が訪れ、また戻ってくる音を聞いた。

 

「これを持って行くがよい」Malacaiは小さなリュックサックをかかげて言った。「旅に必要なものは全て入っておる」

 

「えっ?それは何ですか?何の旅ですか?」Songは言った。

 

「お前に必要な旅だ。案ずるな。我々はここで何もかも用意しておったのだ。実を言えば、わしはお前がこの域に達するのをまっておった。バッグの中の食料は簡素なものだが、日持ちはするし栄養も与えてくれる。水筒もいくつか用意してある - 節約した方がいいだろう」

 

「なぜ?私はどこへ行けばよいのですか?」

 

Malachaiは指さした。「あの山々が見えるな?あの向こうにSobaki砂漠がある。そこがお前の向かうところだ」

 

「そこで何をすればよいのです?」Songは言った。

 

「精霊と語り、お前が拷問官となるかどうかの心を決めるのだ。バッグの中に、ビロードで包んだ象牙の小さな箱が入っておる。山を越えてSobaki砂漠に着いたなら、地平線の彼方にひとつ、ただひとつだけのオアシスが見えるだろう。そこへ向かえ。旅はわずか数日ほどで、この中の食料はそこまで保つはずだ」

 

「帰りはどうなのです?何を食べればよいのですか?」

 

「そのことは案ずるな。その象牙の箱が解決してくれよう。行くがよい… お前がその鎖の本質を知り、私に答えを伝える準備ができたら、またここで会おうぞ」

 

 

山越えは思っていたほど難しいものではなかったが、砂漠は彼を干涸らびさせた。Songはオアシスの椰子の木の下に座り、水筒の水を飲み干した。ここには透明な水をたたえた池があり、木陰には、少しながらベリーを実らせた茂みがあった。

 

彼はバッグの中に手を伸ばし、ビロードに包まれた箱を取り出した。布地は、日なたの油のようにきらめいていた。彼は包みを開き、中から出てきた象牙を調べた。

 

箱は、Minmatarの寓話や神話の様々な場面を表した、複雑な彫刻がされていた。上面には、見慣れた Khumaak*1の印があった。

 

Songはフタを持ち上げた。中には、仕切りで仕切られたそれぞれに、3切れの黒ずんだ、Songには何だかわからない種類の根が入っていた。彼は一番小さなものをつまみ上げた。それは重く、しかし乾いていて、かすかに甘い匂いがし、どう見ても人生を変える決意をする元になるようなものには見えなかった。

 

Songは肩をすくめ、それを口の中へ放り込んだ。彼は椰子の木陰に寝ころび、目を閉じた。

 

何も起きなかった。

 

やがて、腹が鳴りだした。彼は残り二つを取り出し、食べて、また寝ころんだ。雲が頭上を流れていった。古い神話で神聖視されているYetamoトカゲが岩の中から飛び出して、舌をチロチロと動かしながら彼を見つめた。

 

「しまいにはお前も食ってしまうかも知れないな」Songは言った。

 

「止めた方がいい。猛毒だからね」トカゲは答えた。

 

「そうだな」Songは腕を掻いてあくびをし、硬直した。「お前今−」

 

「ああ、いかにも」トカゲは言った。「しかし今はそんなことは君にとって小さな問題だ。少しお腹が痛くなってきただろう?」

 

「お前…お前は…なんだ…うわあああ!」Songは腹をつかみ、顔をゆがめながら膝をついた。何度かのげっぷの後、頭を上げて嘔吐した。

 

「うわあ」トカゲは言った。「話そうとしない方がいい。しばらくそんな調子だろうからね。終わったら戻るよ」トカゲは岩の下へと這い戻っていった。Songは吐き気と喘ぎを繰り返し、吐き続けた。

 

ようやく痛みは和らいだ。その頃には、彼は血を吐いていた。

 

「トカゲよ、いるか?」彼は言った。

 

トカゲは這い出した。「いるよ」

 

「何が起こっているんだ?」

 

「君がなすべきことの準備ができていないからね。だから僕らが助けようというわけさ」

 

Songは顎のよだれをぬぐった。「助け」彼は言った。「お前…お前が何者かはいい。何だって俺を砂漠に連れ出して毒を食わせておいて、拷問官になることを心変わりすると思うんだ?」

 

トカゲは爬虫類的な冷淡さで彼を見つめた。そして近づき、話し始めた。

 

トカゲは、Minmatarの明らかな運命について語った。既に支払ったとてつもない犠牲について、そしてかつてなした選択によって起きる、未来に待ち受けるものについて。それらの選択について詳しく、その利益と、恐るべき代償について話した。個人の自由、幸福、生命の代償を - 血塗られた困難な選択を含むであろう代償を - それら全てを失う危険と比較し語った。

 

徐々に、Songは押し黙っていった。

 

トカゲが話し終えた時、Songは、砂の上に線を書いてはそれを消しながら、静かに木陰に座っていた。トカゲは岩の下に這い戻りながら何かを言ったが、Songはただ頭を振って線をなぞり続け、それを消し、またなぞっていた。

 

「お前の遺産を砂の中に残していくのは良くないな、息子よ」声は言った。

 

Songは、片手を目にかざして日光を遮りながら見上げた。「…父さん?」彼は言った。

 

「変わりないよ」男は答え、Songの傍らに腰をおろした。

 

「でも父さんは死んだじゃないか!」Songは言った。

 

Songの父 - 名はAuberと言った - は彼を見た。「ああ、そうだな。ということは、一番のお気に入りの息子と一緒の時間を過ごしてはいけないということかな?」

 

「一人息子だよ」Songは小さな笑みを浮かべて言った。

 

「それでも一番さ。さて、お前に昔言ったのに忘れてしまったこと、特に見つけたやつを何でも口に入れるんじゃないってことを教えてやりたいところだな。だがその時間はない。あの小さな雲が見えるな?地平線のところだ。暗いやつだ」

 

「ああ」

 

「あれは雲じゃない。あれがここに来るまでに、おまえは準備を整えなければいけない。私がパンを盗んで主人に捕まった話はしたことがあったな?」

 

Songは彼を見つめた。「いや。知る限りでは、父さんの主人は親切なひとだったそうだけれど。」

 

「親切なひと、か。そうか」Auberは岩を一掴み拾い上げると、ひとつひとつ、遠くへ投げ始めた。「そいつはまさに、早耳でおしゃべりが止まらない子供に教えるような話だよ」

 

「では、親切なひとではなかったと?」Songは言った。

 

父は口を開きかけて止め、静かに地面を見つめた。しばらくして残りの岩を落とし、目をこすってため息をついた。「ああ」彼は言った。「全く親切などではなかったよ。他の主人と同じようにね。お前もいくらか話は聞いているだろう。でなければ血まみれの拷問吏の見習いになったりはしなかっただろうからね。だが、お前がここにいて、私が話しているということは、お前はまだ全てを聞いてはいないということだ。だから、聞くんだ」

 

そして父は彼に、昔の主人のこと、そして主人が書斎の戸棚に鍵を掛けてしまっていた道具 - 奴隷が厄介ごとを起こした時にだけ取り出される道具 - について語った。他の主人と、来る日も来る日も繰り返された彼らの静かなる残虐行為、ついにはSongとその母を自由にするに至った数え切れない小さな反乱について語った。その自由の本質について、そしてその今も続く代償について詳しく述べた。

 

彼が話し終えた時には、Songは泣かず、音を立てすらしなかった。

 

Auberは立ち上がった。「行く時間だ」彼は言った。「洒落た別れの挨拶はなしだ。また会おう、Song」

 

Songは地面を見つめ、ゆっくりと歯をきしらせながら、父が数歩遠ざかっていく足音を聞いていた。ついに彼が目を上げると、Auberはいなくなっていた。

 

彼は目をこすり、地平線を見た。雲は近くなっており、ただ…ただ父が言ったとおり、それは実際には雲ではなかった。雲にしては少し地面に近すぎるようであった。長く見つめるほどにそれは、その日の収穫を背負ってジャングルを蹂躙していく、虫の大群のように思えてきた。

 

日は午後にさしかかっており、彼は骨の髄まで疲れ切っていた。胃袋は完全に無感覚になっていた。彼は頭を木の幹にむけて寝転がり、眠った。

 

彼は足音を聞いて目を覚ました。あたりは暗くなってきており、彼は目をこすって、何が近付いているかを確かめようとした。それがわかって、彼は息をのんだ。

 

彼は、最初の一人がやってくるまで静かに座っていた。それは男で、あるいは少なくともかつて男であった。身体の各所が切られ、焼け、あるいはいくつかのやりかたで切断されていた。片方の眼窩は空で、両耳はそぎ落とされ、上唇は完全に両断され、しかしその顔の残りの部分は、Songのそれにほぼ生き写しであった。

 

男はSongのもとに足を引きずりながら近づき、片膝を付いた。頭を垂れたので、彼の頭皮がいくつもの生傷で覆われているのが見えた。

 

「父よ」その男は言い、立ち上がってSongの前を通り過ぎた。二人目は、同じようにひざまずき、よろめき去っていく間ずっと頭を垂れたままであったが、その顔をちらとだけ見ることができた。その類似は相変わらず強烈であったが、少しだけ弱くはあった。

 

さらに多くの者が、皆傷つき衰弱し、空と大地の重みがその肩にのしかかっているかのような重い足取りでやってきた。父と子、父と子、未だ生まれぬ可能性の存在が彼にひざまずき、Songが遠くを見つめると、彼らの列は地の果てまでとぎれることなく続き、血と苦痛の、沈滞と恐怖の、鎖と残虐な苦しみの道が、時の終わりまで続いていた。

 

 

Malachaiは道具の手入れをしている時に足音を聞いた。振り返り見たものは彼が送り出した子供ではなく、別人であった。彼を見たその男は、しばらくの間食事をとっていなかったが、にもかかわらず、その眼光は冷たく揺るぎないものであった。

 

「心は決まりました」男は言った。「私は自由です」

 

<<back





*1 "Hand of Maak (Maakの手)"の意。Minmatarの祭器。元はAmarr五皇家の一つ,Ardishapur家の皇族であったArkon Ardishapurが持つ王笏であったが、Minmatarの奴隷Drupar Maakが奪った王笏でArkonを殺害したことが切っ掛けでStarkmanir反乱が勃発したことから、Minmatarの祭器として用いられるようになった、らしい。今ではおみやげ屋で売っている。