Backstory/NEURAL_BOOSTERS

Last-modified: 2009-01-04 (日) 11:12:11

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NEURAL BOOSTERS

 

宇宙産業における違法薬物犯罪対策委員会 Caille大学行動学研究科 Gallente連邦議会調査報告書 A-4-1 (改訂版 #2) より抜粋*1

 

近年、特に宇宙パイロットの間で、宇宙産業における、脳認知誘導神経増幅剤 (Cerebral Cognitive Inducing Neural Booster; 一般にブースターと呼ばれている) の需要が著しく増加している。ブースターは長年、健康被害の点から、全ての政府によって禁止されてきた。しかし、宇宙パイロットの特異な状況がリスクを低減させ、また多くの者が、健康被害を受ける危険と引き替えに、たとえ一時的であっても能力を高めることをいとわないようである。この数年間で、新型ブースターがブラックマーケットに出回っており、需要は日ごとに高まっている。もぐりの研究所が外宇宙に建設され、しばしば厳重に警備されていたり、極秘のものとなっている。

 

DEDやその他の法執行機関の査察の強化により、最近12ヶ月だけで2ダース以上の研究室が閉鎖された。そのほとんどが、主要航路から遠く離れた小さな宇宙ステーションで操業していた。しかし、最近DEDにより行われた調査から、50もの研究所が今も操業しており、少なくとも月に2つが新しく建設されていることが明らかとなった。ブースター産業により得られる利益が増えるほどに、新たな研究所は大きく、設備の整ったものになるだけでなく、領有宙域 (empire space) からより遠くへ離れた場所に建設されるようになっていく。その上、新たな研究所の機密性が増すにつれ、その防衛力はかつてないほど強力になっており、我々の側にも排除のためのより強力な手段が必要とされている。

 
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最初のブースターは一世紀前に現れたが、それはバクテリアにウイルスを感染させタンパクを生産させるという、遺伝子組み換え技術の進歩の所産であった。基本的な手法は数世紀前から知られており、糖尿病の治療などに用いられていた。Hollows博士とTancréz博士が主導したGallenteの出資による研究プロジェクトによって、この手法の進化における次のステップが行われた。すなわち、同じ手法を用いて、遺伝子操作したウイルスを直接人体に感染させたのである。感染したのは脳の神経細胞であり、ウイルスベクターがシナプスにおける膜タンパクの産生を促すために用いられ、記憶の形成に必要なシナプスの構造変化を補助した。ブレイクスルーとなった実験では、この手法により、最低限の副作用で、実験動物の迷路学習時間が劇的に短縮された。

 

さらなる動物実験の後、最初の臨床試験は、科学の進歩のために志願したTancréz博士の学生たちで行われた。Tancréz博士の学生は、実験後しばらくの間、顕著な学習能力をしめした。この間に彼が習得したスキルは、二年後に無関係の感染症で早世してしまうまで維持されていた。数ヶ月後、CaldariとGallenteがしばらくの間一触即発の状態にあったWaschiの乱の最中に、連邦はさらなる臨床実験を許可した。連邦は、戦時において宇宙パイロットが多数必要になるであろうことを予見し、ブースターが新しいパイロットの訓練速度を大きく向上させることを期待して、試験を認可したのであった。人体実験によってブースターの試験と開発を行うことができるようになったことで、研究チームは遺伝子療法の完了への最終段階へ入ることができるようになり、そして最初の市場向けブースターが誕生した。

 

ブースターは、特に高額の費用を容易にまかなえる社会的エリートの間で、急速に普及していった。ブースター産業のパイオニア達の名は一躍有名となり、中でも最大のブースター生産会社であるBooster-Tech Inc.の創設者であるA.R. Louriaは最も有名となった。現在のものとは比較にならないほど効能が低かった開発初期の段階においてさえ、ブースターの利益は著しいものであった。ブースター生産会社は着々と生産技術を向上させ、より安価で強力なブースターを生産するとともに、ブースターの導入技術をより便利なものにしていった。面倒でしばしば痛みを伴う注射にかわって、ウイルスを神経リンクを通して導入する技術が開発され、ブースターは宇宙パイロットにとってより一層魅力的なものとなった。

 

全ての大手のブースター企業は、ブースターを一般大衆に売り出す前に広範な試験を行った。これらの試験では、一般消費者にとってさえも深刻な副作用を示すことはなかった。これらの結果は、独立した調査会社や政府機関によっても確認された。しかし、できすぎた話のほとんどがそうであるように、これも、実際には、できすぎた話であった。不幸なことに、ブースターの副作用は、ブースターの出現から数十年後まで現れることはなかったのである。

 

初めから知られていた、ブースターの最も深刻な副作用はてんかんであった。ある特定の遺伝要素により、特定の個人が他の人々よりもこの副作用を被りやすいということが判明した。その遺伝的要因が特定されると、あらかじめその危険性を判断することができ、従ってこの副作用によるダメージを抑えることができるようになった。しかし、最初のブースターが現れてから約40年後、もうひとつの、はるかに深刻な副作用が発見された。プリオンにより引き起こされる致死性の脳疾患が、ブースターの使用と直接関連していることが明らかになったのである。ブースターが感染した細胞内で細胞変異を引き起こし、誤ったタンパク生成が起こる可能性が大きく上昇し、その結果、神経細胞にタンパクが沈着してしまうようであった。不治の病がゆっくりと脳を冒していき、記憶、運動能力、正気を失い、重要器官の機能不全で死に至るのである。

 

当初、人々はこれらの出来事を無視し、個々の事例として片付けていたが、日に日に事例が増えていくにつれて、ある種の疫病が蔓延し始めたことが明らかとなった。10人に1人が感染するとしても、ブースターの普及率により膨大な人数となった。さらに、この病気が90%以上の致死率を持っていたため、政府が早急に対策を行わなければ、集団ヒステリーが社会の激変へとエスカレートする恐れもあった。そこで政府は、ブースターの使用を一時的に禁止した。それでも、恐ろしい死に向かっている何百万もの人々を救うことはできなかった。

 

大量の訴訟で賠償金を搾り取られて、ブースター企業がひとつまたひとつと倒産していくのに、長い時間はかからなかった。Gallente連邦はブースターについてさらなる研究を開始したが、その結果、合理的な疑いの余地なくブースターが原因であることが明らかとなり、これを受けて全政府は、ブースターの製造、配布、および所有を永久的に禁止した。

 

数十年の間、禁止令は遵守され、ブースターはどこからも完全に姿を消した。ブースター事件の後に、原因究明とブースターの今後について判断するために組織された連邦議会委員会の最終報告書において、以下のように述べられている:

 

「社会がブースターから教訓を得て、我々がこのような脅威に二度と対処しなくても済むようになることが、当委員会の一致した信念である。進歩に邁進するのは大事ではあるが、毒物を体内に入れることは良くて有害、悪くすれば致命的なことであり、常識的に考えて、ブースターはもはや過去の遺物である。」

 

今となっては、半世紀前になされたこれらの楽観的な予想は間違いであったと言って差し支えない。確かに長年の間、ブースターの大量な流通は行われず、事件として起こったのは、含有の容易な古いブースターのレシピの限定的な生産のみであった。しかし、ブースターの魅力は人々を過去の向こう見ずな行動へと誘惑し、ブースターのよく知られた二つの危険にも関わらず、今やブースターは戻ってきたと、また抜本的な措置がとられない限り、その帰還が永久的なものになると断言することができる。

 
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現在ブラックマーケットで入手できる新型ブースターは、様々な意味で革命的である。たとえその効能が同じであっても、はるかに発達している。最新の処置 (procedures) は、古い副作用のリスクを最低限にすることを目的としている。その手法には、いくつものより小スケールでの処置が含まれており、また一方で免疫系を抑制している。初期の手法では、可能なウイルスのデザインだけでは、素早く免疫系に標的にされ破壊されてしまうため、処置を繰り返すという選択肢は存在しなかった。新しい手法の最も明確な利点は、脳炎の発症率の低下であったが、同時にてんかんのリスクも減少しているようである。この原因はおそらく、全てのパイロットが有している神経接続具 (neural rigger) が、てんかん性発作の低減や停止に利用できるためであると考えられる。工程において、導入のたびにしばらくの間免疫系を抑制しておくことによって、効果はより長く続き、療法はより効果的になる。これは同時に、ウイルスベクターが導入後すぐに免疫系に攻撃されることがなくなることで、引き続く療法の成功率も上昇させる。

 

一方、免疫系を抑制することによる明らかな問題点は、人体が病気に対して脆弱になるという点である。しかしながら、宇宙パイロットはその時間の大部分を、完全無菌の環境であるカプセルの内部に閉じこめられた状態で過ごす。カプセルの外に出ることがより難しくなる (不可能でないにせよ) とはいえ、総じて言えば、免疫系の抑制は宇宙パイロットにとっては問題ではない。しかしながら、たとえブースターが無菌のカプセルと神経接続 (neural rigging) のおかげで宇宙パイロットには比較的無害であるとはいえ、ブースターは未だ一般の人々には危険なものであり、なんとしても軽率な者の手にゆだねることのないようにしなければ、かつて以上に手に余る、はるかに大きな災厄に見舞われることになるであろうという点は強調しておかなくてはならない。この事実により、新型ブースターの製造と流通に関わる者たちの逮捕が、より一層重要なものになると言える。

 

初期の手法から変わっていない問題は、異なる個人間での遺伝的差異が、ブースターの効能に比較的大きな影響を与えているようであるということであった。ある者は副作用の影響を受けやすく、またある者は処置からまったくプラスの効果を得られなかった。後に、血統 (bloodline) 間での遺伝的差異が、これらの違いのほとんどの原因であることが明らかとなった。ブースターの中にはもちろん他よりも汎用性の高いものもあったが、最近は、様々な血統の遺伝子構成を利用するために、特別のブースターがデザインされており、種族限定ブースター (race-specific booster) を誕生させている。

 

これらの新型ブースターに必要な研究開発のたぐいは、あらゆる最新の学説や技術にアクセスできる、富裕なグループの活動と出資によってしかなしえない。このような手段と動機を有する独立したグループはAngel Cartelのみであるだろうが、DEDは、先進的なブースターと彼らとの間に何のつながりも見いだせていない。しかし、Cartelがそもそもの初めから新型ブースターの流通に深く関わっていた事実からは、Jeanrick Cavalery大佐の言葉を借りれば、「Cartelはブースター製造業に極めて近いところにいるか、自身が製造を行っている。」しかしながら、新型ブースターの研究開発、および、ことによると製造が、ほかの国家に雇われて行われているという可能性を除外することはできない。

 

以上、我々は、違法ブースターの増加の流れを押しとどめるために、さらなる措置をとることを提言する。確かに、他の合法的な宇宙パイロットの大きなグループにかなりの需要があるとはいえ、ブースターはよいパイロットとなるために必須なものではない。述べたように、パイロットがブースターから得られるわずかな利益は、使用による重大なリスクを上回るものではないはずである。

 

ブースターの大半が領有宙域外由来のものであることから、国境監視の強化とともに、ブースターの密輸や販売で捕らえられた者への罰則強化を提言する。さらに、これらのブースターを誰が開発しているかを見つけ出すための調査を立ち上げるべきである。

 

最後に、将来の戦争の危機に際して必要となった場合に備え、我々の研究チームで、新型ブースターを完全に理解するための分析を開始するべきである。当然ながら、これは最重要機密の下に行われなければならない。諜報筋によると、ほかの国々も同様の措置を講じているようであり、もしもブースターが宇宙の司令官にとって標準的なものになるのならば、その時に後れをとる危険を冒すわけにはいかないのである。

 

 

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訳註 : ゲーム内でのブースターについては、以下を参照。 Guide/Manufacturing/CombatBooster? / Item database(公式)


*1 訳註:訳に自信無し。どうも切り方がおかしい気がする。誰か直して orz