TES(Technical Elements Score: 技術要素点)の概略
日本語では技術要素点と訳されており、"Technical Elements Score"、すなわち「技術要素(テクニカル・エレメンツ、以下単に「エレメンツ」)」に関する得点のことをさす。エレメンツとして、以下のものが規定されている(シングルの場合。ペア、アイスダンスはリフト、パターンダンスなどが加わる):
- ジャンプ
- スピン
- ステップ・シークエンス
- コレオグラフィック・シークエンス
ショート、フリーそれぞれにおいて実施すべきエレメンツが定められており、演技中に実施された各エレメンツに与えられる点数の合計が、TESとなる。
各エレメンツを実施することにより、下記の通りそれぞれに対して基礎点と出来映えによる評価点が得られる。
TES = Sum i (BV(i) + SOV(i, GOE(i)) where i in {excuted elements}
基礎点 (Base Value)
実施されたエレメンツに対して与えられる基準となる点数のこと。すべてのエレメンツに対して定められており、例えば2Aが実施されたと認定されれば 3.3点が付与される。詳細は[GOEガイドライン]や基礎点早見表を参照のこと。
技・レベルの認定
[tbd:テクニカル・パネルが実施されたエレメンツ、レベル、回転不足などの認定をすることなど]
GOE(Grade Of Executions: 出来栄え点)
実施されたエレメンツに対しての品質のグレード(出来栄え)を表し、ジャッジパネルにより技の出来栄えに応じて-3, -2, -1, 0, +1, +2, +3 の7段階で評価される。当然のことながらよい出来映えと評価されれば加点要因となり、悪いとされれば減点要因となる。具体的な評価項目・方法は[ガイドライン]により規定されており、
- まずプラス面(高さ・幅が十分、流れがよい、など)を考慮しプラスをつける
- その後エラー、規定違反などのマイナス面を考慮し引き下げる
という手順を取る。
- プラス面
- それぞれのエレメンツに関して考慮すべき項目が定められており(ジャンプであれば、高さ距離が十分、入からでの流れが十分、など8つ)、そのうち2つ満たせば GOE +1、4つ満たせば GOE +2、6つ以上満たせば GOE +3、となる。ただし、どの項目が満たされたかは公表されない。
- マイナス面
- [ショートにおける規定違反、質の悪い実施など]
例えば、[流れのあるジャンプだけどステップアウトしてしまった場合やショート違反を起こした例]
SOV(Scale Of Value: 評価尺度)
よく勘違いされがちなのだが、GOE の評価(+3 など)がそのまま得点になるわけではない。あくまでGOEは品質の「グレード」であり、実際にどれだけ点数が加算/減算されるは、要素(の難度)によって異なる。基礎点が0.4しかない 1Tと、基礎点が10.3の4T、両者ともGOE が +3 だからといって両者とも得点が3点もアップする、というのはおかしい、というのは直感でも分かるだろう。
端的にいうと、難しいエレメンツほどGOEの絶対値に対する「係数=scale」が大きく、易しいものほど小さい。ISU Comm1790にて、すべてのエレメンツに関して、GOE-3から+3それぞれがつけられた場合どれだけ加点、減点されるのかが定められており、それがScale Of Value (価値尺度)だ。
先の例でいうと;
- 1T, GOE+3: 基礎点0.4 + 加点 0.6 = 1.0
- 4T, GOE+3: 基礎点10.3 + 加点 3.0 = 13.3
となる。ジャンプに関してグラフで表すと以下のようになる:
ジャンプ
種類
略記号
回転数と種類をつなげて記す。回転不足の場合は '<' を、ダウングレードの場合は '<<' を追加する。また後半に行われた場合は 'x'をつけることもある。
例:
- 3T: 3回転トゥループ
- 4S<: 4回転サルコウ(回転不足)
- 3A<<: 3回転アクセル(ダウングレード)
また、あくまでメモに用いられる程度だが、次のような記法も用いられることがある:
- fall: 転倒
- so: ステップアウト
- ot: オーバーターン
- tf: 両足(Two Foot)
回転不足、ダウングレード
フィギュアスケート競技において、もっとも取り沙汰されている項目である。テクニカル・ハンドブックにはこう記載されている:
回転不足判定(Under-Rotated)のジャンプ:ジャンプが“回転不足判定(Under-rotated)”となるのは、“回転不足が 1/4 回転よりは大きいが 1/2 回転未満”の場合である。 (略)
ダウングレード判定(Downgraded)のジャンプ:ジャンプが“ダウングレード判定(Downgraded)”となるのは、“回転不足が 1/2 回転以上”の場合である。
ここで気をつけるのは、どの時点からどの時点までを云々。
ジャンプの流れ
1)踏み込み動作
2)トゥに出る。
3)空中姿勢
4)着氷
5)チェック姿勢
回転の基準
この流れ、トレースを上から図示すると以下のようになる:
誤った踏切(Wrong Edge)
GOE要件
プラス要件:
- 高さおよび距離が非常に良い(ジャンプコンボおよびシークエンスでは全ジャンプ)。
- 踏切および着氷が良い。
- 開始から終了まで無駄な力が全くない。
- ジャンプの前にステップ、予想外または独創的な入り方。
- 踏切から着氷までの身体の姿勢が非常に良い。
- 要素が音楽に会っている。
スピン
基本姿勢、非基本姿勢
基本姿勢としては、アップライト、シット、キャメルの3つ。それ以外の(ウィンドミルなどの)姿勢は非基本姿勢(NonBasicPosition:NBP)となる。ただし、レイバックやビールマンはアップライトに分類される。
アップライト
USp
LSp
シット
SSp
腿が氷面と平行
キャメル
非基本姿勢
エントランス
ノーマル、フライングエントランス、バックエントランス
略記号
- 基本系は[追加要素][姿勢]Sp[レベル:B,1-4]となる。
- [姿勢]は {U, S, C, L, Co}のいずれか。それぞれアップライト、シット、キャメル、レイバック、コンビネーションスピン
- 追加要素は、以下のとおりつけられる:
- フライングエントランスであれば 'F'
- 足換えであれば 'C'
- 両方ともなら 'FC'
例:
- FSSp3: フライング・シット・スピン、レベル3
- CCoSp4:足換えコンビネーション・スピン、レベル4
- FCCSp2:足換えフライング・キャメルスピン、レベル2
レベル要件
プラス要件:
- スピン中の回転速度あるいは回転速度の増加が十分
- すばやくスピンの軸をとることができる
- 全ての姿勢でのバランスのとれた回転数
- 規定回転数を明らかに超えた回転
- 姿勢が良い(フライング・スピンの場合には空中での高さおよび姿勢を含む)
- 独創的でオリジナリティがある
- 全局面でのコントロールが十分
- 音楽構造に要素が合っている