賢者の石/1〜4章

Last-modified: 2024-04-14 (日) 12:48:31
 

1章

おかげさまで

■日本語版 1章 p.6
プリベット通り四番地の住人ダーズリー夫妻は「おかげさまで、私どもはどこからみてもまともな人間です」というのが自慢だった。

■UK版 p.7
Mr. and Mrs. Dursley, of number four, Privet Drive, were proud to say that they were perfectly normal, thank you very much.

■試訳
プリベット通り四番地の住人ダーズリー夫妻には自慢にしていることがあった。「私たちはどこから見てもまともですよ。わざわざどうも。」

■備考

  • 1巻1章の冒頭部分。最初の最初から引っ掛かる。
  • ここでの'Thank you very much'は、「おかげさまで」という意味では無く、
    自分達に干渉してくる人達に対して「いいから、ほっといて」「はいはい、どうもね」と
    突き放す様なニュアンス。
    嫌味で失礼な言い方なのに、邦訳ではかなり丁寧な言葉の様で印象が違ってくる。
  • 「~というのが自慢だった。」も不自然。
  • "Privet Drive"なので「プリヴェット通り」が自然。

親バカ

■日本語版 1章 p.6
…どこを探したってこんなにできのいい子はいやしない、というのが二人の親バカの意見だった。

■UK版 p.7
...and in their opinion there was no finer boy anywhere.

■試訳

  1. どこを探してもこんなにできのいい子はいない、というのが二人の意見だった。
  2. 二人によると、どこを探してもこんなにできのいい子はいないということであった。

■備考

  • ダーズリー夫妻の親バカぶりとおめでたさは行間から伝わってくるが、
    原文には「親バカ」に相当する言葉等は入っていない。
  • 1ページ目から「だった。」が6個も出てくるので、文末も工夫して欲しい所…

大きなふくろう

■日本語版 1章 p.7
窓の外を、大きなふくろうがバタバタと飛び去っていったが、二人とも気がつかなかった。

■UK版 p.8
None of them noticed a large tawny owl flutter past the window.

■試訳

  1. 窓の外を大きなモリフクロウが飛び去っていったが、誰ひとり気づかなかった。
  2. 誰一人、窓の外で大きなモリフクロウが羽ばたいている事に気付かなかった。

■備考

  • このthemはダドリーも含めるのでは?
  • 「tawny」の訳が抜けている。
    tawny owl=モリフクロウ。(参考
  • 文庫版では「窓の外を、大きなふくろうがバサバサと飛び去って行ったのを、二人とも気付かなかった。」になっているが、訂正になっていない。

取り継ぐ

■日本語版 1章 p.10
「誰も取り継ぐな」

■試訳
「誰も取り次ぐな」

■備考

  • 「取り継ぐ」は漢字の誤用。「取り次ぐ」とするのが正しい。参考

顔が上下に割れる

■日本語版 1章 p.11
それどころか、顔が上下に割れるかと思ったほど大きくにっこりして、道行く人が振り返るほどのキーキー声でこういった。

■UK版 p.9-10
On the contrary, his face split into a wide smile and he said in a squeaky voice that made passers-by stare,

■試訳

  1. それどころか満面の笑みを浮かべ、通行人が振り返るほどの大声でこういった。
  2. むしろ、これ以上ないほどの笑みを浮かべ、甲高い声で周囲の視線を集めている。

■備考

  • 顔が上下に割れる程の笑顔は想像付きません。割り箸ですか。
    原文に無い上に変な比喩。

やおらギュッと

■日本語版 1章 p.11
小さな老人はダーズリー氏のおへそのあたりをやおらギュッと抱きしめると、立ち去って行った。

■UK版 p.10
And the old man hugged Mr Dursley around the middle and walked off.

■試訳
小さな老人はダーズリー氏の腰あたりを抱きしめてから、立ち去って行った。

■備考

  • middleの訳は(おへそでも間違いではないが)腰が適切。
  • 「やおらギュッと」は訳者の余計な脚色と思われる。

絶対に関わり合うことはない

■日本語版 1章 p.15
そう思うと少しホッとして、ダーズリー氏はあくびをして寝返りを打った。
──わしらにかぎって、絶対に関わり合うことはない……。
──何という見当違い──

■UK版 p.12
He yawned and turned over. It couldn't affect them...
How very wrong he was.

■試訳
ダーズリー氏はあくびをして寝返りを打った。この私と妻が煩わされるなどありえない……。
だが、それは大きな間違いだった。

■備考

  • バーノンが、今日起こった不思議なことはポッター一家と関係があるのではないか、
    自分達との関係が世間にばれるのでは?と不安になるも、
    自分たちが関わり合いになることはないと思い直し、寝る場面。
  • 原書には「そう思うと少しホッとして」
    に当たる文章が見いだせなかったんだけど、翻訳者の脚色?
  • 「──わしらにかぎって、絶対に関わり合うことはない……。」
    という翻訳もおかしいね(文脈も崩れてるような)。
    It couldn't affect them ... ("them"はイタリック)は直訳すると
    「彼らにまで及ぶのはありえない」なんて感じかな。
  • How very wrong he was. は地の文だね。
    「ヴァーノンが自分に言い聞かせてたことはまったくの見当違いだった」
    という意味だろう。
    実際次の日ポッター家の忘れ形見が玄関に置いてあるんだから…。
  • 30半ばの奥さんをもらっている
    ヴァーノンの一人称が「わし」というのもおかしい気がする。

しかもエメラルド色のを

日本語版 1章 p.17
やはりマントを、しかもエメラルド色のを着ている。

■UK版 p.13
She, too, was wearing a cloak, an emerald one.

■試訳

  1. やはりエメラルド色のマントを着ている。
  2. その女の人もエメラルド色のマントを纏っている。

■備考

  • 翻訳が直訳調で、日本語として違和感がある。

日本語版 1章 p.17
黒い髪をひっつめて、小さな髷にしている。

■試訳

  1. 黒い髪をひっつめて、小さなお団子にしている。
  2. 黒い髪をひっつめて、シニヨンにしている。

■備考

  • マクゴナガル先生の描写。髷はお相撲さん…
  • 明治時代あたりですら、洋風シニヨンは束髪と呼ばれてるぞ。
    束髪でも古い印象なのに、どうして髷…
  • 訳者が対象年齢として挙げていた6歳の子供が、髷から欧米の女性のまとめ髪を連想出来るだろうか?
  • 髷で画像検索しても力士、武士、芸妓しか出てこない。お団子ヘアは出てこない。参考

驚きと尊敬

■日本語版 1章 p.20
マクゴナガル先生は驚きと尊敬の入りまじった言い方をした。

■UK版 p.14
said Professor McGonagall, sounding half-exasperated, half-admiring.

■試訳
マクゴナガル先生は苛立ちと尊敬が入り混じった言い方をした。

■備考

  • 驚きでは無く、苛立ちだと思うんですが……。

ゴロゴロという音

■日本語版 1章 p.25
低いゴロゴロという音があたりの静けさを破った。

■UK版 p.16
A low rumbling sound had broken the silence around them.

■試訳
低くとどろくような音があたりの静寂を破った。

■備考

  • ハグリッドの運転するモーターバイクの音なんですが、これでは雷です。

ボウボウ、モジャモジャ

■日本語版 1章 p.25(※原文は改行無し)
許しがたいほど大きすぎて、それになんて荒々しい――
ボウボウとした黒い髪と髯が、長くモジャモジャと絡まり、ほとんど顔中を覆っている。
手はゴミバケツのふたほど大きく、革ブーツをはいた足は赤ん坊イルカぐらいある。
筋肉隆々の巨大な腕に、何か毛布にくるまったものを抱えていた。

■UK版 p.16(※原文は改行無し)
He looked simply too big to be allowed, and so wild -
long tangles of bushy black hair and beard hid most of his face,
he had hands the size of dustbin lids, and his feet in their leather boots were like baby dolphins.
In his vast, muscular arms he was holding a bundle of blankets.

■試訳
とにかく信じられないほど大きく、なんとも荒々しい――
長く絡まり合ったもじゃもじゃの黒い髪とヒゲが顔のほとんどを覆い、
手はゴミバケツのふたほどもある。革のブーツをはいた足は赤ん坊イルカのようだ。
巨大なたくましい腕には、毛布のくるみを抱えている。

■備考

  • あまりの読み難さに笑えた。
  • 「大きすぎて」はtoo、「何か」はsomethingだろうと言う様に何となく原文が透けて見える気がする。
  • bushy=モジャモジャは分かるが、long=ボウボウは違う。
    ボウボウは直毛イメージなのでモジャモジャとは合わないと思う。
  • 直毛イメージかどうかはさて置き、ボウボウとモジャモジャは併用しない方が良いね。
  • このtoo big to be allowedは「許しがたい」と言うのもどうなんだろう。
  • 「許しがたい」の許すって、allowじゃなくてforgiveなんじゃね?
    ここは、「受け入れがたい」位の意味では。
    受け入れられない→「信じられない」と意訳すれば自然。

シリウスっちゅう若者

■日本語版 1章 p.26
「ブラック家のシリウスっちゅう若者に借りたんで。...」

■UK版 p.16
"Young Sirius Black lent it me. ..."

■試訳

  1. ブラックんとこのシリウスに借りたんで。
  2. ブラックのせがれのシリウスに借りたんで。

■備考

  • ダンブルドアに対するハグリッドのセリフ。
  • 「a young Sirius Black」であれば「シリウスちゅう若者」になるが、「Young Sirius Black」なので誤訳。
  • 後の巻でシリウス・ブラックが過去にホグワーツに在籍しており、
    ハグリッドともダンブルドアとも知り合いだった事が分かる。
  • 携帯版では「ブラック家の息子のシリウスに借りたんでさ。」に修正されているが、
    この表現でもまるでシリウスを知らない様な印象である。
    (携帯版修正後もハードカバーでは修正無しの模様。)

ワオーンと泣き出した

■日本語版 1章 p.27
そして突然、傷ついた犬のような声でワオーンと泣き出した。

■UK版 p.17
Then, suddenly, Hagrid let out a howl like a wounded dog.

■試訳

  • そして突然、傷ついた犬のように泣きわめいた。

■備考

  • そのすぐ後の文でマクゴナガルがハグリッドを咎めているので、
    「泣き出した」より「泣きわめいた」とした方が自然。
  • あと「ワオーン」はいらないと思う。

国中の人

■日本語版 1章 p.30
国中の人が、あちこちでこっそりと集まり、杯を挙げ、ヒソヒソ声で、こう言っているのだ。

■UK版 p.18
...people meeting in secret all over the country were holding up their glasses and saying in hushed voices...

■試訳
国中いたる所で密かに集まった人々が、杯を挙げ、声をひそめてこう言っているのだ。

■備考

  • 生き残った男の子、ハリー・ポッターに乾杯する人々の描写。
  • 集まってお祝いをしているのは魔法使い。「国中の人」とするとマグルも含まれてしまうので可笑しい。
  • この短文の中で「あちこち」「こっそり」「ヒソヒソ」と重なるととても幼稚な印象だし、読点が多く読み辛い。
    (日本語版は全巻を通してカタカナの擬音語擬声語擬態語が甚だしく多い。)

2章

まだ起きないのかい?

日本語版 2章 p.33
「まだ起きないのかい?」おばさんが戸のむこうに戻ってきて、きつい声を出した。
「もうすぐだよ」

■UK版 p.19
His aunt was back outside the door.
"Are you up yet?" she demanded.
"Nearly,"said Harry.

■試訳
「まだ起きないの?」おばさんが扉の向こう側に戻ってきて、強く言った。
「起きるところだよ」

■備考

  • 「もうすぐだよ」だとまだ寝ている様だ。
  • ペチュニアの口調がババ臭い。
    「かい」を削るだけで一気に若返る(実年齢に相応しくなる)。

支度をおし

日本語版 2章 p.33
さあ、支度をおし。ベーコンの具合を見ておくれ。

■UK版 p.19
Well, get a move on, I want you to look after the bacon.

■試訳
さあ、支度して。ベーコンの様子を見ておくれ。

■備考

  • 「支度をおし」は少し古い言い方(参考)。
    よって厳密には誤訳では無いが、今の人には分かり辛い。

バケーションでマジョルカ島

■日本語版 2章 p.38
「バケーションでマジョルカ島よ」

■UK版 p.22
‘On holiday in Majorca,’

■試訳

  • 「マヨルカ島で休暇中よ」

■備考

  • holidayを何故かバケーションと訳している。
  • Majorca(マヨルカ島)はスペインの島なのに、何故か英語読み。

容器

■日本語版 2章 p.41
食堂の外にあった大きな容器

■UK版 p.24
the big bins outside the kitchen doors

■試訳

  1. 調理場の外にあった大きなゴミ箱
  2. 調理場の裏口の大きなゴミ箱

■備考

  • いきなり「容器」が出てきたら「容器って何?何の容器?」と思ってしまう。
  • binはイギリス英語でゴミ箱の意味。参考
  • kitchenはキッチンで、食堂では無いと思う。
  • 大きなゴミ箱がある場所は、目立つ所では無く裏口の様な所だろう。

大ニシキヘビ

■日本語版 2章 p.45
ブラジル産ボア・コンストリクター 大ニシキヘビ(囲み罫線)

■UK版 p.26
Boa Constrictor, Brazil.

■試訳

  1. ブラジル原産 ボア・コンストリクター
  2. ボア・コンストリクター 原産地:ブラジル
  3. ボア・コンストリクター 生息地:ブラジル

■備考

  • この数行後に「動物園で生まれた」「ブラジルに行ったことがない」と有るので「ブラジル産」では無い。
  • ボアとニシキヘビは別の科のヘビである。参考:ボア / 参考:ニシキヘビ
  • ニシキヘビの分布はアフリカ大陸、ユーラシア大陸南部、インドネシア、スリランカ。
    ブラジル原産のニシキヘビは居ない。

3章

悪文

■日本語版 3章 p.50
ダドリーは、買ってもらったばかりの8ミリカメラをとっくに壊し、ラジコン飛行機も墜落させ、おまけに、レース用自転車に初めて乗ったその日に、プリベット通りを松葉杖で横切っていたフィッグばあさんにぶつかって、転倒させてしまうという事件も終わっていた。

■UK版 p.28
Dudley had already broken his new cine-camera, crashed his remote-control aeroplane and, first time on his racing bike, knocked down old Mrs. Figg as she crossed Privet Drive on her crutches.

■試訳

  1. ダドリーは、買ってもらったばかりの映画カメラを早くも壊し、ラジコン飛行機も墜落させていた。レース用自転車に初めて乗った日には、プリベット通りを松葉杖で横断中のフィッグばあさんをはね飛ばすという事故まで起こしていた。
  2. ダドリーは新しいビデオカメラをとっくに壊し、ラジコン飛行機も墜落させていた。しかもレース用自転車に初めて乗った日には、松葉杖をついてプリベット通りを横断していたフィッグさんをはねとばしていた。

■備考

  • 「ダドリーは、~事件も終わっていた。」と言う文頭と文末が繋がっていない悪文。
  • プロの校正者が居ない、校正がきちんとされていないと言われているのはこの様な悪文が沢山出てくる為。
  • これだけの長文を一文にしてしまうと苦しくなるので、and,の箇所で一旦分けると良いと思う。
  • "Privet Drive"なので「プリヴェット通り」が自然。
  • 自転車に乗ってぶつかったのなら、事件というよりは事故と表現した方が自然。
  • 訳者の意図としては最後の「終わっていた」等、ハリーの浦島太郎状態を表現したかったものと思われる。

巨大なゴムひものように

■日本語版 3章 p.53
心臓は巨大なゴムひものようにビュンビュンと高鳴った。

■UK版 p.30
his heart twanging like a giant elastic band.

■試訳

  1. 心臓が早鐘のように鳴った。
  2. まるで巨大な輪ゴムを弾いたように胸が高鳴った。

■備考

  • ホグワーツから初めてハリー宛に手紙が届き、
    (まだ誰が送ったか分からない)その手紙を見つけたハリーの様子。
  • 「巨大なゴムひものようにビュンビュン」て言い方、
    巾の広いゴムひもをピンと張って指で弾いて振動させてる状態の事を表したかったのかな?
    胸が激しく高鳴っているのだろうなというのは何となく分かるけど。
  • ほぼ直訳だが、elastic bandは「輪ゴム」。
    ハートがtwang(弦を弾いたように鳴る)と言うのは良くある表現みたい。
    (イメージはheartstrings(心の琴線)と言う表現から来てるのかも)
  • とにかく日本語では「心臓がビュンビュン鳴る」で興奮や感激を表わさないから
    何か日本的な言い方に変えたら良いと思うけど…
    『心臓が早鐘のように鳴った』とかは古いのであまり使いたくない気もする。
    変えなくても『まるで巨大な輪ゴムを弾いたように胸が高鳴った。』ならマシかな?

返本

日本語版 3章 p.53
図書館に登録もしていないので、「すぐ返本せよ」などという無礼な手紙でさえもらったことはない。

■試訳
(略)「すぐ返却せよ」(略)

■備考

  • 「返本」とは書店が仕入れた本を出版社等へ返す事。参考

腐りかけた貝

■日本語版 3章 p.54
腐りかけた貝

■UK版 p.30
a funny whelk

■試訳
変なツブ貝

■備考

  • 無意味な意訳。

メチャメチャに話したがる

日本語版 3章 p.63
「おまえなんかにこんなにメチャメチャに話したがっているのはいったい誰なんだ?」

■UK版 p.34
"Who on earth wants to talk to you this badly?"

■試訳

  1. 「おまえなんかとこんなに話したくて仕方ないやつって、いったい誰なんだ?」
  2. 「こんなむちゃなことをしてまでお前と連絡をとりたがってるやつって、いったい誰なんだ?」

■備考

  • メチャメチャ (^^;
  • 「おまえなんか話したがる」は頭に「~を」「~について」が来ていないと可笑しい。
    「おまえなんか話したがる」の方が自然。

捕む

■電子版 3章 p.
手紙を(つか)もうとした
■日本語版 3章 p.66
手紙をつかもうとした

■備考

  • 「つかむ」の正しい漢字表記は「掴む」および「攫む」。ただしどちらも常用漢字ではない。
    ひらがな表記のままでいいのに、なぜわざわざ電子版で間違った漢字表記に変えてしまったのか。
  • 文庫版だと間違った漢字表記はそのままで、ルビが削除されたため読みづらくなっている。

4章

ここまで来るのは骨だった

■日本語版 4章 p.72
「(略)いやはや、ここまで来るのは骨だったぞ……」

■UK版 p.
"(略)It’s not been an easy journey."

■試訳

  1. いやはや、ここまで来るのは大変だったぞ……
  2. いやはや、ここまで来るのは骨が折れたぞ……

■備考

  • 「来るのは骨だった」と言う表現が日本語として不自然。
  • 「骨だった」は仲間内での省略した喋り言葉では有り得るけど、文章表現では無しだと思う。
    本の中でそう言う風に書かれる事は通常無い。
  • 地の文では無く口語(ハグリッドのセリフ)なので問題ないのではとする意見もある。

二人称の不統一

■日本語版 4章 p.73
「最後におまえさんを見たときにゃ、まだほんの赤ん坊だったなあ。あんた父さんそっくりだ。(略)」

■試訳
「(略)おまえさん父さんそっくりだ。(略)」

■備考

  • 一つの台詞の中でハリーに向かって「おまえさん」と「あんた」と二人称が二つになってる。

腐った大スモモ

■日本語版 4章 p.73
「黙れ、ダーズリー。腐った大スモモめ」

■UK版 p.40
"Ah, shut up, Dursley, yeh great prune,"

■試訳
「黙れ、ダーズリー。この大バカ者が」

■備考

  • ハグリッドのセリフ。
  • prune=<俗>まぬけ、嫌われ者。great pruneは「大バカ者」の意味と思われる。

ドッカーン

■日本語版 4章 p.77
ダーズリー!
ドッカーンときた。

■UK版 p.41
"DURSLEY!" he boomed.

■試訳

  1. ダーズリー!」怒鳴り声が響いた。
  2. ダーズリー!」ハグリッドの怒りが爆発した。

■備考

  • 地の文でドッカーン★
  • boomを辞書で調べるとブーン[ドカーン]と鳴る音、とどろく音、とどろきとある。参考
    ハグリッドもファングの様にブーンと言わされなかっただけマシなのか…? (^^;
  • 直前に「爆発寸前」とあるので爆発させた様だが、この本はラノベ(ライトノベル)でも漫画でも無く児童文学作品である。

客人

■日本語版 4章 p.78
バーノンおじさんが急に声を取り戻して、命令口調で言った。
「やめろ! 客人。今すぐやめろ! その子にこれ以上何も言ってはいかん!」

■UK版 p.42
Uncle Vernon suddenly found his voice.
"Stop!" he commanded. "Stop right there, sir! I forbid you to tell the boy anything!"

■試訳
バーノンおじさんは突然口がきけるようになり言った。
「やめろ!今すぐやめろ!その子にこれ以上何か言うことは許さん!」

■備考

  • 「客人」は変。
  • sirは訳出せず、口調を偉そうにすれば良いと思う。
  • "Vernon"なので「ヴァーノン」が自然。
  • "Uncle Vernon"だが、地の文で「バーノンおじさん」は幼稚では…?
    忠実に翻訳するのなら伯父のバーノン、伯父が妥当である。

コチコチのマグル

日本語版 4章 p.82
コチコチのマグル

■UK版 p.43
a great Muggle

■試訳

  1. お偉いマグル
  2. 偉大なマグル
  3. 素晴らしいマグル

■備考

  • 何故greatがコチコチに…?
    皮肉的に「お偉いマグル」「偉大なマグル」「素晴らしいマグル」と言う感じでは無いのか?
  • この前に1章 p.18でもマクゴナガル猫の形容に「コチコチな座り方」が出てきており、
    そちらの原文はstiff (stiffly)。
    こちらは「硬直する」「こわばる」で、まだコチコチも分かるが…
  • どうしても擬態語を使いたいのなら「コテコテのマグル」ではどうか。

ペチュニアのセリフ

■日本語版 4章 p.82
「...さっさと行っちまった...休みで帰ってくる時にゃ...コップをねずみに変えちまうし...」
■日本語版 4章 p.83
「それから妹は、自業自得で吹っ飛んじまった。おかげでわたしたちゃ、おまえを押しつけられたってわけさ!」

■試訳
「早々と学校に行ってしまった…休みで帰ってきた時には…コップをネズミに変えてしまったし…」
「そのあと妹は、あんなところに行ったせいで死んでしまった。そのせいで私達は貴方を押し付けられたのよ!」

■備考

  • 何と言う下品さ。
    ペチュニアはリリー(ハリーの母親)の姉である。また、高慢で気取った社長夫人である。
    この様な話し方では無教養の下層階級の人間か、いじわるばあさんの様だ。
  • 携帯版では姉妹の順が逆になっているが、初期のリリー妹が正しい。

後に7巻原書でペチュニアがelder、リリーがyoungerと言う説明が有るが、
日本語版ではそれらの単語を訳出しないという荒業で誤魔化している。
リリー&ペチュニア・姉妹関係問題

きちがいじじい

日本語版 4章 p.91
「まぬけのきちがいじじいが(略)わしは金なんかはらわんぞ!」

■UK版 p.48
‘I AM NOT PAYING FOR SOME CRACKPOT OLD FOOL...!’

■試訳
「頭のおかしなまぬけじじいが(略)」

■備考

  • きちがい (OO;
  • 携帯版では「変人のまぬけじじい」に変更されている。
    また、ハードカバー版でも後期版は「いかれたまぬけじじい」に変更されている。
    (2016年8月25日 初版507刷で確認)

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  • 誤訳についてはあんまり分からないけど、日本語がおかしい、校正がきちんとされてないんじゃない?って言われるのは分かる。 -- 2021-03-31 (水) 09:57:05
  • 骨は辞書的にも困難を表すので流石に敏感になりすぎではないかと思う。 -- 2021-06-25 (金) 13:53:54
    • それを言ったハグリッドは砕けた言葉使っとるしな -- 2022-05-19 (木) 08:37:17
  • 二人称の不統一ってあるけど、過去と現在で別の人って見方してるんならそんな気にならないような。 -- 2021-07-06 (火) 06:26:15
  • 確かに日本語文法としての間違いは何点か見受けられるが、語彙に関してはそこまで酷いか?全部が全部日本の言葉に変えて良いものでもないだろうに。 -- 2022-03-05 (土) 01:20:27
  • 小説の翻訳ってこんなもんだろ、ってのも多いなー。受験の「訳せよ」じゃないんだから、この程度よくある -- 2022-03-08 (火) 02:52:15
    • たとえばどこがそう? -- 2022-04-12 (火) 23:55:29
    • 日本語としておかしい部分も多いのはなぁ -- 2022-06-01 (水) 01:01:48
      • それが一番の問題よね -- 2022-09-08 (木) 17:43:17
    • 「訳せよ」という日本語がもう… -- 2022-09-06 (火) 00:23:05
  • 出版社社長なら返本の意味は理解してないとダメでしょ... -- 2022-11-10 (木) 13:45:20
    • 同じ事おもったわ -- 2023-11-23 (木) 15:19:41
  • 面白いこと言おうとして失敗した感じが痛々しい 余計な脚色をしない分、素人にやらせた方がまだマシなレベル -- 2023-02-12 (日) 06:08:05
    • きちんと調べていれば誤字や誤用もなさそう -- 2023-10-22 (日) 12:58:01
  • ここのgreat ~ は「偉大な~」の方ではなく、「great success」(大きな成果)とか、「great lost」(大きな損失)のように、次に来る名詞を増大させる方の意味で使われてるので、備考にある「コテコテの」もしくは意訳で「真性の」とかの方がしっくり来る。 -- 2023-03-25 (土) 20:35:10
    • へぇそういう意味もあるんだ -- 2023-10-31 (火) 08:11:16
  • やっぱりろくに校閲やってなかったんだろうね 金ケチって -- 2023-08-01 (火) 05:13:34
    • そもそも翻訳権取るために大金使ったという話をどっかで聞いた -- 2023-08-06 (日) 00:21:12
  • リアルタイムで読んでいましたが、当時の「フクロウ便(だったかな)」に、sister問題について翻訳者がきちんと原作者に「どちらが姉でどちらが妹か」を確認した、とありましたよ。ローリングさんのお返事では「どちらでも構わない」と。でも、日本語では大切なことなので教えてくださいとお願いした、とありました。 -- Yoshi? 2024-01-28 (日) 23:46:37