500年後からの来訪者After Future5-11(163-39)

Last-modified: 2016-10-18 (火) 17:42:54

概要

作品名作者
500年後からの来訪者After Future5-11163-39氏

作品

佐々木たちとのデートを終え、片耳には有希の、もう片方には佐々木たちのピアスがはめられた。左右でまったく違うものがはめられてはいたものの、佐々木たちの配慮により、両方つけていてもファッション会社社長として恥ずかしくないものになった。次はみくるや青ハルヒと出かけて日曜には朝から家族旅行へと計画中。そして、報道陣の裏をかいた戦略により見事に断罪に成功。他の報道陣たちの脅しにもなった。ついにその処遇が決まる特番が始まった。

 

「はい、『元』職場名と名前」
「えっ!?元ってどういう……」
「いいから職場と名前を答えろ!もうおまえの解雇が確定しているんだ!『元』職場と名前を答えればいいんだよ!」
「てぃっ……TBSの中村です」
「『元』をつけろ!おまえはもうTBSの人間じゃねぇんだよ!!」
「もっ元TBSの中村です」
「はい、今からコイツと二番目の奴のVTRが流れます。もうね、視聴者の方もストレスを溜めたくなければ見ない方がいいです。この特番は視聴率を上げるとかの問題じゃないんで」
VTRが切り替わると、丁度ハルヒや佐々木たちに見せていた奴等が画面に映っていた。
『くくっ、SPまで雇っておいてあの会社も随分ガードが甘くなったもんだ。社長さえいなけりゃ、カメラを隠し持ってたってバレやしないんだからな。誰が中○のサポートなんかするかってーの』
『はははっ、芸能人チームなんかにコールド勝ちしていい気になっているだけっすよ。プロ球団を相手に勝てるわけが無いじゃないですか!でも、観客がいると下の夜景が撮れなかったんすよね。一回だけ対戦させてみませんか?観客がいない状態で撮影できるかもしれないっすよ?』
『それもそうだな。天狗になっているあのバカを少しよいしょすればいいだけだ。軽い軽い』
そしてカメラに何も映っておらず焦り出すシーン。
『何だよこれ!?どうして何も映ってないんだよ!』
『馬鹿野郎!これじゃVTRで流せないだろうが!』
『俺、知らないっすよ!大体、音声すら録れてないなんてありえないっすよ!』
『とりあえず、カメラチェックをし忘れたおまえの責任だ。あとは自分でなんとかしろ』
『ちょっ、待ってくださいよ!……くそっ!一体どうなっているんだ!?』

 

「はい、まずはここまでです。今画面に映っているもう一人が二番目に控えている奴です」
「あら、でも、どうして?どのカメラにも何も映って無かったんでしょ?」
「社長が予め仕掛けておいたトラップじゃないッスか?カメラを隠し持った報道陣だと分かっていながら、SP達も敢えて通したんだと思いますよ」
「まぁ、それはまた今度天空スタジアムに行ったときに聞くとして、まずはそこに立っている男の処分からでしょう。『いい気になっている』のはどっちの方かはっきりさせないと先に進めない」
「弁護士軍団の皆さんはいかがでしょう?」
「はい、まず中○さんの仰っていた盗撮。このVTRの内容ですと常習犯と見て間違いありません。そして、既に次に備えた計画までしています。そして、公開するのは来年の一月六日からと指定されているにもかかわらず、コンサートと天空スタジアムの撮影をしていますから、これは著作権の侵害に当てはまります。著作権の侵害だけでも10年以下の懲役が科せられます。解雇などという枠で収まるようなレベルではありません」
「そ……そんな…」
「誰が喋っていいって言ったんだよ!」
カメラマンが指示棒で叩かれていた。他の弁護士たちも同じ見解のようだ。弁護士たちの前のモニターには懲役と書かれた画面が表示された。そして二番手が姿を現した。
「さて、聞こうか。『天狗になっている』のはどこのどいつのことだ?『あのバカ』ってのは誰のことだ?答えろよ!」
「すべて私のことです。申し訳ありません」
「謝って済む問題じゃないんだよ!!堂々と『中○のサポートなんかするかてーの』って言っているじゃねぇか!『天狗になっている』のも『あのバカ』っていうのも全部俺に対してだろうが!おまえみたいな奴のサポートなんか必要ねぇんだよ!」
「中○君さぁ、さっきの奴もコイツも野球経験どのくらいあるのか聞いてくれない?」
「………」
「どうした?答えろよ。……タカさんの質問に答えろっつってんだよ!」
「ぜ…0年です」「僕もありません」
「そんな奴がさぁ、べーさんと同じVTRしか見てない奴がさぁ、なんで野球のこと語れるの?……ねぇ?べーさんだって『このVTRだけじゃどのくらい強いのか分からない』って言ってんだぜ?どうしてそこまで言えるわけ?」
「………」

 

「あの~もうこんなところで尺とってられないんで、弁護士軍団の皆さん見解の方はいかがですか?」
「先ほどの方よりさらに酷いですね。VTRから見ても彼に指示を出したのは今そこにいらっしゃる方ですから…」
「すいません、もうね、こんな奴等に敬語や丁寧語なんていらないですよ。『そいつ』とか『コイツ』で十分です」
「では、失礼して…。指示を出したのがコイツですからカメラマンより重い懲罰で間違いないです。先ほどもありましたが、この関係が長く続いてきたのであれば、これまでの分も合わせて服役する年数を増やしてもいいくらいです。加えて、ミスを犯した際の責任転嫁。もしこれで他の局がVTRを流していたとなれば、すべてそいつのせいにして自分は逃げるつもりだった。そして他の人間を引き入れて似たような真似を繰り返していると考えれば、そいつの前にも責任をなすりつけて処分が下されたカメラマンが居てもおかしくありません」
こちらも満場一致で懲役と出た。あとはこの繰り返しだな。
『ここまで見れば十分だというメンバーもいる筈だ。影分身にそう伝えてモニターを消してもらってくれ』
『問題ない』
同期した情報が69階にいた影分身にも流れてきた。全員モニターを切ったようだ。オープニングのあのやり取りのように、俺たちが知っておく必要のある情報が出てくるかもしれん。ストレスは溜まる一方だが、仕方が無い。スカ○ターで最後まで見るしかないか。
「……あれ?スカ○ターをつけているのが本物のキョン先輩ってことですか?ハルヒ先輩のところにいるんじゃ?」
「いや、状況に応じて使い分けている。例えば今のようにメンバー全員にモニターを見せる場合はここと100階の両方にスカ○ターをつけさせている。俺が見ているモニターとみんなに見せているモニターが違ったり、全身マッサージ中に体勢が変わったときに視線の先にモニターが無かったりしないようにするためだ。あとは今の特番のようにいくらマッサージされていても、こっちの気分が悪くなるような場合は影分身にスカ○ターをつけて、必要な情報だけ本体に渡すこともある。さっきも、試合当日に本社に来るメンバーが国民的アイドルだけじゃなくて、大御所芸人達が自分も行くって言っていただろ?今は俺が本物だが、番組の最後に俺たちに向けたメッセージが入るかもしれん。それをチェックするためにスカ○ターをつけているだけだ。でなければ俺もスカ○ターを外している」
『なるほど!』

 

「じゃあ今は、本物のキョンが私のシャンプーから全身マッサージまで全部やってくれているってこと!?」
「そういうことだ」
「嬉しい!!」
「って、おい。嬉しいのは分かったから、いきなり抱きつくな。スカ○ターが壊れる」
「あっ、ごめん!それにマッサージ用のオイルまでキョンに付けちゃった……」
「例の磁場でどうにでもなるからそこまで気にするな」
「マッサージが終わったら、今日はずっと抱きついていてもいい?」
「ああ、勿論だ」
『コラ~そこ~、一人でのろけるな――――!』
特番を見たイライラもその一言で雰囲気が変わった。既に恒例となりつつあるベビードールショーを見てそれぞれのベッドについた。
「……っと、俺は当分試すことができそうにないんでな。明日のサーブ練でこれを試してみてくれるか?」
「試すって何を……」
OGの身体に触れて情報を伝える。
「『理不尽サーブ零式改』だ。それでネットをつたうスピードがどうなるか試してみてくれ」
『零式改!?』
「まぁ、明日のお楽しみってことにしておいてくれ。見ればどこが変わったのかすぐに分かる」
「でも、なんか『ベビードールを着けてない= キョンに抱かれたい』みたいになってない?私も着ようかな」
「その発言自体が先輩に抱かれたいって言ってるようなもんだけどね……」
ニシシ…などと言いたげな笑い方で嫁の揚げ足を取っていた。まぁ、ベビードールをつけていないのは嫁二人と青チームの変態セッターだけだからな。俺もちょっと前まではそう感じていたが、そうでもなくなってきたようだし、一応助け舟を出しておくか。
「既にその方程式に気付いて、抱いて欲しくてもベビードールをつけているメンバーだっているんだ。汚れても洗濯すればいいだけだし、別に裸でいる必要はない。みんなから見えなくなったらまた脱げばいいだけの話だ」
「あ―――――――!!みんなずるい!そういうことなら私も着る!!」
結局、裸体のままでいたのは変態セッターただ一人。この状況で本当にいいのか?おい。

 

 翌朝、子供たち三人が降りてきたところで、身体を拡大すると、着ていたユニフォームの赤白逆転バージョンのユニフォームにドレスチェンジ。
『おぉ―――――――っ!!』
「もう三人とも立派な選手だからな。こっちのユニフォームも作っておいた。それから練習着も作ったから着替えてみるか?」
『練習着!?キョン(伊織)パパ、どんなのか見たい!』
子供たちの要望に応えて練習用Tシャツの白と赤い長ズボンにドレスチェンジ。Tシャツの左胸にはSOS Creative Companyと会社名が書かれ、それぞれMiki、Sachi、Ioriと名前が入っていた。長ズボンの横にも会社名と小さく名前が入り、足に向かって白い文字が段々と小さくなるデザイン。
「これと同じTシャツがもう一枚と赤いTシャツが二枚、短パンも赤白一つずつだ。ユニフォームがしまってあるところに一緒にいれておいてやるから、どれを着るかは自分で判断すること。いいな?」
『あたしに任せなさい!』
「くっくっ、練習を目の前にしてこんなプレゼントが貰えるなんて羨ましいじゃないか。ところで、黄チームのOG達に聞きたい事があるんだけどね。いいかい?」
『私たちに……ですか?』
「キミ達もこれで二ヶ月くらい経つから、そろそろどうしようか迷っているかもしれないんだけど、他の日本代表選手たちがどこで髪を切ってもらっているか知っているかい?」
「それなら他の合宿先の近くの美容院に行きつけのお店があるらしいです。世界大会直前の合宿所だと特に。でも先輩、そんなこと聞いて何をするんですか?」
「キョンと黄古泉君に切らせるんだよ。キミ達が体感したことをそのまま伝えれば、他の選手も試しにやってみようと思うはずだ。12月から撮影を開始する第二シーズンに日本代表選手も出てもらおうと思っているんだ。美容院の客としてね」
『美容院の客としてドラマに出る!?』
「あ、でも、私たちがその話をしていたときに、自分も切ってもらいたいなんてことを言ってました!」
「練習後に先輩たちのマッサージを受けたら、気持ち良すぎてみんなそのまま寝ちゃいそうです!」
「撮影中は無理ですが、夕食後となれば同位体もいませんし、おそらく心配はないでしょう。彼のように何に何%と明確に振り分けるにはまだまだ修錬を積まないといけません」
「だったら古泉もSPで警備でもするか?サイコメトリーで引っかかったときのみ起動すればいいだけだ。SPだからコーティング状態で押したとしても『さすがにSPには敵わない』としか認識されない」
「そうですね。どうして今頃になってこんなことに気付くのかエージェント達に申し訳が立ちませんよ。今までずっと警備にあたってくれていたわけですから」

 

「ん~~~~~だったら楽団員のカットもしてくれない?特にマンションに移ったメンバーの」
「くっくっ、面白いじゃないか。今日の練習のときにでも僕の方から聞いてみることにするよ」
「団員に聞くのはいいが、青佐々木、いつやるのかはっきりさせているんだろうな?」
「そうだね、黄古泉君は撮影が戻ってきたら手が空くとして、キミの今日のスケジュールを教えてもらえないかい?」
「あのな、撮影が終わったら手が空くって、古泉には休憩の時間もないのか?とりあえず俺は青チームに映画を見せている間は原宿店の店員、早めの昼食を食べさせて店員を交代したら、午後はみくると聖地巡礼、そのあと青ハルヒのピアスを買いに出かける。夕食後については言わなくても知ってるだろ?」
「あんた、みくるちゃんと一体どこにいくつもりよ!?」
「チャペルはまた次の機会に行くことにして、みくるには佐々木を除いた黄チームメンバーの湯呑にお茶を煎れてもらう。ここまで言えば分かるだろ?」
「えっ?でもキョン君それだと、お茶がこぼれちゃいます」
「心配いらん。湯呑にお茶がこぼれないよう膜を張って、現状維持の閉鎖空間で囲むだけだ。お茶の温度も煎れたときのまま向こうまで持って行くことができる。Wハルヒのような一気飲みをしなくても済むってわけだ」
『そんな閉鎖空間があったとしても、あたしの飲み方が変わることはありえないわよ!』
「そういうところまで一語一句違わずとはこっちの方が吃驚だ。それで?青佐々木、カットはどうするんだ?」
「とりあえず、今日の練習で聞いてみてから考えさせてくれたまえ。キミの方は厳しいようだからね」

 

「それで、例の特番は一体どうなったんだい?」
「弁護士からは全員が懲役と宣告された。最後に国民的アイドルが『明後日行くから待ってろよ~!』なんて言ってたくらい。今朝のニュースも、解雇したから我関せずとばかりに新聞記事の見出しに特番のことが載っていた。TV局もアナウンサーに謝らせるだけだが、新聞社にも何かしらペナルティを与えたくなったよ。それで、特番で俺たちとの試合の日取りが分かってしまった以上、本社前に大勢人が集まることに違いない。報道陣と同様に入れないようにするか、全員受け入れるかのどちらかだ。当然おでん屋は休みになる」
「あんた、あの特番見たんじゃないの!?最初のカメラマンが言ってたじゃない!観客がじゃ……」
「それに対する策は既に立ててある。ステージにいるハルヒ達と観客の関係者を除く人間も透明になると条件に付け加えればいい。来週のコンサートはそれでいくつもりだ。明日の試合は夜景を見せたら通常のドームに戻る。客を入れようが、入れなかろうがそこまで大差はない」
「だったらもう決まったも同然じゃない!番組収録の報道陣以外は閉鎖空間で弾いて、観客席を埋めるわよ!」
「では、ポジションと打順を発表させていただきます。このところ会議に参加できていないので、どなたか代わっていただけませんか?」
「くっくっ、それなら青チームのキョンがキミを『北口駅前店の店長にする』と言ったら、満場一致の『問題ない』が飛び出てきたよ。店長候補とやらには二号店の店長を任せたらどうだい?」
「それは手厳しいですね。とにかく、今は監督としての責務を果たさせていただきます。一番レフト黄有希さん、二番セカンド佐々木さん、三番センター黄鶴屋さん、四番ショートハルヒさん、五番ファースト朝比奈さん、六番サード朝倉さん、七番ライト黄朝倉さん、八番ピッチャー涼宮さん、九番キャッチャー鶴屋さん、催眠をかけるのは今回もハルヒさんと青チームのメンバーの方ですので宜しくお願いします。議事録で確認しましたが、もう一段階上の投球をすると記録に残っていましたが、彼をどのタイミングで出しますか?」
「あれだけの大御所芸人たちが試合を見に来るんだから、試合が終わってからになるわよ。明日の夜練は休みになりそうね」
『涼子先輩、本当ですか!?これで応援しながら試合が見られそうです!!』
「あ、それ、ちょっと待った。こっちの世界で準備運動中にOG達がジョンや青俺の球を受ける練習は、今後一切禁止とする。それに、まだ仕事中の青OG二人の分の穴埋めならいいが、こっちのOG全員はまずい。ベンチの一番前で見ていてもいいから、ステルスで隠れていてくれ」
「我々はここで観戦させてもらうことになるだろうが、なぜそうする必要があるのか聞いてもいいかね?」
「折角、非公開にしていた日本代表たちの夜練を俺たちがバラすことになりかねません。監督の采配では今回は女性陣のみで戦うことになる。そのメンバーだけで練習して欲しい」

 

 少々時間がかかったが、全員が納得してくれたようだ。
「ところで、ジョンも驚いたという変身を我々にも見せてもらえませんか?本当に超サ○ヤ人にならずに、例の投球ができるのかどうか」
「超サ○ヤ人になることに変わりはない。だが、その変身を隠した状態を今から見せる」
自分自身に催眠をかけ、俺の声だけ外に漏れる遮音膜。あとは衝撃吸収膜を三枚張って超サ○ヤ人になった。
「これでどうだ?」
『えっ!?』
「『えっ!?』ってなんだよ。もう変身したぞ?」
『えぇ――――――――――――――――――――――――――っっ!!』
「これは圧巻です。いきなり強くなったあなたにジョンが驚いたのも納得がいきましたよ」
「ちょっと待ちなさいよ!あんたホントに変身してるの?」
「なら催眠だけ解いてやるよ」
纏ったオーラの音は聞こえないが、超サ○ヤ人になっていることは確認できたようだ。
「くっくっ、キミが纏っているオーラの音が聞こえないのは遮音膜のせいだろうけど、どうしてキミの声だけ聞こえるのか説明してくれたまえ。ついでに催眠と遮音膜以外に何を使っているのかも頼むよ」
「簡単な話だ。『俺の声だけ漏れる遮音膜』という条件で張った。あとは衝撃吸収膜が三枚と催眠だ」
ハルヒの力を元に戻して自席についた。まだ確認しないといけない事があるんだ。さっさと終わらせてしまおう。
「青圭一さん、青ハルヒと青みくるのCM撮影はいつになるか分かりますか?」
「それなら今日折り返し連絡をして聞くことになっている。カシミヤ100%の嘘記事はまだのようだ」
「こっちの世界では本社だったから良かったが、店舗で見せることになると通販の方は大丈夫かと顧客に不安が残る。有希に原宿店と倉庫で検査ができるようにFAXを流してもらうから、青俺は倉庫の方で報道陣にカシミヤのチェックをさせてくれ。残りの店舗にはFAXと同じ内容の紙を張って、俺のSPが報道陣を押しだす」
「分かった」
「それで、例の会社はどうなっていたわけ?」
「俺が全額引き落としてから色々と混乱していたらしいんだが、借金を返しながらなんとか生きながらえている状態だ。これで嘘記事を書いて儲けを得ようとすれば、逆に倒産する。後は便乗した会社を潰すだけだ。他に無ければ朝の会議はここまでだ。異世界で動きがあれば知らせて欲しい。みくる達は監督が言っていたポジションと打順を鶴屋さんに伝えてくれ。青OGはこの後69階だ。今日も一日よろしく頼む」
『問題ない』

 

「ちなみにシャミセン、今日は寝られたか?」
『キミが何をしたのかよく分からないけれど、今日は音がうるさくて眼が覚めるなんてことはなかったよ』
「それじゃあ、明日以降もここで大丈夫そうだな?」
『そうだね、ありがとう』
流石に初代シャミセンまでとはいかなかったか。ハルヒが喋るようにしたせいで一緒に知能までついてしまったらしい。でなければテレポート能力を見破れるはずがない。
『黄キョン先輩!早く映画見たいです!』
「ああ、今行く」
テレポートで69階に赴くと、ベッドと浴槽の間に人数分リクライニングシートを情報結合。青OG達が座ったところで照明を消し、映画の上映が始まった。この前五ヶ国語の知識も渡しておいたから大丈夫だろう。
「『全米が二度見た』なんて新聞記事に載ったくらいだ。見逃すなよ?」
『問題ない!』
あとは、楽団員たちのガードもそうだが、報道陣が邪魔だ。脅迫状を投げつけた分、多少執拗になってももんだいあるまい。怪我人がどんどん増えるだけだ。ステルスで後ろを取ると機材をすべて破壊して数人の足に銃弾を当てる。怪我人を放って逃げ出す癖に、どうしてここまで集まるんだか。社長は今インドだというのに……本当に馬鹿ばっかりだ。しばらくして救急車とパトカーのサイレンが鳴る。警察が付近を捜索していても犯人はステルスをかけた俺だからな。見えるわけがない。「何台カメラを壊せば気が済むんだ!」と早く上司に怒られて欲しいもんだ。

 

 そろそろ映画も終わるだろうと昼食の準備を始めていると青OG六人がテレポートで現れた。
『黄キョン先輩!あんなの一度だけじゃ凄過ぎて訳わかりませんよ!』
「だから言ったろ?『全米が二度見た』って新聞記事になったって。OG達の世界のヒロインも何度もスロー再生やコマ送りをしていたくらいだからな。こっちの世界でもCMの映像を報道陣が勝手にコマ送りしていたよ。公開まで、まだ半年あるってのにな」
「あの映画のDVDいただけませんか?個室でシーン毎にじっくり見てみたいです!」
「それならお安い御用だ。三人はこの後早めの昼食を食べて原宿店にいる影分身と交代してきてくれ」
『分かりました』
天空スタジアムでの練習を終え、ハルヒ達が帰ってきた。
「みくる、ドレスの準備はできているか?それに、佐々木。楽団員に聞いてみてどうだった?」
「ドレスの準備はできているんですけど、できればキョン君に着替えさせて欲しいです!」
「オーディションしてから約一ヶ月だからね。次のコンサートまでに……ってメンバーが多かった。古泉君はドラマ撮影だとして、キミの明日以降の予定を聞かせてくれないかい?」
「明日は家族でチャペルまで行ってくる。明後日以降もみくるや佐々木も含めてチャペルまでと考えているんだが、コンサートまでに切ってしまいたいのなら先にカット&シャンプーをした方がよさそうだな」
「えぇ―――――!!ってことはキョン君とのデートが11月に入ってからになるってことですか?」
「午前中も含めてなるべく早めに終わらせるから、そう言うな」
「分かりました……」
「佐々木、明日の三時からカットしていくから、20分毎に誰を入れるか決めてきてくれないか?マンションの体育館にシャンプー台とカット用の椅子を用意しておく。申込書さえ準備しておけば、有希にテレパシーを送ってもらえばいいはずだ。自宅から来ている団員については月曜以降で十分間に合う」
「問題ない。テレパシーで伝えておく」
「それなら、すぐにでも申込書をマンションに置いてくるよ」

 

 昼食時に上がった議題と言えば、青ハルヒと青みくるのCMの件くらい。双方とも来週の月曜日の午後らしい。お茶を煎れ終えたみくるを連れて100階に赴くと、本人の宣言通り服を脱がせていく。
「少し胸が張ってきたんじゃないか?そろそろ母乳が出てもおかしくなさそうだ」
「ほぇ?そうですか?わたしにはあまり変わったようには見えないんですけど……」
「初めてだからな。張ってきたかどうかなんて何度も母乳を与えていないと分からんだろう。今夜あたりにマッサージしていたら出てくるかもしれん」
「キョン君が美味しいって思えるような味だといいんですけど……」
「赤ん坊が泣きだすような母乳になるはずないだろ?心配しなくても大丈夫だ」
OGを一人残しておけばよかったな。みくるのヘアメイクを終えて準備完了。お茶とポルシェを持って有希のマンションの駐車場へと移動した。助手席に乗ろうとしたみくるに声をかける。
「そういえば、みくるは初めてだったな。花嫁の座る席はここだ」
「ここってどこですか?」
お茶を持ったみくるを宙に浮かせて俺の太股の上にお尻を乗せる。
「キョン君、こんな状態で運転して大丈夫なんですか?」
「サイコメトリーもあるし、心配いらん。それより、みくるの方こそ大丈夫か?別人に見えるとはいえ、ウェディングドレスを着てポルシェでドライブだからな。青みくるも恥ずかしがっていたが、みくるは平気か?」
「そういわれるとわたしも恥ずかしくなってきました。でも、そこまで距離もないですから多分大丈夫です!」
「じゃあ、行くぞ?」
「はいっ!」

 

 みくるの発言通りここからなら、あの上り坂を昇るだけに等しい。わざわざポルシェで行くこともなかったかもしれん。グラウンドでは野球部が練習中か。ポルシェに気付かれないうちにキューブ化して目的の部屋の前へとテレポート。さぁて、俺たちの姿になんて言い出すのやら。鍵を開けて、久方ぶりの部室の光景が目の前に広がった。
『あっ!みくるちゃんだ!久しぶり~』『お茶持ってきてくれたの!?早く扉を閉めて!閉めて!』『みくるちゃんウェディングドレス姿綺麗~』『やはりみくるでないと駄目らしい』
昨日の特番ではないが、『元』みくる専用の椅子にかかと落としをくらわせておいた。
「みくる、まだ膜を張ったままだから長机の上にお茶を置いてくれるか?膜を破ってみんなに味わってもらおう」
「はい……皆さん、お久しぶりですね。今お茶の匂いを皆さんに届けます……グス…」
膜を解除して文芸部室内にみくるの煎れたお茶が広がる。
『いい匂い~この匂いも久しぶりだよ』『みくるちゃん、また来てよ!』『懐かしい匂いだな~』『みくるちゃんどうしてウェディングドレス着てるの?』『みくるちゃんが結婚したからに決まっているじゃない!』
「そうです。わたし、キョン君と結婚しました。結婚指輪も二人で選んだんですよ」
『二人が結婚!?』『結婚指輪見たい!』『見せて見せて!』『早く早く!』
相変わらず幼稚園児みたいな連中ばっかりだ。約一台を除いて……。みくるが左手の手袋を脱ぎ、薬指にはめられた結婚指輪を部室にいる全員に見せた。
「今つけているピアスもキョン君と一緒に買いに行ったんです!」
『指輪も素敵だし、ピアスも可愛いね!』『うん、似合う似合う』『いや、みくるにはもっと大胆な……』
相変わらず思考回路が青古泉と変わらんな。しかし、やはりピアスが『可愛い』になってしまうか。チャペルに行く前にもっと大人のピアスを買った方がいいかもしれん。青古泉……もとい、元みくる専用のイスの意見を採用するのは癪に障るが……まぁ、いい。デートに行く目的が一つ増えた。
「みくる、やっぱりそのピアスじゃ可愛いになってしまいそうだ。チャペルに行く前にピアスを買いに行こう」
「えっ!?キョン君、それ本当ですか?」
「こんなところで嘘を言ってどうするんだ。OG達にもこいつらにも可愛いって印象になったからな。おまえら、今度はみくるが女刑事の服装やメイクで来るから、ピアスをつけてみてどうか見てくれるか?勿論お茶もみくるに煎れてもらうつもりだ」
『えっ!?それ、本当?』『みくるちゃんが女刑事?』『アダルトなみくるが見られそうだ』『絶対来てよ!?』
「ゆびきりはできませんけど、絶対また来ますね!」
「じゃあ、みくる。そろそろ戻ろう」
「はい……キョン君、また連れてきてくださいね!」
「じゃあ、おまえらまたな!」
『問題ない!』
あ~あ、こいつらにまで広がってしまったらしい。有希、恐るべし……

 

 本社81階に戻ると、みくるは涙でメイクがボロボロ。すぐにメイクをテレポートして俺がお茶を飲むことにした。
「熱っつ!」
「キョン君、大丈夫ですか!?」
「現状維持の閉鎖空間を自分でつけておいてすっかり忘れてたよ。それよりみくる、着替えはどうする?また脱がせようか?」
「キョン君、涼宮さんが帰って来るまででいいので、100階でわたしのこと抱きしめてくれませんか?」
「ドレスを着た状態でいいのか?最低でもあと二回は使うことになるから、しわはつけたくはない」
「じゃあ、ドレスは脱がせてください!」
「分かった」
みくるを連れて100階にテレポート。ウェディングドレスを脱がせて上はノーブラ、下はショーツだけの状態で横になった。みくるを抱き寄せると、みくるも俺に抱きついてくる。豊満な胸がタキシードにあたって柔らかい感触が服の上から伝わって……ん?
「みくる、母乳が出ているんじゃないか?タキシードが母乳で濡れてしまったらしい」
「えっ!?キョン君の折角のタキシードが台無しになってしまいます!」
「俺も上半身は裸の方がよさそうだ。濡れた分は磁場で吸着できるから気にしなくてもいい。それより、みくるの母乳飲んでみてもいいか?」
「わたしので良ければ喜んで」
ちょっと胸を揉むだけで母乳がしみ出てきた。溢れた母乳をすくい取るようにしてから母乳を吸い始めた。出たばかりということもあり、濃厚な味が舌に伝わってくる。ハルヒのものとはまた別の味がする。
「赤ちゃんに母乳を与えているときって、こんな感覚なんですね。こんなの、キョン君に抱いてもらえるまで待てそうにないです!」
「かといって、中途半端なところで青ハルヒに呼び出されるわけにもいかんだろう?俺だってみくるを抱いた後は、みくると一緒に眠りたいくらいなんだ……って、青ハルヒと出かけるのは影分身でいいか。ピアスを買いに行くだけだからな。夕食まで本体はみくると一緒にここにいよう。それまでたっぷり抱いてやる」
「嬉しいです。わたしの母乳の味はどうですか?」
「最初だから濃厚な味がするよ。ハルヒとはまた違った甘さがする。みくるらしい味って表現するのが一番いいかもしれん。みくるの煎れてくれるお茶と同じで、赤ん坊が飲んでいるだけで癒されそうな味だ。これならお腹が空いたわけでなくとも、すぐに泣き止んでしまいそうだ」

 

 ショーツを脱がせる頃には母乳を吸っていた分の刺激でしっかり濡れていた。これもみくるが母親になったいい記念だ。コレクションに入れておくことにしよう。しかし、胸の張りもおさまって大分母乳を吸ったはずだが、秘部と一緒に胸を責めていると噴水のように湧き出てくるな。確か、血液が母乳に変わるって前にサイトか本かで呼んだことがある。鉄分不足にならなければいいんだが、母乳になってしまった分は仕方が無い。秘部を責めながら後ろには触手をと思っていたが、今回は前だけで満足するまで抱いてやることにしよう。影分身を81階で待機させてビラ配りチームが戻って来るのを待った。
「ただいまぁ。キョン、行くわよ!」
「随分時間がかかったな。夕食までに帰って来られるかわからんぞ?」
「心配しなくてもいいわ!もう買うものは決めてあるから!」
「じゃあ、俺とハルヒが夕食に遅れても先に食べていてくれ。念のためだ」
『問題ない』
Wハルヒの『安心しなさい!』や『心配しなくてもいいわ!』で本当に大丈夫だったことなんてほとんどなかったからな。青ハルヒのヘアメイクをしてからドレスチェンジ。ポルシェの運転席でウェディングドレスのまま青ハルヒを抱くと、裸でくっついていたときは違った恥ずかしさを感じていた。
「おいおい、そんなんじゃ全速力で店まで行けないだろ。振り落とされるなよ?」
「あたしに任せなさい!」

 
 

…To be continued