印鑑を彫る

Last-modified: 2017-10-08 (日) 13:28:06

注意点

背景

  • 銀行口座を開設しようと1週間かけて開設用紙を取り寄せた。記入して2箇所に捺印するも、印影がかすれてしまった。印影のかすれは、ネットで再び申請情報を打ち込むというめんどくさい作業を経て再び用紙を申請しない限り無理らしい。
  • そもそも、本人自体が印鑑というくだらない文化が昔から大嫌いだった。以下、理由
    • 本人そのもの証明ではなく、単なるハードウェアの認証という、主旨の根本からの取り違え。
    • ハードウェアによって間接的に本人を認証している割に、そのハードの複製が容易。既に身近にある、スキャナによる印影スキャン→フリーソフトのドローツールによるオートトレース→CAM→卓上加工機で余裕。同様のシステムとしてICチップ搭載カードが挙げられるが、こちらは複製困難。
      何故、権利の譲渡をハードウェアの譲渡で表現する必要があるのか理解に苦しむ。そういうのはソフトで対処すべきで、誰に渡るかも分からないハードとか。
    • 印鑑が本人の代わりになる。既に意味が分からない。
    • その割に本人が押しても押し損じにより上手く認証できない事が多い。
    • 何故か直筆で署名した脇にその辺で手に入る三文判を押す風習があり、それを強要される。意味が分からない。へそが沸騰する。
    • 署名は本人認証ツールとして、アメリカでは特に重んじられているし、日本でもクレカでは正式な手法として認められ、署名の偽装があれば不正利用と認められたはず。同様に日本も死刑執行などの重要案件は花押や署名が必要となるため、日本だって印鑑の持つ位置づけは分かっているはず。(追記:感情にまかせてこれ書いた数日後には分かってたんだけど、普通に執行書類に印鑑押してたっぽい。別に印鑑でもいいようだ)
    • 全世界で印鑑というデバイスは果てしない過去に消え去ったものであるが、日本には何故かその消えた相応の理由があるオーパーツが存在する。そしてやはり害しかない。
    • 銀行も静脈認証やICチップカードなど、より強固な認証方法を積極的にアピールして、複製がやや容易な磁気ストライプの危険性すら訴えているのに、口座を作るのに印鑑が必要になる矛盾。そして老人は印鑑を通帳と一緒に保管するオチ
  • つまり、個人的には、認印やゴム印、角印の範囲を超える印鑑、まぁ要は一般市民の非業務用個人認証手法として印鑑は百害あって一利なし、今すぐ消えて無くなるべき文化だと思っている。
  • しかし、悔しいながらも、この形骸化した文化はもうしばらくは続きそうであり、銀行印も無くなりそうもない。そんなものに抗ってはしょうもない。悔しいので、この腐った印鑑文化をおもいっきり楽しんでやることにした。馬鹿げた印鑑信仰にNoを突きつけるために。ポジティブにね!

目的

  • 銀行印として使用できる印鑑を、安価に自作する

印鑑の要求仕様

  • 印鑑登録など、使用する先(自治体や銀行)で要求される仕様(e.g.名字でないとダメ)が微妙に異なるらしいが、一般的には大体共通の仕様がある。以下に一般的な使用を示す。
    • ゴム印等変形しない
    • 本人の氏名のみが記されている
    • 鮮明な印影
    • 文字が切れているなどの破損がない
    • 大量生産品でない
    • 直径8mm~25mm(自治体による。20mm以内の場所もあるようだ)
    • 枠を有する
    • 白抜きに赤字(文字の部分だけ彫った、つまりネガはダメ)
  • 主要な印鑑には実印と銀行印がある。男女でお勧めの太さが違うようだ。
    • 銀行印(10.5 12 13.5 15 16.5 18 [mm])
      • 男性は12~18、女性は10.5~15がお勧めらしい
    • 実印(13.5 15 16.5 18 21 24 [mm])
      • 男性は15~24、女性は13.5~18がお勧めらしい
  • フォントはいくつかあるが、縦横の直線のみで構成され、なおかつ印鑑っぽい篆書体をお勧めする。彫りやすい事に加え、一般的に印鑑の種類に問わず用いられるようだ。
  • 調べる場合は「実印 自作」の検索ワードなどが使いやすいかと。

作り方

  • 適当な材料を手に入れる。
    • 今回はφ15mmのアクリル棒を用いた。
  • 材料をカットする。60mmくらい。
  • しっかり端面を出す。
    • 棒ヤスリに水を垂らし、水平に動かした。
    • ある程度透明になったら#400→#1000位のペーパー
    • 接地面が小さすぎて水平といっても平面が出にくいので、長い棒2本にV溝を掘り、そこに印鑑をクランプして、棒を治具として研磨する方法があるらしい。やらなかったけど。
  • マッキーで1mm幅くらいの縁を書く
  • リューターの一番小さい丸いダイヤモンドビットで縁の内側を彫る
  • 自分の氏名篆書体フォントを探す。参考文献の白舟書体やシャチハタサイトなどで。篆書体については別記する。
  • 篆書体で氏名を書き、左右反転し、それをみながらマッキーでアクリルに写し取る。
    • 篆書体はカクカクしているので楽です。
    • 参考文献にマッキー転写法を紹介。でもアクリルだと上手く行かなかった。
    • 葡萄によるトナー転写法も検討したが行わなかった。
  • 下書きの外側寸前を細ビットで彫る
  • 白地部分を削る
  • 試し押しし、白地部分で、朱の点々が出てしまう部分を繰り返し除去する
  • ブレーキクリーナーでマッキーを落として、石鹸で脱脂する。

篆書体について

  • 篆書体は遙か昔の中国の字
  • 俗に言う"漢字"には、"漢"字だけでは無く、日本でできた"国"字が思いの外多く含まれていて、当然それらの文字に対応する篆書体が原理的に存在しない。たとえば「畑」など。
  • そういう場合には調べて何とかして下さいw

製作

ver.1

  • 素材:15mmアクリル棒
  • 銀行登録実績あり。ただし印影は・・・ショボイ。大丈夫なんだろうか・・・。
    • よって、印影は当然紹介できません。悪しからず。

DSCF5680.jpg

DSCF5681.jpg

  • 製作について
    • 鉄より何倍もさくさく削れる割に、結構苦労した。1週間くらいかかった。
    • 白地部分は結構掘り下げないと、点となって現れるようだった。
    • 口座を作る日になって、印鑑の最終調整。印影を確認してはリューターで調整。納得の印影となるまで繰り返した。そのようなノイズは、赤い点となって朱肉が残っていることが多いので確認しやすい。そのままその部分を削ればよい。
    • 平滑度も低かったため、更にペーパーで最終端面出し。
    • そして切りっぱなしであったグリップ部分が痛かったのでディスクグラインダーを当てて、直角に。さらにグラインダーでRを付け、手ヤスリで仕上げて完成!おお、まろやかな押し味になった。主にてのひらが。
    • 銀行に持ち込まれる30分前にディスクグラインダーが当てられていた印鑑は、未だかつてこの世に存在したのだろうか・・・w

ver.2

  • 自信作。目下製作中。
  • 発端
    • 印鑑って個性がない。どれも高級そうな木かアクリル、珍しくてもチタンなどでどこか実用的。遊び心がない。象牙とか言語道断。センス悪い。
    • うーん、なんかいい物無いだろうか(きょろきょろ)・・・これだ!!!!
    • やべえ、これは世界的にも超レアなんじゃないだろうか、むしろ存在しない気がする。まさにユニーク。自分でやっておきながらかなり気に入っている。
  • 今だかつて、この異様な組合せをみたことがある人がいただろうか・・・。
    DSCF5333.jpg
  • 特徴
    • 素材の入手性が素晴らしい。
    • 誰もこんな印鑑を持っていない。
    • むしろこれをみて印鑑だと思う人が居ない。故に盗難被害に遭いにくい。
    • 落としても欠けたりしない
    • 卓上を転がらない
    • 素材の意匠を十分生かしたまま、押印の向きが分かる
    • 形状により、通常の印鑑より重心が下がり非常に狙いやすい。
    • 特殊な形状により、印面<押しつけるのに寄与する半径となり、押しやすい。
    • 見た目と押された印影の形が異なり、ギャップがある。
    • 非常時に本来の使用目的として利用できる。むしろそのようにして日常に溶け込ませると、ありがちな実印紛失も盗難も防げる。
  • 縁を彫ったところ
    • リューターのダイヤモンドビット彫りです。
      DSCF5334.jpg
  • 縁の印影
    • 6角形の見た目から作られる印影は15mmの円となり、まさに印鑑そのもの。
    • このギャップが面白い!
      DSCF5335.jpg
  • 素材の選び方
    • 呼び径
      • M10の頭の円の直径が15mmとなり、実印にも銀行印にも使え、そこそこ彫りやすいサイズというオールマイティーさを持つのでこれがお勧め。長さは70mmが使いやすかった。
    • ネジ部
      • 全てネジではなく、頭の部分はネジがない物が押しても痛くなくgood.
    • 刻印
      • ボルトの強度刻印の無いものが良い。当然その部分を削らないといけないため。その際簡単に削れるとも思えず、印影の円まで崩れる恐れがあるので、できる限り頭部に強度区分の無いボルトを使うこと

今後の展望

  • 葡萄法でレジストを転写し、塩化第2鉄などでエッチングでできないかなーと考えたが、材料が入手出来なかったのでやめた。鉄も溶けるはずだけど、銅よりは溶けないらしいが。
  • すると、アルミ+塩酸10%で同じ事を考えてやっている人が居た!(c.f. 参考文献)
    • しかもクオリティが俺のより超高いw まぁ俺のは手彫り感溢れるってことにして
    • まぁ、行員に印影を凝視されたがw 俺の手描きの文字+彫りのショボさが相まってすごい印鑑に見えたらしいw
  • というわけで、今度はこれにしよう。手彫りとかめんどくさすぎる。
  • 10%塩酸といったら、このサイトでおなじみのサンポール(塩酸9.5%)である。
  • したがって、ボルト+エッチング(塩化第2鉄orサンポール)でできないかを今後検討していく予定である。可能ならトナー転写も行いたい。

参考文献

コメント

  • 一ヶ月ほど前に三井住友銀行で口座を作ったのですが、印鑑不要でした。ちょっと驚きました。アイロン転写プリント基板の要領でネジ印鑑作れませんかねー -- tommie? 2012-12-16 (日) 07:50:25
  • こんにちは。塩酸によるエッチング法ですが、Youtubeのアーツ&クラフト商会#24「大阪浪速錫器」という動画ではエナメル塗料を使って模様をつけています。マジックやエポキシ接着剤よりは良いのではないでしょうか? -- 2017-10-08 (日) 13:28:06