96スレ/桜の中

Last-modified: 2014-07-08 (火) 00:29:41
668 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2014/03/21(金) 01:49:00.28 ID:j5JyBQDp0
桜が暖かな風に巻かれて、鮮やかな吹雪を散らしています。
その真ん中で、黒髪を輝かせる少女が一人。華奢な体に白い肌。私からは、その背中しか見えません。
私は彼女の名前を呼んで、駆け出そうとしました。
また、ひとひらの桜が散ります。
少女の姿はふっ、と消えました。
私はその場で立ちすくみ、ぽっかりと開いた視界が悲しくて、訳の分からないまま涙が出ました。
彼女がいたはずの場所に、黒い羽が一枚落ちていました。
拾い上げて、掌に乗せてみました。涙はいっそう止まらなくなって、羽は風に乗ってどこかへ飛んで行ってしまいました。
「ほむらちゃん……」
私の中の、私の知らない私が、悲しくて叫びます。あの子を求めて泣きます。
また風が吹いて、桜が散ります。春の陽気に誘われた人々の明るい声はあちこちで響いています。
私はとぼとぼと歩き出しました。隣には誰もいません。
隣に歩いてくれる家族も友達もいます。だけど、あなたはいません。
どこかで、誰かが手を叩く音が聞こえました。

あれ、私、何で泣いてるんだろう?

道の横で、同じように泣いてる女の子いました。嘘みたいに綺麗な黒髪の女の子。
あの子も悲しいことがあったのかな。

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