仮想GND回路

Last-modified: 2010-01-06 (水) 19:00:58

仮想GND回路集

元ネタというか引用というか翻訳 from 「Virtual Ground Circuits」

アナログ回路に共通する課題は電池のような単電源しかない状況において
正負電源(例えば±5V)が必要なことでしょう。しかし、単電源を”分割”し、
正負電源のようにする方法はたくさんあります。
ここではそれらのいくつかと関連する妥協点について紹介します。
ex1.gif

電池を2本使う

電池を使う際にもっとも簡単な正負電源のつくり方は以下の図のようにすることです。
図1
この回路の問題点は片方の電池がもう一方よりも早く消耗することであり、私が
試した全てのオペアンプにおいて出力のDCオフセットは上昇します。

これには様々な原因があり、例えば新旧の電池を混ぜて使っている、二次電池を
使っている、それともあなたが不幸なだけかもしれません。

実際には、このような事は全てのヘッドホンですぐ起こるわけではありません。
電圧差がここまで生じるまでに、アンプの出力がクリップし、音が歪み始めるからです。
そのため、アンプの電源を入れっぱなしにしたときぐらいでしか起こらないでしょう。
しかし、大きなDCオフセットはヘッドホンを痛める場合があるので
こうやって電池を1つだけ使いつつ、正負電源を使うために、仮想GND回路を考えるわけです。

抵抗分圧

 このwikiで紹介しているChumoy ampでも抵抗分圧を採用しています。
図2
この回路では2つの4.7KΩ抵抗が仮想GNDを作り出しています。
例えば、回路に12V の電圧がかかっていたとしましょう。抵抗値は等しいので中点には6Vかかることになります。つまり、中点からみると±6V の電源に見えるわけで、これで単電源から正負電源ができたことになります。

しかし、この回路は簡単ではあるけれど、とてもバランスが崩れやすいのです。
ここでは直流の観点からChumoy ampの回路図を見て、理由を探ってみましょう。
図3

1mVの電池はオペアンプの入力オフセットを考慮したものです。これは回路などに左右されますが、
まあ、OPA132 としては現実的な値でしょう。

オペアンプの動作において、2つの入力は必ず等しく、そのため、1mVはR3にかかることになります。
それを維持するためには、オペアンプはR4に対して10mVかけなければいけません。
これによって11mVの電位差が生じます。ここで負荷が32Ωだとすると、0.34mA流れることになり、
またこの電流は分圧部分からきます。今、負荷にとっては4.7kΩが並列(つまり2.35KΩ)で動作しているように
見えているので、オームの法則から
0.34mA×2.35kΩ≒0.8V
となり、理想的な動作点から~0.8Vも誤差が生じます。

この場合なら、電池を9Vとすると±4.5Vではなく、+3.7Vと-5.3Vになります。
もちろん環境によってこの値は左右されます。
単純に言うとインピーダンスが低いヘッドホンほどこの差は大きくなるのです。

生じる問題点

Chumoy のような回路において正負電源のアンバランスさが音を狂わせるということは
ありません。入力と出力は同じGND に繋がっているため、ぴったり分圧されている必要はないのです。
それではなぜ私たちはそれを気にするのでしょうか?
ほとんどのオペアンプは出力を電源電圧と同じところまでスイングすることはできず、
一定の余裕が必要になります。ヘッドホンなどの負荷をつなげたとき、OPA132なら約3Vほど必要です。
一例として、9V の電池が+4V と-5Vに分圧されていて出力がGND を中心に±1V上下しているとしましょう。

すると、正電源側でクリッピング(電源電圧の不足で波形が潰れる)することになります。
さらに電池には電圧降下があるため、クリッピングし始めるまでの動作時間も短くなってしまいます。

解消方法

一番早いのは電源電圧を上げることですが、これには大きく、高級な電源が必要になります。

もうひとつは分圧部分の抵抗値を小さくすることです。しかし、これだと抵抗が消費する電力が
大きくなりメリットが小さいです。

ここで紹介するほとんどの回路においては、まったく異なる方法、つまり仮想GNDにバッファをかけています。
この方法を用いることで、電源のインピーダンスを小さいように見せたりすることができます。
部品が増えますが、メリットは大きいでしょう。

つづく・・・