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澄姫が遊びに来た その二

Last-modified: 2017-03-08 (水) 08:12:39

 冬のある日。
 澄姫が私の家に遊びに来た驚くべき日。
 澄姫を居間へと案内するため廊下を歩いている時のこと。
「外から見た時から思ってたけど、けっこう大きいわよね。とこよの家」
「式姫のみんなに部屋を用意できるくらいの広さはあるからねー。澄姫の家ほどじゃないけど、それなりの広さはあるよね」
「土御門の屋敷と比べたらそりゃあそうだろうけど。……式姫に部屋?」
「うん。空き部屋が多いから、自由に使ってもらってるんだ」
「ふーん。そうなの小烏丸?」
「はい。私も部屋を一つ使わせて頂いております」
「ふーん」
「な、何?」
 そんなに私の顔をみてどうしたのかな澄姫。
「別に。あなたらしいなって思って」
 これは褒められてるのかな?
「いやー、えへへ」
「なにを嬉しそうにしてるのよ」
 あれ? 褒められたわけじゃなかった?
「いい御主人様に恵まれたわね小烏丸」
「ありがとうございます。とこよ様はとてもお優しい御主人様です」
 むむ? やっぱり褒められてる?
 うーんよく分からない。澄姫は素直じゃないからなあ。
 ……そういえば澄姫、今日はどうして遊びに来たんだろう。
「そういえば、今日は突然どうしたの澄姫」
「別に、どうもしないわよ。ただ、一回くらいとこよの家に遊びに行ってみてもいいかなって思っただけで」
 本当かなあ。
 果たして澄姫が理由も無く遊びに来たりなんてするかなあ。
「……どこか遠い場所に行っちゃうとかないよね?」
「なんでよ! いや、そういうんじゃなくて本当にただ遊びにきただけだから……」
「本当に?」
 まさか本当に私に会うためだけに澄姫が?
 いやそんなまさか。 
「私がただ遊びに来るってことが、どんだけ信じられないのよ」
「だってー。……でも、だったら一回くらいじゃなくて何度でも遊びにきていいからね?」
「……気が向いたらね」
 あっ、照れたな。
「それよりも、あなたの家。大きいにしたってなんだか妙に広すぎない? 外から見たときよりも広いように感じるんだけど」
 あっ、ごまかしたな。
 でも、さすが澄姫だ。すぐに気づいちゃうんだなそういうの。
「そうなんだよね〜。私はずっと住んでるから、家ってそういうものなのかなって思ってたんだけど……、やっぱりちょっと広すぎる気がするよね」
「かなり広すぎる気がするわね」
「きっと、すっごい大工さんがこの家を作ったんだろうね」
「見た目より広い家を建てるって、どんな大工よ」
「着きました。ご主人様、澄姫様」
 おっと、いつの間にやら居間の前だ。
「客間ではなく居間ですが、よろしかったんですよね」
「うん。いいよ。澄姫だし」
「どういう意味かしら」
「深い意味はないよ」
「それは安心すればいいのかしら?」
「もちろんだよ」
 ……天照様を安心させる時の月読様の真似って、澄姫も気付いたみたい?
「まあ、澄姫なら居間でいいよねくらいの意味だしね。わざわざ客間で応対するのも、なんだかよそよそしい気もするし」
「ならいいわ。……ちょっと引っ掛かる言い方があった気もするけど」
 あ、小烏丸ちゃんがくすりって笑った。
「それではどうぞ」
 もう。そんな笑顔を見せられると、こっちももっと楽しい気分になってきちゃうよ小烏丸ちゃん。
 それにしても、襖を開く小烏丸ちゃんの所作、すごく綺麗だったな。
 襖の前でスッと両膝を着いて、両手でススッと襖を開く姿が、すごく丁寧で、落ち着いていて。
「ありがとうね小烏丸ちゃん」
「ありがとうございます」
「いえ」
 私もいつか、普通に小烏丸ちゃんのように落ち着いた振る舞いができるようにならないといけないのかな? 
「ほら、澄姫。入って入って」
 まあ、そうならないといけないとして、まだまだ遠い日の話だよね。
「あっ、う、うん。お邪魔します……あっ文」
「澄姫さんの声が聞こえたような気がしたと思ったら、本当に澄姫さんだったとは」
「お邪魔します……でいいのかしら?」
「ゆっくりしていってください……と言っていいのでしょうか? 私もとこよさんの家に住み込んでいるだけですし……」
「細かいことはいいのいいの! 早く中に入ろう!」
「あっ、そ、そうね。じゃあお邪魔します……」
「それではお茶をいれて参りますね」
「あ、はーい。ありがとうね小烏丸ちゃん」
「いいえ」
 こういう時、小烏丸ちゃんにはお世話になりっぱなしだなあ。
「では、閉めますね」
「あっ、私が閉めるよ。さっき小烏丸ちゃんに閉めてもらっちゃったみたいだし」
「えっ、いえ。そんな、私が閉めますのでご主人様はどうぞ炬燵へ」
「ええっ、いいよいいよ! 私が閉めるから! 代わりという訳じゃないけど、小烏丸ちゃんにはお茶をお願いする訳だしね」
「そこまで言われては……。では、精一杯お茶をいれて参ります」
「うん! ありがとう小烏丸ちゃん!」
「ふふっ、では行って参ります」
 そして、小烏丸ちゃんの背中が廊下の向こうへと遠ざかっていくのだった〜。
 すすー、っと。
「とこよって、時々面白いこと言い出すわよねえ」
「そうですね。見ていて飽きません」
「ええ!?」
 なにか変だったかな……?