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雪合戦をダラダラ見たよ

Last-modified: 2017-02-25 (土) 23:16:08

 よく晴れた冬の日。
 雪の積もった庭で、白兎ちゃん達が雪合戦をしている午後。
 縁側に座って、それを眺めていた時のこと。
 冷んやりとした冬の寒さに、暖かい陽射しが気持ちいい。
「ご主人様〜! 今日はどうするの〜!」
 白兎ちゃんが手をぶんぶん振っている。
 うーん。本当は私も混ざってみたいんだけど……。
「私はここで見てるよー!」
「分かったー!」
 手を振り返したら、またぶんぶん手を振り返してくれるの、かわいいな〜。何度見ても、かわいいな〜。
 あっ、なんだか川柳みたいかも。
 かわいいな 何度見ても かわいいな 
 字余り。みたいな……っと、むむっ? 背後で障子の開く音?
 誰だろう?
「あっ、堕天使ちゃん」
 堕天使ちゃんだ。
「聞こえたよーとこよちゃん」
「聞こえた?」
 何のことだろう……って、え? なになに? 背後に立たれた? 両肩にそっと手を置かれた??
 顔をすっごく近づけられた!
「ダラダラしてるみたいじゃーん」
 わーいほっぺたとほっぺたがくっついちゃいそう。
「ええと、私ダラダラしてたのかな? どうしたの? 堕天使ちゃん?」
 もう少し振り向いたら、ほっぺたがくっついちゃいそうだなあ。
「とこよちゃんをねー。堕ら……炬燵に誘っちゃおうかなーって思って」
「炬燵?」
「炬燵に入ってダラダラしてたらさー。外からさっきの話が聞こえてきてねー」
「さっきの話?」
「雪合戦に混ざらないで、見てるだけって言ってたでしょー?」
「ああっ、それのこと!」
 私も白兎ちゃんも大声を出してたから、聞こえてたんだね。なるほど。
「雪合戦に誘われても遊ばないで見てるだけなんて、堕らく……ダラダラしてるじゃない?」
「ええーと、そうなのかな?」
 ダラダラとは、ちょっと違うような?
「ねーねー。どうせダラダラするんだったらさー。もっとダラダラしようよー」
「もっとダラダラかー」
 そっか。さすが堕天使ちゃん。
 ダラダラ活動を広めるために今日も頑張ってるんだね。
「部屋の中でさー、炬燵に入ってさー」
「うーん、でも雪合戦を見てたいし……」
 雪合戦が気になるからなあ。まあ、ここ何日か見てた限り大丈夫そうではあるのだけど。
「そんなこと言わずにさー。炬燵で寝転がってさー。ぬくぬくしてさー」
「うーん」
 どうしようかなあ……。
 それにしても……堕天使ちゃんの声って、ちょっとくすぐったくて、気持ちいいかも。
「ごろごろしてー、ダラダラしちゃおうよー」
「うーん……」
 何だろうな……耳元で、堕天使ちゃんの声。息遣いまで聞こえて。
 ほわほわする声。耳心地好い声。
「ほらあ。縁側なんてとっても寒いでしょー?」
「んー……」
 肩に触れてる手が、とっても優しい。
 堕天使ちゃんの顔がすぐ横にあって、ちょっとくすぐったい。
「寒い縁側に座ってるのなんてやめて、あったか〜い部屋の中に入ろう?」
「……」
 耳のすぐそばで声がしてるからかな……。
 ちょっと囁くみたいな声が、耳をくすぐるみたいで、でもくすぐったくなくて気持ち好い……。
「ねーねぇー。ほらほらぁ〜」
「……」
 なんだか耳がとろけるみたい……。
「……とこよちゃん?」
「はっ!」
 いけないいけない! 堕天使ちゃんの声が気持ちよすぎてぼーとしてた!
「どうしたん?」
「だっ、大丈夫! ちょっと堕天使ちゃんの声がなんと言うか、すごく気持ちよくて、聞き入ってて! ごめんごめんあはは!」
「ええっ……?」
 すごい怪訝そうな顔!
「ええっと、炬燵でダラダラしようって話だったよね確か!」
「ま、まあ、いっけどー。そうそう、炬燵でダラダラしよー」
 ふう、なんとか誤魔化せたね! うんうん!
「ええと、それなんだけどね、実は……。私が雪合戦に混ざらないで見てるだけにしてるのはね」
――いくヨー! エーイ!
 あっ、ちょうど大雪玉の登場みたいだ。
――うわー! ぐえーッスー!
「え、ちょっ」
 今日も元気に直撃だな〜。
「……あれが、私が雪合戦に混ざらない理由なんだよ」
「いや、ちょっと、あれ大丈夫なの?」
「うん。私も見ててちょっとハラハラするんだけど……大丈夫みたい。むしろ楽しいって」
  うんうん。驚くよね。
「そうなの……? 狛犬が雪玉にめり込みながら飛んでいって、そのままごろごろ転がってったけど……あっ、剥がれ落ちた」
「びゅーんってなって、ごろごろーってなるのが楽しいらしいよ?」
 堕天使ちゃんは見るの初めてなのかな?
――今度はこっちの番ッスー!
――わー!
「……ほんとに平気そうね。というか普通に投げ返したし。普通に当て返したし」
「堕天使ちゃんはあれを見るのは初めてなんだね」
「初めてっていうか……、雪合戦ってあんな大きな雪玉を投げ合うものだった?」
「私の知ってる雪合戦は、あんな大雪玉を投げ合ったりはしなかったかな」
「そうよね。うん。どう見ても大きすぎるわよね」
 そう。大きすぎるんだよね。
「あの大きさならそのまま雪ダルマを作れそうだよね」
「雪ダルマ作るにしても大きい気がするけど……」
「あはは、私が雪合戦に混ざらないで見てるだけにしてるのも、あれが理由なんだよ」
「そうね。確かにあれはちょっと……」
「うん。下手したら怪我しそうで」
「とこよちゃんは混ざらないほうがよさそうかもね」
「だよね〜」
 はぁ……。本当は混ざって遊びたい気もするんだけど……やっぱりあれはね。
 でも、うーん。
「でもね〜。一度くらいは混ざってみたくて、悩むんだよね〜」
「ええっ……。いや、無理でしょ」
「うーん、無理かなあ」
「無理無理。危ないって」
「やっぱりそうだよね〜」
 はぁ。
「私も……もっと鍛えれば、みんなと混ざって大雪玉を投げ合えるようになるのかな……?」
「いやいやいや、鍛えてどうこうなるもんじゃないから、やめときなって」
「そっかなー」
「そうそう。それにあれに混じるために鍛えようなんて考えるより……」
「考えるより?」
 わわ、またほっぺたがくっつきそう。
「炬燵でダラダラしたほうが絶対にいいってー。ねー、ダラダラしよー」
「うーん。でも、見てるのも楽しいんだよね。本当に怪我をしないかちょっとだけ心配だしね」
 まあ、何日か見てきて、やっぱり大丈夫みたいだなって思ってきてはいるんだけど。
「いや、大丈夫でしょ。式姫だし」
「あはは、そうだね。でも、ここに座って日向ぼっこしてるのも、あったかくていいよ?」
 やっぱり、白兎ちゃん達が楽しそうに雪合戦してるを見てるのは、それだけでも楽しいしね。
「ええ……、居るだけで寒いって縁側」
「そんなことないって。今日は風も無いし、よく晴れてるし。ほら、堕天使ちゃんも座って座って」
「いや、私は炬燵で……」
「そうだ! 私が座ってる場所なら床もあったかいよ! ほらほら」
「えっ、わ、分かったから。そんなに引っ張らなくても座る、座るから」
「わーい」
「……お尻にぬくもりを感じるわね」
「堕天使ちゃんのために暖めておきました」
「いや、普通に座ってただけでしょ」
「ばれたか」
「まあ、いいけど。日向ぼっこも……いややっぱ寒くない?」
「そっかなー。あっそうだ、じゃあさ、もっとくっつこうくっつこう」
 ぴたり。
「これでどうかな」
「どうって。大して変わらないけど……」
「えー。そんなことないよ」
 あったかいと思うけどなあ。
「まあいいけどさ。雪合戦、見るんでしょう?」
「そうだった」
 雪合戦もどうやら佳境に入って盛り上がってるみたい。
「……うーん。ま、こうやって何もせずに、大勢がわいわいしてるのを見てるだけってのも、いい感じにダラダラかもねー」
「でしょう?」
「これで炬燵に入りながらで、あと、蜜柑があって、お茶もあればー。もっといい感じにダラダラかなー」
「あはは、それいいかも!」
「でしょでしょ」
 ……えへへ。こうやってくっつきながら話しをするの、なんだかすごく楽しいな。あったかい。