艦これ二次創作短編小説『夢の終わり、始まりの日』

Last-modified: 2015-06-07 (日) 15:26:51

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艦これ二次創作短編小説『夢の終わり、始まりの日』

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艦これ二次創作短編小説『夢の終わり、始まりの日』




クスクス・・・クスクス・・・

またあの時の夢だ、いつもの繰り返し・・・・



隼鷹「みんな待ってよ!!あたしを置いてかないでよ~」

???「クスクス」

飛鷹「何やってるの?貴方!!出撃よ」

隼鷹「出撃って?あたしは・・・」

飛鷹「馬鹿なこと言ってないで行くわよ」

そう、夢でも期待をいつも裏切られる・・・

???「鈍足の空母がいっちょ前に客船気取り?やーねーもう」

隼鷹「ちょっと待って!!空母って?あたしは客船橿原丸だよお」

飛鷹「貴方ちょっと変よ大丈夫?」

???「そのボロボロの体とゴテゴテした武装で客船?冗談じゃないわ鏡を見てから言いなさい」

鏡に立つ自分・・・戦闘による傷や客船には似つかわしくない武装

判ってはいたがいつの日か客船に戻れる事を期待していた自分の姿に裏切られる

???「じ・・・・隼・・・・オイ!!大丈夫か?」



誰かに呼ばれた気がした・・・懐かしくも暖かい声

隼鷹「う~ん・・・誰?あたしを呼ぶのは?」

そう夢の終わりが近いようだ・・・・



提督「隼鷹大丈夫か?オイ!!」

隼鷹「あ・・・おはよう・・・提督か・・・ちょっと嫌な夢みちまってうなされてた」

提督「そっか、もうすぐ鎮守府に行かねばならないのだが」

隼鷹「おっと、いけね今すぐ朝ごはん作るから待ってて」

提督「時間が無いんでな手短に頼むわ、朝から会議とは・・・」



トーストとコーヒーで軽い食事を取りながら今朝の隼鷹のうなされた原因に付いて逡巡する提督



隼鷹「旦那さんは大変だねえ、あたしは退役しちまったけど提督の命令とあらばいつでも駆けつけるぜ」

提督「あ・・・ああ気持ちだけ受け取っとくよ」

隼鷹「ほい弁当!、それじゃ行ってらっしゃい」

提督「それじゃ行ってくるよ」



軽いキスをして別れる二人

あれこれ原因を探りながら鎮守府への道を急ぐ



飛鷹「おはよう提督、隼鷹との生活はどお?」

提督「喧嘩ひとつせず夫婦生活円満にやってるよ」

飛鷹「ならよかった。隼鷹泣かせたらただじゃ置かないわよ」

提督「なあ?飛鷹」

飛鷹「なに?これから会議で忙しいんだけど」

提督「会議のあと執務室へ来てくれないか」

飛鷹「不倫の相談?姉妹丼でも狙ってるの?」

提督「いや・・・真面目な話だ」

飛鷹「冗談よ、わかったわ後で行くわ」



飛鷹が去った後も煮え切らない心のモヤモヤに歯噛みをする

会議が終わった後執務室のドアがノックされる

飛鷹「提督、呼ばれたから来たわよ」

提督「ああ・・そこにでも座ってくれ」

飛鷹「話ってなに?惚気ならお腹一杯よ」

提督「なあ・・。隼鷹がうなされる原因ってわかるか?」

飛鷹「・・・またあの子・・・あの時の事を」

提督「知ってるのか!?教えてくれ頼む!!」



懇願する提督に苦笑する飛鷹



飛鷹「あの子と私って戦時改造を前提とした民間客船で建造されて空母になったでしょ」

提督「ああ・・・それは聞いてる」

飛鷹「私もなんだけど、いつか客船に戻れる事を期待してあの子トラウマになってるんじゃないかと思うの」

提督「・・・・」

飛鷹「わたしが言えるのはここまでよ。後は自分で考えなさい」

提督「わかった・・・悪かったな呼び出して」

飛鷹「大事な妹の為だもの、それくらいなんてことないわ」

提督「ありがとう、解決の糸口が見つかりそうだ」

飛鷹「しっかりやんなさいよ」

提督「ああ・・」



そう言うと執務室を出て行く飛鷹とそれを見送る提督

提督「客船か・・・・」

不意に憑かれたように立ち上がり資料を保管したキャビネットを開ける

  • 軽空母隼鷹-
    起工1939年3月20日
    進水1941年6月26日
    就役1942年5月3日~1947年8月1日
    民間貨客船橿原丸として建造されたが後に空母に改装。
    軽空母ながら中型空母並みの船体と搭載量を誇り就役後はAL作戦、南太平洋海戦、マリアナ沖海戦と中盤以降の大きな海戦を戦い抜き
    終戦まで残存、戦後は特別輸送船に指定されるが修理が完全ではなく指定解除、その後は商船に戻ることなく1947年解体された



提督「ふむ・・・客船かあ・・・」



何か解決の糸口を見つけたかのように晴れ晴れとした顔を見せながらそっと資料をキャビネットに戻した



数日後士官学校時代の同期の結婚式で横浜まで来た提督と隼鷹



隼鷹「お嫁さん綺麗だったねえ」

提督「ああ・・・そうだな隼鷹にもいつか着せたいな」

隼鷹「あたしがウェディングドレス?こんなガサツな女だし絶対似合わないって」

提督「そうか?俺にとっては最高の嫁さんだぞ」

隼鷹「・・・・よくそんな恥ずかしい事臆面もなくいえるねえ」



なんだかんだまんざらでもないような様子の隼鷹



隼鷹「これからどうするんだい?まっすぐ帰るのかい?」

提督「折角横浜まで来たんだし山下公園の方にでも行ってみないかい?」

隼鷹「いいねえ、夜景が綺麗なんだろ?」

提督「まあそれもあるがもう1つな・・・」

隼鷹「???」



戸惑う隼鷹を他所にタクシーを拾い一路山下公園に向う



隼鷹「あの?・・・・これってもしかして!」

提督「ああ・・・そうさ氷川丸さ!」

隼鷹「あの子生きてんだ!!良かった!!」

提督「戦争を生き抜き再び客船として就役、そしてここで余生を送ってる・・・・これを隼鷹に見せたかったのさ」

隼鷹「あたしのやってきた事は無駄じゃ無かったんだね・・・」



自然と涙が出る隼鷹



???「隼鷹さん、隼鷹さん!」

隼鷹「誰だい?あたしを呼ぶのは?」

氷川丸「私です氷川丸です、隼鷹さん」

目の前に氷川丸と名乗った一人の少女が居た

隼鷹「これは夢なの?幻?」

氷川丸「どちらでもいいじゃないですかこうしてまた会えたのですから」

隼鷹「そうだねえ・・・私もまたこうして会えてうれしいよ」

氷川丸「一言お礼が言いたくてこうして姿を借りて」

隼鷹「あたしにお礼?」

氷川丸「私と同じように隼鷹さんは客船に戻ることが出来ませんでしたが、貴方達のおかげであの戦争を生き延びこうして余生を送ることが出来ています」

隼鷹「そうだねえ、あたしや飛鷹のやってきた事は無駄じゃ無かったんだねえ」

氷川丸「本当にどうもありがとうございました。本当はもっと言いたい事はあるのですが色々ありすぎて・・・」

隼鷹「いいよいいよ、その言葉が聞けただけでも」

氷川丸「そろそろ時間が・・・もっと言いたい事はあったのですが」

隼鷹「そうか・・・さびしくなるねえ・・・また会ったら今度はゆっくり飲み明かそうや」

氷川丸「ほどほどにお願いしますね」



そういい残すと氷川丸と名乗った少女の姿は薄らいで行き消えていった



提督「隼鷹?ボーっとしてどうした?」

隼鷹「いや、なんでもないよなんでも話した所で白昼夢でも見たと言われるのがオチだし」

提督「そっか・・・でもなんだか晴れ晴れとした顔してるな」

隼鷹「そうかい?エヘヘヘ」

提督「ん?あそこに白鳥が・・・こんな海辺に」

隼鷹「氷川丸か・・・提督ありがとね」

提督「そう言えば氷川丸も白鳥って呼ばれてたな・・・」

隼鷹「よっし!!明日からまた頑張りますか!!もう1人の体じゃないし」

提督「それって?もしかして!!」

隼鷹「妊娠3ヶ月だってさ、あたしがママかあ想像つかないなあ・・・」

提督「氷川丸に誓って約束するよ!!いつの日か何年かかってもお前を客船の姿に戻すと!!」

隼鷹「頼もしいねえ旦那さん期待してるよ」



しかし運命のいたずらか、その願いは適う事はなかった・・・・

女児を出産、その数年後激化する深海棲艦との戦争で再び隼鷹は巻き込まれる事になるのであった



激しい爆発音と共に沈んでいく輸送船と硝煙の匂い

あたしはまた戦場に帰ってきたんだ・・・

更に獲物を狙う死神の鎌がゆっくりじわじわ嬲るように動き出す

隼鷹「輸送船を連れて出来るだけ遠くに退避して!!あたしが時間を稼ぐ」

電「でも隼鷹さんは?」

隼鷹「出来るだけ時間を稼いだら皆にすぐ追いつくからホラ!!さっさと行った行った」

電「なのです!!」



判ってる・・・・あたしのタービンは敵駆逐艦の魚雷でもうイカレて全速力が出せないことくらい。

ここで弱みを見せたらあの子達はここに残ってしまう

だったらここで時間を稼いであの子達を逃がしてやるのが私の使命であり提督の妻としての役目

私一人の代償で多くの者の笑顔が守れるならそれでいい・・・・

電「早く来てくださいね!!」

隼鷹「ああ判ったよ!!早く行きな!!」

もう一度提督の下に帰りたかったなあ・・・・短い間だったけどあたしの人生は後悔なかったさ

そして意識は闇のなかへと沈んでいった

隼鷹は輸送船護衛任務途中に深海棲艦の待ち伏せに合い味方を逃がす為に単身残り、退避するのを確認したかのように沈んでいった

時に深海棲艦に勝利する数ヶ月前の事であった

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その数ヵ月後



提督「俺たちやっと深海棲艦に勝ったよ・・・こうして墓前に報告できる日が来るとはな・・・あの時の約束は果たせなかったのが心残りだが」



少女「ママ、パパは悪い深海棲艦を倒してみんなの笑顔を守ったんだよ。安らかに眠ってね」

提督「今度は違う形で俺が約束を守る番だ・・・いつの日か果たせなかった約束必ず守るよ」



更に数ヵ月後、深海棲艦を打倒した英雄の退役で世間を騒がせたが時と共に忘れ去られていった

~エピローグ~

10年後・・・



記者「戦勝10周年記念にサンフランシスコ航路の復活の目玉、豪華客船の進水式が執り行われます。」
  「この構想を発案したのは10年前の英雄である提督で・・・」

記者達にもみくちゃにされつつ愛しい我が子を愛でるような目で客船を見上げる提督

提督「時間がかかっちまったけどあの時の約束やっと果たすことが出来たぜ・・・見てくれよこの橿原丸を、あの世で見ててくれるかい?」


不意に視界を遮られる


???「だーれだ?」

提督「その声は?まさか!?隼鷹?」

隼鷹「せーかい!!」


声のする方に目を向けると純白のドレスに身を包んだ隼鷹が居た

提督「お前どうして?しっかしその服よく似合うよ」

隼鷹「やっと客船に成れたんだ。今日くらいはおめかししないとね」

提督「隼鷹・・・いや・・・今は橿原丸か。やっとお前の願いがかなったぜ」

隼鷹「野暮な話は抜きにしようぜ、時間無いからさ・・・・あの時の約束まだ覚えててくれたんだね・・・・」

提督「ああ・・・何年かかってでも約束は守るって言っただろ」

隼鷹「そっか嬉しいよこんな素敵な旦那さんに出会えてあたしは幸せ者だねえ」

提督「そんなことはないよ・・・・結果的に再び戦火に君を晒して・・・」

隼鷹「あたしは後悔なんてしてないさ提督と会えて一緒にすごした日々は楽しかったし」

提督「そっか・・・」

隼鷹「でも年を取って渋くなった提督と一緒に過ごしたかったな・・・・」

提督「ああ・・俺も、近いうちにそっちに行くよ」

隼鷹「おっといけねえ、もう時間だ・・・名残惜しいけどこっちに居られる時間はそんな無いんだ」

提督「そうか・・・さびしくなるな」

隼鷹「コッチヘ来たらまた会えるさ」

提督「俺は軍人として殺しすぎた・・・・行くなら地獄だろ・・・」

隼鷹「そんときゃあ神様ぶん殴っててでも提督の所に行くよ、あたしは提督が居れば何処だって天国さ」

提督「すまない・・・」

隼鷹「じゃあまた会えるのを楽しみにしてるよ~!!」

提督「判った必ずいつの日かまた会おう」



久しぶりに会えた隼鷹に自然と涙を流す提督



娘「お父さんどうしたの?涙出てるよ」

提督「ああすまん、懐かしい人に会ったんでな・・・つい」

娘「・・・でもなんだかお母さんが死んでから、初めて見るような良い顔してるよ」

提督「そうか?俺もそろそろ過去をいつまでも振り返らず前を向いてしっかり歩いていかないとだな」

娘「そうだよ!!お父さんがしっかりしてくれないと私、いつまで経ってもお嫁にいけないじゃない!!」

提督「ははは」



次に会える時を楽しみにしながら新たな希望を胸に抱く提督であった。

Fin

【登場人物紹介】
・提督:特定人物像なし
・隼鷹:艦隊これくしょん
・少女or娘:オリジナル。隼鷹と提督の娘
・???:特定人物像なし、商船の擬人化像(夢の中の登場人物像)
・氷川丸:オリジナル。
・記者:端役

【あとがき】
今回で3作目、悲恋をテーマに書き進めました。
過去2作とは違いケッコンカッコカリ後から始まる物語であり、構想は過去2作及び着想段階の作品からの派生の中で生まれました。
拙い書き物ではありますが最後までご拝読ありがとうございました。
またいつの日か、違った形で隼鷹と提督の物語を書けたらいいなとは思います。


ご意見・ご感想などありましたら お願い致します。

  • ちょっとホロリときました、次回作楽しみにしてます (T-T -- tougouu 2014-09-08 (月) 09:56:31
  • マジ泣きしました.... -- MIGUMA? 2015-06-07 (日) 15:26:50