- MVP(“Most Valuable Player”の略)
最優秀選手(最高殊勲選手)の意。 - MVP(“Marines Victory Productions”の略)
1990年代頃~2009年に千葉ロッテにかつて存在した、個々人による「迷惑行為を行っていたグループ(公認応援団ではない)」のこと。千葉ロッテマリーンズの私設応援団と並行して活動し*1、ライトスタンドの入場門横に陣取っていたことから、通称「ゲート横」と呼ばれていた。
球場内外で起こした問題行動、ルール違反、マナー違反は枚挙にいとまがなく、後述する前代未聞の不祥事(幕張の横断幕も参照)を起こし球界全体から強烈な批判を受けた挙句解散に追い込まれ消滅した。世界的にも類を見ない迷惑グループおよび日本プロ野球史上最低最悪の汚点として球史にその名を刻んでいる。 - 大谷翔平の飼い犬「デコピン」*2にアメリカメディアが1.を捩ってつけた“Most Valuable Puppy”の略。
1.を意識して訳せば「最優秀子犬」もしくは「最高殊勲子犬」となるところだが日本のメディアでは「(世界で)最も価値のある子犬」の訳が一般的。1.と区別するために“MVPup”の表記もある。
本項では2.および、そのグループが2009年に引き起こした迷惑極まりない騒動について解説する。
2009年の騒動より前のMVP
第1次ボビー・バレンタイン監督政権期の1995年に発足。
浦和レッズやFC東京のサポーターと交流があり、1998年の18連敗時に見せた不屈の姿勢や外野席で跳ねたりタオルを回したりする*3などサッカースタイルの応援*4で注目を集め『ビジター観戦ツアー』の実施などでロッテファンの支持・知名度向上に成功。
2009年までのロッテの応援スタイルや「どこにでも行くロッテファン」などロッテファンのイメージ、存在感を確立した立役者と言ってもいい存在であり、特に応援スタイルについては現在の巨人や西武がその影響を強く受けている*5他、他球団にもメガホンから手拍子中心へ切り替える流れ*6を生み出したり、高校野球の応援においてもMVPの考えた応援歌が広く用いられたりするなど、応援方法を改革した功績は非常に大きいものといえる。
しかし勢力拡大の中で徐々に傲慢化していき、自分たちのスタイルに合わないファンに対して高圧的な態度をとる*7、2007年のクライマックスシリーズファイナルステージ・対日本ハム戦では札幌ドーム最寄り駅の地下鉄東豊線福住駅構内、および駅から札幌ドームへ向かう公道上で「チバデジャネイロ」と称した騒ぎをするなど、数々の問題行為が以前から指摘されていた*8。
また、MVPのツアーは球団主催の観戦ツアーとは別に開催されていた他、MVP自身も自作の応援グッズを販売しており、それらによって間接的に球団の売り上げを低下させているのではないか、と考える人もいた。
2009年のMVP騒動
2008年オフ、千葉ロッテマリーンズはボビー・バレンタイン監督(当時)*9との契約を来季限りで打ち切る旨を発表*10。
これに対してMVPを主体とした一部ファンが激しく反発し、バレンタイン監督の契約延長を求める「BOBBY2010」という署名運動*11などを展開した。
しかし球団フロントはこれを無視。加えてメディアが報じた重光昭夫オーナー代行*12の「千葉のくだらないファン」発言*13や、幹部である米田容子の行動(詳しくは幕張の横断幕を参照)が彼らの活動へ火に油を注ぐ形となり、ファンによるフロント叩きが始まる。
チームの低迷が重なった事もあってフロント批判は次第に激化していき、9月26日の対オリックス戦(千葉マリン)にて遂にMVPと外野応援団は球団関係者を実名で批判するゲーフラ*14を試合中に掲げるという暴挙に出た*15。試合は殺伐とした雰囲気で進むも、6-2でロッテが勝利。
そして、試合後のヒーローインタビューで西岡剛がお立ち台から降りたうえでファンに対し涙ながらにこう訴えた。
僕自身もそうなんですけど、選手は一生懸命プレーしようとしているし、僕自身、ロッテに入ってファンの方の応援を見てこのチームをすごい好きになりました。
でも、ライトスタンドに批判があったり、いろいろな横断幕が出たり、僕らもそういう状況にさせてしまったという責任があると思う。
きょうも野球少年がいっぱい見に来ていると思います。選手一人一人のプレーを見て夢を描く子供たちもいると思うし、そしてスタンドの歓声を聞いて、大人になったらこういうところでプレーしようと思って頑張っている子供たちもいると思います。
その子たちの夢を崩さないでください。
僕自身も今年こういう成績*16で、ものごとを言える立場じゃないですけど、1人の人間として間違っているものはあると思うので。
もう一度選手一人一人も考え直して、このチームをもう1回強くしたいと思うし、そのためにはファンの皆さんの応援もすごく必要になると思うので、本当にロッテを愛しているのであれば、明日から横断幕を下げてほしい。
また応援の方よろしくお願いします。
この訴えに涙したファンも多く、スタンドに詰めかけた多くのロッテファン、そしてオリックスファンも西岡に対し温かい拍手を送った。
ところが、揃いも揃って西岡の発言を理解できなかったMVP・外野応援団は反発。
翌27日の試合で前日のフロント批判のゲーフラを「西岡剛の正直しんどい」や「よっ!偽善者www」などの西岡を誹謗中傷する内容に変更するなど、ファンであれば到底できない暴挙を平然とやってのけた。
挙句の果てには西岡の打席での応援をボイコットし、凡退時にはアウトコールを吹き鳴らす*17といった理解不能な行動をとるに至った。
幸いにも、MVPと外野応援団が応援をボイコットした西岡の打席では真のロッテファンから自発的な「ツヨシコール」が起き、さらには対戦相手のオリックスのファンも「ツヨシコール」を行った。
しかし、もはやただの迷惑集団に成り下がったMVPや外野応援団はトランペットやドラムでまくし立てて応戦。これに対してMVP・外野応援団に対する「帰れコール」が湧き上がるなど、ライトスタンドは一触即発状態に陥る。
これらの幼稚な行動は当然のように誰からも理解されず、球界全体から強烈な非難が巻き起こりMVP・外野応援団を絶許認定したファンによりリーダーの職場に電凸が行われるなどの騒動に発展*18。
結局、ここまで追い込まれてようやく自分達が不利な状況であることを理解したMVP・外野応援団は、9月29日のビジター西武戦以降、西岡に対し通常の応援を余儀なくされた。
そして10月6日のホーム最終戦(=バレンタイン監督の勇退セレモニーの日)、球団側は試合中の警備員を増員*19して警戒体制を敷き混乱なく試合は終了。そして10月7日のシーズン最終戦の楽天戦後に解散、一部メンバーは球場への出入り禁止という処分を受けた事で騒動は沈静化したのだった。
なお、皮肉なことにMVP・外野応援団がスタンドから消え去った最初のシーズンである2010年に千葉ロッテは日本一に輝いている*20。千葉ロッテの活躍にMVP・外野応援団の存在は必要ないことが証明された形となり、彼らの面目は丸潰れとなった。
その後のMVPとロッテ応援団
2010年からは、元球団職員で2004年まで応援団員として活動していたジントシオ氏が団長として復帰。応援団も球団公設という形で再建されている。
旧MVPメンバーはその後社会人野球チーム「TOKYO METS」*21を設立し応援活動を行っている一方、一部のメンバーは球団と和解し、現応援団との協議の末に2015年からは外野席応援団として復活している。
しかし、翌2016年に現応援団が2009年を最後に使用されていなかった旧応援団時代の応援歌を復活させたところ旧応援団員からの横槍で頓挫するなど、反省したふりをしただけの一部の旧メンバーによる問題も発生している。
さらにX(旧Twitter)にて“REMEMBER MVP~外野応援団”として過去の応援映像を公開しているが、不祥事を起こした9月26日と27日の映像は隠蔽して通常の応援に戻した10月6日の映像*22はアップしているうえ、不祥事への言及も反省の弁も一切無い。
また、後にMLB入りした西岡がNPB復帰の際にロッテを選ばず阪神タイガースへ入団したのはこの一件もあったからとも言われている。
なお、ジン氏は2015年限りで団長を引退*23。
応援団の再建で2010年の日本一に貢献したため、ロッテファンからは英雄扱いされたのだが、なんと2018年より株式会社楽天野球団へ入社し東北楽天ゴールデンイーグルスの応援プロデューサーに転じる。
ロッテの英雄だったジン氏が他球団に移ることを選んだだけでもロッテファンを悲しませ、2019年に一新した応援歌が総スカン*24。
楽天ファンから批判を浴びロッテファンを悲しませるという、なんとも優しくない世界となっている。