大会はじめました

――何かが、いる。
私は何者かの気配を感じた。森に住んでいる動物とは違う、邪悪で異質な気配。急に寒気がして、心臓の鼓動が早くなる。私には森の水晶を守る役目がある。しかし、この森に足を踏み入れる者はもういないので、私は森でひっそりと暮らしてきた。
――気のせいであってほしい…
深呼吸してゆっくりと振り向く。期待は外れていた。向こうに輪郭のはっきりしない、黒い影のような"何か"がいる。その"何か"が、水晶に近づく。何としても、あの水晶は守らなければならない。
――それに触らないで！
私は走りながら叫ぼうとするが、のどが乾ききってかすれた声しか出ない。足がもつれる。"何か"が、さらに水晶に近づく。
その刹那――水晶が、木端微塵に砕け散った。破片がキラキラと光を反射しながら渦を巻く。やがて、渦は空に吸い込まれていく。"何か"は、水晶が完全に消えると、次第に薄くなっていき、消えた。

いつも平和な(?)キノコ王国の朝が来ました。今日は特別いい天気の日です。マリオがあくびをしていると…
「クッパだーー！」「にげろー！」
マリオの宿敵、クッパ大魔王が飛行船(ツェッペリン飛行船のことではない)に乗って現れたのです。飛行船はピーチ城に着陸し、ピーチ姫をさらっていきました。(いつも通り)マリオ、あわてて追いかけます。一番ちかくの飛行船に乗り込むと、先頭にピーチ姫のドレスがなびいているのが見えています。マリオは、ピーチ姫を取り戻すべく、かけ出しました。キノじいも一緒です。(!?)

ピーチ姫を助け出したマリオ。しかしそれは、偽物の人形だったのです！
クッパ「ガッハッハまんまと引っかかったなマリオ！」クッパの声がはるか遠くから響いてきます。すると突然、マリオの乗っている飛行船が爆発しました！マリオとキノじいはまっさかさまに落ちていき、そして…

奇跡的に無事だった二人。(お約束?)落ちたところはのどかな村でした。むらびとが近寄ってきます。
むらびと「お前ら見かけねェ顔だな。どこからきたんだ？え、なに、飛行船を探してる？飛行船なら見ないこともねェが、それよりお前らにちょっと頼みたいことがある」なんでも数日前にガラスの破片のようなものが空から降ってきたらしく、それを二人に回収してほしいというのです。「道にとがったものが落ちてたら危なくて散歩もできねェだろ？全部集めたら飛行船のことでもなんでも教えてやらァ」

むらびと「これで全部だな。礼を言うぜ。飛行船だがなァ…あっちの森で見た気がするぞ。」
キノじい「あっちの森っていっても間は深い谷になってますぞ…？」
むらびと「そこでこいつの出番ってわけさ!」村人は何やらぼろぼろの布きれを取り出した。
キノじい「これは……じゅうたんですか？」
むらびと「バカヤロ、マントだ！お前さんたちならこいつで谷の向こうまで飛んでいけるだろ」

森に着いたマリオとキノじい。そこで二人は妖精(エルフ)の少女に出会います。「あなたたち、誰？」二人はこれまでの経緯を話し、飛行船について尋ねました。ジェニファーと名乗った彼女は、飛行船など知らないといいます。
その時、マリオが懐にしまっていた破片がほのかに光り出しました。「それって、もしかして……ちょっと見せて……やっぱり、あの水晶のかけらだわ！」ジェニファーは森に"何か"が来たこと、守っていた水晶がどこかに消えてしまったことを語りました。「あの水晶には、魔力が詰まっているの。集めて元通りにすれば……もしかしたら、あなたたちがさがしている人の場所も、分かるかもしれない……。かけら同士が近くにあったら、今みたいに反応するはず。ねぇ、かけらをさがすの、手伝ってくれない？」

「あれは…？」ジェニファーのの指さす先には、なんと飛行船！そこに乗っていたのはクッパ.Jrでした。
「見つけたぞマリオ！めっためたにやっつけてやるんだからな、覚悟しろ！いけ！落下傘部隊、突撃！！」
飛行船から敵がばらばらと降ってきます。「このままじゃ森が…！マリオ！あの高い木からなら船に乗り込めるわ。攻撃をやめさせましょう！」

クッパ.Jr「くっそー！でもお前なんかボクのお父さんがぼっこぼこにやっつけちまうぞ！覚えてろよ、マリオ！」クッパ.Jrはクラウンに乗って逃げていきました。「お父さん、か……」「どうしました、ジェニファー殿？」「あの水晶、実は私のお父さんの形見なの。お父さんがいなくなった時においていったんだけど、何となくお父さんの感じが残ってるような気がしてたんだ…私、あの水晶を、お父さんだと思って、毎日話しかけて……答えて、くれるはず、ないのにね………うぅ」〈何となく話が私（ぼれろ）に扱いにくくなってきたので作者の権限で話題を変える〉
ところで。「マリオ殿、大変です！ふ、船が沈んでいますぞ！マ、マントを！」そして…？

一行はマントのおかげで無事着陸することができました。そこは、海際のリゾート。あまり賑わっていないようですが…
そこへ、住人の一人が現れました。
「ちょっと！これはどういうことデスカ！空から船を落っことすなんて、非常識にもほどがありマス！」見ると、落ちた飛行船で建物が壊れているではありませんか！「いや、あれは不慮の事故で、というかそもそも我々の船ではなくて…」「問答無用！損害賠償金150コイン(レート:1コイン=約￥10000)を払ってもらいマス！え、そんなに持っていないだって？ならば集めてクダサイ。あと、多く集めて設けようなんてダメデスからね。余った分は置いて行ってもらいマス。」

一行は何とか150コインを集めることができました。すると、向こうから助けを呼ぶ声が…「さっきの人だわ。行きましょう、マリオ!」マリオたちは、声のしたほうへ急ぎます。そこには、大きな塔がありました。その中から、先ほどの住人が飛び出てきました。「た…助けてクダサイ…空から、飛行船で変な奴らが…管制塔に入ってきたのデス…。P…Please help me!」

「あ…ありがとうございマス!お礼に飛行機で次の街まで送っていきマス。こちらへ…」
「……」
キノじいはなんだか胸騒ぎを感じつつも、皆と一緒に彼についていくのでした。


飛行機のうえで一行が話しています。
「では、飛行船や水晶のことは全くご存じないのですね?」
「Yeah… お役に立てず申し訳ナイ。どうか頑張ってクダサイ。ところで、ここは『死の砂漠』と呼ばれていて、入ったものは二度と出てこられないとさえ言われている危険なところデス。またうちのリゾートに観光で来たときは、絶対に入ってはいけませんヨ。」
そのとき、何やら変な音がしました。なんと、エンジンから煙が出ています!操縦が効かなくなり、飛行機はどんどん高度を落として行きます…
「No problem! こんな時のためにパラシュートが…」
マリオたちがその言葉を聞き終わる前に、運転していた彼の姿が消えました。いや、正確には、飛び上がりました。
「運転席だけに…ネ…」
その言葉はもはや、マリオたちには聞こえていませんでした。

彼は砂漠を歩いていました。彼はうつむいて歩いていたので、空から降ってくる大きな物体には全く気が付いていませんでした。いきなり、大きな音を立てて彼の目の前に何かが落ち、砂ぼこりがもうもうと立ち込めました。
？？？「な…何だ！？」
彼はびっくりして、逃げて行ってしまいました
砂ぼこりの中から、人影が現れました。
「あいたたた……あいつ、今度会ったら承知しないわ」
「まぁ、落ちたところが柔らかい砂の上だったのは、不幸中の幸いですな。しかし、ここからどうやって出ればいいのやら…　とにかく、進んでみるしかなさそうですな」
「あれ？ 今、誰かいたような…」

マリオたちは、物陰から誰かが見ているのに気が付きました。
？？？「もしかして…マリオさんッスか？…って、ちょっと待つッス! オイラは敵じゃないッスよ。
オイラはガボンッス。先日、クッパから戦力外通告を受けて…。もうあんな奴のもとで働くのはこっちもうんざりッス! オイラはマリオさんを手助けすることに決めたッス!」
「……よくしゃべるわね」


「この砂漠は、まったく同じ地形の場所がたくさんあるから迷いやすいッス。オイラが道案内するからついてきてッス! 」
（…ねぇ、彼を信用して大丈夫なの?）
（…今は、ここに留まっている訳にもいきませぬ。とりあえず、ついて行ってみましょう。）

「…それで、マリオさんたちはピーチ姫を探しながら水晶のかけらを集めてるんスね。しかし惜しいッスね…。ちょっと前までここにクッパの城があったのに」
「…城が…『あった』…？」
「消えちゃったんスよ。まるで魔法みたいに」
「…魔法…」
「城が消える前も、変なオバケは出るし、城の地下室のほうからうめき声が聞こえるしで…おまけに、解雇されちゃうし…最近、嫌なことばっかりッス。」
「ちょっと待って。その『オバケ』ってどんなの？」
「なんか真っ黒でふわふわしてて、輪郭がはっきりしないっていうか…」
ジェニファーは森で見たものを思い出しました。
キノじいが尋ねます。
「それでガボンどの、そのときの状況は？」
「えっと…確かクッパが『ここに城を立てるぞーっ！』て言ったところに、石碑が立ってたんスけど、それをどかした時にスーって出てきたんス。でもほかのみんなは誰も見てなくて、信じてもらえなかったッス…」
「間違いないわ。全部そいつの仕業ね。きっとそいつが、何らかの目的で城を動かしたんだわ。」
「でも、そんなことって出来るんスか…？」
「たぶん…。小さいころ、お父さんが物体を瞬間移動させる魔法を見せてくれたことがあるの。だからそいつも、同じ魔法で…」

「すみません、オイラに案内できるのはここまでッス。マリオさんたち、どうかご無事で！」
「ねぇ、さっき言ってた石碑ってどんなものなの？」
「たぶんここらへんだと…。あっ、あれっス。」
ガボンが指さした先には、砂を被った石碑が放り出されていました。


「文字はかすれてほとんど読めませんな。風化の具合からいうと、ここに置かれたのはおそらく7年ほど昔ですな」
「……こ……封…せ……。『ここに封印せり』ってとこかしら？」
「これが封印された奴の名前ッスかね。Ｍに…Ｅ？あとは文字が潰れて読めないッス…」
「ME……まさか…いや、そんな」
ジェニファーの顔が青ざめました。
「わたしのお父さんの名前。マーリン(Merlin)。お父さんもちょうど、7年前に姿を消したの」

「ガッハッハ！作戦通りだ。よくやったカメック！」
「作戦を気に入っていただいて光栄です、ぼっちゃま…」
カメックの作戦によりピーチ姫の誘拐に成功した大魔王クッパの軍団は、砂漠へ向かう。
「よく聞け！ここにワガハイの城を建て、マリオを迎え撃つのだ！」
クッパが城を建てようとしたところには、古びた石碑があった。場所を変えればよいのだが、目の前の障害に屈するのは大魔王の矜持が許さなかった。
「お前ら！この石をどかすんだ！」
クッパが部下たちに命令した。
「ザワザワ…（クッパさま、ヤなことはいつも俺たちに押し付けるよな）」
「ガヤガヤ…（いつも威張ってるけどホントは弱いんじゃねぇの？）」
「…なにか言ったか…？」
「あ、いや！クッパ様のカッコいいところを見てみたいなぁって」
クッパは部下たちをジロリとにらんで言った。
「…いいだろう。そこでワガハイの力をよく見ておけ！」
クッパは石碑を両腕でつかみ、力を込める。
「グググググ…」
とうとう石碑を持ち上げ、それを遠くに放り投げてしまった。
「す…すげぇ……。」
周りの者はクッパの馬鹿力に唖然とするばかりで、黒い影が素早く飛び出すのを見ていなかった…

――今度こそピーチはワガハイのものだ！
城が完成し、クッパは玉座で満足していた。
その時、背後で声がした。振り向くがそこには誰もいない。
――大魔王クッパよ。
今度は横からだ。
「誰だ！どこにいる？！」
「どうかなさいましたか、ぼっちゃま！」
クッパの声を聞いたカメックが慌てて部屋に入ってきた。
玉座の前に、黒い影のようなものがいた。輪郭が定まらずに揺らめいている。
――取引をしようじゃないか。
黒い影がクッパに話しかけた。
「取引、だと？」
――私はお前に、力を与える。その代わり、お前に手伝ってもらいたいことがある。
「フン！お前の力など借りずとも、マリオをひねりつぶしてやる！」
黒い影は少しの間沈黙した。そして、ズン！という鈍い衝撃が城中に響く。
「なんだ？何をした？！」
「ぼっちゃま！窓の外を！」
クッパが窓から外を見下ろすと、そこは今までいた砂漠ではなく、断崖絶壁の深い谷の中だった。
――私の力、お分かり頂けただろうか…？取引をする気になったかね？
「…本当に力が手に入るんだな？」
「騙されてはなりません、ぼっちゃま！」
――保証しよう。
「分かった。取引をしよう。」
カメックはこれ以上止めようとはしなかった。大魔王は一度言い始めたら自分の言うことを聞かないことは分かっていたのだ。
カメックはため息をつくと、我儘な大魔王をそっと仰ぎ見た。
「わたくしカメックは、ぼっちゃまを全力で手助け致します…」
「それで、ワガハイは何をすればよいのだ？」
黒い影は、クッパの耳元で囁く。
「……ふむ、マーリン、か…」
この時、既にある計画の手駒となっていることを、彼らはまだ知らない。

「ねぇ、あの黒い影は、私のお父さんだったのかな…」
砂漠を出てからずっと、ジェニファーは元気がありません。
「私のお父さん、物を移動させる魔法が得意だったわ。城が消えたのは、きっと魔法だと思う…。」
「…しかし、まだ父上と決まったわけでは……」
「それに、見て。水晶の光が、だんだん弱くなってる。」
今まで、近くにあるかけらに反応して輝いていた水晶の光。それが今にも消えかかっています。
「きっと、この町にある分を集めたら、もう光は消えてしまう。まだ、かけらは揃ってないのに…。私、これからどうしたらいいんだろう…」

「やぁ。迷える子羊諸君。」
いきなり、誰かが声をかけてきました。全身ぼろぼろの黒ずくめの服に身を包んだ、長身の人物。目深にフードを被り、顔が隠れてほとんど口しか見えません。
「おっと、私は決してアヤシイ者ではない。……だからそんな疑惑に満ちた目で私を見るのはやめてくれないかな。」
「間に合ってますから。」
よくわからないことを言って踵を返そうとするジェニファーの肩を、その人物がつかみます。
「そこのお嬢さん、迷っていることがあるんでしょう？占い師の私が、見て差し上げようじゃないか。……だから私はアヤシイ者ではないから、そんな目で見るのはよしてくれ。」
ジェニファーが肩に載った手をどけます。
「あなた誰がどう見てもアヤシイ人じゃない！占いは信じない主義なの。他をあたってくれる？」
「私の占いは必ず当たるんだよ。…現世に生ける最後の二人の妖精の一人、名はジェニファー。幼くして母親を亡くし、間もなく父親のマーリンが失踪。父親の形見である水晶を求めてキノコ王国の住人と旅をしている。当たってるだろう？」
「…今、何て言った？」
「幼くして母親を亡く」
「もっと前！」
「私の占いは必ず」
「違う！あなた、お父さんを知ってるの？お父さんは、生きてるの？」
「おや、気になるかい？じゃあ、この続きは私の館でしようか。」
その人物は館のドアに手をかけました。
「もっとも、君たちが私のところまで来られたら、の話だがね。」
そして、口のゆがめて笑うと、ドアの中に消えてしまいました。

奥に続く扉を見つけ、不思議な占い師のもとにたどり着いたマリオたち。
「約束よ。お父さんのことを教えて。」
「君の父上は、まだ生きているよ。辛うじてね。強力な魔法を使った代償とも言えるかもしれないね。」
「今、どこにいるの？お父さんに会わせて！」
「おっと、無料お試し版はここまで。私から言えることはもうないよ。」
「そ、そんな…。せっかくここまで来たのに…」
「無駄足を踏んだ、と？この館にあった水晶のかけらは君たちに進呈したじゃないか。それに、もう落ち込んでいる時間はないみたいだね。」


ＢＥＥＰ、ＢＥＥＰ，ＢＥＥＰ！
とつぜん、警告音が町全体に響き渡ります。
「この町の警備はけっこう厳重なんだ。君たちは気づかなかっただろうけれども、町の外周には悪しきものを寄せ付けない結界を張ってあるんだよ。町の監視システムが君たちを侵入者と判断したみたいだね。早く止めないと、じきに、”最強”のセキュリティシステムが作動するよ。」
それを聞いたキノじいは慌てて立ち上がりました。
「急ぎますぞ、マリオどの、ジェニファーどの！」
そのとき、ジェニファーはあることに気が付きました。
「あの、あなたは……」
「あぁ、私は断じてアヤシイ者ではないよ。…大丈夫。自分を信じて正しいと思うことを続ければ、必ず道は開ける。さぁ、急いで。」

マリオの活躍によって動力源である水晶のかけらを失ったマシンは、目に見えて速度を落としつつも、惰性でまだゆっくりと前に進み続けています。
「危機一髪というところでしたな、マリオどの」
物陰からキノじいが顔を出します。
「しかし、ジェニファーどのの話では、水晶のかけらが散らばったのは最近のことのはず。一体なぜ、マシンの中にもかけらが…」
キノじいが首をかしげた時、後ろから金属がこすれてきしむ音、続いて建物が崩れる大きな音がしました。
「きゃっ！なに、今の音？」
制御を失ったマシンが、建物の一つに衝突していたのです。どちらもボロボロにくずれてほとんど原形をとどめておらず、それでもなおマシンは建物の残骸を押しのけながらさらにゆっくりと進んでいきました。建物があったところには、人が入れるくらいの小さな穴が開いていました。
「これはおそらく、脱出用の抜け穴でしょうな。あの占い師が言っていたことが本当なら、ここに住んでいた人々は何らかの外敵に備えて対策を練っていたのでしょう。」
「あ、見て。水晶から光が…」
ジェニファーの持っていた水晶のかけらから、一筋の弱い光が穴の中に差し込みます。しかし、穴の中は依然として暗闇で、深さもわかりません。
「もちろん、一緒に行ってくれるわよね？」
マリオたちの旅は、もう少し続きます。