有る刻の記録

Last-modified: 2018-03-12 (月) 01:36:48

【有る刻の記録1】


――ある時俺はとある学園の校長に呼び出された。
全く、俺はそう暇な人間じゃないんだがねえ、一応色々と縁があるから受けるけどよ。
其処に居たのは【超高校級のプログラマー】と呼ばれていた女と、かつての【先生】。

「先生、――俺とこいつに何か用事かい?……こいつは兎も角、俺は忙しいんだが。」
「それ、私が暇って事~~??!……そりゃ劇作家さんに比べれば仕事は少ないけど、
プログラマーって結構重要なんだぞっ」
「まぁまぁ。」

――チラリとプログラマーの方を見て、毒づくが、それを面白くないと思った彼女は
喰ってかかる。……だろうな。それが面白いなと思うが。
先生は俺らを見て、まぁまぁ、と窘めてくる。
――先生はニコニコしながら口を開く。

「呼び出したのは他でもないんだ。実はね――」

――――
「……こっちは分かるけど、俺はさっぱり分からんな?!
先生、冗談を言うのも辞めてくれねえかな……?」
「いいや、君に頼みたいんだ。キミに。」

「――いやあ。
……俺に先生の真似事ねえ。」

――超高校級と呼ばれていた我が人生はまた、人生はまた変な方向に曲がりそうだ。


【有る刻の記録2】


――鬼さんだーれ。

超高校級とはとても呼ばれなかった、悔しいけれど才能無しと認めざるを得ない。
だが、オレは、――この惨状を記す。それしか出来ないのだから。
――いつからか、超高校級の才能を持つ人間を妬む奴が出ていた。
俺も例外ではなかったが、――それでも過激な連中程ではなかったと思う。
そして、過激な連中は――有ろう事かまず教師に手を掛けた。
奴らは「超高校級の連中は殺してやる!」「ここから出れるのはどうせ限られてる!」
――そうして言った。『ここに居る予備学科の連中も殺すしかない』と。
カルト的な思想で動く奴らのその下らない思想を蹴ったのは――最初に死んだアイツだった。

確か 鋭利な測定器具で首を切断されていたのを覚えている。
――というより其れが記憶からは消えなかった。
その後に奴から邪魔だと思われた彼女も殴打されていた。
――この辺はもう、思い出したくすらない!!!クソ、クソ!!!!
其処から、思想が可笑しくなかった人間も、全員可笑しくなって行った。
――服毒、銃殺、自殺。

その後に残ったのは、オレを含めて片手に満たない程だった。

――生きた目をした奴は、オレを含めていなかった。

だれか、

みつけてくれ。


【有る刻の記録3】
宇宙から落ちた謎の隕石、その星の欠片をとある科学者は『原初の理』と呼んだ。
其れが唯一無二の人類の切り札であり、其の欠片の研究は密に進められた。
その秘宝は、研究が進めば進む程、人間には到底及ばない技術で出来た物であった。
――其れは、『神の技術』であると、『神の一部』であると。
とある科学者はそれが亡き者ですら、生き返らせると知り自らその命を捨てた。
――とあるプログラマーはそれの起動方法の為にデスゲームを起こした。

――起動条件は【何かしらの器】、【??の血液】。
唯一無二の神器は既に起動している。
人型の器を持った神器は次に何を使うか。
そして次の器に選ばれる者は。
――それが起動しデスゲームを愉快そうに眺める彼は何か。

『そうだな、俺は彼の意志で此処に立っている!』
『彼が望んだのは超高校級の人々の意志を優先し、そうして守る事だ!』
『――だからオレは超高校級の人々を愛している。』

――彼が【イベント】と評し行っている果てにある想像上の景色。
そして【生きたあの人々】。
その意味は、代償は。

――『命は灯だ。』
『俺であれば、後二回かな。』
『――そう、そうだな、二回だ。二回。』

――え?
「劇作家はどう足掻いても使えないって決まっちゃったんだよね。」
いや、いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ
「――故にゴーストライターである人物に近いキミが選出されました!」
理屈に叶ってないだろう!!!!ふざけるな!!!!!!!!!!
――あの時に、あの事件の時に生き残ったって言うのに、わた、わたしは、ここで、ここで死ぬの?!
「おめでとー、キミは超高校級のコロシアイを行う人々のマスコットとして憎まれるんだ!」
「あの時は生き残れたが今回は幾ら逃げようが無駄だよ。」
何、を言ってるんだ、この人は。
またわたしはあの光景を見なきゃいけないの?
人が、死ぬのを?

「――キミはずーーーーっと、コロシアイの奴隷さ、おめでとう!!」

……目が覚めると、わたしの目線は縮んでいた。
二足では歩けない、もしかしてわたしは人間ではなくなってしまったのだろうか。
――誰かがわたしを見つめてくる。
先生に、ちょっと似た人が。
ああ、ああ。

ごめんなさい。

ごめんなさい。折角、あの時に生き残れたのに。

私は何も出来ず――


【有る刻の記録4】
――未来機関第四支部 【????】

有る時にだった、とある人間が此処を尋ねに行った。
――その男は赤い髪をした気難しそうな青年――かつては【超高校級の推理作家】と呼ばれたその青年。
そしてもう一人は青い髪で片側の目を隠していた――【超高校級のゴーストライター】と呼ばれていた男だった。
赤毛の青年は白衣を纏った胡散臭い笑みをした人物の前に立ち塞がる、その飄々とした笑みを浮かべた男は二人の存在を不思議に思いつつも口を開く。

「ああ、――キミか、推理作家くん。おや、ゴーストライターくんも一緒か。」
「……一緒か、ではない。
なんだ?貴様らは、貴様らは希望で無い才能の持ち主をなんだと思っている」
「おや、キミ達はあの惨状を経験しても尚希望を持ち続けるのか……!
――素晴らしい、我らが超高校級の希望になる為の検体にならないか?
何、歳はこの際関係無い。――超高校級の希望としてキミ達を我々は歓迎し――」

鈍い殴られた音が響く、――白衣の男はその場に突っ伏す。
赤毛の青年は酷く睨みつける。

「――良いか、本当は蹴り飛ばしてやりたい所だがそれをやったら騒ぎになるだろう、それだけで済んで良かったと思えよ……!」
「ちょ、え、な、殴るのは不味いんじゃ――」
「うるさい、黙れ。――でぇぇぇい、本来ならば拷問にでも掛けたいんだぞ!!」

気絶した白衣の男の服を漁り、「お」と小さく声が上がる。
――彼が持ち合わせていたそれは。

――了――