開発者による解説

Last-modified: 2016-07-21 (木) 16:07:40

ご挨拶

[Gabe Newell] Portal へようこそ。すでに Portal の型破りで新しいゲーム システムを楽しんでもらえたかな?解説を聞くには、解説シンボルに照準を合わせて、「アイテムを使う」キーを押す。解説を中止するには、回転しているシンボルに照準を合わせて、「アイテムを使う」キーをもう一度押す。解説によっては、プレイヤーに何かを見せるためにゲームが制御されてしまう場合がある。そんなときは、「アイテムを使う」キーを押せば解説を中止できる。このタイプのゲーム開発では、我々はまだスタート地点に立ったばかりだと思っている。プレイ後に、ぜひ感想を聞かせてほしい。宛先は (メールアドレスは削除しました) だ。それじゃ、楽しんでくれ!

Level 00

Portalについて1

[Kim Swift] Narbacular Drop (Portal の元になった学生プロジェクト) での経験から、初心者のプレイヤーは、ポータルを他の世界や他の次元に移動するためのものだと考える傾向にあることが分かったの。こうした誤解がないように、記憶に残りやすい物体のある、視覚的に特徴のある場所からプレイヤーをスタートさせることにしたわ。初めてポータルで移動したときに、場所の特徴を見て、さっきいた場所なんだってことがはっきり分かるようにね。この意味では、インストルメンタルの \"Still Alive\" が流れているラジオも効果的よ。 音が続いてるのが分かるから。

ポータルの概念

[Kim Swift] このゲームでは、ポータルの概念を早くプレイヤーに理解してもらうことが、とても重要なの。初期の段階で、ポータルを通じて自分の姿をちらっと見たプレイテスターは、その概念をかなり早く理解してくれることに気付いたわ。そこで、プレイヤーが必ず自分たちの姿を目にするように、この最初のポータルを意図的に配置したのよ。

服装とばね

[Bay Raitt] テストの被験者であることを強調するために、プレイヤーキャラクターにはオレンジ色のジャンプスーツを着せたんだ。視覚的に、暖かい色使いであるオレンジが、背景の冷たいトーンに対して際立って見えるんだ。プレイテスターの中には、高いところから落下したときに Half-Life 2 のようにダメージを受けないのはなぜかと不思議に思っている人もいた。その対策として、プレイヤーキャラクターの脚に機械製のバネ状のヒールを追加したんだ。その結果、高いところから落下してもダメージを受けないことに疑問を感じる人はいなくなったよ。

監視室

[Realm Lovejoy] この曇りガラスの監視室があることで、監視者の正体は分からないながらも、プレイヤーは常に監視されているように感じるでしょう。この部屋は、テストチェンバーの光源としても、使い勝手がよく、理にかなっているから、実質的な役目も果たしているんですよ。

Portalについて2

[Robin Walker] Portal は実際、プレイヤーにさまざまなトレーニングを経験してもらうゲームなんだ。ゲームの多くの部分を使って、ゲームプレイに必要な一連のアイテムを取り入れ、それを組み合わせて、次第に難度が上がっていく謎解きを作り出している。それはもう、ここから始まるんだ。ポータルの複雑な概念を理解する前に、ボタンとボックスのしくみをここで練習するのさ。

Level 01

Portalについて3

[Paul Graham] ポータルの中にいる間は、プレイヤーには安全だと感じてもらいたかったんだ。そこで、閉じていくポータル内ではプレイヤーを殺したり、アイテムを破壊したりしないようにした。その代わりに、ポータルが閉じたときにアイテムが押し出されたり、テレポートしてしまうようにしたんだ。

Portalについて4

[Robin Walker] ゲームの概念を一つ一つ時間をかけて紹介し、そのトレーニングも取り入れてきたから、プレイヤーがここに到達した時点では、ポータルが何であるか、どんな働きをするかをなんとなく理解しているはずだ。Portal の初期バージョンでは、ゲームのはじめから、何をしていいか分からずに、プレイヤーが先に進めないことが多かった。これが、新しい概念を理解するうえでの弊害になってたんだ。さっき解決した謎解きは、行き当たりばったりでは解けないようになっている。この謎解きを解決するには、最低でも 5 つのポータルを正しい順番に通る必要がある。ゲームの重要な概念を理解している必要がある、このような謎解きを通じて、プレイヤーはゲームをより深く理解できるようになるんだ。

Level 02

Level設計について

[Jason Brashill] このマップの初期バージョンでは、プレイテスターは何がポータルを作り出しているかに気付かないで、階段を走り降りてしまっていたんだ。そこで、アクションを強制的に中断させることにした。つまり、「ゲート」というものを設定することで、プレイヤーを立ち止まらせ、ポータルガンが青色のポータルを作り出していることに気付かせるようにしたんだ。粒子効果と大きな音も、プレイヤーの注意を引くのに役立ってるよ。

Level 03

ポータルの色

[Kerry Davis] この部屋は、入口と出口のポータルがポータルの色と関係していないことをプレイヤーに知ってもらうことを目的としてデザインされている。プレイテスターは、オレンジ色のポータルが出口専用だとよく勘違いしていた。だから、プレイヤーをオレンジ色のポータルに入らせるために、この謎解きを作ったんだ。

カメラワーク

[David Kircher] ポータルを通したプレイヤーの視界をレンダリングするときは、反対にあるポータルからの視点を表示できる仮想カメラを使って別々のイメージをレンダリングする必要があった。適切なイメージと、効果的なレンダリング処理を得るために、反対側のポータルの限られた視界から見えるものだけをレンダリングして、仮想カメラと反対側のポータルの平面との間にあるオブジェクトはすべて排除したんだ

高粒子フィルター

[Garret Rickey] ポータルを破壊するフィールド (「フリズラー」と呼んでいる) と、エレベーターの組み合わせには、2 つの意味がある。各テストチェンバーの明確なゴール地点を示すことと、プレイヤーがレベル間をどうやって移動するかという、現実的な問題の矛盾をなくすことだ。最終的には、フリズラーを、いくつかの謎解きに組み込むことにしたよ。

Level 04

Levelの最初のころ

[Chet Faliszek] 最初の方に登場する謎解きには、トレーニングという目的があるから、解決方法はほとんど 1 つしかない。この部屋には、もともとガラスの障壁はなかった。プレイテスターは、ボタンに乗ってドアを開け、開いたドアから青いポータルを発射して、ボックスを完全に無視してしまうことが何度もあった。この謎解きは、本来、ボックスとボタンの関連性を学ぶためのものだから、この解決方法は、賢いけど、本来の意図に反している。そこで、ガラスの障壁を設置して、この解決方法ができないようにしたんだ。でも、ゲームの後半では、謎解きの解決方法は 1 つに限定しないようにしているよ。

開発について1

[David Kircher] ポータルを Source エンジンの物理システムと統合するのは複雑な作業で、パフォーマンスと正確さの妥当なバランスを見出すのに何度もやり直しが必要だった。ポータルは事実上、ゲーム内のどんな場所にでもセットできるから、このボックスの周囲の床と壁、それにポータルの反対側にあるオブジェクトみたいな、衝突ジオメトリの表現を動的に変えられるように、物理システムを修正しなきゃならなかったんだ。初期の衝突判定システムでは、正確な衝突判定処理を行うのに、0.5 秒、つまり 500 ミリ秒かかっていた。この数字は日常生活においては、そんなに長くは感じられないけど、ゲーム内においては、ポータルの作成時にこの長さのポーズができると、とても気になってしまう。最終的には、ポータルの周囲にバブル状に仮のハイブリッド物理環境を作り出すシステムを設計したんだ。この衝突判定は、Source の標準的な衝突判定と比べると正確さに欠けるけど、実用に耐えるだけの正確さで、動的な衝突判定の処理も 500 ミリ秒から 10 ミリ秒に短縮できた。これで、ポータルの作成時でも、ポーズが気にならない長さになったよ。

Level 05

背景

[Nick Maggiore] Portal の初期バージョンでは、Half Life 2 みたいに、背景が今よりも細かくて、ごちゃごちゃした感じだったんだ。だけど、すぐに、不要なオブジェクトがあちこちに散らばっていると、プレイヤーの注意が逸れてしまい、ポータルのトレーニング過程の障害となってしまうことに気付いたんだ。そこで、グラフィックのスタイルを簡略化して、きれいで集中力の高められるチェンバーにしたんだ。今回採用したモジュール的アプローチのおかげで、このピストンでチェンバーの形が動的に変わるのを、リアルに見せることができたよ。

Level 06

ポータルを発生できない壁

[Randy Lundeen] 出口にテレポートする以外に、謎解きに深い意味を持たせるため、ポータルをセットできないサーフェスを組みこむ必要があったんだ。それが、ここで初めて登場する。いくつかのデザインを試してみた後、最終的にこれになったんだ。この視覚ノイズと反射性によって、遠くからでも識別しやすくなってるよ。

Level 07

リフト

[Jeep Barnett] もともと、この足場は電気の流れる場所だったんだ。でも、上手いプレイテスターの場合、レール上をジャンプし、謎解きをすべて無視して出口まで行ってしまうことがあった。そうさせないために、レールに触れた瞬間にプレイヤーが即死するようにして、この問題を解決しようとした。だけど、この解決法はやりすぎの感があって、ゲームの後半に登場するもっと複雑な謎解きでは、上手いプレイテスターであっても、この即死のせいでなかなか先に進めなかった。最終的には、実体のない光の筋に沿って足場を設置することで、両方の問題を解決することができたよ。

Level 08

高エネルギー球の方向転換

[Chris Chin] プレイヤーのトレーニングを段階的に行わせることが当初からの目標だったんだけど、新しい概念を早く導入しすぎたものもあった。たとえば、ここには、エネルギーボールの方向転換に関わる最初の謎解きがあったんだけど、 プレイテストの結果、一度に多くの概念を導入しすぎたために、多くのプレイテスターがストレスを感じてしまうことが分かったんだ。対策として、テストチェンバーを 2 つ、この前に追加して、エネルギーボールの方向転換のトレーニングを徐々に行えるようにしたんだ。

ポータルの衝突

[David Kircher] 前に、静的なポータルの衝突判定の処理について話したと思う。でも、ポータルの反対側で動くオブジェクトとの衝突判定は、また全く異なる処理で、同じようにとても難しい問題だったんだ。開発初期の数ヶ月間、この足場を歩くというアイデアは、実現できるかどうか確信を持てなかった。この動的なオブジェクトとの衝突判定の問題は、1 つのポータルから別のポータルへとオブジェクトをコピーして、どのオブジェクトが互いに衝突するか、どのように衝突するかを厳密に制御することで解決したよ。

Level 09

背景2

[Paul Graham] トレーニングを意図して、テストチェンバーの背景は簡略化されている。だから、室内にプレイヤーの注意を引きつけるポイントを作ったんだ。デザイン的には、基本的に丸いオブジェクトと鋭角的なオブジェクトのバランスで成り立っているんだけど、鋭角的なオブジェクトは背景の構成要素で、丸いオブジェクト (ドアや移動可能な物など) は視覚的に興味を引くべきポイントとなっている。

開発について2

[David Kircher] 開発の最初の数ヶ月間は、ポータルを通して見た視界を 2 つの画面外テクスチャにレンダリングしていたんだ。この方法は手間がかからないし、多様なグラフィックハードウェアとの互換性もあった。ただ残念なことに、この方法はアンチエイリアスとの互換性がなく、複数のポータルを通した視界を繰り返し処理するためには、ビデオメモリを大量に食ってしまうんだ。こうしたデメリットのために、ステンシルバッファで特定のポータルのピクセルを隔離させ、ポータル越しの視界をフレームバッファに繰り返しレンダリングするシステムに切り替えたんだ。こうすると、アンチエイリアスとの互換性もあるし、画面外テクスチャのために余計なビデオメモリを消費することもないから、効果的ってわけさ。

Level 10

ポータルの運動量

[Garret Rickey] ポータルの運動量をプレイヤーに理解してもらうことは、最も難しいことだった。この一連の謎解きでは、ゲームの他の箇所よりも、デザイン面でのやり直しが多かった。ゆっくりと、段階を経て、ポータルを使って運動量の向きを変えるという概念を紹介しているんだ。さらに、AI の声でも、はっきりと謎解きの内容を説明している。これは、ゲームの他の箇所ではほとんどやっていないことだ。

フリング

[Greg Coomer] 重力を利用して一方のポータルの中に飛び込み、別のポータルから勢いよく飛び出す (「フリング」と呼ばれている) のも、習得が困難なテクニックだ。そこで、視覚的な目印として、チェック模様のゾーンがある、突き出たコンクリートブロックをデザインしたんだ。これを見つけたら、フリングのテクニックの使いどころだと分かってもらえるようにね。この目印を何度かくり返し出現させることで、突き出たブロックとフリングを関連してプレイヤーが覚えるようにしたんだ。キューブとボタンとを関連して覚えたみたいにね。

Level設計

[Bill Van Buren] もともと、この出口のポータルのサーフェスは、静的なジオメトリになってたんだけど、プレイテスターは上にあることに、なかなか気付いてくれなかった。これも、プレイヤーに上を見させるという、典型的なゲームデザイン上の難題の例だね。動いているピストンにポータルを設置することで、プレイヤーが気付きやすくすることができたよ。

Level 11

ポータルを覗き込む

[Scott Dalton] ポータルの中を覗き込んで行き先を確かめるよりも、プレイヤーは後先考えずにポータルに飛び込む傾向にあるようだ。この対策として、この謎解きで「飛び込む前に要確認」という教訓を教えているんだ。安全なオレンジ色のポータルは、このバルコニーからは見えなくなっているから、 プレイヤーはポータルを覗き込まなくてはならない。これによって、プレイヤーはポータルを通して離れた場所を見渡せるということを学ぶわけさ。

加重式ボタン

[Jason Brashill] もともと、加重式ボタンは遠くのドアを開くのに使用していたんだけど、プレイテスターはボックスとボタンを強く関連させて覚えてしまっていたために、ボックスを探しても見つからず、行き詰ってたんだ。そこで、大きいボタンを足で踏むタイプのボタンに変更して、ボックスとの関連性を取り除いたんだけど、それでもプレイテスターはドア通してポータルを発射しなければならないことに気付いてくれなかった。ドアが開いたときにタイマーの音を追加するようにしたら、それが制限時間内に謎解きを解決しなければならないという合図になって、問題が解決できたよ。

ポータルガン

[Lars Jensvold] この部屋は、プレイヤーが完全な状態のポータルガンを手に入れるという大きな瞬間を盛り上げるようにデザインされているんだ。謎解きを進める過程で、プレイヤーはこの装置の周りを回ることになる。つまり、実際に手に入れるまで、常に目にしているんだ。

Level 12

フリング2

[Chris Chin] プレイヤーがトレーニングしたことを必ず覚えてくれているとは限らない。特に、重要な新しい概念を紹介した後はね。たとえば、完全な状態のポータル装置を手に入れた後、プレイテスターはフリングのテクニックを忘れてしまうことがよくあった。フリングはとても重要なテクニックだから、この謎解きでフリングをもう一度紹介しているんだよ。

Level 13

Level設計

[Jeremy Bennett] ほとんどが仮のグラフィックの状態から最終版のデザインに移行したときに、最初に調整を行ったのがこのレベルなんだ。このマップを選んだのは、比較的小さい空間に多くのゲーム要素が詰め込まれているからだよ。テストチェンバーのグラフィックの方向性としては、すべてが目的を持って配置されていることが重要だったんだ。シンプルなデザインで、プレイヤーが謎解きに集中しやすくなっている。それに、後で登場する、もっと複雑な舞台裏的環境とも対照になっていて、先に進んでいく感覚を持ってもらいやすいんだ。

チャレンジモード

[Nick Maggiore] できるだけ少ない数のポータルを使って謎解きを解決する実験をしたのは、このマップが初めてなんだ。このアイデアをストーリーモードと絡めようとしたんだけど、うまくいかなかった。アイデアをボツにしてしまう代わりに、ゲーム終了後のチャレンジマップに追加したんだ。

ボックスの運搬用チューブ

[Kerry Davis] ボックスとドアが関わる謎解きで発生した問題に、プレイヤーがポータルでボックスをドアの向こうに移動したために、ボックスでボタンを押せなくなって、部屋に閉じ込められてしまうというのがあった。この状況を検知して対処するために、特別のトリガーを設定したよ。さらにボックスの運搬用チューブを追加して、必要なアイテムがなくなることがないようにしたんだ。

Level 14

プレイテスター

[Jeep Barnett] プレイテスターの中には、ここの床にポータルをセットし、上に移動する穴を使って、謎解きを無視して進む人もいたんだ。複数の謎解きを簡単に無視して進める方法をプレイテスターが見つけた場合は、通常、そのレベルを作り直すことにしている。でも、これみたいに、普通に謎解きを解決するよりも高度なテクニックを使って先に進んでいく方法の場合には、忍者的な解法として残したんだよ。

無限ループ

[David Kircher] ここは、ポータルの連続的な特性を楽しむにはうってつけのスポットだ。この通路の両側にポータルをセットすれば、鏡の間と同じように、ポータルが永遠に続いているように感じられる。実際には、連続するポータルは、最大 9 回までと限られてるんだけどね。ここでは、あらかじめレンダリングしたフレームを、連続する最後のポータルの上にコピーして、無限に繰り返されているような感じを出しているんだよ。完璧ではないけれど、それほど手間がかからないし、効果的に見せることができている。

ボックス

[Lars Jensvold] この部屋はボックスが目立つようにデザインされているんだ。監視室からの光が、ボックスに向かって水平の影を落としている。ボックスは天井からの暖かい光を浴びて目立つようになっているんだ。この暖かい光のおかげで、テストチェンバーの冷たい印象の照明の中で、ボックスが際立って見えているんだ。進行を妨げているさまざまな大きさのボックスも、プレイヤーの注意を上に向けさせるのに役立っている。

空中ポータルセット

[Garret Rickey] プレイテストを通じて、落下中もポータルをセットできることに、ほとんどのプレイヤーが気付かないことが分かったんだ。落下中にポータルをセットするのは、フリングや、ポータルを使ったその他の多くのテクニックを使うのに不可欠だから、この謎解きを追加して、空中でポータルをセットしなければ先に進めない状況を作ったんだ。想定したとおりにプレイしてもらえるようになるまでには、何度もやり直しをしなければならなかったよ。

Level 15

ダブルフリング

[Kim Swift] このセクションは、たぶんポータルを使った最も難しいテクニック、ダブルフリングを使わなきゃいけない初めての場所だから、何度も作り直したわ。もともと、この部屋にはエネルギーボールの方向転換の謎解きもあったけど、 新しいダブルフリングのテクニックと組み合わせると、ほとんどのプレイテスターが難しすぎると感じる結果になってしまったの。プレイヤーは圧倒されてしまうと、新しい情報を吸収しなくなる傾向があるから、謎解きを単純化してダブルフリングだけを使うように変更したのよ。プレイヤーを正しい方向に誘導するために、前に紹介したシングルフリングの目印 (チェック模様の着地ゾーンがある、突き出したコンクリートの足場) のような、視覚的なヒントも追加したわ。

高エネルギー球の操作

[Paul Graham] この謎解きをクリアするには、複数のポータルをセットしてエネルギーボールの向きを変更しなきゃならない。複数のステップを踏むから、プレイテスターは最初のうちはパニックに陥ってしまい、エネルギーボールを自分のほうに向けてしまって、致命的な結果になってしまうことがあった。そこで、テストチェンバーをデザインし直して、ポータルを部屋の上半分にしかセットできないようにしたんだ。こうすることで、ボールはプレイヤーに届かないから、問題を解決できた。

ダブルフリング2

[Robin Walker] おそらく、この最終テストチェンバーの最も重要な目的は、ダブルフリングのテクニックを習得することだ。これまでのフリングでは、視覚的な目印、つまり、壁の突き出した部分を利用していた。でも、自由度の高い舞台裏レベルに備えて、ここでは目印を取り払うことにしたんだ。先に進むには、目印のあるなしに関わらず、プレイヤーは好きな場所で自由にダブルフリングができることに気付かなくてはならないんだよ。

エレベーター

[Realm Lovejoy] この謎解きでは、ポータルを使って、1 歩で遠くまで移動することができることをプレイヤーに知ってもらいたかったんです。最初は、上の部屋に続く階段があったんですよ。でもプレイテスターの多くは、ポータルを使えばもっと簡単に移動できるということを考えようとしないで、階段を使って部屋から部屋にすばやく移動してしまっていたの。そこで、階段を、ゆっくりとしか移動できないエレベーターに変更してみたの。すべてのプレイヤーが実感するくらいまで移動時間を遅くすることで、本来の解決方法がより明確になっているんです。

Level 16

タレット

[Chet Faliszek] Portal では、HL2 に出てくる従来のタレットとは違ったタレットを登場させたかったんだ。 HL2 のタレットは心のない設置式の銃でしかなかったんだけど、Portal では個性をもったキャラクターにしたかった。そこで、第 1 段階として外見をデザインし直すことにした。新しいタレットのデザインができてみると、恐ろしいマシンガンというよりも、かわいらしいロボットのように見えたんだ。しゃべらないロボットは本当にかわいいとはいえないから、 第 2 段階として、タレットの音声面での特徴づけをすることにしたんだ。Ellen McLain と話し合いながら、最終的に、このタレットにふさわしい、無邪気な感じの声にすることに決めたんだ。殺人マシンと、攻撃的ではない、無邪気な個性を組み合わせることで、Portal のタレットはとても印象的にキャラクターになったよ。

軽い戦闘

[Realm Lovejoy] Portal を戦闘一辺倒のゲームにしたくはなかったけど、軽い戦闘くらいは追加したかった。何度か失敗をくり返した後、この「軽い戦闘」のアイデアを実現するには、タレットを採用するのが妥当だという結論に達したんです。タレットはポータルを使ったテクニックで倒すことができるけど、もっと単純で強引な方法でも対処することができるし。

バッググランドストーリー

[Erik Wolpaw] Portal のストーリーは単純だけど、僕たちは膨大なバックグランドストーリーを作ったんだ。Aperture Science のこと、その従業員のこと、そしてブラック・メサとのライバル関係... Half Life の世界観にマッチするように設定を考えてある。Portal のこの第 1 作目では、すべてを紹介していないけど、この世界には、細かい点をいろいろと詰め込んでるんだ。たとえば、このエリアは、Ratman Den (ねずみ男の巣窟) と呼ばれていて、建物内に多くの人が閉じ込められていることをほのめかしている。

Level 17

ボックス

[Chet Faliszek] このホールは、プレイヤーにボックスをシールド代わりに使わせるようにデザインしたんだ。でもプレイテスターの多くは、エネルギーボールを避けるタイミングが重要な謎解きだと勘違いしてしまって、ボックスを使わずにいた。解決策として、AI にボックスのことをしゃべらせることにしたんだ。これでもか、というくらいにね。それ以前はボックスに見向きもしなかったプレイテスターも、AI がしゃべりだすと、ボックスのそばに留まるようになったんだ。でも、ゲームの最後までプレイヤーにボックスを持ち歩かせるわけにはいかなかったから、レベルの最後に、ボックスを強制的に始末させるシーンを作ったんだよ。

ナレーションについて1

[Ellen McLain: GLaDOS の声] 私が聞いていた話では、Valve という会社は... すべてを綿密に計画立てているということだった。すべてを前もって計画しているって。でも、それは大嘘だったわ。というのも、最初は、スタジオに呼ばれて、「このコンピューターのセリフを読んで。」って言われたから、「ええ、やるわ。」って感じだったの。でも、やってるうちに、開発者は新しいアイデアを思いついたみたい。そこからは、次から次へアイデアが出てきて、どんどん変わっていったわ。

焼却炉

[Jeep Barnett] コンパニオンキューブの残酷な結末には、2 つの意味があるんだ。すでに凶悪な AI に、いっそう邪悪な色合いを追加すること、またそれと同時に、最終レベルでの鍵となる要素、焼却炉をプレイヤーに使わせるためのトレーニングをすることだ。このトレーニングは、ドラマチックな展開へとつながっている。後で、プレイヤーが AI の重要なパーツを、コンパニオンキューブを燃やしたのと全く同じ形状の焼却炉に放り込むことで、コンパニオンキューブの復讐を果たすことができるんだ。

Level 18

AIの音声

[Erik Wolpaw] AI の音声は、段階的な処理を行って制作したんだ。最初に、すべてのセリフを自動朗読プログラムにかけた。スタジオでは、コンピューターで生成したサウンドファイルを使って GLaDOS 役の Ellen McLain に合図を出し、 真似してもらったんだ。テイクを重ねることで、コンピューター版で聞き取りにくかった言葉が聞き取れるように、彼女の言葉を調整していった。たとえば、Ellen の読んだセリフがこんな感じだ:<INSERT RAW ELLEN LINE> .レコーディングの終了後に、コンピューターっぽい感じを出すために、すべてのセリフを加工したんだ。これが、ゲーム中で使われているのと同じ音声だ。抑揚を抑え、変調し、声の周波数を上げてある

Level 19

エレベータについて

[Garret Rickey] この移動プラットフォームを使って、謎解きに時間的な制約を追加したんだ。ゆっくりと時間をかけて取り組むことができる他の大部分の謎解きとは違って、限られた時間内で単純な判断を連続で行う状況は、盛り上がるからね。時間的な制約のない謎解きは、より複雑である半面、ドラマチックさに欠けることがあるんだ。

Levelの設計

[Paul Graham] 場合によっては、わずかな違いで大きな差が生じてしまうこともある。たとえば、この壁には左側の側面を追加することで、プレイヤーに、壁の厚さを視覚的に理解してもらう必要があった。それがないと、プレイテスターたちはホールがどんどん狭くなっていくと錯覚し、パニックに陥って、理性的な判断ができなくなってしまう場合があったからね。

脱出について1

[Erik Wolpaw] プレイヤーが燃え盛る火炉から脱出する前の AI のセリフはすべてコンピューター口調のモノトーンになっている。でも、脱出後は、GLaDOS はだんだんと感情表現豊かになって、最後には感情を何度も爆発させるようになる。この役には、コンピューター口調の声をうまく真似することができ、かつリアルなキャラクターをも演じることのできる声優さんが不可欠だった。それに、ゲームの最後に歌を入れる予定だったから、歌がうまい声優さんである必要もあった。採用した Ellen McLain という女性は物まねもうまく、すばらしい声優さんで、クラッシックオペラでソプラノのトレーニング経験もあったんだ。とても、うまくいったよ。

施設の内壁

[Kim Swift] この新しいエリアでは、プレイヤーになじみのあるサーフェスは使ってないわ。新しいサーフェスで、どこにポータルをセットできて、どこにセットできないかといったルールを教える必要があった。そこで、このエリアを作ったの。施設の中心部に逃げ込んだってことと、どこにポータルをセットできるかをプレイヤーに教えるためにね。

脱出について2

[Realm Lovejoy] プレイヤーの脱出後、それまでにクリアしたチェンバーを新しい別の方法でクリアしてもらうようにしたんです。なじみのある空間を再登場させて、前とは別の方法で攻略できるようにすることで、裏技を使って進んでいるような感覚を持ってもらえると思いますよ。


はしご

[Jeep Barnett] ゲーム開発で気付いた奇妙な点は、よっぽどのことがないと、プレイヤーは上を見上げようとしないということだ。ここで、そのきっかけとなっているのが、ハシゴだ。ほとんどのプレイヤーは、ハシゴがどこにつながっているのか確認しようとして、上を見る。ハシゴは実際には、プレイヤーが触ったとたんに落ちてしまうんだけど、目的は達成しているんだ。

Enrichment Center 内部のしくみを

[Kim Swift] プレイヤーに、Enrichment Center 内部のしくみを少しだけ見てもらえるように、脱出後のレベルを制作したの。このエリアは、格納キューブ配置システムの一部よ。こうした装置やしくみ見せることで、他のテストチェンバーとの視覚的な差別化ができるし、プレイヤーに舞台裏を見ているような感覚も味わってもらえるはずよ

ピストン

[Garret Rickey] プレイテストを通じて、複雑で慎重に進めなくてはならない謎解きはやめて、もっと簡単で、時間制限のあるものにしないと、プレイヤーが疲れてしまうということが分かった。このピストンは、そういった簡単な謎解きのいいベースになった。移動するサーフェスがあるから、天井から天井といった、通常とは異なるポータルの移動方法を使うこともできるしね。

Levelデザイン1

[Paul Graham] 開発中、ポータルのシステムを壊してしまうようなレベルのデザインに出くわすことが何度もあった。たとえば、この天井から天井への移動は、とても大変な作業の伴う、予想外のケースだったんだ。でも、既存のポータルのしくみが通用するステージに変更してしまうといった安易な手段は取らないことにした。ゲームがリリースされたら、カスタムマップを作る人たちが、僕たちの想像もしなかった方法を思いつくだろうから、できるだけ柔軟に対応できるシステムにしたんだ。


ナレーションについて5

[Ellen McLain: GLaDOS の声] スタジオでのレコーディング中は、インターホンでしか制作スタッフと連絡が取れないの。だから、彼らは私のことを自由に話してるんだけど、私には、彼らが何を言っているのか聞こえない。でも、彼らは優しい人たちよ。インターホンのボタンを押して、私に話しかけてくるの。声の演技についてね。「だめ、そうじゃない。もう一度。あと 3 テイクとろう。」って感じで。私が分かるように、コンピューターで作成した音声を何度も再生してくれたわ。そして私は「OK、もっと皮肉っぽく」とか、「もっと怒った感じで」とか、「もっとイライラした感じで」といったディレクターの指示通りに、3 通りの読み方をするの。だから、何時間も何時間もスタジオにこもることになるのよ。彼らはいつも優しくて、スタジオに水を用意してくれているし、メモを取れるように鉛筆も用意してくれている。だから、もちろん、また使ってもらえるように、いい演技をしたほうがいいわよね。

タレットの奇襲1

[Scott Dalton] ゲームが終わりに近づくにつれて、このタレットの奇襲のような、切迫した謎解きの比率を増やして、プレイヤーにクライマックスが近づいていることを感じてもらえるようにしているんだ。

Level19について

[Greg Coomer] 脱出後のレベルを開発した重要な目的の一つに、プレイヤーが施設内で自由に動き回っているという感覚を味わってもらいたかったということがある。その点を念頭に置いて、プレイヤーが潜り込んだり、ポータルをセットしたりできる場所を数多く作ったんだ。そのために、照明効果がとても難しくなった。エリア内を移動できるだけの明るさが必要な一方、建物内の薄暗い、使用されていない区画にいるような感覚を持ってもらう必要があったからね。

ナレーションについて4

[Ellen McLain: GLaDOS の声] 皮肉。GLaDOS はかなりの皮肉屋なの。それも、すごく楽しかったわ!でも、演技しながら、こういった感情を乗せようとしている時にも、コンピューターの雰囲気を残して、フレーズを繰り返す感じを残さなくてはならなかったけど。「Aperture Science」とか「Enrichment Center」とかね。"

強化タレットについて

[Bill Van Buren] このロケット砲は、もともとレーザーを発射してたんだ。だけど、ガラスの壊れる処理を入れた結果、レーザーからロケットに変更したんだ。ロケットの大爆発でガラスが割れるほうが、レーザーでガラスがゆっくり溶けていくよりも、はるかに満足感が得られるからね。最初は、タレットと同様にしゃべっていた。プレイヤーはタレットとは反対側にロケットを向けてしまうことが多いから、はっきりした音による合図が必要だと思ったんだ。でも、声だと、ロケットの方向調整には、うるさすぎたんだ。

強化タレットについて2

[Realm Lovejoy] このチューブを壊すことで、プレイヤーは、新しく身につけたロケットの方向転換テクニックとガラス破壊テクニックを、少し違った状況で練習することができるから、結果的にトレーニングに役立つんです。


タレットの奇襲2

[Jeep Barnett] この激しいタレットの奇襲は、最初はもっと大掛かりだった。タレットが天井から落下してきて、いきなり飛び出すという仕掛けだったんだ。実際、一時期は、ゲームのクライマックスとなる戦闘になっていた。だけど、プレイテストを通して、このタイプの戦闘体験は、それまでの短時間のトレーニングとはうまく噛み合わないということが分かったんだ。何度もやり直しながら、戦闘の激しさを抑えて、この部屋ではポータルの推進力を利用して、プレイヤーが遠くまで飛ぶようにしたんだ。このテクニックは、プレイテスターが気に入ってくれたし、最終バトルでの重要な要素にもなったんだ。

通路

[Randy Lundeen] 最初、この通路は飾りだったんだけど、プレイテスターは、重要な場所だと勘違いして、そこにたどり着こうとずっとトライし続けてたことが何度もあったんだ。プレイヤーが通路の上を歩きたいなら、歩かせてあげたいから、エリアのデザインを変更して、歩けるだけじゃなく、重要な場所に設定し直したんだ

GLaDOS2

[Erik Wolpaw] この赤電話の背景にある話をしよう。GLaDOS の開発中、常に赤電話の横に座って待機してる人がいた。この AI が感覚を持ち、強大な力を持つようになったときに、この電話を手にとって、いつでも助けを呼べるようにね。実際にゲームをプレイする時点では、この計画が 100% うまくいかなかったことが、はっきり分かるはずだ。

エンディングテーマ

[Ellen McLain: GLaDOS の声] 最後に歌があるって聞いたときに思ったの。「ま、いいけど、一体誰が歌を作るの?」って。そうしたら、Jonathan Coulton の曲だって教えてくれたの。Jonathan の作った歌を聴いたら、すごく面白くて、よくできていたわ。その時に、これは良さそうねって思ったのよ。でも、私はオペラ歌手だから、普段はこんな歌い方をしている:: [オペラの歌]。だから、この曲に合った歌い方が私にできるのかしら、って思ったわ。不安だった。でもレコーディングの前に、曲の mp3 を送ってくれて、 Jonathan のボーカルの入ったその曲を聴いてみたら、 すごくいい曲だったの。だから自宅で、そのかわいらしい歌を練習しながら GLaDOS の声に近づけるようにしたわ。「Aperture Science...」みたいな。人間がやってきて殺されてしまうまでは、内向的で攻撃的な一人ぼっちのコンピューターなのよ。彼女が怒るのも当然だわ!でも、彼女は... ケーキが本当に好きみたいね。それに... 私もケーキのレシピを思い出したいから、ゲームをプレイしたい。私の友達が家に来たら、ケーキの上に Portal を乗せて、出してあげようと思ってるわ。

GLaDOS1

[Jeremy Bennett] Aperture Science を代表する異質なディスクオペレーションシステムの GLaDOS は、何度もデザインし直したんだ。初期のバージョンでは、浮遊する脳や、不規則に伸びたクモのような構造があって、ボッティチェリの「ビーナスの誕生」を逆さにしてロボットのパーツとワイヤで作ったようなデザインになっていた。最終的に、巨大な機械装置からぶら下がっているロボット的な優美な姿にしたんだ。そうすることで、GLaDOS のパワーと女性らしさとがうまく表現できたと思うよ。

未整理

ナレーションについて2

[Ellen McLain: GLaDOS の声] 最初、私が呼ばれたときには、コンピューターの声を真似して演じる予定だったの。単に真似するだけ。だから、言われたとおりにやったわ。感情を乗せないで、コンピューターの声を聞いて、聞いたとおりに復唱した。でも、ゲームが進むにつれて、感情を表に出すように、コンピューターから GLaDOS のキャラクターへと変えなくてはいけなかったの。彼女は、とてもかわいらしく、内向的で、攻撃的なキャラクターになったわ。

ナレーションについて3

[Ellen McLain: GLaDOS の声] 声優として呼ばれたら、言われたとおりに役をこなさなきゃならない。それでお金をもらっているんだから。場合によっては、指示のうまいディレクターもいれば、あまりうまくないディレクターもいる。でも、そんなことは関係ないのよ。それに、そんなことは制作チームに対して言うことじゃないし。でも、スタジオに入ったときに、明確な指示もなくて、 しかも、そこに感情も込めなくちゃならないとしたら?でも、このチームは、そうじゃなかったわ。彼らは、やってきて、たとえば、「強烈に怒った感じ」といった指示をくれた。声優にとっては素晴らしい指示出しよ。だから、この制作チームにはやる気にさせられた。あいまいな指示しかもらえないことってよくあるの。でも今回は、うまく指示をもらえたから、レコーディング中ずっと楽しかったわ。

ナレーションについて

[Ellen McLain: GLaDOS の声] Portal の、えーっと... Portal を Google で検索して、予告編を見たの。すごく気に入ったわ!私の声がすごく良かった![笑い] チームの人たちにも言ったんだけど、私は今までゲームなんてやったことがなかったの。でも、このゲームはプレイしてみたいわ![笑い]