前書き (Introduction)

Last-modified: 2019-08-26 (月) 22:24:03

原文 = https://apps.ankiweb.net/docs/manual.html#introduction


目次



公式Webサイト
http://ankisrs.net/
ankiweb
https://ankiweb.net/

Anki は 物事を憶えるのを楽にするプログラムです。伝統的な学習法と比べて Anki は ずっと効率的なので、あなたは 学習時間を大幅に節約したり 身につける知識量を大幅に増やしたりできます。

毎日の生活のなかで 物事を憶えなければならない人すべてに Anki が役立ちます。Anki は コンテンツから独立しており、画像・音声・動画・科学マークアップ (LaTeXを使う) をサポートするので、可能性は無限です。例えば:

  • 外国語を学ぶ
  • 医学や法律の試験に向けて勉強する
  • 人の名前と顔を記憶する 
  • 地理に詳しくなる
  • 長い詩を暗唱する
  • ギターコードを練習するのにも!

Anki の背景には 2つのシンプルなコンセプトがあります: 能動的に思い出すテスト (active recall testing)間隔をあけた復習 (spaced repetition) です。これらについては何十年も前に科学論文が書かれたのですが、ほとんどの学習者はこれらを知りません。これらの働きを知れば、あなたはずっと効率的な学習者になるでしょう。

能動的に思い出すテスト

能動的に思い出すテスト (active recall testing) とは、質問されて、答えを思い出そうとすることです。これと対照的に 受動的な勉強 (passive study) では、何かを読む・見る・聞くことが中心で、答えを知っているか考えるために一時停止することはありません。能動的に思い出すテスト受動的な勉強 に比べて、ずっと効率的に 強い記憶を形成できることが、研究によって明らかになりました。理由は 2つあります:

  • 思い出す行為が記憶を 強化 し、あとで再び思い出すことができる可能性を高めます
  • 質問に答えられなかった場合、学習者は教材を見返して もう一度学習する必要があると わかります

気付きもしなかったかもしれませんが、あなたも学生時代には 能動的に思い出すテスト に出くわしたことがあるでしょう。良い教師は、ひとつの記事を読んだあとに いくつか質問をしたり、週ごとに進度チェックテストをします。これらの目的は単に生徒の理解度を測るだけではありません。テストをすることで、生徒が 学習したことを あとで思い出せる可能性を高めているのです。

学習のなかに 能動的に思い出すテスト を組み込むには、 単語カード (flashcards) を使うと良いです。伝統的な紙の単語カードを用意して、表の面に質問を書き、裏の面に答えを書きます。答えを考えるまではカードをめくらないようにすれば、受動的に見るだけの勉強に比べて、ずっと効率的に物事を学習できます。

使わなければ忘れる

我々の脳は効率的なマシンであり、不要な情報を素早く削除します。たぶんあなたは 2週間前の月曜に どんな夕食をとったか憶えていないでしょうが、それは この情報があまり役に立たないからです。しかし、もしあなたがその日 素晴らしいレストランに行き、その素晴らしかったことを友人に話して回っていたら、あなたは今でも鮮やかに詳細を憶えているでしょう。

脳の知識を「使わなければ忘れる」の原則は 私たちが学習するすべてのことに適用されます。もし あなたが科学用語の暗記をして ある午後を過ごし、そのあと2週間その知識を思い出さずに過ごしたら、あなたはほとんどを忘れているでしょう。実際、人間の脳は 48時間以内に 75%の知識を忘れることが 研究で明らかになっています。多くの情報を学習しようとする人は、この事実によって落胆するでしょう。

しかし解決法はシンプルです: 復習。新しく学んだ知識を復習すれば、忘れることをかなり防げます。

ただ問題は、伝統的な復習法があまり実用的でないことです。紙の単語カードを使った場合、30枚くらいなら簡単に復習できますが、枚数が 300枚や3000枚まで増えると、とたんに扱いにくくなります。

間隔をあけた復習

分散効果 (spacing effect) は 1885年にドイツの心理学者によって報告されました。彼の観察では、効率よく記憶するには、1回のセッションで何度も学習するよりも、復習を時間軸方向に分散したほうが良い、という結果が得られました。1930年代以降、この分散効果を利用して学習効率を挙げようとして 多くの提案がされ、そのような学習法は 間隔をあけた復習 (spaced repetition) と呼ばれるようになりました。

過去30年間における最大の発展は SuperMemo の作者によってもたらされました。SuperMemo は、間隔をあけた復習 を実装した 商用の単語帳プログラムです。SuperMemo は、教材を復習する理想的な時期を管理し、ユーザの成績に基づいて その時期を調整する、というシステムの概念を開拓しました。

SuperMemo の 間隔をあけた復習 システムでは、質問に答えるたび、ユーザは どれくらい良く憶えていたかを プログラムに入力します - 完全に忘れていた・少し間違った・どうにか憶えていた・簡単に思い出せた、などです。プログラムはこの入力を使って、この質問を再び出題するのは いつが最適か を決定します。思い出すのに成功するたびに記憶が強化されるので、復習の間隔は しだいに長くなっていきます - 質問を最初に見た日、次は 3日後、その次は 15日後、その次は 45日後、のように。

これは学習の革命でした。最小の労力で 物事を学習し記憶を維持できるからです。SuperMemo のスローガンがこれを要約しています: 間隔をあけた復習があれば、あなたは 忘れることを忘れる ことができます。

なぜ Anki なのか?

SuperMemo がこの分野に大きな影響を与えたことは間違いありませんが、問題もあります。SuperMemo はよく、バグが多くて 操作しづらい と批判されます。Windows上でしか動作しません。プロプライエタリなソフトウェアなので、エンドユーザが機能を拡張したり 生データをアクセスしたりできません。かなり前のバージョンは無料で提供されていますが、それらは今使うには制限が多すぎます。

Anki はこれらの問題を解決します。多くのプラットフォームに Anki のクライアントがあるので、予算的な制約に苦労している学生や教師も大丈夫です。Anki はオープンソースです。エンドユーザの貢献により、ライブラリやアドオンも豊富にあります。Anki はマルチプラットフォームです。Windows, Mac OSX, Linux/FreeBSD, いくつかの携帯機器でも動作します。Anki は SuperMemoよりも かなり操作が簡単です。

内部的には、Anki の 間隔をあけた復習 のアルゴリズムは、SuperMemo の少し古いバージョンの処理 SM2 を元にしています。SuperMemo の最近のバージョンでは さらに学習効率の最後の一滴まで絞り出すことに成功していますが、そのかわり非常に複雑になり、実世界で使ったときはスケジューリングの誤りを起こしやすくなりました。これについての詳細な議論や スケジューリング アルゴリズムについては、よくある質問の項目 を見てください。