スマブラ個人小説/Hooの小説/禁忌の継承者

Last-modified: 2009-08-12 (水) 13:14:50

この小説を読むにあたって1つだけ注意があります。私が書く小説はところどころにパロディが見られるので、そういったものが苦手な方は注意してください。

プロローグ

真っ暗な空間だった。

そこを歩く男が一人。このような暗い場所を歩いていると迷うのではないかと思うのだが、まるで目的地がすぐそこにあるとでも言わんばかりにその男はしっかりとした足取りで歩いていた。

それを証明するように、暗闇の中から明かりが浮かび上がってくる。明かりに近付いていくとそれはだんだんと大きくなり、その明かりが荒野のような風景を映し出しているのが見えてきて、この暗闇の出口であることが分かる。男が出口の前に立ち、暗闇から出て行こうとした時に
「では……あの者たちの殲滅は頼んだぞ」
といった声が男の頭の中に響いてきた。男はその声に対し、
「了解した……」と言った。――男は笑う。

第1話 奇妙な手紙(前編)

―キノコ王国、マリオの家―
ほっ、やっ、といった掛け声が響いてくる。それはマリオとルイージが闘っていることを意味していた。
マリオ「くらえっ!ファイアボール!!」
ルイージ「当たらないよ!やっ!」
マリオが繰り出したファイアボールをルイージは持ち前のジャンプでかわす。そしてルイージは飛び上りながらマリオに接近していき、脳天チョップで反撃するべく腕を振り上げる。
だが、マリオはニヤリと笑い、自分の体を一歩分だけ後ろに引いた。
マリオの脳天に直撃するはずだったチョップはブン、と空気を切り、ルイージはそのまま着地してしまう。
しまった、と思った時にはもう遅かった。ルイージの目の前にはファイア掌底の構えをとったマリオがいて……
ルイージ「うわっ!?」
避ける間もなくそれを腹に食らってしまった。
吹っ飛ばされながらルイージは、さっきのファイアボールが陽動であったことに気付いた。
マリオ「今日はここまでだな。ルイージ、大丈夫か?」
ルイージ「うん、何とかね……」

それから少し経って、マリオたちは家の中に戻り、先ほどの戦いについて話をしていた。
ルイージ「それにしても兄さんにはかなわないよ。今度こそうまくいったと思ったんだけどなぁ……」
マリオ「そんなことはないさ。今日のお前は結構いい動きをしていたからな」
戦っていたとは言っても、それはケンカの類ではなく、特訓によるものだった。
彼らは一年前に起こった“この世界”の戦士たちとタブーとの闘い (これは『亜空事件』と呼ばれるようになった)の後、今後あのような強敵が現れた場合にも戦えるようにと、配管工の仕事や冒険の合間を縫って二人で特訓をしているのだった。

今のところ、ルイージがマリオと手合わせをしてもいまだに勝ったことは無いのだが、マリオの言う通り、ルイージは着実に力をつけているようだった。以前ならば力押しでも苦労せずにいけたが、最近は今日のような小細工を使わないと勝ちにいけない場合が出てきているのがその証拠だ。何より、マリオとまともに戦える者などそうはいないから、ルイージの実力もかなりのものである。

さて、二人が話をしていると、
「郵便で~す!!」と郵便屋のパタパタの声が聞こえてきた。
ルイージ「誰からだろう?取りに行ってくるよ」
少し経って、ルイージが戻ってきた。
ルイージ「兄さん、マスターハンドから僕たち宛ての手紙だよ!」
マリオ「そうか。じゃあ読んでくれないか?」
ルイージは分かった、と返事をすると手紙を読み始めた。

ルイージが読み上げたマスターハンドからの手紙の内容は奇妙なもので、要約してみると
「亜空事件に関わった戦士たちに重要な話がある。明日の深夜、空中スタジアムの闘技場に来てほしい。できれば、あの事件の戦いに参加したもの以外にも、戦力として期待できるものがいれば連れてきてほしい」
というものだった。
ルイージ「どう思う?兄さん」
マリオ「う~ん……ただごとじゃない、というのは確かだな」
確かに穏やかな空気ではない。亜空事件を収めた実力者たちのほかに、「戦力として」さらに何名かの召集を募っているのだからよほどのことなのだろう。
二人はマスターハンドの目的について考えてみたものの、リリリリリン、と突然電話が鳴り出したことにより、思考は中断させられた。マリオが受話器を取りに行く。
マリオ「はい、もしもし……?」
「ガハハハハ!!オレだよ!ワリオだよ!!」
マリオ「ワリオか…いったい何の用なんだ?」
受話器越しに響いてきた笑い声に面食らいつつも、マリオは用件を尋ねる。
ワリオ「お前らのところにマスターハンドからの手紙は届いたか?」
マリオ「ああ」
ワリオ「それに亜空事件の戦いにいなかった奴らも連れてこいとあったんだが、お前たちはだれか連れて行くのか?」
マリオ「そうだな……誰か連れて行くといっても、俺の知り合いはほとんど参加していたからな」
実際、マリオの交友関係は広く、弟のルイージや今こうして電話で話しているワリオのほかにも、ピーチ姫やヨッシーにクッパ(あいつは友人というより、宿敵といった方が近いのだが)、さらにドンキーやディディーとも浅からぬ付き合いがある。彼らは全員あの戦いに参加しており、戦士たちの中でも知り合いの数が一番多いのはマリオだった。だから、誰かを誘おうにももういないわけである。
マリオ「ところで、わざわざ電話をかけてきたということは、お前はだれを連れていくのか決めているのか?」
ワリオ「ああ、決めているさ!オレ様の弟分だ!ちょっと代わるぞ」
そう言って、ワリオの声は聞こえなくなった。誰かに受話器を渡しているようだ。
「アーーアーーアローアロー聞こえますかーー?超有名人のマリオさんコンニチワーッアローーッ」
何とも間の抜けた声が受話器から聞こえてきた。この声には聞き覚えがある。
マリオ「お前…ワルイージか?」
ワルイージ「いかにもー。ワルイージでーーす。よーろーしーくーねー」
……どうにもこいつの性格はつかめない。マリオはそう思って頭を抱えながら、他愛のない会話を数分間する羽目になるのだった。

第2話 奇妙な手紙(後編)

―グレートフォックス艦内―
フォックス「くっ……」
ファルコ「おいフォックス、お前のアーウィンの腕はこんなもんか?」
ファルコはフォックスが操作するアーウィンの後ろに張り付き、レーザーを連射してくる。だが、
フォックス「これならどうだ!」
ファルコ「何っ!?」
フォックスはアーウィンを前方宙返りさせ、逆にファルコのアーウィンの後ろをとった。
フォックス「後ろを取られたら前方宙返りは基本だろ?お前こそアーウィンの腕が落ちたんじゃないのか?」
フォックスはそう言いながら、猛烈な勢いでレーザーを連射させてきた。ファルコはローリングでそれを跳ね返すも、レーザーの連射速度に追いつかず、一度攻撃を受けると瞬く間にレーザーの集中砲火を浴び、ファルコのアーウィンは墜落してしまった。

ファルコ「くそっ、負けちまったか!」
そう言ってファルコは手に持っていたコントローラーを握りしめた。
彼らは実際に戦っていたわけではなく、アーウィンを操作するシミュレーション(という名のゲーム)で、対戦をしていたのだ。なぜこういうことをしているのかというと、最近は雇われ遊撃隊である彼らのもとに仕事の依頼がこないため、暇を持て余していた…もとい、アーウィンの操縦技術を落とさないためにシミュレーション(という名のゲーム)をしているのだった。
「ちょっと!またこんなところで油を売っているの!?」
突然背後からかかってきた声に、フォックスとファルコは身を強張らせる。
どこかぎこちない動作で振り向くと、腕を組んで仁王立ちをした青い狐の少女がそこにいた。
フォックス「い、いやクリスタル、これは立派な訓練…」
クリスタル「あ、ぶ、ら、を、う、っ、て、い、た、の、よ、ね?」
フォックスはクリスタルに言い訳を試みるものの、一文字一文字区切った迫力のある言い方で念を押され、
フォックス「……はい」
と答えるしかなかった。
クリスタル「まったく。…まあいいわ。それよりあなたたち宛てに手紙が届いているわよ」
クリスタルはそう言って手紙をフォックスに渡してきた。差出人の名前には「マスターハンド」と書かれている。フォックスはそれを手に取り、読み始めた。

フォックス「仕事の依頼じゃないけど…厄介なことになりそうだな」
手紙を一通り読んだフォックスがファルコに読ませるべく手紙を渡す。
ファルコ「それで、戦力として期待できるものがいれば連れてきてほしいとあるけどよ、俺たちはどうするんだ?」
そうは言うものの、この場にはいないがスターフォックスのメンバーであるスリッピーは先頭よりも機械の整備などの方が得意だし、ペッピーはもう戦えるような歳ではない。
残るはクリスタルなのだが……
フォックス「しょうがないな。俺たち二人で行くしかないか」
クリスタル「ちょっと!私は無視する気!?」
フォックス「いや、そうじゃなくて君が危険な目に遭わないように…」
実際、亜空事件にクリスタルがあまり関与しなかったのは、彼女を危険な目に遭わせないようにとフォックスが取り計らったためである。
クリスタル「またそんなことを言って!フォックスは私を守る気が無いのね?」
そんなことを言われて、フォックスは動揺してしまう。クリスタルはそれに気付き、とどめとばかりに
クリスタル「お願いフォックス。私も連れてってよ」
そう言って上目遣いの…いわゆる「おねだり」をする目をしたのだった。その表情を見て、
フォックス「わかったよ……」
と答えるしかなかった。そんなやり取りを見て、呆れかえるものが一人。
ファルコ「まったく……やれやれだぜ」

―クリミア王国、どこかの村―
「ありがとうございます。これで山賊におびえる必要もなくなりました。それでお礼の方なんですが……」
何やら村人たちが集まって、目の前の青年に感謝の言葉を述べていた。どうやら村人たちは山賊の存在に頭を悩ませていて、この青年に山賊退治の依頼をしたようだった。感謝の言葉を受けた青年―アイクは村人たちから報酬の金銭を受け取り、
アイク「…じゃあ、また困ったことがあったら、頼りにしてくれ」
といい、去って行った。

アイク「ただいま戻ったぞ」
山賊退治の依頼を終え、グレイル傭兵団の砦に帰ってきたアイクは、自分が戻ってきたことを誰ともなく告げる。
「お帰りなさい、アイク。仕事は無事に終わりましたか?」
アイクのただいまの挨拶に答えたのは、黒いローブを着て、長い黒髪を首のあたりで結った少年だった。
彼の名はセネリオ。グレイル傭兵団の参謀にして、風魔法の使い手でもある。
本来なら傭兵団の団員たちが会議をしたり食事をとったりする台所のテーブルにて、彼は何やら書類の整理をしているようだった。今この場にはセネリオ一人しかおらず、ほかの団員たちはアイクのように仕事に出て行ったか、各自割り当てられた部屋にいるものだと思われる。
アイク「何も問題はなかったぞ。ところで、どうしてここにいるんだ?」
普段、セネリオが書類の整理などをする時には、邪魔が入らないようにと自分の部屋でやっているのだが……
セネリオ「貴方宛ての手紙が届いていたので、ここで待っていました」
そう答えると、アイクに手紙を差し出す。無論、マスターハンドからのものである。

アイク「これは仕事の依頼じゃないが…面倒なことになりそうだな」
一通り手紙を読んだアイクはそう言った。やや説明的な言い方になっているのは、セネリオに手紙の趣旨を伝えるためである。
アイク「俺は明日空中スタジアムに行くが、戦力として期待できるやつがいれば連れて来いとこの手紙にある。セネリオ、行くか?」
アイクはそうセネリオに問いかける。亜空事件の際には傭兵団のメンバーを何人も投入して本来の傭兵稼業がおろそかになるのはまずいと考え、あえてアイクだけが参加したのだったが、この手紙の要望に応えるとなると、一人ぐらいは連れて行ったほうがよいのではないかと思われた。
セネリオはアイクが最も信頼を持っている傭兵団のメンバーの一人で、風などの魔法の扱いにたけているのはもちろん、頭の回転が速く、戦術を立てるのが得意だ。彼がいればいろいろと役に立つだろうと考え、ついてこないかと持ちかけたのだった。
セネリオ「分かりました」
彼はいつもの仏頂面のままそう答えた。一見、乗り気でないようにも見えるが、セネリオは思ったことははっきり言う性格であることをアイクは知っているため、快く答えたのだと解釈する。
そしてアイクは仕事の疲れを癒し、明日に備えるべく自分の部屋へと向かっていったのだった。

―こうして戦士たちは明日を待ち、ある者は、新たな戦力を迎え入れたのであった。

第3話 運命の一夜

―翌日、PM11:30―
空中スタジアム。ここでは定期的に戦士たちが己の強さを競うための大会が行われ、それらを見に来る観客でにぎわう場所である。だが、この時間となっては観客は誰一人としていないし、このスタジアムを管理しているスタッフもいない。そこの入り口にマリオ、ルイージ、ピーチ、ヨッシーがいた。
空中スタジアムの入り口はマスターハンドが取り計らったのか開いている。
マリオ「ふぅ…やっと着いたな」
ルイージ「でも、少し早いんじゃない?」
ピーチ「まあ遅刻するよりはいいんじゃないかしら?」
ルイージ「う~ん…それはそうなんだけど…」
ヨッシー「それよりも早く入ろうよ」
そうして四人は中に入り、闘技場へと向かっていった。

闘技場には、すでに何人もの戦士たちが集まっていた。
ざっと見てみると、ワリオ、ワルイージ、ドンキー、ディディー、リンク、トゥーンリンク、ゼルダ、ピット、アイスクライマー、カービィ、メタナイト、キャプテン・ファルコン、サムス、フォックス、ファルコ、そして見たことのない青い狐の少女という面子だった。
マリオは近くにいたリンクに話しかける。
マリオ「よう、リンク。久しぶりだな」
リンク「マリオか。こちらこそ久しぶりだね。…ところで、クッパは連れてきていないのかい?」
マリオ「ああ。どうにも連絡がつかなくてな」
亜空事件の際、力を合わせて戦ったマリオとクッパの仲は良くなった……とまではいかないものの、いくらか改善されており、今回の集合にマリオはクッパを連れて行こうとしたのだが、全く連絡がつかず、諦めるしかなかった。
リンク「そうなのか。実は俺もガノンドロフを連れて行こうとしたけれど君と同じように連絡がつかなかったんだ」
すると、二人の会話を聞いていたのかメタナイトとカービィ、フォックスが割り込んできた。
メタナイト「実は陛下も今日は来ていないのだ」
カービィ「うん。今日は気分が悪いからいけないってさ~」
フォックス「俺も似たような物だよ。ウルフに『行かないか』と誘おうとしたけど何の返事もなくてさ」
マリオ「おいおい、どういうことだよ。嫌な予感がしてきたんだが……」
確かに、魔王やならず者と呼ばれるような奴らがみんな来ていないとなると、何か起こるのではないかと思うのも無理はない。

パン パン パン パン パン パン

突然、手をたたく音が響いてきた。この場にいる者たち全員が音の鳴った方へ目を向ける。
「意外に集まりがいいな、戦士諸君」
手をたたいた主は見たことのない男だった。赤いコートを着ていてつばが広い赤い帽子をかぶり、更に夜にも関わらず赤いサングラスをかけていた。
マリオ「誰だ、お前は!?」
その質問に男が答える。
「我が名はアーカード…」
男―アーカードは口の両端を持ち上げるようにして笑い、こう続けた。
アーカード「貴様らの『掃除』をしに来た」
ファルコ「させるかよっ!!」
アーカードから突然こみあげてきた殺気にいち早く気付いたファルコが、二丁ブラスターで攻撃する。
ブラスターから放たれるレーザーをアーカードは避けることもせずにくらっていた。
そのうちに帽子とサングラスが吹き飛び、黒い長髪と血のように赤い瞳があらわになる。

ファルコのブラスターの連射が止まると、アーカードはドウ、と仰向けに倒れた。
ゼルダ「まさか……もう終わり?」
ファルコ「でかい口をたたくのはもっと実力をつけてからにしな」
自分たちを『掃除』すると言っておきながら、何もしないうちにやられてしまうとはあまりにもあっけない幕切れだった。
メタナイト「しかし、なぜコイツは我々が今日、ここに集まることを知っていたのだ?」
その疑問に答えられる者はいなかった。疑問に対する答えを考えて、皆の意識がアーカードからそれた瞬間……
ダン!!

銃声が響いた。
戦士たちの足元にフィギュアとなったファルコが転がる。このメンバーの中にファルコ以外に銃を扱う者はフォックスぐらいしかいない。しかし、彼のブラスターはこのような大きな音は立てないし、味方に撃つこと自体あり得ない。考えられるのは……
アーカード「そのような攻撃では私を倒せはしないよ」
左手に巨大な黒い拳銃を構えたアーカードだった。どういうわけか、彼の周りを黒い霧のようなものが漂っていて、ブラスターで受けた傷が治ってきていた。
アーカード「腕の立つ奴らと聞いていたが……その程度か。やはり狗では私は倒せないか」
フォックス「おい!それはどういうことだ!?」
アーカード「貴様らはどういった理由でこの私と戦う?……理由などないだろう。貴様らはマスターハンドの狗となってここで指示を待っているだけにすぎない。戦いの意味が見出せないものは人間ではなく狗だ」
その言葉には侮蔑が込められていた。
リンク「待て!お前はマスターハンドを知っているのか!?」
だがアーカードは一方的に話を続ける。
アーカード「おしゃべりが過ぎたな。貴様らにこれ以上話すことはない。そろそろ終わらせるとしよう……」
「戦士諸君、遠路はるばる御苦労……」


ゆっくりと、アーカードは右手で懐から巨大な銀の拳銃を取り出す。


「……さようなら」
ダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダン!!

第4話 DEAD ZONE

アーカードの拳銃の連射を戦士たちは避ける。だが、素早く動けなかったピーチ、ヨッシー、ワリオ、ドンキー、リンク、ゼルダは銃弾をくらってフィギュアになってしまった。
フォックス「くっ…なんて威力だ!」
かつて戦士たちを一撃でフィギュアにした反則的な威力を持つ兵器、ダークキャノンを思い出す。
あの銀と黒の拳銃はそれと同等、あるいはそれ以上の威力を持っているというのか。
どうやら弾を撃ち尽くしたらしく、アーカードは両方の拳銃から弾倉を出し、新しいものに取り換え始めた。
その隙を狙い、
ワルイージ「なぁぁぁぁめぇぇぇぇるぅぅぅぅなぁぁぁぁ!!」
ワルイージが突っ込んでいった。彼はアーカードのところまであと数歩というところで大きくジャンプし、飛び蹴りを仕掛ける。だが、ワルイージの足が当たる直前にはアーカードはすでにリロードを終えていて……
ダン!!
アーカード「不意も打たず正面から仕掛けるとは…勇ましいことだ。だが愚か者だ」
ワルイージはフィギュアになってしまった。
ピット「させるか!!」
メタナイト「行くぞ!!」
トゥーンリンク「とりゃああ!!」
次にピット、メタナイト、トゥーンリンクがアーカードに斬りかかっていく。
アーカードは両手の拳銃で斬撃を防ぎ、ときには身を捻ってかわす。あの巨大な拳銃では至近距離の相手に当てるのは困難なのだろう。時折銃を撃つが、当たらない。
そうしているうちに三人の斬撃をかわしきることができず、体が切り裂かれていく。
ピットは神弓を分離させた双剣で諸手突きを放ち、アーカードの両肩を貫いた。
ピット「やったか…?」
……否、アーカードは笑いながら、銃口を突き付けてきた。慌てて神弓を引き抜こうとするものの、深く刺さっていて抜けない。
ピット「!?」
ダン!!
メタナイト「何!?」
トゥーンリンク「そんな…!」
二人が動揺した瞬間、アーカードはサッカーボールでも蹴るかの如く蹴りを放った。強烈な蹴りで、二人は吹き飛ばされてしまう。剣や盾で防御はしていたが、衝撃が強かったのか、二人はそのまま動かなくなってしまった。
アーカード「…あと十人」
両肩に刺さった神弓を引き抜きながら、平坦な声で戦士の残り人数を告げる。
信じられないことだった。二十人以上もいた歴戦の猛者たちが、瞬く間に半分以上倒されてしまったのだ。
……戦士たちは同じ考えを持ち始める。この男は危険だ。下手をすればタブーよりも強力な存在かもしれない、と。
ダン!!
今度はマリオに向けて銃弾が放たれた。
マリオ「喰らうかよっ!!」
マントを取り出して、それを跳ね返す。跳ね返された銃弾はアーカードの黒い拳銃に当たり、弾き飛ばされた。即座にアーカードは銀の拳銃で反撃しようと構えるが、アイスクライマー…ポポとナナの二人が掌から冷気を放つ。
ポポ&ナナ「ブリザード!!」
冷気はアーカードの右腕を包み、すぐに凍った。これでは銃の引き金は引けない。
続いてファルコンが足の速さを生かして急接近していく。ファルコンパンチをくらわせるべく、構えをとる。
ファルコン「ファルコン…」


対するアーカードは左腕を後ろに引き、掌を開き、貫手の構えをとる。


ファルコン「パンチ!!」
アーカード「ふんっ!!」
ファルコンパンチと貫手が衝突して、衝撃波が発生した。ファルコンパンチの威力を知る者ならば、誰もがファルコンの勝ちだと思っただろう。
……しかし、アーカードの貫手はファルコンパンチを力で捻じ伏せ、ファルコンを吹き飛ばした。ファルコンはフィギュアになり、運の悪いことに吹き飛ばされた方向にポポとナナがいて、激突してしまった。ポポとナナはフィギュアになりこそしなかったものの、受けたダメージが大きいのか、動かない。
アーカード「どうした!?この程度なのか?それとも貴様らは狗以下の存在か!?」

ドン!!

アーカードの挑発に応えるかのように突然爆発が起こった。爆発の中心にいたアーカードは体をよろけさせてしまう。
それはサムスのミサイルだった。

ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!

ミサイルは絶え間なく連射される。
ミサイルを何発も食らってアーカードは少しずつ後ろに吹き飛ばされていき、じわじわと足場の淵へ追いやられていく。ここは闘技場で、足場には柵のようなものは設けられていない。つまりここから落としさえすれば勝てる、そういうことだった。そしてアーカードは足場の淵に追いやられた。すぐ後ろは奈落の底。あと一発でもミサイルが当たれば落下させられるという状況だ。そこへサムスがミサイルを放つ。ミサイルはアーカードの顔面へ向かって飛んでいき……


ガキィッ!!


聞き慣れない音が響く。
アーカード「ふはあうぇら」
あろうことか、アーカードはミサイルを口で受け止めていたのだった。

第5話 絶体絶命

アーカードはミサイルを噛み砕き、ゆっくりと戦士たちのもとへ近づいていく。
だが、まだチャンスがなくなったわけではない。拳銃を持ったアーカードの右腕はまだ凍っているから丸腰も同然だ。彼が肉弾戦においても充分な強さを誇ることは分かったが、残りの者で一斉に攻撃を仕掛ければ多少の反撃をくらおうとも倒せる可能性はある。
マリオがファイア掌底の構えを取って走っていく。
ルイージが地獄突きをくらわせようと右腕を手前に引く。
ディディーがアーカードに跳びかかる。
サムスがアームキャノンで殴りつけるべく接近していく。
カービィがバーニングの能力を使うため助走をつける。
フォックスが渾身の蹴りをくらわせるべく近づいていく。
クリスタルがクリスタルスタッフを水平に構えて走って行く。
皆の全力の攻撃を叩き込めば―


戦士たちのミスは、味方を巻き込む危険性があったとはいえ、飛び道具を使える者までが接近戦に参加したことにあった。


ボン!!


爆発が起こった。
またもや、アーカードのいる場所から爆発したのだが、先程のミサイルとは違う。
アーカード自身が爆発したのだ。攻撃をしようとしていた戦士たちは残らず吹き飛ばされ、ほとんどの者がフィギュアになってしまった。
アーカードは爆発地点から少し離れた場所に立っていた。ミサイルなどで受けた傷は、少しずつ回復してきているようだ。凍っていた右腕も元通りになっている。
マリオ「ぐ…ぅ…」
マリオだけがフィギュアにならずに済んだものの、深刻なダメージを負っている。爆発して離れた場所に移動するという攻撃方法に見覚えがあったような気がしたが、考えている暇は無い。立ち上がる。立ち上がらなければいけない。他にまともに戦える者がいないのだから。
アーカード「…驚いたな。まだくたばっていないとは。だが満身創痍の体でどうする。どうするんだ?勝機はあるのか?千に一つか?万に一つか?億か?兆か?それとも京か?」
その言葉に、マリオはこう言い返す。
マリオ「それがどうした化け物。たとえ那由他の彼方でも俺には充分に過ぎる。能書き垂れてないで来いよ。かかってこい!HURRY!HURRY!!」
ぼろぼろの姿になっても闘志を失わないマリオ。そんな姿を見て、ヒュウ、とアーカードは口笛を吹いた。
アーカード「素晴らしい。どうやら貴様はただの狗ではないようだな。ならば私を倒せるかやってみようじゃないか」
自由になった右手で銃を向け、引き金を―

ドカッ!!

突如、青い球体がアーカードにぶつかった。
「HEY!マリオ!何こんな奴に手こずってんだ?」
マリオ「ソニック!来てくれたのか!」
マリオの窮地を救ったのはソニックだった。
ソニック「オレだけじゃないぜ。ほかのみんなも一緒さ」
ソニックは闘技場の入り口を指差す。見ると、スネーク、ポケモントレーナー、ピカチュウ、ルカリオ、プリン、リュカ、ネス、オリマー、ロボット、マルス、アイク、そして黒衣の少年―この場に来ていなかった残りの戦士たちが来ていた。
ソニック「さあ、まだまだこれからだぜ!?」
くるりと体を回転させ、ソニックは人差し指をアーカードに向ける。
アーカード「ククククク…やっと来たか。いいだろう。貴様ら全員を始末してやる」
戦闘を再開すべく、再び銃を構える。

…だが、アーカードの周囲、フィギュアになってしまった者や倒れて動けない者の真下の地面に突如、裂け目が現れた。裂け目の端の部分は赤いリボンのようなもので結ばれており、中には無数の目があった。そこにフィギュアとなった戦士たちが吸い込まれていく。
フィギュアたちがその中に消えていくと、裂け目は消えて、何もなくなってしまった。アーカードの仕業ではないらしく、彼も驚いた顔をしている。
ソニック「おい!これってどういうことだ!?」
だが、その疑問を考える暇もなく、今度はマリオやここに来たばかりの戦士たちの足元に裂け目が現れた。
ソニック「うわぁぁぁぁぁ…」
なすすべなく飲み込まれていって、瞬く間に裂け目は消えてしまった。


「くそっ!!またか!!」
アーカードしかいなくなった闘技場に苛立ちを含んだ声が響く。しかし、アーカードの声ではない。彼の頭の中に響いてくる声だ。
アーカード「まあいいだろう」
そう言いながら、アーカードは弾き飛ばされた黒い拳銃―ジャッカルを拾う。
アーカード「焦ることはない。いずれあいつらと再び戦う時は来るさ」
そう言って頭の中に響く声の主を落ち着かせる。
「…そうだな」
声の主は納得したようだ。アーカードは闘技場を出て行く。
アーカード「マリオか……次に会う時が楽しみだ」


―今度こそ闘技場には誰もいなくなり、その場を静寂が支配していった。

第6話 Go to chaos

「サムスや…おきなさい!サムスや…」
サムス「う~ん、なによ一体…?」
確かアーカードとかいう奴と戦って、フィギュアにされたところまでは覚えているんだけど…
そう思いつつ自分の名をやさしく呼ぶ声に反応して目を覚ましてみると…
中年太りのオッサンがいた。ボディスーツのようなぴっちりとした服を着ていて腹が膨らんでいるのがまるわかりで、その上にコートを羽織っている。なぜか宙に浮かんだ状態でいて、ハァハァと荒い息遣いをしている。怪しいことこの上ないが、他に誰もいないので、さっき声をかけたのはこの男しか考えられない。
サムス「あなた…誰?」
一応訊いてみる。
「わたしはあなたのパワードスーツの精です」
サムスは全力で逃げようとした。
パワードスーツ「ああッ!逃げないで!逃げないでッていうか引かないでッ!」
かろうじてパワードスーツの精が引き止めた。
パワードスーツ「今日はガンバル君にこのワタクシ、応援をしにまいりました。さあ、この精霊様になんでもいってみなさい」
サムス「…それじゃあ一つだけ聞きたいことがあるのだけれど、この場所から出る方法はないの?」
この場所とは、まるで子供の落書きのような山々が連なっていて、サンサンと太陽が照りつけている―もしこれが小説ではなく漫画だったら、「すごく…手抜きです…」というツッコミを待っているような背景になっている場所である。
パワードスーツ「…まーね」

サムスは ぜつぼうに うちひしがれた! サムスには たちあがる きりょくが ない!
サムスは めのまえが まっくらになった!

パワードスーツ「まッ、まちなさいッ、サムスッ!今のナシッ!ウソ!ノーカン!ノーカン!フィギュア化して寝てるだけだから!解除してもらえばちゃんと出られるから!!」
そう言われて、少しだけ落ち着きを取り戻す。
サムス「…本当よね?」
パワードスーツ「もちろんだよ。そんなことよりサムス、よくお聞き。寝ている場合じゃないのだよ。今、君たちにはゴイスー(スゴイ)なデンジャーが迫っているのだよ」
サムス「え!?」
パワードスーツ「さ、はやく起きなさい。みんなが待っていますよ」
サムス「ええ…」
そうしてサムスの意識は深い闇にのまれていった…。





「サムス…大丈夫でチュか?」
自分にかけられてくる声に再び目を覚ます。目を覚ますとそこにいたのはパワードスーツの精…ではなくピカチュウだった。
サムス「大丈夫よ。あなたがフィギュア化を解除してくれたの?」
ピカチュウ「うん。僕の他にもみんながフィギュアになっちゃった人たちを助けたんでチュよ」
サムス「そうなのね。ありがとう」
周りを見てみると、フィギュア化された他の戦士たちが解除されていっているのが目に入った。

しかし、ここは先ほど見た夢の風景とは違った意味で奇妙な空間だった。亜空間の中に似ているのだが、どこかが違う。中が真っ暗でろくに足場もあるのか分からない亜空間に対し、こちらは薄紫の空間で足場すらない……
いや、こうして立っているのだから見えないだけで足場はあるのだろう。


しばらくすると、マスターハンドがどこからともなく現れた。
マスターハンド「みんな……大丈夫か?」
戦士たちを代表してマリオが答える。
マリオ「ああ。大丈夫だ。それより、ここはどこなんだ?そもそも何が起こったんだ?」
マスターハンド「質問に答えたいところだが…実は私もここに来て間もないのだ。詳しくはこいつに聞いてくれ」
そう言うと、マスターハンドのそばに戦士たちを飲み込んだものと同じ裂け目が出てきた。
裂け目の中から、薄紫のワンピースを着て、奇妙な形をした帽子をかぶっている金髪のロングヘアの女性が出てくる。
「はじめまして、といったところね。私の名前は八雲 紫。紫と呼んでいいわ」
女性はそう自己紹介をする。
マリオ「じゃあ紫さん。まずはここがどういう場所で、どうして俺たちがここにいるのか教えてくれないか?」
紫「ここは普通の世界とは違う……亜空間みたいなものね。私は何もない場所に裂け目を作って別の場所に行くことができるのだけれど、別の場所へ行く際にこの空間を経由していくのよ。私はここを『スキマ』と呼んでいるわ」
突拍子のない話だが、先程の登場の仕方を見る限りでは、本当だと信じざるを得ない。
紫の話は続いていく。
紫「そして、あなたたちがアーカードとかいう男に全滅させられそうになっていたところを私がスキマの中に避難させて助けた、というわけよ。…マスターハンド、ここからはあなたが説明してくれないかしら?戦士たちに手紙を送った目的を…」
マスターハンドは分かった、と頷くと、こう話し始めた。
マスターハンド「結論から言おう。お前たちにタブーの復活を止めてほしい」


言っている意味がすぐに理解できず、しばし呆然となる。
ディディー「えっ……それってつまり……」
マスターハンド「タブーが復活しようとしているということだ」
一同「な、何だってーーーーーーーーー!!!!」

      
ざわ…

               ざわ…


戦士たちに動揺が生まれるが、
マスターハンド「落ち着け!!まずは話をよく聞け!!」
と一喝されて、落ち着きを取り戻した。
マスターハンド「まずどうしてそんなことが分かったのかというとだな……」
そう言って、タブー復活の危機を知ることになった理由を話し始めた……。

第7話 禁忌の継承者

マスターハンドはつい最近、“この世界”のとある場所で、小規模だが亜空間が発生しているのを見つけた。原因は分からない。何か手掛かりはないかと考え、亜空間の中に入ってみると、“この世界”とは異なる世界――いわば“もう一つの世界”に繋がっていたのだ。
そして“もう一つの世界”から、ごく微弱なものだが、タブーのようなものの存在が複数あるのを感じ取って、マスターハンドはこう考えた。
一年前の戦いで倒れたタブーには止めが刺されておらず、いくつかのエネルギー体に分裂して“もう一つの世界”に逃げ込んだのではないか。
そこでマスターハンドは今度こそタブーに止めを刺すべく、再び戦士たちを集め、“もう一つの世界”に向かわせようとしたのだ、と。
マスターハンド「だが、お前たちに手紙を送った直後に予想外の事態が起こったのだ……」


―1日前、亜空間にて―
マスターハンド「戦士たちに手紙は送った…あとは明日の深夜に空中スタジアムに行って、戦士たちをここに連れて行くだけだな」
「ククククク…聞いたぞ、マスターハンド」
突如、笑い声がしてきた。声のする方向を向くと、赤いコートを着た男―アーカードがいた。
マスターハンド「誰だ、貴様は!?」
アーカード「私は『禁忌の継承者』―」
アーカードがしゃべり終わる前に、マスターハンドは素早くアーカードの体をつかむ。
マスターハンド「禁忌の継承者?どういうことか説明してもらおうか。さもなくばお前を握りつぶす」
だが、アーカードは笑い顔を浮かべていて答えようとしない。
アーカード「甘いな、マスターハンド」


ボン!!


マスターハンド「ぐわぁ!!」
アーカードの体が爆発した。ゼロ距離で爆発をくらったマスターハンドは大きなダメージを受けてしまう。
アーカード「これが禁忌の能力か。素晴らしい。もっとも、握りつぶされる程度では吸血鬼を倒せはしないがね」
マスターハンド「禁忌の能力……?吸血…鬼……?どういうことだ……?」
アーカード「どうせ貴様はここで死ぬのだから教えてやろう。私はロンドンでタブーと名乗る存在と出会った。奴はこう言った。『私の復活の手助けをしてほしい。私の力の一部をお前に分けてやるから、まずはマスターハンドとそいつの狗どもを始末してほしい』とな」
マスターハンド「なぜお前が……そんな事をする……?」
アーカード「理由など無い。私はただ強い奴との戦いを望むだけだからな。……さて、そろそろ終わりにしようか。最後に貴様のミスを二つ教えてやろう。一つは私以外にもタブーの能力の一部を得て“この世界”に向かっている者がいるということ。もう一つはタブーのエネルギーは私の住む世界だけでなく“この世界”にも複数に分散して『禁忌の継承者』を増やしているということだ」
アーカードはそう言いながら両手に銃を構えて狙いをつける。
だがその瞬間、地面に裂け目が現れ、マスターハンドはそこに吸い込まれていった。
「何っ!?どういうことだ!?」
アーカードの頭の中に響く声――タブーが驚きの声を上げる。
アーカード「さあな。だが気にするほどでもあるまい。それに奴の狗どもがどこに集まるのか聞けたのは収穫だ」
すでにアーカードはマスターハンドへの興味は失っているらしく、亜空間の出口に向かって歩き出した。


やがて出口が見えて、亜空間から出て行こうとしたときにタブーはこう言った。
タブー「では……あの者たちの殲滅は頼んだぞ」
アーカード「了解した……」
笑い顔を浮かべながらアーカードはそう答えた。





スネーク「…つまり、アーカードのように“もう一つの世界”から“この世界”に来ている奴らがいて、更に“この世界”からもタブーを復活させようとしている奴らが出てきている。そしてそいつらは『禁忌の継承者』を名乗っている、そういうことだな?」
スネークが確認するようにそう言うと、マスターハンドがそうだ、と頷いた。
マリオ「ひょっとして、今日、空中スタジアムに来なかったクッパやガノンにデデデ、ウルフが“この世界”に現れた『禁忌の継承者』だっていうのか?」
紫がマリオの疑問に答える。
紫「おそらくそうでしょうね。タブーは亜空間から“この世界”へ出られないはずなのに、どうやってその人たちに近付いたのかは疑問だけど…ともかく、その人たちはタブーの危険性を知っているでしょうから、洗脳でもされて、操られているんじゃないかと思うわ」
そう紫が話している最中に、誰かがボソリと
「そういえばMr.ゲーム&ウォッチもいないよね…」
と言った。


……しばしの沈黙の後、
一同「な、何だってーーーーーーーーー!!!!」
戦士たち、二度目の絶叫。
マスターハンド「落ち着け!!」
そしてマスターハンドの二度目の喝。
マスターハンド「しかし、思ったより深刻な事態になってきているな……。ゲームウォッチからは影虫が作れるから、すでに誰かが捕まえて、さっそく作り出しているのかもしれん……」
マスターハンドがブツブツと話し始めたところをセネリオが止める。
セネリオ「……ちょっといいですか。一つだけ納得がいかないことがあります。タブーは誰かの体に乗り移っているんですよね?そのままではタブーは誰かの体を操ることで間接的に行動することはできても、復活はできない。…しかし、マスターハンド。貴方は『タブーの復活を止めてほしい』と言いました。どういうことなんですか?」
その疑問にはマスターハンドの代わりに紫が答えた。
紫「これは私の仮説なのだけれど、タブーは『禁忌の継承者』――長いから『継承者』と呼ぶわね――同士を引き合わせようとしているんじゃないのかしら。そして『継承者』たちが集まったところで体からタブーのエネルギーを取り出して一か所に集めて、タブーを復活させるんじゃないのかと思うの。そして、ゲームウォッチがさらわれたということは、あらかじめ『継承者』の一人に大量の影虫でも作らせておいて、復活した後に世界征服をやりやすくするんじゃないのかと思うわ」
マスターハンド「だが、アーカードの話から察するに、『継承者』が現れたのはつい最近のようだ。おそらく『継承者』たちが集まるのはこれからだろう」


そしてマスターハンドは一息ついてこう続けた。
マスターハンド「そこで、お前たちがやるべきことは主に二つだ。一つ目は“この世界”に現れた『継承者』たちを倒して眼を覚まさせてやること。二つ目は“もう一つの世界”から来た『継承者』たちへの迎撃だ」
マリオ「それは分かったが、いったいどうすりゃいいんだ?クッパやガノンたちのところに行くまでに時間がかかっちまうぞ。それに、“もうひとつの世界”から来た継承者たちの居場所は分かるのか?」
確かに、継承者たちが集まってタブーを復活させようというのなら、これは時間との戦いになる。しかし、“この世界”に現れた継承者だと思われるクッパやガノンたちがいると思われる場所――クッパならクッパ城、ガノンならガノン城といったところだ――に徒歩で行くには時間がかかってしまう。そもそも、“もう一つの世界”から来た継承者たちを探すというのは困難なことだと思われる。
しかし、それの解決策を紫が言った。
紫「あら、私がどうやってあなたたちをスキマに送ってきたのかを忘れたのかしら?私は離れた場所に一瞬で移動することができるのよ。それに、マスターハンドはタブーの存在を感知できるのだから、“もう一つの世界”から来た継承者たちがどこにいるのかも特定できるわ。行くべき場所さえ決まっていれば、あとは私の能力を使ってあなたたちを送って行ってあげるわよ」
マスターハンド「今、私が感知できるタブーのエネルギーは七つ。今日来なかったクッパ、ガノンドロフ、デデデ、ウルフが“この世界”に現れた継承者だとするならば、“もう一つの世界”から来た継承者の数はアーカードを含めて三人だ。……だが、アーカードはタブーからワープする能力を授かっているだろうから、居場所を特定するのは難しい。ひとまず、アーカードは後回しにして、六つのグループに分かれて継承者たちを止めていって欲しい」
マリオ「分かった。じゃあ、これからグループ分けをしてくるから、ちょっと待っててくれ」
しかし、グループ分けを始めようとするマリオを紫が止める。
紫「でも、ひとつだけお願いがあるわ。“もう一つの世界”から来た継承者の中の一人は、私が住んでいる場所――『幻想郷』といって“もう一つの世界”の中でもとりわけ特殊な場所なんだけど――から出てきた子なの。その子は数々の強力な飛び道具を使ってくるから、グループの一つは間接攻撃が得意な人たちで固めて。でも、私の知り合いを二人そちらのグループに参加させるから人数は数人程度で問題ないわ」
マリオは分かった、と頷くと率先してグループ分けを始めた。


しばらくして、グループの内訳が決まった。
クッパの所に行くのはマリオ、ルイージ、ピーチ、ヨッシー、アイスクライマー、ソニック、ガノンドロフの所へはリンク、トゥーンリンク、ゼルダ、マルス、アイク、ドンキー、ディディー、デデデの所にはカービィ、メタナイト、ピカチュウ、ルカリオ、プリン、ネス、リュカ、ウルフの所にはフォックス、ファルコ、クリスタル、オリマー、ロボット、紫がリクエストした間接攻撃が得意なチームにはサムス、ピット、セネリオ、そしてまだ見ぬ“もう一つの世界”から来た継承者の所へはスネーク、ワリオ、ワルイージ、ファルコン、ポケモントレーナーが行くこととなった。


マスターハンド「どうやら決まったようだな。継承者たちを倒したらまた空中スタジアムに来てくれ。だが、お前らに一つだけ忠告しておこう。奴らはアーカードのワープする能力と同様に、タブーが使っていた能力の一部を持っているに違いない。おそらく一筋縄ではいかないだろう。十分に注意するんだ」
マスターハンドのその言葉を聞いた後、戦士たちは紫が作り出した裂け目に入って消えていった。


――こうして、戦士たちの新たな戦いは幕を開けた。

第8話 K.N王国の姫は怒っているのか?最終鬼畜姫・P

※ピーチのキャラが激しく崩壊しています。要注意。

ソニック「Oh!クッパはこんなたいそうな城に住んでいるのか?」
紫にクッパ城の城門前まで送ってもらったマリオ、ルイージ、ピーチ、ヨッシー、アイスクライマー、ソニックたちの中で、彼が開口一番にそう言った。
ピーチ「ええ。…まあ、私はいつもここへさらわれているから、あまりいい思い出は無いのだけれど…」
そう答えるピーチに、ポポとナナの二人は苦笑した。
ポポ「じゃあ、こっちから攻めるということは珍しいね」
ナナ「うん。そうだね」

そう話していると、「ここで何をやっているんだ!!」と怒鳴り声が聞こえてきた。声がした方を見てみると、城の入り口にはハンマーブロスが二人いた。おそらく門番なのだろう。マリオが彼らに近付いていって訳を話す。
マリオ「実はクッパに用事があるんだ。通してもらえるか?」
しかし、ハンマーブロスたちは
「断る!クッパ様はこれからとある場所へ行くと仰っているのだ!お前らの相手をしている暇は無い!」
と言って通そうとしない。
その言葉を聞いてルイージは
ルイージ「クッパがそうするのを止めに来たんだけどね……」
と、ボソッとつぶやいた。
そうこうしている内に、ヨッシーが「しょうがないなぁ…」とか言いながら、ハンマーブロスたちのもとへゆっくりと近づいて行った。距離にして大体2,3メートルといったところか。そこで立ち止まってチロリと舌をのぞかせる。…余談だが、ヨッシーの舌は軽く数メートルは伸びるという代物である。


10秒後。
ハンマーブロスたちの姿は消えて、代わりに白地に緑の水玉模様が浮かんだ巨大な卵が二個あった。
ヨッシーの交渉のおかげでハンマーブロスたちはおとなしくなり、通そうとしなかったお詫びとして卵をくれたのである(だいたいあってる)。
さて、門番との押し問答は穏便に(?)解決したものの、城内ではそうもいかないだろう。クッパ城の兵士たちとの一悶着を想像してマリオたちは憂鬱な気分に……と思いきや、不敵な笑みを浮かべる者が一人。
ピーチ「フ、フフフフフ……」
マリオ「ピ、ピーチ姫……?いったい何が……?」
ピーチ「だって今まで何回もさらわれた落とし前をようやくつけさせることができるのよ?これが笑わずにいられるかしら?」
何やら一波乱起こりそうである。





実際起こった。
城内のロビーにてクリボーの集団と遭遇したのだが、以下がその際に起こったやり取りである。

クリボー「あ!お前らはマリオたち!!しかもピーチ姫までいるとは。俺たちはなんてラッキーなんだ。お前らを倒してピーチ姫を連れていけばクッパ様もさぞかしお喜びになるに違いない!!」
ピーチ「ク…クク…クックックックックックックックッ」
クリボー「な…何がおかしい!!」
ピーチ「お前たちはただ歩くことしかできず踏まれてやられるだけのザコ敵で、私たちはそういう奴らを幾度となく倒してきた。踏まれるだけのキノコがキノコ狩りを前にして『ラッキー』とは…笑える冗談だ売国奴。その頭にしっかりと足跡を刻みつけてもらうがいい」


数分後。
ピーチ「さあ、さっさと行きましょうか♪」
さっきのおかしな口調はどこへやら、今はすがすがとした表情で足取り軽く城の奥へ向かおうとしていた。
一方、ガタガタと恐怖で身を震わせている者が二人。ポポとナナである。
ポポ「さ…さっきのは何だったの!?」
ナナ「ねえ、マリオ。ピーチ姫ってああいう性格だったの…!?」
二人の目線の先にある者は、ピーチにやられたクリボーたちである。彼らの頭には文字通り足跡が刻みつけられている。それだけならばまだ良い方で、フライパンやテニスラケットで殴られたり、カブを投げつけられたりしていて、「ひでぶ」や「あべし」といったセリフが似合いそうな顔になっているクリボーも何匹かいた。
マリオ「い、いや…おれも初めて見た。だけどあれはストレスがたまっていたとかキノコ王国を裏切ったクリボーへの制裁だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてないな。…もっと恐ろしい物の片鱗を味わったぜ…」
ソニック「(結構crazyなお姫様だったんだな……)と、とにかく、早くクッパの所に行こうぜ?」
そうして、一行は城の奥へ向かった。
クッパ城の兵士たちとの交戦はこの後も何回か起こったが、マリオとルイージのファイアボール、アイスクライマーのハンマー、ソニックの足の速さを活かした体当たり、ヨッシーの舌、そして本気を出したピーチたちに敵うものはいなかったそうな。

おお、こわいこわい。

第9話 VSクッパ

ドォン!!
爆音とともに、玉座の間の扉が壊された。ピーチボンバーの爆風によるものである。
「フン、ようやく来たか…」
玉座に座っているこの城の主――クッパがそう声を上げる。
マリオ「クッパ、いきなりで悪いが、お前はタブーに洗脳されてるんだろ?こう言うだけ無駄だとは思うが、一応聞いておくぜ。お前の体に宿っているタブーのエネルギー体をこっちに渡してくれないか?そうすれば手荒なまねはしない」
だが、予想通りの反応と言うべきか、クッパはフンと鼻で笑いながらこう答えた。
クッパ「渡す?渡すだと!?なめるなよジャンプ野郎。我々カメ一族が、お前らの言うことを大人しく聞くとでも…」
そう言いながら、立ち上がり、両腕を左右に広げる。
クッパ「思うかァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

バシュン!!

ルイージ「うおッまぶしッ!!」
突然クッパの体から光が放たれたことにより、一行は思わず目をつぶってしまう。
そして目を開けてみると、ピーチがフィギュア化していた。さらに、クッパは両腕にダークキャノンのような形をしたものを持っている。
マリオ「お前の能力は…まさか!」
クッパ「そうだ!!我が輩が禁忌よりもらいし能力は『ダークキャノンを作り出し撃つ能力』だ!!分かったか?それならばこちらから行くぞぉ!!」

バシュン!!バシュン!!バシュン!!バシュン!!バシュン!!バシュン!!

次々とレーザーが放たれるが、
ソニック「へッ!こんなものがオレ達に当たるかよっ!!」
その言葉通り、レーザーは当たる気配がない。ソニックは持ち前のスピードで難なくかわし、マリオやルイージ、ヨッシー、アイスクライマーもうまくジャンプを使ったりしてかわしている。
確かにダークキャノンの威力は脅威だが、連射速度が遅いという欠点をもっており、レーザーの動きも直線的でしかないため、撃ってくるタイミングをつかめれば避けること自体はそう難しくはない。そのため、メインの武器として使うよりは狙撃や不意打ちに使う方が実用的な武器だったりする。
クッパ「くそっ!!使えぬ能力だ!!」
それを悟ったのか、クッパはダークキャノンを使うのを止め、ソニックに向かって走り出した。
ソニック「遅すぎだぜ?カメのおっさん!」
対するソニックは体を丸めてその場で高速回転をして力をため始める。


クッパがあと十メートルの距離まで近づいてきた。

…まだだ。

あと九メートル。

まだだ。まだ早い。

あと八メートル。

まだだ。

七メートル。

…もう少しだ。

六メートル。

もう少し…。

五メートル。

今だ!!

ソニックは体を高速で回転させながら、体当たりを仕掛ける。
クッパ「ぐわっ!」
勢いをつけて走っていたクッパは、それをかわすことができずに腹からくらってしまう。ソニックは体当たりをしながら軽くジャンプをし、クッパを上空に打ち上げる。重いので、それほど高く飛んだわけではないが、この場からジャンプして追い打ちをかけるのには十分。そう思って、ジャンプをして真上にいるクッパの顔面に蹴りを入れようとしたが、

ガシッ

ソニック「何っ!?」
蹴りを入れようとした右足をクッパの左手が掴む。即座に左拳を顔面に当てようとしたが、それはクッパの右手に掴まれてしまった。クッパはソニックの体を掴んで自分の体の下に固定させて、地面に叩きつけようとする。――ダイビングブレスだ。
クッパ「フン、貴様もこれで終しまいだな…」
ソニックの目には急速に近づいてくる地面が見える。クッパの全体重を乗せて地面に叩きつけられる衝撃は半端なものではない。

マズイ!!

そう思った瞬間――

カキィン!!

クッパ「ぐわぁ!!」
何やら小気味良い音が響いて、クッパの悲鳴と同時に、さっきまで近づいていた地面が今度は遠ざかっていく。近くにルイージがいたので、ファイアジャンプパンチを当てたということが分かった。
攻撃をくらって握力の弱まったクッパの手をほどき、着地する。
ソニック「Thank you.ルイージ。さっきのはちょっとヤバかったぜ」
ルイージ「いや、タイミングが合ってよかったよ…」
会話を交わす中、打ち上げられたクッパはゆっくりと落下していく。
そこへ、ヨッシーがふんばりジャンプをしてクッパに接近し、右足でクッパの頭を蹴る。その直後に左足で蹴り、再び右足で、そしてまた左足で、と素早く左右の足で交互に蹴る。空中の敵に対して絶大な効果を誇る技、バタ足キックだ。
クッパ「ぐおおおお!!我が輩が!タブーの能力を得た我が輩が!!こんな所でくたばるというのか!!」
地面に落下して悔しがるクッパの所へ、マリオが近付いていく。
マリオ「ま、そういうことだ。だから言ったじゃないか。大人しくタブーのエネルギー体を渡せば手荒なまねはしないってな」
クッパ「認めるか!認めるものかぁ!!!」
そう言いながら、マリオに向かって爪を振りおろそうとする。
マリオ「仕方ないな。ちょっと大人しくしてもらうぜ」
マリオはファイア掌底をクッパの腹に叩きこんだ。
それをくらったクッパは力尽き、フィギュアになった。すると、クッパの体から青い光を放つ球体が出てきた。
ルイージにフィギュア化を解除してもらったピーチが口を開く。
ピーチ「これがタブーのエネルギー体なのかしら?」
ポポ「だったらこれは壊した方がいいよね…えいっ!!」
そう言って木づちで球体を叩くものの、それに傷はつかなかった。
マリオ「これってどういうことだ?」
この後、各々が青い球体に攻撃をしたものの、壊すことはできなかった。
ヨッシー「困ったね……。どうしよう?」
ナナ「とりあえずマスターハンドの所にこれを持って行った方がいいんじゃないかな?このままにしておくのもまずいだろうし」
マリオ「じゃあこれは俺が持とうか。……それと、今回の一件の関係者としてクッパも連れて行かないとな」
そう言って、フィギュア化したクッパを元に戻す。
クッパ「う~ん……マリオか?どうしてお前がここにいるのだ?」
マリオ「記憶が無いのか……仕方ないな。実は――」


髭男説明中…


マリオから禁忌の継承者の話を聞いたクッパはうなり声をあげる。
クッパ「うぅ~む……こうなったら我が輩も協力せざるを得ないな。よし、お前たちについていこう」
マリオ「まぁ、たとえ嫌だと言っても無理やり連れて行くけどな」
ついさっきマリオが考えていたことをクッパがそのまま言ったので、そう突っ込んで苦笑する。


こうして、マリオ一行はクッパを新たに加えて、空中スタジアムへと向かったのだった。


―おまけ?
ピーチ「あ、そう言えばクッパ?」
クッパ「む、…な、何だ?(嫌な予感がする…)」
ピーチ「今まで散々さらったあげく、今回はいきなりフィギュアにしちゃってくれたわよね?この落とし前は兆倍にして返してもらおうかしら♪」


……その後、クッパは再びフィギュア化されるまでピーチ姫にボコられたそうな。
……嗚呼、Amen.(生きてます)

第10話 G

リンク、ゼルダ、トゥーンリンク、ドンキー、ディディー、マルス、アイクの七人はガノン城の前にいた。
ドンキー「ここがガノンドロフの住む城か…」
マルス「僕が言うのもなんだけど、これは立派な造りになっているね」
ディディー「ああ、そう言えばマルスって王子だったんだね」
アイク「…誰か来るぞ」
その言葉とともに、城の入り口となる扉が開いた。その中から人影が現れてこちらに近付いてくる。
入口からリンク一行がいる場所までは結構な距離があるため、人影が誰かはすぐには判別できなかったが、やがて、それがガノンドロフであることが分かる。
ガノン「タブーの言ったとおりだな…。よもや、こんなにも早く来るとは」
ゼルダ「ガノン、一度だけ聞くわ。タブーのエネルギー体を渡してくれないかしら?」
だが、ガノンドロフはその頼みを一蹴する。
ガノン「それは無理な相談だな。私自身、いずれは世界を征服することを考えている。タブーと手を組んだのも利害が一致しているにすぎないのだからな」
トゥーンリンク「それは違うよガノンドロフ。利害が一致しているとかじゃなくて操られているに過ぎないんだ」
その反論に、ガノンはやれやれといったように首を左右に振って溜息をついた。
ガノン「どうやらお互いに分かり合えないようだな。仕方ない。相手をしてやろう…と言いたいところだが、実はつい最近コイツを作り直したのでな、実験台になってもらおう」
そう言いながら指をパチン、と鳴らす。

ズドォン!!

突如、上空から巨大な物体が落下してきた。それによって土煙が立ち込めるが、それが晴れてくると、見覚えのある巨大なロボットが立っていた。
アイク「こいつは…!」
マルス「ガレオム!まさか作り直していたなんて…」
そのロボットこそ、かつて亜空軍の主力兵器であったガレオムだった。
ガノン「せいぜい頑張ることだな。では、私は城の中に戻っているとしよう」
リンク「待て!!」
そう言って追いかけようとするものの、ガレオムが右拳をリンクに向かって振りおろしてきた。
ガノンに気を取られていたため、かわせない。それに、あの巨大な拳を盾で防御することは不可能だ。
食らうのを覚悟した瞬間、
アイク「甘い!!」
アイクが割り込んで拳を剣で受け流し、カウンターをした。右手に傷がついたガレオムは腕を引っ込める。だが、そこへトゥーンリンクが追撃に爆弾を投げつける。
爆弾は先ほど攻撃を受けた右腕に当たり、ショートしたのか青い火花が散る。
リンク「すまない、アイク…」
アイク「いや、いいんだ。それより二手に分かれないか?俺がコイツの相手をする。あんたらは城の中に入ってガノンを追いかけてくれ」
ガレオムは怒りのこもった眼で――機械に感情があるのかは分からないが――アイクとトゥーンリンクを睨みつける。
ドンキー「じゃあ俺はこいつの相手をするぜ。でかいやつと戦う方が性に合ってる」
リンク「それなら俺とゼルダ、マルス、ディディーでガノンを倒しに行く。…やられるなよ」
ゼルダ「お気をつけて」
マルス「一度倒した奴に後れを取ることはないと思うけど、油断はしないようにね」
ディディー「ドンキー、頑張ってよ!!」
四人はそう言うと、ガノン城に向かって走り出した。
ガレオムはというと、単に気を取られていたのか、それとも城の中に入れられたら追いかけることができないと分かっているのか、アイク、トゥーンリンク、ドンキーを睨みつけたままで四人を追いかけようとはしなかった。
アイク「…覚悟しろ」
それが戦闘開始の合図だった。ガレオムが肩からミサイルを発射する。
トゥーンリンク「うわっと!!…危なかった」
三人は後方に下がることでかわす。
だが、ガレオムは今度は片足立ちをして、ものすごい速さで回転を始めた。
ドンキー「くっ…吸い寄せられる…」
高速での回転は小規模ながら竜巻を起こし、三人を吸い寄せていく。
だが、アイクとトゥーンリンクはあえてガレオムに向かって走り出した。
吸い寄せられる勢いを逆に利用して一気に距離を縮める。
アイク「ふんっ!!」
トゥーンリンク「でやぁっ!!」
二人は剣をガレオムの脚に叩きつける。大した傷は付けられなかったものの、片足立ちをしていたガレオムはバランスを崩し、横向きに倒れかけてしまう。
だが、さすがは亜空軍の元主力兵器というべきか、倒れそうになりながらも右フックをトゥーンリンクに仕掛ける。しかし、そこにドンキーが割り込み、ジャイアントパンチをその拳にぶつける。
ドンキー「おらぁ!!」
ガレオムのパンチを弾き飛ばし、それによって完全にバランスを失ったガレオムは

ドォン!!

と地響きを立てて倒れた。
トゥーンリンク「まったく…無茶をするよ」
バランスを崩して力が十分に出ていない状態であったとはいえ、あのパンチを弾き飛ばすとなると、ドンキーの腕力は侮れない。
ドンキー「まっ、無事だったんだから良いだろ?」
ニカッと歯を見せて笑う。
アイク「これで終わりにするぞ」
アイクはそう言って倒れたガレオムの頭部に近付いていく。
人型のロボットというものは、大体は人間を意識して動力部を心臓や頭部に当たる部分に持っている。
だからそこを攻撃すれば倒せる。
ガレオムは立ちあがろうとしているが、もう遅い。
アイク「天――」
アイクはラグネルを空高く放り投げ、自分自身もジャンプする。
そしてラグネルを空中でキャッチし、縦に体を何回も回転させる。
アイクから見てガレオムの頭はちょうど真下にある。
そこへ自分の全体重と、回転して落下する勢いを上乗せした斬撃を放つ。
アイク「空!!」
それを受けたガレオムの頭は割れ、動かなくなった。
地面に着地したアイクの所へ、トゥーンリンクとドンキーが向かってくる。
トゥーンリンク「すごいね、アイク!!」
ドンキー「やるもんだな」
という賛辞に対し、
アイク「いや、ここまで上手くいったのはあんたらのおかげだ。俺一人だったらこうはいかなかっただろう」
と言った。そしてアイクはこう言い続ける。
アイク「それよりも、俺たちも城の中に入ろう。あいつらが心配だ」

こうして、三人もまたガノン城の中へ入って行ったのであった。

第11話 SWORD DANCER

ガノン「ほう…もう来たのか。まあ、二手に分かれたならば当然か」
ここはガノン城のホール。ガノンは外にいる戦士たちをガレオムに任せて自室へ引き上げようとしていたが、そこにリンク、ゼルダ、マルス、ディディーが駆けつけてきて、そうつぶやく。
リンク「ガノン!もう一度だけ聞く!本当にタブーのエネルギー体を渡す気は無いんだな!?」
ガノン「いったい何度言わせれば気が済むんだ。そうするつもりは毛頭ない」
ゼルダ「やっぱりやるしかないのね…!」
マルス「力ずくはあまり好きじゃないけど…仕方ないね」
ディディー「この…ガノンの分からず屋っ!!」
リンクはマスターソードと盾、マルスはファルシオン、ディディーはピーナッツポップガンを構え、ゼルダは魔力を腕に込める。

ガノン「では、始めようか」
ガノンは走り出して、最も近くにいたリンクにショルダータックルを仕掛ける。
リンク「ぐっ!!」
それをリンクは盾で防いだが、衝撃が腕に伝わり、顔をしかめる。それで隙ができるのをガノンは見逃さない。そこから足払いをかけ、転ばせる。仰向けに倒れたリンクに対して、右足を真上に上げる。

ズドン!!

リンクが体を右に転がすのと、ガノンの踵が地面に衝突するのは同時だった。
踵落としが当たった床には亀裂が入っている。
リンク「危なかった…」
そう言いながらリンクは立ち上がる。
その間に、さっきまで攻めていたガノンは今度は防衛戦を展開していた。
ゼルダがディンの炎を放ち、ディディーがピーナッツポップガンを撃っているからである。
ガノンは飛んでくる落花生を手で撃ち落とし、向かってくる炎の球体を避ける。
遠距離戦はガノンの苦手分野で、このままいけばいずれは押し切れるかと思ったが、彼は笑いながらこう言った。
ガノン「少し面倒だな。では、こうしようか」
ガノンの右手が光り出し、鎖のようなものが現れる。ガノンはそれを左右に振り回した。
ゼルダ「きゃあ!?」
ディディー「うわぁ!?」
二人がそれに絡めとられ、振り回される。
ガノン「フフフフフ…これが私がタブーから得た能力だ」
ガノンは鎖を自分の方へ引っ張る。
鎖に巻きつかれていたゼルダとディディーには成す術が無く、ガノンのもとへ引き寄せられていく。
ガノン「ハァッ!!」
そこへガノンは魔人拳をくり出し、それをもろにくらった二人はフィギュアになってしまった。
ガノン「さて、邪魔者がいなくなったところで、続きをしようか…」
そう言いながら、今度は身の丈ほどの大きさがある両手剣を取り出してきた。
マルス「まさか、剣も使えるというのか!?」
リンク「ああ。俺は以前、あいつと剣で戦ったことがあるが…一撃が重いぞ。気をつけろ」
ガノン「お喋りはもういいな?では…」
ガノンは剣を水平に倒し、切っ先を前方へ向ける。…突きの構えだ。


ガノン「…行くぞ」

普段からは想像も出来ないような速さで走りだす。
ガノンとリンク達の距離はおおよそ十歩ほどといったところだが、その距離はあっという間に詰まり、マルスに向かって突きを放つ。
マルス「くっ!」
それを身を捻ってかわす。だが、ガノンはそこから剣を横に払って斬りかかる。

ガキィン!!

ガノンの剣とマルスのファルシオンがぶつかり合う音がする。
マルス「(なんて重さだ…!アイク以上か…!?)」
マルスはそれを受け止めるのが精一杯だった。少しでも剣を握る腕の力が弱くなれば、斬られる。
反撃をすることもままならず、状況は不利だった。……一人で戦っていたならば。
リンク「はあっ!!」
リンクがガノンに斬りかかる。
ガノンはそれを避けるが、それによって鍔迫り合いをしていたマルスとも距離をとることとなってしまった。
ガノン「なるほど…良いコンビネーションだ」
そのように感心した素振りを見せつつも、マルスに向かって今度は下から上へと剣を切り上げる。
複数の相手に分散して攻撃するより、まずは同じ相手を集中攻撃して倒すというのは多人数と戦う際の定石だ。
…だが、今回はその定石が裏目に出ることとなる。
マルスは下から迫ってくる剣をファルシオンで受け流して勢いを殺す。
マルス「させるものか!!」
隙だらけになったガノンにカウンターをくらわせる。それほどダメージを与えられたわけではないが、戦いで重要なのはこちらのペースに持っていくこと。これからが本番だ。

マルス「ふんっ!」

まず袈裟斬りを仕掛ける。

マルス「ふんっ!」

そこから突きへ。

マルス「はっ!」

そして切り上げ。

マルス「はあっ!!」

最後に振り下ろす。マルスの得意技、マーベラスコンビネーションだ。
ガノン「が…はっ……」
剣の連撃をくらい、ガノンはよろける。
リンク「これで終わりだ!ガノンドロフ!!」

ザシュッ!!

リンクが止めの剣を見舞い、ガノンはフィギュアになった。
すると、青い球体がフィギュア化したガノンの体から出て来た。
リンク「これがタブーのエネルギー体か…」



その後、リンク達の後を追いかけてきたアイク、トゥーンリンク、ドンキーがやってきて、フィギュアとなっていたゼルダ、ディディー、そしてガノンドロフを元に戻した。
ガノンはここ最近の記憶が曖昧だと言う。どうやら本当に洗脳されていたようだ。
リンクはなぜここに来たのか、そして『禁忌の継承者』のことについて話をした。


ガノン「ふむ……どうやら大変なことになっているようだな」
ゼルダ「そうよ。だからガノン、あなたも今回の戦いの関係者として、マスターハンドのいる空中スタジアムに行った方がいいと思うのだけど……」
その提案に、ガノンは首を縦に振った。
ガノン「いいだろう。タブーに“この世界”をくれてやるわけにはいかない。その為に一時的にだが、再びお前たちと共闘すると誓おう」
ディディー「よし、それじゃあこれを持って早く行こうよ!!」


ディディーがエネルギー体を手の中に握りながら明るくそう言うと、皆はガノン城を後にした。