スマブラ個人小説/なしぃの小説/亜空の使者

Last-modified: 2010-01-27 (水) 17:44:00

紹介

「亜空の使者」のノベライズです。
一話、二話は1年と半年前に描いたものなのでかなり文章が現在と違います。

第一話

「おかしい………」
 
森の中。
切り株にこしかけ、緑色の衣に黄色の髪の毛という珍しい青年は呟いた。
膝の上には綺麗な装飾が施された剣が一本乗っている。
 
青年の足に立てかけられた盾には奇妙な模様が描かれていた。
真っ直ぐなにごりの無い瞳を持つその青年は…時の勇者「リンク」そのものであることに違いは無いだろう。
 
 
剣を鞘に収め、それを革のベルトで背中にくくりつけリンクは立ち上がった。
盾を背中に収容し、青い空を仰ぐ。
 
彼は感づいていた。
理屈でもなんでもない。ただ彼の第六感はうめき声を上げ必死にそれを伝えようとしているのだ。
 
「この世界」に危険が近づいていることを…。
 
 
 
空中スタジアム。
仰げば青空が顔をのぞかせるスタジアム。
 
ほぼ満員に観客が押し寄せたここで、今まさに試合が行われようとしていた。
 
「さあ!かかって来い!」
 
赤い帽子にオーバーオール。
「この世界」の古巣、マリオだ。
 
反対側で構えているのはピンク色でぷにょぷにょした体。
こちらも古巣のカービィだ。
 
『カーン!』
 
ゴングが鳴る。
観客は一気に沸きあがる。
二人はほぼ同時に、飛び掛っていた。

第二話

カランッカラン───────
空しい音と共にフィギュア化するカービィ。沸き上がる歓声。
…「この世界」のルールなのだ。
正規にバトルをし、敗者は強制的にフィギュア化する。気絶の状態。
ほかのファイターが念じながらそれに触れるまでは自意識で動くことができない。
これはマスターハンドが作り上げた「この世界」の摂理で、例えどんな強者でも「この世界」に入れば抵抗はできない。
 
 
そして今、歓声を背に受けながらマリオがカービィに触れる。
眩しい光を発しながら、カービィは元に戻っていった。
 
辺りには静けさが覆い、そして薄暗い。
恐らく神殿内だろう。
ただ静かに時が流れるそこに、一風感じの違う声援が響き渡る。
すぐに止み、そして再び。
…見ると台座に下界の様子が映し出され、まだあどけなさの残る少年がそれを一心不乱に見つめていた。
台座には再び、今度はオーバーオールとピンク玉が映し出され、激しく格闘していた。
                                                            
 
 
「いけっ、そこ!」
 
 
少年は思わず声を上げる。
少年の背中にはえている翼が、彼の動きに合わせ上下左右に踊り、その度に小さな羽が零れ落ちる。
 
台座の中では今赤いオーバーオールが手のひらから激しい炎を出し、ピンク玉に見事にヒットした。
 
カランッ────────
 
戦いの終わり────────
 
少年はそこで、一息ついた。