えっ、まだ早いって??
まあ気にすんなっていうww
もしよかったら感想、コメントよろしくお願いします~^^
スマブラ個人小説/バレンタインデイ~ストーリー・オブ・マリオ~
「兄さん、そんなアホ犬みたいな顔してちゃもらえるもんももらえなくなるよ~?」
弟のルイージの言葉で我にかえる。そうだ、今日は世間一般で言うバレンタインデイだ。いや、そんなことはわかっている。しかし、どうしたものか……。
「まあ兄さんとピーチ姫のことは、僕には関係ないしね~」
ルイージは長い鼻をさらに伸ばして言う。アホはどっちだ……ゼルダに「一番貰えなさそうだから」という理由でもらった哀れみの余りものを片手に小躍りを始めるルイージ。
確かにマリオは今苦悩していた。ゼルダから哀れみの余りものを貰った弟が羨ましいくらいに……。そう、ポストに入っているはずのそれは無かったのだ。ピーチ姫からチョコレートが届いているはずなのだ。いや、届いていないのはおかしい。マリオはピーチ姫に対して、それなりに気を遣ってきたつもりだ。時には力任せのバカゴリラ……いやドンキーコングから、時には巨大鈍亀……いやクッパから助け出してきたのだ。
「でもやっぱりさ~じっとしてても何にも始まらないと思うんだけど~?」
うるせーこの浮かれバカ。一生ゼルダの影でも舐めてろ……。いまだ小躍りを続けるバカを睨む。
いや、ちょっと待てよ……。こいつの言うことも一理あるかもしれない……。様子を見に行き、催促すことも出来るかもしれない。実際のところマリオはそんな方法はあまり好きではない。しかし、一年に一度の機会。あまり好きではない、で流されることではないのだ。
「ちょっと様子を見てくる」
ルイージに言ったのではない。自分自身を鼓舞するために言ったのだ。
「それがいいよ~。もしもらえなかったら僕のわけてあげるからね~」
ルイージはバイバイと手を振る。マリオはそれには答えない。誰がお前のなんか貰うか。
確かな足取りでマリオはピーチ城へと歩を進め始めた。
キッチンがある場所は知っている。というよりも知らなくてもわかっただろう。一階の一部の窓から不自然にもくもくと大きな黒煙が空へと竜のように昇っている。
用心しながらその窓へと近付く……。
「アッーーーーーーーー!!!」
突然の大地を揺るがす大声にマリオは立ちすくむ。それがピーチ姫の声だとわかるのに数秒。
「なんでなんで! なんでなのよ! 世間では料理上手なキャラクターで通っている私なのに! どうしてこんな失敗ばっかりするの! ケホッケホッ……あ~完全に焦げてる……も~最悪……」
マリオは見つからないように用心しながら窓から中を除く。確かにピーチ姫だ。黒煙で視界は悪いがあの影は間違いない。
「こんなの! こんなの……マリオにあげられないじゃない……」
ピーチ姫の言葉にマリオは見つからないようにすることも忘れて棒立ちになる。
そうか……ピーチ姫はやっぱり作っていてくれてたんだ……だけど上手くいかなくて……何度もやり直して……その度に苦悩して……
マリオの足が動いた。窓から部屋の中に入る。煙なんて関係ない。ハート型ではなく、リアルな心臓のような形になってしまった真っ黒なチョコレートを口に放り込む。後のことは知らない。今は自分の体よりもピーチ姫の気持ちの方が大切だ。
「いやーありがとうな、オレのためにこんな心のこもったチョコ作ってくれて。うん、なかなかうまいよ! やっぱりピーチ姫は料理が上手だな~あっ、ルイージに自慢してやろう! んじゃまたな!」
不器用な自分ではそれを言うのが精一杯。身を翻して走り出す。ピーチ姫の視線を背中に感じた。何かを叫んだようだがマリオの耳には届かなかった。
普通の人なら一口で軽く卒倒するような苦いチョコ。何故かマリオの口の中はほんのりと暖かい甘さで満たされていた。