スマブラ個人小説/Shaillの小説/大乱闘!スマッシュブラザーズ

Last-modified: 2013-04-17 (水) 19:00:29
プロローグ

宇宙の起源
それは即ち世界の始まりを意味している
今となってはビックバンなど、それらを科学的に証明ができる
しかし遙か昔、世界は神によって創造されたと語られていた
では、神ではなく、神の下僕たる人間によって創造された世界は存在するのだろうか…?

 

とある一つの空間の中、ただ刻一刻と時が過ぎてゆく
全ては闇に支配され、その空間さえも黒く染め揚げる
それは一つの世界と成り、他の世界の災厄と生る
亜空間、と称された魔の空間の進行は、やがて世界を蝕んでいく種と成っていく
亜空間の目覚めは、闇の始まりである…
これは地球とは別世界の伝承である
伝承とは、実際の出来事が後生に伝えられ、伝説と成った物だ
勿論、実際に起こった物事とは異なる部位があるだろう
では、この伝承の起源を、詳しい物語を探ってみよう

ACT1 現界

1

二人の配管工兄弟がせっせと仕事に勤しんでいた
いや、緑の帽子を被った方のみ仕事に取り組んでいた
もう一人の赤の帽子を被った男はボンヤリと空を見上げているのみ
ルイージ「兄さん、早く手伝ってよ。さっさとこの仕事終わらせたいんだけど」
土管の修理に励みながらマリオに告げた。しかしマリオは逆に訊ねてきた
マリオ「……なあ」
ルイージ「何?」
うっとおしそうにルイージが返す
そんな態度が癪に障ったのか、
マリオ「やっぱ何でもない」
ルイージ「何だよ、それ!?話しかけておいて!」
マリオ「だって聞きたそうじゃないし…」
ルイージ「当たり前だよ!早く手伝ってよ!」
マリオ「聞きたくないのか?」
ルイージ「聞きたくもないよ!」
あくまでルイージに貸しを作りたいようだ
こんな幼稚な兄に頭痛がする。相手にしてられない
ルイージはそれから黙々と作業に集中するようにした
ルイージ「……」
マリオ「なあ、なんかさ…」
ルイージ「何も言ってないよ!」
それを無視してマリオは続けた
マリオ「ドカーン!みたいなさ、派手な事でも転がってないかな?俺はそんなのがしたいんだよ」
ルイージ「土管?」
マリオ「違えよ!!」
絶叫が土管内に木霊した
耳を劈くような大音量に二人、耳を塞いで防御した
ルイージ「ったく。声張り上げすぎだから」
マリオ「お前はいらんボケをするな!」
次は論争が始まった
ルイージ「それに何!?ドカーン!みたいな派手な事って!?発想が幼稚だし、そんな事滅多に有る訳…」
そこまで言った時だった
突如、さっきの絶叫とは比較にならない程の轟音が鳴り響いた
マリオ「何…だ、これ…!」
同様に耳を塞いだが、焼け石に水である
音、は空気の振動で発生する
大音量もたるや、その振動によって地面が揺れ、風が唸り、土埃が舞っている
轟音に鼓膜が破れそうだったが、暫くしてようやく音の縛りに解放される
マリオ「何なんだ?今のは?」
ルイージ「兄さんのバインドボイスじゃないの?」
マリオ「有り得ねえだろ!!」
そしてつい見上げていた空を仰ぎ、ギョっとする
さっきまでの青い空は残りつつも、不気味な紫玉が浮かんでいたのだ
マリオ「何だ…あれ」
驚きを隠せないマリオにルイージは途方に暮れる
ルイージ「兄さん……取り敢えずピーチ城に」
マリオ「さっさと行くぞ!」
兄弟は頷き合った

2

さっきの大騒音はピーチ城にもとどいていたようで、城内は慌ただしかった
マリオ「ピーチ姫!」
キノピオが右往左往するなか、マリオとルイージはピーチ姫を探して部屋を目指していた
城内は混乱に満ち溢れ、ピーチ姫に逢うことすらままならない
混乱は、他の国とて一緒だった

 

リンク「………」
リンクは呆然と、窓から窺える兵士達の様子と邪悪な珠を見つめていた
ハイラル城の外には、幾人かの兵士が散らばり、空を眺めている
さっきの地鳴りは此処ハイラルにも響いていた
ゼルダ「あの音。一体何だったのでしょうか?」
リンク「少なくとも…今はあの玉と関係がある、としか答えられません。それ以外は解りかねます」
簡潔にそう述べた
ゼルダ「何やら嫌な予感がするのだけれど…」
リンク「それは私もです」
リンクはゼルダの方へ振り向いた
リンク「兵士達はあのままでよろしいのですか?何が起こるか解せない物体を間近に近づこうとするとは…
    命知らずも甚だしい。姫、兵士の収集命令を」
ゼルダ「あら、随分堅いのね」
リンク「…そのような問題ではありません。速やかに兵士の集合を」
ゼルダ「そうね」
クスッと笑ってからゼルダは椅子を立った

3

ピーチ姫の部屋に着いた二人は事情を説明した
あの轟音と紫玉は関係があると視て間違い無いだろう
マリオ「と、まあ今はあのデッカイ玉の様子を見ておく事しかできないな」
ルイージ「え?なんで?確かめに行かないの」
マリオ「…お前行ってみるか?」
ルイージは黙し、首を横に振った
マリオ「確かに何も出来ずに見ているだけっていうのは癪に障るが、得体の知れない物に近づいてむざむざ死ぬより幾分マシだろ」
妙に説得力があったので、ルイージは反論の余地が無かった
そうこう話している内にも、既に異変は始まっていた…

 

その異変に最初に感づいたのは、他ならぬゼルダ姫だった
彼女は未来を予知する能力が僅かに備わっている
ゼルダ「?」
リンク「?どうなさいました」
共に空を眺めていた途端、ゼルダは邪気を察知した
ゼルダ「…何か…出てくる…?」
リンク「何か?」
リンクは再び紫玉に視線を遣り、目を凝らした
リンク「あれは…?」
遠くからで米粒のようだが人の形をした生物が、真下へと降下している様子が見えた
リンク(魔物?)
それは後に「プリム」と名付けられた、魔の権現だった

ACT2 襲来

4

ピーチ城内の窓から外の情景が窺えた
マリオ「何か降ってるね」
ルイージ「降ってるね…」
マリオ「ヤバい気がするね」
ルイージ「するね…」
彼らも落下する物体を発見していた
よく観察してみると、地に降り立ったそれらは散り散りにどこかに向かっている
その行方は…
マリオ「こっちに向かってるじゃねえか!?」
マリオが声を荒げた
プリムは集団となり、幾つかのルートに分かれて行動を始め、このピーチ城にも矢が向けられていた
マリオ「ピーチ姫、キノピオをここから避難させるんだ!」
マリオが咄嗟に叫び、ピーチはその声に急かされるように部屋を飛び出た
無論、まだ敵と断定は出来ないが、その確率は無いと言ってもよい
マリオは歯噛みした
マリオ「ルイージ」
ルイージ「何?」
マリオ「ちょっとばかり、ピーチの事を頼む」
そう言い残し、マリオは城を飛び出した
兄が去った後、ルイージは手を顎に当てて深く考え込んだ
あんな大群を相手に自分達に勝機はあるのだろうか?
無い、と即答できた
(だったら…)
するとルイージは懐から「あるもの」を取り出した

5

収集された兵士達はすぐに攻撃体勢に配置され、大砲や槍等、各の武器を手に取っていた
いわゆる「籠城戦」だ
そんな光景を眺めながら、ゼルダは迫っている敵を見据えた
敵の数は数百を越える。勝算はただぶつかり合うのみ
勝機は…薄い
リンク「姫、御心配なく。勝機は無いことはありませぬ」
ふとリンクが声を掛けた
ゼルダ「…何か勝算が有るの…?」
リンク「はい……ただ、奴が参加を許諾した時の話ですが…」
ゼルダはそれが何なのか、すぐに思い当たる
ゼルダ「…そうね。「あの男」が味方に付けば、勝機は見えるかもしれないけど…」
リンク「然り。只、奴を説得するには相当の時間が必要です」
ゼルダ「成る程ね…」
するとゼルダは印を結んだ。一瞬、時空が歪んだような錯覚に捕らわれる
否、時空が歪んだのだ
正確には歪ませた、だが、ゼルダは自分の周囲の時間を早める結界を張ったのだ
それは結界の大きさによって消費する魔力が比例する
今は半径数m程度の小規模だが、時と場合によっては数十kmにも及ばせる事も可能だ
ゼルダ「さあ、行きましょうか」
そう言いながら二人は地下の処刑牢獄所へと向かった

6

処刑牢獄は血臭が漂い、臭いを嗅いだだけでも卒倒してしまいそうだった
ので、ゼルダの魔法の加護を受けて一時的に嗅覚を遮断している
一つの鉄檻にリンクが歩み寄った
牢の中には人影が一つ、手と足に錠を填められていた
リンク「……起きろ…」
すると生気の抜け落ちた赤眸でリンクを見据えた
リンク「…お前にものを頼むなど非常に嘆かわしいが……事情を説明するに値しない。ひたすら、戦え」
ただ、そう残酷にそう告げた
このまま処刑するより、戦地に駆り出して殺す方が、僅かながらも国の利益になる
GD「…今更俺に戦地へ赴けと?都合が良すぎだろう」
そう言いながらガノンドロフはリンクを睨み突けた
その眼力のみで相手を気絶させてしまいそうだったが、リンクは眉一つ動かさない
リンク「ならお前は要らない。お前の軍を渡せ」
GD「馬鹿か…彼奴等は俺の支配下に有る。俺からの直接命令が無ければ、軍隊は動かない」
鼻で笑いながら答える
リンク「察しが悪いな。お前にその命令を下せと言っているんだ」
GD「……」
緊迫した空気が流れた
そんな雰囲気に圧迫されつつも、ゼルダが口を開いた

7

ゼルダ「貴方は…」
リンク「御止め下さい。姫がコイツに掛ける言葉など…ありませぬ」
リンクが制したが、
ゼルダ「貴方は黙ってて!」
そのゼルダ姫の一喝に、リンクは少したじろいだ
リンク「…姫様の御前だ、言葉を弁えろよ」
GD「……」
リンクはそれ以上何も云わずに、ゼルダの一歩後ろに下がった
ゼルダ「ガノンドロフ…。詳しい事情は分かりませんが、謎の軍隊が押し寄せ、我々は危機に瀕しています。貴方の協力が必要です、どうか、力を貸して下さいませ…」
GD「……」
ガノンドロフが何も言わないのを煮え切らしたのか、リンクが怒号を挙げた
リンク「貴様……姫の言葉に返事をしないとは…どういう了見だ!!」
ゼルダ「リンク…下がりなさい」
リンク「………っ!」
まだ何か言いたげだったリンクは苦々しげな表情をした
ゼルダ「ガノンドロフ…貴方がどうしても協力しないのなら、こちらにも策が有ります」
GD「……何だと…?」
ガノンドロフの眉が僅かに動いた。ゼルダはそれに嘲笑しながら言う
ゼルダ「私は困惑の魔法系統を操る術があります。貴方が嫌と言い張るのなら、無理矢理催眠術を掛けるまでです」
リンク「姫、奴は魔力を消費するのに値する価値が有ると云うのですか?」
ゼルダ「ええ。と言っても、催眠術など初級魔術に過ぎません。消費するのは極僅かの魔力だけよ」
二人の会話を聞き流し、ガノンドロフは腕に力を込めた ゼルダはガノンドロフに向き直る
ゼルダ「自ら加するか、意志とは背き参加させられるか、選びなさい」
GD「…つくづく……」
ガノンドロフが口を開いた
GD「……つくづく勝手な連中だな…。全く持って虫酸が走る」
そう言いながらもガノンドロフは立ち上がった
リンクとゼルダは頷き合った

ACT3 衝突

8

キノピオの避難が済むと、城内はまさに蛻の殻となった
こんな状態を見れば敵に侵略されるのは手に取るように理解出来るだろう
ルイージとピーチ姫二人ではどうすることも出来ない。ただ敵が攻め込み、城を乗っ取られるのを待つだけだた
そんな絶望の淵に居た二人の耳に、ふと騒音が届いた
敵がもう間近に迫っているのだろう
ピーチ「マリオは一体何処に行ったの?」
ルイージ「そういえば…なかなか帰ってこないね…」
あーだこーだと言っていると、
マリオ「ぉーーーぃ」
ルイージ「!兄さんの声だ!」
慌ててルイージは声のした方角に向かい、窓から顔を出した
ルイージ「!?」
ルイージはその光景に呆然とした
そこには、ヨッシーに跨ったマリオと、その後ろにはクッパ、そしてそのさらに後ろに大量のクリボーやらの軍団がいたのだ
ピーチ「マリオ!これはどういう事よ!?」
ルイージの後に来たピーチ姫が訊ねた
驚きを隠せない二人に、マリオは事情を説明した
マリオ「いや~間に合って良かったよ。簡単に説明すると、俺たちの家で飼ってるヨッシーで急いでクッパ城ま走らせたんだよ   
   そんでクッパに城が危ないって言ったんだけどなかなか動いてくれなくて…
    だから必殺技を出したんだ。ピーチが危なっモゴッ!」
それ以上は言わせまいと、後ろに居たクッパがマリオの口を塞いだ
クッパ「まあ、快く引き受けた我が輩は素早く準備を整えて此処に駆けつけた、と言うわけだ。
    それよりもどうだ!この軍の数は!これだけあればあのチンケな連中共も紙屑同然だ!」
と、おっさんの口を両手で塞ぎながら高笑いする亀魔王を尻目に、クッパが引き連れた軍隊は攻撃体勢を整えていた
マリオ「もごごっ…ってーな!もういいから放せ!」
力任せに拘束を凌いだマリオはクッパに尋ねた
マリオ「で、何か戦略は有るのか?」
クッパ「んなもん無い」
当たり前そうにそう告げた
クッパ「姑息な戦いよりも力同士でぶつかり合う。此ぞ真の戦の醍醐味だ。違うか?」
マリオ「成る程。お前らしいな」
そう言って二人のライバルは微笑みあった

9

ハイラル城の前衛にはガノンドロフが召喚した魔の軍が配置され、戦士の総計は壮大だった
相変わらず最上階ではゼルダとリンクに加え、ガノンドロフが戦地の様子を見守っている
ゼルダ「私達は勝てるでしょうか…?」
リンク「姫様は自分の御身の心配は御無用です。このハイラルの騎士リンクがこの身を呈してお護り致します」
その言葉にゼルダが微笑んだ
ゼルダ「クスッ…有り難う」
ゼルダは自分の左手を差し出した
リンクはその手を取り、甲に軽く接吻すると跪く
ゼルダ「貴方に女神よりの祝福があらんことを…」
そしてリンクが顔を上げた
リンク「私も騎士で在るが故。ただ一人の君主に仕えるだけが、我が誇りであり…誉れであります」
そんな流れに、ガノンドロフがほくそ笑んだ
GD「余の前でそんな騎士ゴッコをするでない…」
リンク「何だと…!」
ゼルダの手をゆっくり下ろし、リンクがガノンドロフに歩み寄る
リンク「今の発言、我ら騎士道に対する侮辱と見なすぞ。ただの異端の分際で俺と姫様の間に水を差すつもりか」
GD「解った解った。そう熱くなるなよ」
そう言いながらガノンドロフは戦争の始まった戦地に目を遣った
GD「今は数で勝っているとはいえ、後になるとそうは如何ぞ」
リンク「どういう意味だ」
するとガノンドロフは空に浮かぶ紫の珠を指さした
そこからは今もなお、プリムが繁殖している
GD「あそこから奴等は無限に増殖している。つまり彼処を断たねば奴等に負けは無い。
  今はこっちが優勢だが、時が経つに吊れ不利になっていくぞ」
リンク「……」
ゼルダ「では…私達3人で…?」
GD「今はそれしか無いだろう」
ゼルダ「……判りました。今も戦い続けている兵士を見捨てるのは見苦しいですが…」
リンク「これは見捨てるのではありません、救うのです。姫は私の傍を離れないで下さい」
リンクがゼルダに微笑みかける
GD「御託はいらん。さっさと始めろ」
するとゼルダは微笑し、印を編んだ
リンク「我がハイラルに仕える勇猛果敢な騎士達よ…ご冥福あらんことを…」
呪詛のようにポツリと呟いたリンクに
ゼルダ「やっぱり随分とお堅いことで…」
そう言った途端、三人の居た空間が切り取られた
ゼルダの固有結界魔法、フロルの風で、ハイラル城前戦地より遥か彼方へとワープしたのだった

10

その事に関しては、マリオ達も検討を始めていた
マリオ「彼処を断たなければ俺達に勝ちはないんだ。だから何としてでも奴等の増殖を止めなきゃならない」
クッパ「我が輩の手下は見捨てるのか?」
マリオ「いや、これは見捨てるんじゃない、救うんだ」
ルイージ「兄さん…あんな不気味な物体に近づくの…?」
マリオ「ああ」
ピーチ「このお城はどうなるの?」
マリオ「それはクッパの軍の耐久と、俺達の行動によって変わるだろう」
普段は平然とボケをかましているくせに、ピンチになると本領を発揮するマリオをこの3人は良く知っていた
マリオ「皆、依存は無いな?」
全員が硬い面もちで頷いた
それを確認すると、マリオは目前で繰り広げられる争いに視線を向けた
マリオ「生憎だが…この戦地をくぐり抜けるには、強行突破するしかない。
    みんな、覚悟はいいな?」
クッパ「そんなもの…聞くまでもないであろう」
マリオ「…そうか。ならさっさと行くぞ!」
ヨッシーに跨って駆けるマリオを先頭に、戦場へと衝突していった

 

マリオ達の選択は間違っていなかったが、やはり無謀だったようだ
できるだけ敵の居ないルートを通るよう心掛けたが、あまりに出発が遅すぎたのだ
敵の数は時が経つにつれて増していき、敵を避けて通るルートなど、もう残されていなかった
ただ、強行突破と肝に銘じていたのでそれなりの覚悟は心得ていた
迫りくる敵を蹴散らしながら、目指すは巨大な浮遊物へと少しずつ向かって行った
ピーチ「一体いつになったら着くのかしら…」
マリオ「そんな事は分からんが…。ただ、かなりの時間がかかりそうだな」
と、プリムを次々と投げ飛ばしながら背を合わせながら言った。気づけば、大群に包囲されていたのだ
マリオ「万事休す、か…」
そうポツリと呟く
ふとマリオはルイージに目を向けた 彼は視線を空に向けて、何もない虚空を見つめていた
マリオ「おいルイージ。お前どういう状況か判ってんのか?」
マリオがルイージの頭を小突いた
ルイージ「いや、そろそろ降ってくる頃かと思ってね」
マリオ「は?」
そんな場違いな返答にマリオは唖然とした
すると
マリオ「何だあれ?」
マリオの視界に空に何やら光る物体があったのだ
マリオ「隕石か?」
戦闘中にも拘わらず、マリオ一同はその光に見入っていた
ルイージの面もちはどこか感動しているようにも見える
光の数は、2つ
その神々しく眩しい程の輝きを放つ星は、
マリオ「なあ…こっちに向かってないか?」
ご名答。光は幾重にも大きくなり、マリオ達の立っている敵の中心を着弾地点としていた
マリオ「みんな避けろーっ!!」
理性の吹き飛んだ声で叫び、敵を掻き分けてその場を離れた
吹き飛んだのはマリオの理性だけではない
この敵はろくな知能も持ち合わせていないのか、衝突を避けることなくもろにブチ当たった
爆発と衝撃波、突風に地震までも発生させる
勿論、プリムは塵の様に薙払われて吹き飛んだ
今の衝撃に耐えられる筈がない
幸いマリオ達の被害はなかった。強いて言えばルイージがコケたくらいだ
クッパ「ったく…一体なんだ?これは?」
それは何やら複雑で理解しがたい機械仕掛けが施されていたのだろう。今となってはただのガラクタに過ぎない
既に炎上し、消火手段の無いマリオ達は呆然と事の成り行きを見ていた
すると突如機体から2つの人影が出てきたのだ
マリオ「!!。お前等は…」
鉄塊から出てきたそれは鮮やかな着地を決めた
フォックス「ったく……。一体全体何がどうなっている?」
ファルコ「スリッピーの奴が悪戯でもしたのか?」
フォックス「それは有り得ない!」
マリオ「んん……誰だ!?」
マリオ等に気に止めず話しているのは、雇われ遊撃隊のフォックス・マクラウドとファルコ・ランバルディその人だった
顔は炭で汚れ、ファルコに到ってはさながら…
クッパ「焼き鳥じゃないか」
マリオ「おい、何で突っ込んできたんだよ…?」
マリオが二人の間に入る様に言った
フォックス「それはコッチが知りたいね」
ファルコ「俺達宇宙でオゾン層沿いを飛行していたら突然アーウィンの制御が利かなくなったんだよ」
マリオ「その着弾地点がココって…何か出来すぎてないか?」
ルイージ「いや、これは必然だよw」
と、ルイージも中に入ってきた。何故か笑いを噛み殺している
マリオ「…何か仕掛けたのか」
ルイージ「ああ」
そう言いながらルイージは懐から「あるもの」を取り出した
それはアンテナみたいなのと、ボタンの付いた小型の機械のようだった
マリオ「何だ?それ?」
そう訊ねたマリオにルイージは得意げに答えた
ルイージ「これはね…家の掃除をしていたときに見つけた物なんだけど、
     どうやら宇宙の浮遊物を呼び寄せる物らしいんだ」
全員が呆けた顔をした
ルイージ「まあ…家で試した時は悲惨な事になったけど、こうして敵を一掃できたから…なかなか便利でしょ」
「「どこがだ!!」」
マリオ「そーかお前のせいで家があんなことに成ったのか…」
フォックス「アーウィン2機の弁償代と慰謝料はお前から全部払ってもらう」
ルイージ「えっ!?」
ファルコ「えっじゃねえぇぇよ!俺達宇宙に戻れなくなったんだぞ、お前のせいで!!」
ルイージ「えぇーーー……!?」
非難の声を次々浴びせかけられ、ルイージは段々と小さくなっていった…

11

ハイラル城より遠く離れた位置にワープした3人は、敵を蹴散らしながら進んでいた
そして彼らも空に浮かぶ一筋の光に気が付いた
リンク「何だ、あれは」
ゼルダ「流れ星かしら?」
GD「そんな訳無いだろう」
と、軽くスルーしたその時…
ドゴオオォーン!!
と、もの凄い衝撃が伝わってきた
ゼルダ「!?あっちから音がしたわ」
ゼルダが東の方角を指指した
リンク「行くのですか?」
ゼルダ「えぇ。だっておもしろそうじゃない」
ハイラルの危機にも拘わらず、好奇心な姫にリンクは溜め息を吐いた

 

リンク「これだな」
さっきの落下物は煙を揚げていたので見つけるのはたやすかった
それは、黄金色のボーリング玉のようだった
GD「なんでこんなモンが空から降ってきたのだ?」
すると…
サムス「いった~い。急にどうしたのかしら?」
突如球体から人型に変形したのだ
リンク「うわっ!機械亜人!?」
普段全く感情を露わにしないリンクが跳び上がった
サムス「機械亜人とは…失礼ね。まあ、そう思われても仕方無いんだけど」
ゼルダ「誰ですか、貴女は」
サムス「私?」
GD「あんたしかいないだろ」
ガノンドロフの指摘を気にも留めず、サムスは得意げに
サムス「私の名はサムス・アラン。宇宙のバウンティハンターよ」
リンク「宇宙、だと…?」
さっきの驚きは微塵も感じ取れない、普段の冷静な口調で言った
サムス「そうよ♪」
再び得意げに言い放った リンク「何故宇宙から降ってきたんだ?」
サムス「そこがさっっぱりなのよね~」
軽く流してしまった。リンクは絶句した
リンク(この女は物事を深く捉えようとしない!俺とは絶対話が噛み合わない奴だ!)
これがリンクのサムス・アランの第一印象である
リンク「ひ…姫様。ハイラルは今もなお危険に晒されているのです。今は一秒でも時間が惜しい。先を急ぎましょう…」
と、若干ハイラルの危機を言い訳にしつつもその場を離れようとした
しかし
サムス「あら、貴方たちどこに向かうの?」
リンク「……」
リンクは渋々紫玉を指した
サムス「へぇ」
リンク「取り敢えず貴女には関係の無い話です」
サムス「あら、関係なくないわ。私も行くわよ」
リンク「は?」
思わず間の抜けた声が出た
サムス「いや、私も付いていくって」
リンク「何故…?」
サムス「だっていかにもって感じじゃない。お宝が隠されてるに違いないわ!」
リンクはついに言葉を失った
ゼルダ「あら、仲間が増えるのは心強いですわ。こちらからも是非、お願いするわ」
サムス「では干渉成立、ということで」
リンクは眼前で交わされる言葉が自分の知っている言語に聞こえなくなってきた
ゼルダとサムスが握手すると同時に我に返り、その光景を凝視したリンクはまた深い溜め息を吐くのだった

ACT4 突破

12

さて、二人の仲間を呼び寄せた「オゾン層付近引寄装置」だったが、何も敵味方を判断して引き寄せる訳ではない
つまり…
マリオ「ん、また何か降ってくるな…」
クッパ「今度はやけにデカイな」
ルイージ「龍みたいだね…」
否。実際龍なのだ
同様に落下物は地面に激突する。マリオ達は2回目なので避けるのは馴れたものだ
フォックス「レックウザじゃないか!」
マリオ「あれ?知り合い?」
「「違えぇよ!!」」
フォックスとファルコが叫んだ
ファルコ「オゾン層に住んでいる凄い気性が激しいポケモンだぞ…」
マリオ「オゾン層?」
一同、ルイージに顔を向ける
ルイージ「あ~~ぇ~…。副作用、ということで☆」
マリオ「★じゃねぇよ!!」
マリオの跳び膝蹴りがルイージの腹に炸裂し、ルイージは腹を抱えて悶絶した
マリオ「こんな厄介も呼び出してどう責任取ってくれんだよ!?」
ルイージ「で……でも…、味方が二人で、て…敵が一匹だから、+には、なって……」
マリオ「そういう問題じゃねえよ!!」
言葉を発することも満足にできないルイージを放っておき、レックウザに向き直った
マリオ「こいつをやらねえと進めないのか…?」
ポツリと呟いた
クッパ「我が輩の軍でこんな奴けちょんけちょんに…」
マリオ「いやそれは無理だ」
バッサリと切り捨てた
クッパがギャーギャー喚いたがマリオは気に留めず、
マリオ「こっちの戦力は6人か…。少々心許ないな…」
ピンチ時のリーダーシップ性を発揮して策を練っていたが、案が全く浮かばない
マリオ「くっ、またしても正面突破か…。でも俺には他に選択が…」
クッパ「そんなもん、最初から解っておる!」
マリオ「えっ?」
マリオが伏せていた顔を上げた
ルイージ「兄さん前に強行突破って言ってたじゃないか!覚悟してないのは兄さんじゃないの?」
マリオ「……そうだな」
マリオはフォックス達に問いた
マリオ「覚悟はできてるか…?」
ファルコ「どさくさに紛れて戦うことになっちまったが…まあ、弁償してもらう前に死んじまうと困るし…乗ったよ」
マリオ「有り難う」
若干違和感があったが、そこは置いといて素直に礼を述べた
今まで会話をのほほんと出来たのは、レックウザが衝突によって気絶していたからだ
そろそろ気絶も解ける頃だろう
そして真っ先にコッチに襲い掛かってくる
マリオ「さあ、行くぞ!」
戦いの火蓋が切って落とされた…




さて、納得のいかないまま行動を共にすることになったサムスだが、さっそく問題が
サムス「ところで貴方達、何で彼処に向かってるの?」
リンクは額に手を当てた
(そこからかよ!)
自分は騎士の鑑と成るべき手本だ、と信じて疑わない彼はサムスと一緒だとすぐにボロが出る
その仕草が頭にきたのか、口をへの字に曲げ、
サムス「…別に言いたくなかったら言わなくて結構」
リンク「…そうさせてもらおう」
そんな様子を見かねてゼルダが手取り足取り説明した
やはり女性同士だと気が合うのだろうか、よく話が通じるな
と、呑気な事を考えていたのはそこまでだった
GD「おい。戯言は程々にしておけ。あっちが大変な事になってるぞ」
ガノンドロフが指を指しながら言った
リンク「あっち?」
その指先の方には…

13

マリオ達はレックウザに苦戦していた
いや、ほぼ一方的にやられていた
こちらの攻撃を身を身をくねらせて悉く躱し、雷や龍の波動でカウンターしてくるのだ
おまけに無限増殖を繰り返すプリムも相手にしなくちゃならない
マリオ「くそっ…。何とかなんねえのか!」
マリオが浮遊しているレックウザにドロップキックを叩き込んだが、空を飛んで躱される
そこをブラスターを連射するが、またも躱される
マリオ達の頭上でレックウザはアイアンテールを繰り出した
ルイージ「為す術茄子、か…」
マリオ「うるせえ!なんとかするんだよ!」
上を見上げながら怒鳴り、何か方法がないか探るが、レックウザの尾がすぐそこまで迫っていた
マリオ「終わった…!」
マリオは目を瞑った

 

頭の中で過去の出来事が浮かんでくる
これは走馬燈なんだ、と実感した
ピーチ姫を助けたことや、
ルイージと喧嘩したことや、
ルイージの寝顔にマジックで落書きしたこと
もう痛みが感じられないのは死んじゃったからか…
そう痛感し、マリオは自分の既に潰れているであろう両目を恐る恐る開いた

14

マリオ「あ…」
まだ、生きている
手を動かしてみた。掌の軟らかい感触が心地よい
ピーチ「マリオ、これはどういうことよ!?」
ピーチの声で我に返り、レックウザに目を遣った
マリオ「ん!?」
奴がこちらに向かって突進している
距離はおよそ3m程 上
しかし、レックウザがどれほど必死に近づこうと、一向に距離は縮まないのだ
マリオ「どういうこった、これは?」
さっきの一撃は免れたようだが、この奇妙な展開は全く解せない
マリオが呆然としていたその時
ドスッ!
不意にそんな音が鳴った途端、視界に鮮血が飛び散った
マリオ「!?」
レックウザが顔を抑えて苦しんでいる
その目に一本の矢が刺さっているのが見えた




ゼルダ「流石ね。けっこう距離が離れてるのに…」
リンク「このくらい造作もありません」
さっきの矢を放ったのは他でもない、リンクだった
そしてあのマリオ達を救ったのは、ゼルダの結界魔法「防御壁」である
リンク「さて…雑魚共もやりますか…」
そう言いながら新たな矢を勇者の弓につがえた
そしてサムスは右手に力を込めていった

15

視覚を失ったレックウザは混乱して暴れだした
余計手が付けられなくなったが、何も相手にする必要はない
プリム達はサムスのミサイルやらチャージショット、リンクの矢で射倒していき邪魔者排除をしながらマリオ達に脱出を促す
マリオはレックウザを無視して、リンクと距離は離れていても共に目的地へ向かっていった

 

ピーチ「あの方達…何者かしら…?」
ピー姫がマリオに訊ねた
マリオ「さあ…。一応味方なんだろうけど…」
今ヨッシーに跨ったマリオを先頭に、リンク達と平行に移動している
(俺達を救ったバリアとか、数百m離れた位置から矢を射る腕前といい…。ただ者じゃないな)
そう考察するマリオも常人を逸しているが…
(まあ、あと少しで着くだろう。奴等も目的は同じだろうし……その時に色々聞いてみるか)
地を駆けるヨッシーの上で顎に手を当てて深く考え込んでいたマリオであった

 

ACT5 参集

16

ピーチ城
マリオ達が去った後、プリムは城の侵略を始め、今は見る陰も無い
草木は朽ち果て、城壁は崩れ落ち、原型を止めていなかった
この惨状を目の当たりにすると、どれほどこの戦が悲惨なものだったかすぐ理解出来るだろう
クッパ軍を全滅させたプリムは城に侵入し、内部も破壊していった
刹那…
城内二階から外に出たプリムが一閃し、バラバラに斬り裂かれた
プリム「?」
味方を骸に豹変させた奴を見ようと首を動かしたが、首が動かない
既に頸から上は無くなっていたのだ
プリムを引き裂いた柔と剛の剣は、次々と獲物を仕留めていった

 

城に残っていたプリムを壊滅させるのは、ものの数分の出来事だった
一通り周りの敵を片づけ、二人は遠くに浮かぶ珠を見据えた
マルス「さて、本題はアレなんだけど…」
アイク「解ぁってら。ほら、ぼーっとしてないでさっさと行くぞ!」
マルスとアイクは城壁を飛び越え、着地を決めて大空に浮かぶ亜空間へと駆けた
マルス「走っていったら一体いつ着くんだ?」
アイク「さあな…。もうあの城主とか向かってるだろうからなぁ。脚だと間に合わないだろ、多分」
マルス「何か速い乗り物とか無いのか?」
アイク「…ねえよ」
ふとため息を漏らした
しかし、彼らの後ろには同じ目的の人物が後を追うように船を走らせていた
そんな幸運に巡った二人は運が味方しているのかもしれない

 

轟っ!と空飛ぶ戦艦は音を立てて風を切りながら進んでいた
マルス「いや~。悪いね、自前の船に乗せてもらって」
デデデ「遠慮するでないゾイ。たかが一人二人乗せたって何も変わりゃせんゾイ!」
メタナイト「…これは私の船だ。勝手に乗客を増やすな」
マルス「招かねざる客、ってことか」
メタナイト「………」
気さくに話す大王とは裏腹に、遠回しに否定するメタナイトにマルスははにかんだ
既に船内にはデデデの手下が収容されていた
アイク「あとどのぐらいで着くんだ?」
メタナイト「…20分程度だ」
アイク「ん~~暇だな~……ん、何だこのピンクいのは」
アイクはカービィの頬を引っ張って持ち上げた
デデデ「ああ、そいつはカービィゾイ。船内の肉やら食料をゴッソリ食われたらたまらんからここに置いてるんゾイ」
アイク「じゃあ何で連れてきたんだよ?」
メタナイト「連れてきたんじゃない。勝手に乗り込んだんだ」
アイク「何で?」
メタナイト「…何か危険を感じたんじゃないか?」
アイク「…変な奴」
両頬を引っ張りながら小声でそう呟いた
しかし、何かを思い出したのか、ついさっき自動操縦に切り替えたメタナイトに訊ねた
アイク「……肉があるって言ってたよな…?」
メタナイト「ん?まあ、干し肉だが」
アイク「…何処に有る」
デデデ「ここが操縦室だから食料庫は…」

メタナイト「部屋を出て直進。突き当たりを右に曲がってスイッチを押して梯子を登ってうんぬんかんぬん…」

マルスがあっ、と止めようとしたが時既に遅し
アイク「よし、解った!」
アイクの目が光った
メタナイト「解るのかよ!」
そんな突っ込みに意にも介さず、アイクはハルバードもかくやと唸らせるほどのスピードで直進した
マルスは後頭部に手を当てた
デデデとメタナイトは呆然としていた
(さて。奴は確実に喰い潰すだろう。今更追いかけたって今の速さじゃ追いつけないな…。打つ手無し、だね)
内心焦ってはいたが、何故か冷静に判断が出来た自分に感心したマルスであった

17

マリオ「やっと逢えたな」
リンク「あぁ……」
計11人が亜空間の下で互いに顔を確かめ合っていた
ようやく顔を交わすことが叶い、マリオは安堵した
マリオ「…取り敢えず、簡単な自己紹介から…」
クッパ「そんなもん後にしろ。今も奴等は増殖していってるんだぞ」
ルイージ「そうだよ兄さん。早く行かないと城が危ないよ」
マリオ「そうだな」
一同、真上に浮かぶ空間に目を向けた
ピーチ「でもどうやって彼処まで昇るのよ?」
確かに、空を飛ぶことは叶わない
マリオ「う~~~…ん」
腕を組んで悩むマリオにリンクは苛立った
リンク「お前らそんなことも解らないのか…?」
マリオ「何かあるんだな?」
リンク「ああ」
リンクは高く聳える氷山を指指した
リンク「あの山の頂上は珠に突き刺さっている。氷山を登るのだ。幸い、雑種は少ない」
マリオ「ベストじゃないか!じゃあ早速行くか!」
リンク「…素早い奴…」
リンクの視線を気にも止めず、マリオはヨッシーを走らせた

Interlude

1

遠い遠い昔
まだ文明が発達して間もない時代
とある国のとある王宮にて、二人の兄弟の皇子が居た
右利きの兄と左利きの弟で、仲も良く、そして政権を奪い合うライバルでもあった
今病床にいる「現」王である父が亡くなると、兄か弟がこの国の統治者と成る
それは父の決断で決める約束だった
そのために、弟は次男というハンデを背負いながら兄より数倍努力した
勤勉に励み、不要な物は総て捨てた。恋慕もあったがそれも諦めた
兄も、父も、そして民も弟の積んだ努力を知っていたし、兄よりも才能が有ると解っていた
(自分は弟を応援しよう)
兄はそう決意した
「なあ…」
ふと弟に話しかけた
「ん、何?」
「もしお前が王様になったらどんな政治がしたい?」
まあ、弟が選ばれるのはもう確実なんだけどね、と兄は苦笑いした
そんな表情を気にせず、弟は言った
「僕は…この世界を救う政治がしたいな」
「そっか、頑張れよ」
「頑張れって…。まだ決まってないじゃないか」
「え~。もう確実だろー」
「そんなことないよ」
今、兄弟は肩を組んで笑い合っていた


しかし…

 

悲劇は起こった…

 

父の死が近づき、兄弟は父の寝床に寄り添った
二人は共に涙し、そして次世代の決まる瞬間に胸が高鳴った
そして唐突に王は手を虚空に挙げて、
告げた 「統治者(マスター)は兄と為す…」

、と
#br

二人は愕然とした
信じられなかった。次の王は弟だ、と全員が確信していた
聞き間違いだろうか
いや、二人同時に聞き違えるはずもない
兄は苦々しげな顔をしながら弟に目を遣った
弟は信じられない、といった表情で下を向いている
当然だ
今まで培ってきた苦労が、努力が、今の言葉で全て水の泡となってしまったのだ
気まずい雰囲気が漂い、弟は早歩きで先に部屋を出ていった
残ったのは、父の臣下と、兄と、ピクリとも動かない父のみ
兄には、既に下ろされた父の指が自分を指しているように見えた…

 

父の死を境に、兄弟の仲に亀裂が走った
翌日から、二人が道で逢うと弟は顔を背けて小走りで逃げるように去ってしまう
つい数日前までは、仲良く笑い合っていたのが嘘のようだ
兄には何故父が自分を選んだのかどうも理解出来ない
彼は弟の背を見ながら顎に手を添え、黙考に耽った
では何故?
父は弟が努力したのを知らなかったから?
いや。それは有り得ない
だとしたら…
悩む一方なので兄は考えるのを止め、些か納得のいかない王の玉座に腰を掛けた

 

兄の政治は………うまくいかなかった
元々は弟の臣下にでもなろうとしていた兄である
王の道を諦めていた彼にとって、実に骨の折れる大役だった


そして、弟はそんな国に絶望したのか、
事態は急激に悪化していくことになる

2

どちらかというと、弟は発狂していた
無論、自分が王に選抜されなかった事から発端したものだ
しかし、兄はそれに気付かなかった。いや、気付くのが遅すぎた
もっと云うと、最後まで気付けなかった
知る由もない
彼の最期を飾ったのは、狂化(クレイジー)した弟がもたらした鮮やかな深紅などと…

 

王室にて
兄が椅子に身を任せて机に向かい、頬杖を衝いていた
すると、部屋の扉が開いた
「ん?」
兄が振り向いた先には、弟が立っていた
「……」
「あ…取り敢えず、座れよ」
着席を促した。弟は無言でそれに応じる
「珍しいな。わざわざココまで来るなんて。いつでも話しかけてくれたらいいのに」
兄は極力、明るく振る舞った。当然だが、見たところかなり落ち込んでいる
「何か用があったから来たんだろ?何でも聞くよ」
すると初めて弟が口を開いた
「………なんで……」
「えっ?何…?」
その声色の不気味さに、兄は背筋が凍った
本能的直感がマズイと思った頃には既に手遅れだった
「何で…何で兄さんなの…!?」
「なっ…!?」
弟は手にしたナイフを振り下ろした
「がっ……!」
避けることも出来ず、ソレは深く脳天に突き刺さった
たまらず地面に転げ落ちる。鮮血が視界を覆う
兄は地に突っ伏せながら気力を振り絞り、顔を上げた
自分を見下した弟の目。その瞳は悔恨の色に染まり、それ以外は何の感情も伺わせなかった
「兄さんは僕のこと、何にも解ってない…」
兄はその言葉の意味を、ついぞ理解することは叶わなかった
せめてもう少し、王で在りたかった…
その思いと共に、兄は息を引き取った

3

王の暗殺は瞬く間に広がった
犯人はもう明らかだったが、臣下が死体を見つけた時には既に弟の姿は無かった
すぐに捜索が開始されたが、弟の行方どころか、手がかりすら掴めない有り様だ

 

弟が失踪してから、彼は禁忌(タブー)に手を染め始めた
毒殺、爆破、狙撃……
もう何処にも以前の彼の面もちは微塵も無い
国民は暗殺者と畏怖し、狂化した弟をこう呼んだ

 

タブー
、と

 

もう彼の居場所はこの世界には残っていない
彼は残った理性でそう感づいていた
なら、人の目につかない場所でひっそりと暮らしていよう
誰にも邪魔されない、自分だけの居場所だ
彼は前に読んだ一冊の本に頼った
[亜空間の創造・・・パンドラの書]
それは、人という一線から外れる、最大の禁忌だった
もう戻れない。それでも、構わなかった…

 

彼が世界を創って幾数千年
躯は既に崩れ、魂だけが亜空間をさまよっている
それは、憎悪や絶望から生まれた、怨念
マスターを殺し、タブーと呼ばれ、新世界を創った狂人
彼はあの世界を呪う
自分を疎外したあの世界の神を呪う
兄との日々は、もう彼方に封印した
しかし…あの世界にも未練はある
誰よりも強く願い、そしてついに叶わなかった願望 後悔が中で渦巻く
あの頃に戻りたい そしていつまでも弟は、呟く

 

「………なんで…兄さんなの……?」

 

そして彼は泣き叫び、あの世界に現界した
悲しみの涙と共に…

ACT6 突入

18

高くそびえる氷山に登り始めたマリオ達は一路、頂上目指して歩いていた
その途中、暑そうな服を着込んだ二人組の姿を見つけた
いや、氷山なのだからそれが標準の服装なのだが
マリオ「あいつらは…」
同じように山頂を目指しているようだから、仲間の部類に入るのだろうか
マリオはその二人組を追うように、さらに上を目指していった

 

戦艦ハルバード
マルス「やっぱり……」
マルスは手を地につけて落胆した。既にどうなるか分かっていたが…
しかし、マルスを除いた全員の方が唖前としていた
アイクは、やはり肉を全て食べてしまった
マルス以外の連中にとって、予期せぬ事態である
当の本人は、今も食糧庫で腹に手を当てたまま眠っている
彼らはもう開いた口が塞がらない状態である。しかしその口からは何の音を発せられない
そんな沈黙の状態が、マルスにとって一番辛い時間だっただろう
自動操縦に設定された戦艦は、今も亜空間に向かっている
今なら防音効果はいらないな…。せめて騒音でもいいから何か音が聞きたい
と、切ない想いを抱いたマルスであった

19

青とピンクの防寒服をまとった二人は、ポポとナナと名乗った
彼らもまた亜空間を目指しているとのこと
利害の一致で、容易に仲間になることを許諾してくれた
しかし、
もう一人はそうはいかなかった
氷山から突き出た鋭利な刺に、悠然と立っている人影…
ファルコ「…彼奴は……」
そう言った途端、ルカリオの眼がカッと開いた
その赤い眼は血の色…とまでは濃くないが、その色彩は燃え盛る赤い炎を思わせる
そんな鑑賞に浸っているのも束の間
突然コチラに向かって襲いかかってきた
予期していた流れなので、攻められるより先に身を引いてかわす
マリオ「集団でやるか?」
リンク「俺は反対だ、そんな戦い。一対一で正々堂々と…」
マリオ「じゃあ誰が」
ルカリオを放置して会議モードへと切り替わった
「「……」」
ルカリオ「………」
マリオ「…分かったよ…。話進まねえから俺がやるよ」
ルイージ「がんばってにいぐぼぉっ!」
ルイージは冷たい、氷の地に崩れ落ちた
マリオ「騒がしい。真剣勝負なんだから、静かにしろ」
それは始めて目にする、マリオの戦士としての顔だった

20

マリオはファイアボールを連発し、ルカリオを足止めしつつダメージを与えている
しかしルカリオさるもの、華麗なる体術でかわし続けて接近戦に持ち込んだ
マリオ「ぐっ…」
中距離だとリーチで負ける。早く距離を離さないと
マリオ(後ろ…?!)
素早く背後に回っていたルカリオに、はどうげきを喰らわされた
マリオ「ごあぁ!」
マリオはとっさに受け身を取り、ルカリオに急接近した
近距離だとリーチは関係ないと考えたからだ
その思考は正解だったらしく、壮絶な格闘戦が展開された
マリオはルカリオの手首を弾いたり返したりして裏拳を、ルカリオはマリオにはどうげきを浴びせている
リンク「妙だな…」
ゼルダ「?どうかしたの?」
リンクはルカリオを指しながら言った
リンク「彼奴……あのヒゲの攻撃を避けることも可能な筈だが。返すどころか当たりにいっているように見える」
ゼルダ「言われてみれば…」
確かにルカリオは避けようとしていない
ゼルダ「だったら何故…?」
リンク「何か隠してやがる」
リンクは忌々しげに吐き捨てた
マリオも異変を感じ取った
こちらが受ける攻撃が、段々と威力が増しているのだ
マリオ(まさか、こいつ…!?)
ルカリオの特性、逆境だ
自分が不利になるごとに、攻撃力が上がっていくという殊勝な特性
バッとマリオは退いた
ルカリオはもう相当な痛手を負ってるだろう
マリオ(なるべく近寄らないように‥‥)
しかし今度は打って変わって、ルカリオが接近してきた
マリオ(もう決着をつけようってのか!?)
後退したが、残り3m半
マリオ(まだ‥‥いける!)
まだ勝機はある
ルカリオの目は完全にマリオに向けられている
マリオ(いいぞ…逸らすんじゃないぞ。逸らされたら困る)
後退しながら、ファイアボールを投げた
地面に
地面は氷だ。当然溶けて、穴が出来る
その穴にルカリオの足が引っかかると、転ぶ、筈だ
ルカリオはもう急停止出来ない
はて、マリオの策は成功…
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
ルカリオ「ぬっ?」
マリオ「んあ?」
ルカリオは穴を飛び越えて空を見上げ、マリオは後ろを振り向いた
戦闘は中断された


その大気を振動させている物体
巨大、そして空に浮遊している。正面には仮面の船首
その時、戦艦ハルバードが亜空間に呑み込まれようとしていた
突風が逆巻き、磁力が働いているかのように引き寄せられる
ついに足下が離れた
氷山にしがみつくような物がある筈もなく、否応なしに引き込まれる
マリオ「みんな!手を繋げ!」
宙を舞いながらマリオは叫んだ
せめて散らばるのは避けようという算段だったが
全員と手を繋ぐような猶予は残されておらず、
亜空間の呑み込まれてしまった…

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