類型と幻想能力のルール_1.3

Last-modified: 2020-06-13 (土) 16:12:51

類型と幻想能力のルール

「類型」はキャラクターがどのような妖怪(あるいは英雄)であるかを示すもので、例えば「そのキャラクターについての物語があったとしたら、どういった妖怪(あるいは英雄)として描かれるか」といった形でキャラクターの特徴を表すものである。
キャラクターは類型に従って行動へのボーナスを得るほか、使用に制限はあるが、「幻想能力」と呼ぶ強力な能力を使用することができる。

このルールは、妖怪や英雄がその元となる「物語」と不可分であり、役割に沿った行動を期待されるとともに、
物語において特徴的な活躍を見せることで幻想として認知され、より強力な力を得られることを表す。
また、データ化されたルールでは表現しきれない曖昧な能力などを行使する機会を提供する。

セッション中におけるキャラクターの役割は、他のキャラクター(PCやNPC)や、セッション中の出来事、目的といった事項に対する「縁故」によって表現される。
類型によって縁故の方向性に一定の制限があり、加えて取得できる縁故の数には限りがあるが、プレイヤーはその制限の範囲内であれば自由に縁故の設定をGMに申請してよい。
GMが縁故の設定を認めれば、キャラクターから対象のキャラクター(あるいは事項〉に対して縁故が設定される。
縁故はレベルを持ち、異なるシーンで再度登場したキャラクターや事項に対して縁故を強化することができる。
それぞれの縁故はレベルと同じ値の幻想値をキャラクターに与える。
幻想値を増やすことで、幻想能力の使用が解禁される。
幻想能力は類型ごとに3つあり、各能力は1セッションに1回までしか使用できない。
幻想能力の使用によって幻想値は減少しない。

類型

キャラクターは3つの類型を持つ。
類型はセッション開始時に決定できる。これは、物語によって同じキャラクターの果たす役割が変わりうることを示している。

選択肢と効果は「類型リスト」を参照すること。
また、原作のキャラクターを分類した例を「原作キャラクター類型表」に記載した。
(これらは千幻抄公式の解釈に基づくものであり、GMはキャラクターの解釈に従って類型を変更して構わない)

類型の能力

類型の能力は以下の2つに分かれる。

幻想能力

類型に従って得られる能力。
後述する「幻想値」に依存して使用可能となる。
各幻想能力は1シナリオに1回のみ使用できる。幻想値は消費されない。

幻想能力の処理においては、効果をプレイヤーが提案することが可能なものがあるが、結果の裁定はGMに委ねられる。
NPCが使用する場合、シナリオ上の重要なポイントに持ってくるか、あるいはデータ的に明確な効果を選択することを推奨する。

特に記載されていないかぎり、幻想能力の使用に行動を消費しない。
幻想能力の演出は、キャラクターの能力と関連させて自由に決めてよい。
なお、原則的に、幻想能力の使用自体が攻撃行動となることはない。
戦闘時に効果のある幻想能力のほとんどは「次の行動を強化する」形の効果をもつ。

印象効果

プレイヤーは、類型に従って他のキャタクターに対する印象を決定する事ができる。
類型ごとに「印象効果」として他者に与える印象が決定されており、
プレイヤーはいつでも宣言することで自分のPCが他人に与える印象を決定できる。
これはルール上は必ずしも効果を持たないが、キャラクターの演技においては考慮することが望ましい。
また、GMは情報収集などの判定において印象に応じたボーナスやペナルティを与えて良い。

印象効果に使用回数の制限などはないが、1つのシーンあたり、単一のキャラクター(あるいは、GMが一括りに扱うとした集団)に対しては1つの類型からの印象効果しか有効でない。
印象効果を使用したあとのシーンにおいて、印象効果はキャラクターへの印象を固定するものではないが、「第一印象がそうであった」として考慮することが望ましい。

キャラクターや集団に対して「縁故」を結んだ場合、その時点で必ず「印象効果」が適用される。これは回避できない。

類型の感知と秘匿

類型は最初は秘匿情報であり、キャラクターに遭遇したときや、キャラクターについて知ったときに類型が即座に判明するわけではない。

NPCの縁故に関する情報は、「情報収集」の項目における情報項目としてGMが適宜設定する。
〈幻想知識〉などが適切であるが、類型によっては他のスキルを使用してもよい。
(例えば、「芸術家」に対する芸術関連のスキルなど)

名前や顔を知っているだけの時点では、この情報項目の目標値は20を目安とする。
その後、NPCに関する情報が集まるに従って、難易度が変化する。目安は以下の通り。

  • 直接PCがNPCからの縁故の対象になった:対応する類型について、目標値14
  • 対象のNPCが縁故を持っているNPCから情報を得た:対応する類型について、目標値16
  • 直接NPCと会話し、縁故に関連するキーワードについて話題になった:対応する類型について、目標値14~16

NPCによっては、故意に類型をごまかすような行動を取っていてもよい。
こうした場合は、NPCの{知性}+〈交渉〉との対抗判定になる。

もちろん、類型が判明したところで、GMがそれを逆手に取ってミスリーディングを仕掛ける可能性などもある。
また、類型がどのように行動に反映されているかはGMの設定に依存する。
類型はあくまでメタレベルの情報であり、GMはうまく活用してセッションを盛り上げると良い。

PCの類型

PCの類型をNPCが把握した場合、それに従って行動する可能性もある。
PCが類型を隠す場合は、{知性}+〈交渉〉で判定して目標値を定める。
基本的には、類型はメタレベルの情報であるため、(縁故ルールを含めて)NPCが実際にPCがから受けたと判断できる情報を元に行動を決定すると良い。

PC間の場合は、原則として類型は公開情報である。
(ただし、PC間で対抗するような形のセッションの場合は、この限りではないとしてもよい)

縁故

幻想値と縁故の設定

幻想値の源となるのは、キャラクターと物語(セッションにおいて進められているストーリー)との関係である。
各セッション毎に、キャラクターは、セッションの中で出会ったキャラクターや事項に対して縁故を結ぶことができる。
縁故の設定は原則的にプレイヤーが申請し、GMが可否を判断する。
縁故を結ぶ際はどの類型に従って縁故を結んでいるか決定すること。
一人のキャラクターは、同じ対象について、2つ以上の類型に従って縁故を設定することはできない。
必ず一つの類型に従う縁故を持ち、これを破棄しなければ別の類型から同じ対象についての縁故を設定することはできない。

縁故1つあたり、選んだ類型についての幻想値を1点得られる。
縁故は最大で7個まで、1シーンあたり1つ取得できる。

キャラクターや集団(制限なし)

登場したキャラクターや集団に対する縁故を取得する。
縁故を結べる対象は類型によって制限されるほか、類型によっては対象のキャラクターや集団からの本人への印象を「印象効果」に従って決定する。
縁故を設定できる状況の指針としては、キャラクターとの出会いや関係が互いの行動に何らかの影響を与えた場合である。
縁故の設定は初対面に限定しないので、何らかのきっかけがあればその時点で縁故を設定してもよい。

縁故の取得に際して、元々シナリオの予定になかったキャラクター(モブ)を認めてもよい。
また、特にGMが詳細を決めていない場合(情報収集先など)、縁故として結べる対象の登場をプレイヤーが提案してもよい。
この場合、プレイヤーは再び対象と関わることでレベルを上昇するチャンスを得られる。
物語に頻繁に登場するキャラクターの場合と異なり、何らかの方法でレベルを上昇するチャンスを探さなければならないことに注意。

縁故はコネクションとは無関係でよい。
コネクションはキャラクターがどのようなキャラクターと関係を持ち、人脈として活用することができるかを表す「設定」であるのに対し、コネクションは実際に進行している物語の中でできた関係という「現状」を示すものである。

PCとの縁故は非常に結びやすく、比較的容易に上昇させられることから、原則一人までとする。
二人目以降は、得られる幻想値を半減(切上げ)する。

記憶(最大2つ)

セッション中の何らかの場面を指定し、その場面に対する縁故を取得する。
また、キャラクターの発した言葉や、書かれていた文字などを指定してもよい。
記憶は現実のものであったかを問わない(夢などでもよい)。
縁故を結べる対象は類型によって制限される。
縁故を設定できる状況の指針としては、その記憶が鍵となる行動をとった場合や、伏線となっている記憶の意味が明確になった場合などである。

目的(最大1つ)

キャラクターがセッション中で設定する目標に対して縁故を設定してよい。
この場合、目的とキャラクターの類型の間には関連性があることが望ましい。
なお、行動の目標がある程度変更する場合も想定されるが、GMはこれを認めて縁故レベルを継続させてよい。
例えば、最初に挙げた目標が途中で達成可能で、状況に応じて新たな目標を設定した場合などがこれに該当する。あるいは、最初に挙げた目標が悪手であると判明して、新しい手段を考えだした場合もこの裁定が適切である。

縁故の結び直し

縁故を新規に取得する代わりに結び直しても良いが、この場合、幻想値は増加しない。

幻想値の前借り

プレイヤーは、幻想値を前借りして幻想能力を使用することを選んでも良い。
この場合の制限は以下の通り。

  • 前借りした場合、幻想値をその値まで引き上げる。
  • 縁故の数が幻想値に満たない場合、以後のシーンで縁故を取得して幻想値をその値まで確保する必要がある。
  • 縁故の数が幻想値に満たない類型が1つ以上ある場合、前借りは使用できない。
  • 縁故の数が幻想値に満たない類型が1つ以上ある場合、GMはGMの判断を優先して縁故を与えてよい。印象効果の適用なども通常通り行う。
    • 前借りした場合、縁故によるキャラクターのあり方の決定にGMの介入を許可する、ということになる。GMはこれを明確なペナルティとして扱うのではなく、「GMが想定するそのキャラクターの役回り」を実現するように縁故を割り振ること。

NPCと類型および縁故

NPCの縁故

主要なキャラクターであれば、GMの判断によってNPCも類型を持ち、幻想能力を使用できる。
NPCの縁故はセッション開始時点で設定済みで良いが、一つの類型あたり5~6点程度を目安とすること。
これらから得た幻想値に基づいて、NPCは幻想能力を使用する。

また、セッション中に適切な場面でNPCはPCへ向けて縁故を設定して良い。
この縁故に従って、PCがNPCへ向けて抱く印象が決定される。
(これはPLによるPCの行動を制限するものではないが、印象を考慮して何らかの形で行動に反映させたり、あるいは印象に反する行動の理由付けが存在していたりすれば、演技として適切である)
また、縁故に従ってNPCの類型を予測できるはずなので、その後の展開におけるキャラクターの方向性がある程度読めることになる。
もちろん、PCと同様に、類型に反する行動を理由づけすることもできる。(類型に反した行動にルール上のペナルティは殆ど無いが、PLを楽しませる形で利用できればセッションに対する評価は高くなるはずである)

シナリオ上、何らかの能力を使用したことが重要な鍵となる場合、
GMはこれを幻想能力の使用として位置付けておくとよい。

特殊な類型

類型「ラスボス」は、原則的にセッションに一人のNPCのみに認められる。この類型は、他の類型に加えて(数の制限に含めずに)設定して良い。この類型を持つキャラクターは、「セッションにおける重要な敵役であり、セッションのクライマックスとなる戦闘の相手である」ことを示す。

この類型は、クライマックスの戦闘が開始するタイミングで必ず明かされ、同時にPC全員に対して縁故を1Lv取得する。同時に、PCはこのNPCに対する縁故を(レベルの制限を無視して)選択しているどちらかの類型から取得して良い。

類型「ラスボス」が明示されていることは、ラスボスのみに許可されている特殊なスペルカードを使用できる前提条件となる。スペルカードの効果については、「特殊なスペルカード」を参照すること。

なお、何らかの理由でPCがラスボスとなることが適切と判断するなら、GMはPCに対して類型「ラスボス」の設定を認めて良い。これはセッション中に裁定され、その時点でPCの有効な類型に「ラスボス」が追加される。このタイミングでスペルカードを設定し直してもよいとする。

原作キャラクター

原作のキャラクターは、GMの判断で無制限に幻想能力を使用できるとしてよい。
目安としては、「特に強力なキャラクターとの共通認識が得られるキャラクター」などをこのように扱うと良い。特に、「原作のキャラクターに干渉すること」がセッションの進行上不適切な場合はこれで拒否してもよい。

その他、裁定の指針

対抗判定時の能力の適用

戦闘時など、DPの仕様を伴う対抗判定を行う場合、達成値上昇/低下が適用されるのは以下の順番とする。
(ただし、GMの判断やその場の状況に応じて修正してよい)

  1. 攻撃側がダイスを振る(DP使用量もこのときに決める)
  2. 攻撃側に対する達成値上昇/低下効果の使用をすべて宣言
  3. 攻撃側の達成値を確定
  4. 防御側がダイスを振る(DP使用量もこのときに決める)
  5. 防御側に対する達成値上昇/低下効果の使用をすべて宣言
  6. 防御側の達成値を確定
  7. 結果判定

実質的に、以下のような使用方法が可能となることを意味する。

  • 達成値上昇効果
    • 攻撃側に使用する場合:防御側へ要求する達成値を高める
    • 防御側に使用する場合:ダイスの結果を見てから、攻撃成功→攻撃失敗に変更できる可能性がある
  • 達成値低下効果
    • 攻撃側に使用する場合:防御側へ要求する達成値を下げる
    • 防御側に使用する場合:ダイスの結果を見てから、防御成功→防御失敗に変更できる可能性がある
      特に、達成値低下効果によって防御成功→防御失敗に変更される場合、「達成値低下効果があるならもう1DP使用していた」といったクレームがつきやすい。この場合はある程度寛容に振り直しを認めるなどの取り扱いを推奨する。やや面倒ではあるが、可能であれば判定前に達成値低下効果の使用可能性を確認しておくことが望ましい。

なお、攻撃側・防御側が不明確な場合、PCとNPCであれば、PCを防御側とする。PC同士であればイニシアティブが低い方を攻撃側とする。

縁故の設定に関する裁定の指針

「類型と幻想能力」のルールの目的の一つは、「妖怪や英雄らしいキャラクターの表現を推奨するための動機づけ」であって、例えば「キャラクターの行動に縛りを与え、こうした制限下で上手く行動を考えるようにゲームを複雑化すること」ではない。このため、縁故の設定において、縁故の設定対象との関わり以上に明確な行動は求めなくてもよい。

例えば、「狩猟者」の類型を持ち、「今はむやみに襲わないが、本来は人喰い妖怪である」と設定したPCの場合、類型に従った行動は人間を襲うことだが、例えば守るべき対象の人間のNPCを襲ってしまえば、セッションで設定された目標を達成できなくなってしまう事になり、他のPCの目的とも多くの場合衝突して、セッションが台無しになる可能性がある。類型と縁故に関するルールはこのような行動を求めるものではない。

こうした場合の一つの方針は、「人喰い妖怪であることを演出して守るべき対象の人間NPCを怖がらせつつ、実際には状況などの理由からそんなことはせずにきちんと守る」ことだが、このような場合には問題なく「狩猟者」の類型からの縁故を許可してよい。その後、「人喰い妖怪だけれど守ってくれる」といった印象をNPCに与えることが出来たり、あるいは人喰い妖怪としての葛藤を(それほど深刻なものでなくとも)多少なりとも示せれば、縁故のレベルを上げて良い。

より簡単に裁定するなら、特にこうした演出がなくても、プレイヤーが申告するなら縁故の設定を認めても良い。縁故のルールに従い、対象の人間のNPCは狩猟者の類型を持つPCに対して恐怖や不安の印象を抱くこととなり、それはその後の関係に影響するはずである。このように、縁故を設定したいという申請自体が「狩猟者」としての演出を含む(あるいは、そうした演出をGMに依頼する)ものであるとみなしてよい。

なお、同じ例で守るべき対象の人間のNPCを襲った場合も、類型ルール上は縁故の設定を認めてよい。ルールそのものはこうした行動を禁止するものではない。

幻想能力の使用に関する裁定の指針

幻想能力は、千幻抄の他の能力と異なり、その場のGMの判断とプレイヤーの希望に従って効果が決まる部分が多い。
従って、どの程度の効果を発揮してよいか迷う場合があると思われる。
こうした場合のためにある程度の指針を示すが、基本的には「PLの希望を尊重しつつ、セッションが簡単になりすぎないように裁定する」ことを心がけると良い。ある程度適切に縁故のルールを運用できていれば、そのキャラクターを演出するためにそれなりのシーンをこなしているはずであり、幻想能力はそうした努力に対して十分な報酬となるものである。

なお、幻想能力は基本的にセッションの進行に関するものであり、戦闘においては、原則として、データ的に書かれている効果(達成値の上昇や能力レベルの上昇など)として効果を裁定すること。
(戦闘中に何らかの情報が追加で判明するなど、戦闘のデータ的な状況に直接影響するものでないのであれば、この限りではない)