大切な原稿を守るために

Last-modified: 2009-08-08 (土) 14:00:10

大切な原稿を守るために

はじめに

 創作文芸板では「新人賞の関係者にアイデアを盗まれた」というような書込が散見されます。ネットの風物詩と笑うのも2chの楽しみかもしれませんが、原稿を守ることが大切であることも確か。何より「アイデアを持ってかれちゃうかも」なんて疑いながら新人賞に挑戦するなんてそれだけで精神衛生によくありません。
 そこで提案です。
 あなたの原稿を守るためにできることを探してみませんか。

電子署名

 電子署名ってご存じですか。肉筆でのサインに準じるもので、暗号技術を用いて署名者を明らかにする技術です。本人確認や偽造、改竄の有無を明らかにするためにあらかじめ電子データに施しておくものです。電子署名の中の特定の技術を指す言葉が「デジタル署名」です。

タイムスタンプ

 電子署名の中には「タイムスタンプ」という機能もあります。
 普通のパソコンデータでも作成日時や更新日時はタイムスタンプとして確かめることはできますが、通常のタイムスタンプはパソコン内部の時計を元に記録するため日時が自由に設定できてしまいます。これでは何の証明能力も持ちません。プリントアウトに日付を書き込んで保存しても同様です。
 そこで登場するのが電子署名と組み合わせて公証能力を持たせたタイムスタンプです。個人のパソコン内部の時計ではなく、インターネット上の時刻認証局と呼ばれる「いじれない時計」を利用して改竄不能のタイムスタンプを捺すことができます。時刻認証事業者が運営するe-文書法的に証明能力のある時計を利用します。

PFUタイムスタンプ

 具体的にどうするか、となると商用サービスを利用することになるのでタダではできなくなってしまうのですが「知人の法律関係者に頼む」などという迷惑かけまくりで実効性に疑問符の付く方法よりも確実でスマートです。
 一例としてPFUタイムスタンプを紹介しておきます。

  • 準備
    デジタル署名の準備
     個人では「セルフサイン」の証明書を利用するのが手軽です。公的サービスを利用して署名自体を証明することもできますが、署名者が自分で署名したことを証明するだけであればセルフサインで十分です。
    タイムスタンプを購入
     PFUタイムスタンプの場合は1000スタンプ/10500円です。
  • 原稿完成
  • PDF出力
  • PFUタイムスタンプツール for adobe acrobatを利用し署名

 サンプルを添付しておきます。fileprotect_your_manuscript.pdf

 作業としてはシンプルですが「デジタル署名」を扱うのが初めてである場合には敷居が高く感じられるでしょう。私(紹介者)はドキュメントスキャナを購入した際に付属してきた体験版100スタンプセットでPFUタイムスタンプを知り、利用するようになりました。

法律関係者に頼るということ

 上記のタイムスタンプで大切なことは「原稿を外部に出す前に電子署名すること」です。原稿のオリジナル制作者であることの証明は誰よりも早く捺されたタイムスタンプが証明します。他人に見せたり、出版社に送ってしまった後になって「原稿を盗まれたらどうしよう」と不安になったり、似た作品が出てから「オリジナルは私だ!」と喚き法律関係者に頼ってもただもめるだけで何一つ証明できません。
 事前に証明手続きを取っておくこと。
 これ以外に真に原稿のオリジナル性を主張する手段はありません。

 ただし、アナログな方法で原稿のオリジナル性を証明しようとするととても大変です。

  • 完成稿を第三者に読んでもらう
  • 完成稿のコピーを第三者に預かってもらう

 このどちらかが必要となるはずです。「知人の法律関係者」にタダ働きさせるよりは業務として依頼する方が確実な気はします。

内容証明郵便

 「内容証明郵便」という方法も手軽です。とはいえ、数百枚ある原稿の内容証明は困難なので梗概一枚だけを自分宛の内容証明郵便とするのが無難でしょう。また、「e内容証明郵便」というオンラインの簡易内容証明も同様に利用できるでしょう。PFUのタイムスタンプは1000スタンプからで個人でスタンプパッケージを購入しても使い切れそうもありませんが、内容証明郵便は逆に1枚単位のものに向きます。

 繰り返しになりますが、賞や出版社と喧嘩をするための準備を勧めているのではありません。保険のようなもので、備えることによる安心を勧めています。

 以上、素人によるまとめなのですが、本職の法律家の方がおいででしたら有効な「備え」のアドバイスをお願いできれば幸いです。