イベント/要らないわよね、心なんか

Last-modified: 2012-05-01 (火) 00:45:47

シナリオ/世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント。


要らないわよね、心なんか

夜会話

ティアマットの背に搭乗し、真龍に案内される様に空を駆け抜けてゆく。
途中、開けた地帯に着陸、キャンプを張って休息・夜を過ごすこと何回か。
そのキャンプでの最中の出来事だった。

 

最初に話を振ったのはフリオニールだった。
「黄道十二星座騎士団の話は、大昔の出来事なんだろう?」
それに対して彼らの話を最初に見つけたパチュリーが反応した。
「ええ。書物の状態からして夢物語か何か、そう受け取ってもいいくらい昔の話だった。
……それがどうしたの?」
「……なんで、それが今頃になってそれが出てきたんだ?」

 

その疑問は一同にとっても疑問だった。
あまりにもハマっていたが故に、四国連盟は彼らを黄道十二星座騎士団と扱った。
実際にそう名乗りを上げた一員もいた。
しかし、大昔の書物に書き記されていた存在……存在しない筈の存在が何故現れたのか。
通常ならば彼らの名を騙る、姿を模した偽物。そう受け取るだけで済む。

 

しかし、

 

亡者の様な姿、異形への変貌。
彼らを補佐するアンフィプテレの不死性。

 

……想像以上にハマり過ぎたそれらを見て、彼らを伝承を模した戦闘狂だけで済ませるのは難しいモノがあった。

 

「蘇った、とか」
「……蘇った?」
オウム返しに帰った問いにフランドールが翳りを浮かべ、呟く。
「そう、例えば……黒の神とか」
遥か昔に滅んだ亡国イフラマドの皇子・痛風など、前例はある。
そしてあの神、オーディンは何より戦乱を求めていた。

 

……つまり、あれか。

 

また お で ん の 仕 業 か ……と。
「……私怨交じりの確証のないあてずっぽうな考えだし、多分間違ってると思う。
何より聖石なんてものがあるから。それ自体はクリスタルの一種かな? って思ってるけど」
「聖石もよくわからないわねー。最初は追い詰められたらルカヴィとやらが出るんじゃないかって冷や冷やしてたけど、至ってその片鱗もないもの」

 

『……』

 

正直なところ、ぜんえzんわからない。というのがその場の総意だった。
溜息をつく一同を、ティアマットが眠たげに見ていたが、やがて火の粉交じりに欠伸をかいた。

靄の先へ

ティアマットの背に騎乗し、移動を繰り返すこと何回か。
ようやくザルカバードがズヴァール城へと辿り着く。

 

「……なんだあれ」

 

会戦にてレミリア・スカーレットにグングニルを叩き込まれ、完全に破壊されたズヴァール城の城門。
その城門を、薄い光の靄が膜の様を覆っていた。

 

ティアマットはその場に座り込むと、光の靄に鼻先を向ける。
「お前、黄道十二星座騎士団が、あの奥にいる……って言いたいのか?」
渾沌龍は肯定する様に首を前に傾けた。
座り込んでいる姿を見るに、どうやらティアマットはこれより先に付いてきてくれないらしい。

 

「行くしかないようね……」
「……www」
覚悟を決め、光の靄へ乗り込む。

「アリエス」

神殿。或いは何処かの都市。
ズヴァール城内部に乗り込んだ。そう思われた筈の内部は、全く別の場所だった。
「!?」
そして、一行の前には一人の騎士が佇む。
「なんだ、ここは……」

 

『愈々を以て侵攻が認められました』
どこからともなく、アンジーと呼ばれたアンフィプテレの声が空間に反響して響き渡る。
『敵戦力は強大。ですが、使命は果たさねばなりません』

 

『アリエス』
アンジーの声に、騎士が首を上げた。
その肩には例に漏れず4の数字、牡羊が描かれた紋様がある。
「使命、か。お前が何を考えているか。俺にはわかるよ、アンジー」
アリエスと呼ばれた騎士は軽い口調で返した。
彼の視線の先には、侵入者……多くの同胞を破った者達の姿が見える。

 

「……この先、何が起こるのかもね」
その声の裏には、どこか暗い響きがあった。
『発言の意味が不明です。アリエス。使命の遂行を』

 

「そうだな。そのために化物になったんだ」
牡羊座の騎士が身を構えた。
「やってみるさ、お前の望む儘に」

 
  • VS.アリエス
    Tower Knight
    勝利条件:アリエスの撃破
    敗北条件:主人公の戦闘不能
     
    黄道十二星座騎士団の一員、アリエスとの大規模戦闘。
    自軍から正面方向にやや離れた位置にアリエス一体、その周辺に大羊族がソロで3ユニット配置されているという構成になる。
    アリエスはスリプルⅡで睡眠状態を誘発させてくる他、単体に大ダメージを与える特殊技「つらぬき」を使用する。
    大羊族も使ってくる特殊技が怖いが、レベルはアリエスに比べるとだいぶ低め。アリエスは雑魚が戦闘を仕掛けられるか、殲滅されるまではその場を動かないので、雑魚をゆっくり仕留めてからかかろう。
    攻撃力が高いので防御力が高い面々を主軸に挑んだ方がいい。
 

騎士が崩れ落ちる。
一行が感じ取った勝利の感覚は、しかし、足を踏み締め、瀕死の身を必死に支えるアリエスの姿に霧散した。
「悪いが、只で終わるわけにはいかない」
アリエスが、一歩踏み込む。
「……このままじゃあ、アンジーに申し訳ないんでね」

 

「まだやるつもりか……!」
「……聖石だか、不死だか知らないけど、お仲間は呼ばないの? 一人で挑んでる時点で詰みじゃない?」
「聖石……?」
アリエスが漏らしたのは懐疑の声だった。
「えっ」
騎士が億劫そうな身で、溜息をついた。
「……いやに食い違うと思えば矢張りか。ロードランとは違うんだな、此処は」
「ろ、ロードラン?」
なんだ意味不明なこと口走ってきた>>牡羊座
「ははは、意味がわからない、か。……まぁ、いいさ」

 

「俺はアンジーの指示を……『捨て駒』の役割を果たすだけだ」

 

その刹那、アリエスを中心に燐光が集った。
「……今の俺に残されたなけなしの人間性……、お前達にくれてやる
やがてアリエスの全身が白光へと変じ、業火を生む。
『!』
自爆するつもりか!?

 
 

「……後は頼んだぞ」

 
 

直後に、爆風が一行を襲いかかった。

乙女座、魚座、そして天秤座

アリエスが起こした爆風は、一行を仕留め切るには至らなかった。
彼が自爆する直前にアリスが咄嗟に人形を投擲・爆発させたのだ。
発生したのは小規模な爆発であったが、一行を自爆の範囲からふっ飛ばすには十分であった。
……無論、無傷では済まなかったが。

 

濛々と煙を上げる爆心地を見やりながら、一行はダメージに悶える。
「い、痛-っ!?」
「言ってくれれば受け身取れたのにー!」
「うはwwwwひどいwww……」
「……御免、余裕がなかった」
いや、あの自爆から避けられたのは助かったけどさ……。
「結局、痛い目は見たな……っいたた」
「取り敢えずケアルだね……」

 

体制を立て直す一行。その時、煙の向こうから声が響いた。
「アリエス、仕事は見届けた。後は、私達が引き受けよう」
……アリエスは末期に捨て駒と言っていたが、こういうことだったのか。
煙を払いのけ、三体の騎士が姿を見せた。

 

9と乙女座のエンブレム。
3と魚座のエンブレム。
10と天秤座のエンブレム。

 

「いよいよ本気で殺しにかかってきたって具合か……」

 

「ウィルゴはともかくよぉ、オレ達まで担ぎ出すたぁ相当手詰まりだな、アンジー!」
天秤座の騎士が濁声で痛快に笑い飛ばす。
「アンタ、昔からあたし達のこと嫌っていたからねぇ。アンジー?」
それを聞いて魚座の騎士がおかしそうに、艶めかしい女言葉で囁いた。……その声音は紛れもない男のものである。
『発言の意味が不明です』
「ハッハー! ……変わっちまったなぁ、アンジー!」
「文字通り、全てを捧げたってこと?」
魚座の騎士が首を傾げる。
「体も心も……つまり魂も? ……ねぇ、アンジー?」
そして堪らないと言った風情で、体をくの字に折り曲げた。
しかし、その声には憐憫と自虐の色がある。
『発言の意味が不明です』
どこからか聞こえるアンジーの返答は、声音も、内容もそっけない、どこまでも機械的なものだった。
それこそ、本当に機械か何かの様な……

 

「そこまでだ。ピスケス、リブラ。……我らの使命を、アリエスの行いを無に帰すことは許されない」
「あーハイハイ、真面目さんは困るわぁ」
「ったく、アイツも無茶しやがってよォ。重い。まったく、重いったらありゃしねぇ」

 

『ピスケス、ウィルゴ、リブラ、行動を開始。Charge(突撃せよ)

 

「心、ねぇ?」

 

「要らないわよねぇ、心なんか! ……それで勝てるって言うならさぁッ!

 
  • VS.ウィルゴ&ピスケス&リブラ
    stain
    勝利条件:敵の全滅
    敗北条件:主人公の戦闘不能
     
    黄道十二星座騎士団が一員、ウィルゴ、ピスケス、リブラとの大規模戦闘。
    ウィルゴは機動性が高く、剣戟による辻斬りを得意とし、ピスケスは遠距離手段の攻撃を豊富に持ち合せ、ロングレンジから此方を一方的に狙い撃ちをしてくる。
    そしてリブラは防御関連の性能が高く、此方を狙い撃つピスケスの前方に立ちはだかり、彼を護る様に行動するという盾役。
    これまでのような雑魚はいないが、味方ぜいいんの残りHPが75%の状態でスタートする。
    距離があるため、遠距離攻撃を行うピスケス以外は最初のターンで攻撃することはないので、回復による持ち直しに集中したい。
    幸いリブラ以外は脆いので、ウィルゴを対処した後、ピスケスをさっさと撃破することがこの戦闘をスムーズに終わらせるポイントとなる。
     

激闘の末、三体の騎士が血だまりに倒れた。
「…………ひっどい冗談よねぇ、アンジー」
魚座の騎士、ピスケスが喘ぎながら呟く。
「あんたも、あたし達も、目的を果たす為にこんなバケモノになったってのに……それがこのザマ」
「その目的が何だったかすら、もう忘れちまったけどな!」
リブラが野次を飛ばす様に、ピスケスの言葉に付け足した。
「そうねぇー……全部忘れちゃってまぁ……本当に笑っちゃうわぁ」

 
 

「……ハハハハハッ」 

 
 

「……アーッハッハッハッハッハッハッ……!」

 
 

死して身が霧散するその最後まで、ピスケスはただただ哄笑するのみだった。

 

「……先に消えちまいやがった。にしても強いなァ、お前ら……」
「犠牲を払い、我らが全力を以てしてもこの醜態、か。堕ちたものだ……」

 
 
 

「……しかし、何だったんだろうなぁ。オレ達の目的は……」
「……勝利以外あり得んだろう」
「そんなんじゃねえよぉ。人間辞めちまった時に何が望みだったか、ってやつだ」
「…………」
「ああ、お前も覚えてないのか。ウィルゴ」

 
 
 
 

「本当に酷い冗談だぜ。アンジー……」

 
 
 
 

騎士達が霧散した後を眺め、フランドールが呟く。
「何が目的なのか、それすらもわからずに、それでも戦い続ける……」

 

「あの人達は……」

 
 
 
 

「……そろそろ敵も壊滅状態だろう。倒した騎士達の数はこれで10体だ。逆算すれば、残りは――」
獅子座の騎士と、水瓶座の騎士。
……そして、あのアンフィプテレ、アンジーだけだ。