覇王への挑戦 ～激震のオスマン帝国～

　（ワラキア地方・ある森の中…）
　
謎の男
　――ったく、完全に迷っちまったか…
　でも空気というか風景的に
　だいぶ近いような……ん？
　
オスマン兵
　……………
　
謎の男
　さっきの、同郷の連中じゃねえか！
　おぉい！　待ってくれ！
　
オスマン兵
　…………
　
オスマン兵
　ひぃっ！
　ば、化け物……！
　
？？？
　…………
　
オスマン兵
　ぎゃあああああああああッ！
　
？？？
　…………
　
　…………
　
謎の男
　……おいおい、こいつは……
　ヤバイんじゃね？
　
　（オスマン帝国首都・イスタンブール）
　
シナーン・パシャ
　――死地へようこそ。
　その愉快な恰好はあんたたちの勝負服か？
　
ニーナ
　いやその…、違うんです…違うんです……
　ちょうどケルトに伝わる、悪霊を祓うお祭りに
　参加していたところでして……
　
　それで、オスマン帝国でも今ちょうど
　そんなお祭りをしていると噂になっていて…
　様子を見に来ただけなんですごめんなさい…
　
シナーン・パシャ
　…っはは！　そう縮こまらないでくれ、冗談だ。
　しかし、そうか…そう噂が広がっているのか。
　
　“ヤツ”の相手をしている間にヨーロッパの連中が
　攻めてきたら…と警戒していたところに
　プレイヤーが来たからな。
　
　さすがに焦ったぜ。
　……けど、そういうつもりはないってことだよな？
　
ニーナ
　は、はい！　もちろんです！！
　
シナーン・パシャ
　だが、プレイヤーがそうでないとはいえ
　このままでは攻め入れられるのも時間の問題。
　今の状況をなんとかしねぇと……
　
ニーナ
　あ、あの…
　オスマン帝国は今、どのような状況で…？
　
ウルージ・ハイレディン
　…………
　
バルバロス・ハイレディン
　…………
　
シナーン・パシャ
　この国は今、正体不明の敵と交戦中だ。
　
　竜の紋章を掲げ、敵を串刺しにしながら進軍する
　通称“カズィクル・ベイ”――
　オレたちはそれの相手で手一杯なのさ。
　
　おまけに神出鬼没だ。今できることは哨戒と索敵、
　発見時の戦闘、そして撤退――撤退に失敗すると
　そこで終わりだ。生きて戻ってくることはない。
　
　……はは、確かにお祭り騒ぎだ。
　突然現れて消える、まるで亡霊のようなヤツを
　帝国総出で相手しているんだからな。
　
バルバロス・ハイレディン
　――まあ、ここまで事情を知ったんだ。
　お前らも参加していけ。
　悪霊を祓う祭り…なんだろ？
　
ニーナ
　…………は、はいぃ……
　
ファリド・メフルザード
　――しかし参謀。
　プレイヤーとてヨーロッパ人！
　嘘をついている可能性もある！
　
　そう簡単に信じていいのか！？
　
シナーン・パシャ
　メフルザード、お前はまたそんな……
　
バルバロス・ハイレディン
　いや、いじゃねぇか。メフルザードは
　プレイヤーと戦って
　疑念を晴らしてこい。
　
　しかし今はどこの海域も戦場だ。
　もし途中でカズィクル・ベイと遭遇したら
　交戦も認める。
　
シナーン・パシャ
　……プレイヤーに兵士の訓練と
　哨戒を一気に押し付けるとは、
　やりますね。
　
ウルージ・ハイレディン
　……カズィクル・ベイの相手で司令官は
　だいたい出撃している。
　
　なかなか他の連中の面倒はみていられねぇが、
　かといって放っておくわけにはいかん。
　弟の判断は正しい。
　
シナーン・パシャ
　…………
　
ウルージ・ハイレディン
　……シナーン、あいつのことを考えているな。
　確かにあの男がいれば、
　もっと他の作戦立案もできただろう…
　
シナーン・パシャ
　いえ、ウルージ殿。
　いない者のことを考えていても仕方ない。
　
　ここにいないあの迷子野郎のことよりも
　今はプレイヤーを組み込んだ作戦を
　立て直しますよ。

シナーン・パシャ
　プレイヤー！
　これが今日の支援物資だ。
　今日もよろしく頼むぜ！

ファリド・メフルザード
　……ぬう…ここまでやるとは……
　
ナヴィド・ロスタム
　ウオオオオオオ！
　さすがはプレイヤーだあああ！
　オレが見込んだ男の中の男ォォォオオ！！
　
シナーン・パシャ
　お、メフルザードは納得したか？
　じゃあプレイヤー、
　改めて作戦を伝えるから――
　
ナヴィド・ロスタム
　プレイヤーよォォオオオオ！！！
　いざッ！　このオレともッ！！
　手合わせを頼むウォォオオオオオオ！！！
　
シナーン・パシャ
　……お前もかよー…

マホメット・シャルーク
　―――………
　
シナーン・パシャ
　様子はどうです、シャルークの旦那。
　
マホメット・シャルーク
　敵の――カズィクル・ベイの動きが変わった。
　
シナーン・パシャ
　なんだって…？
　
マホメット・シャルーク
　プレイヤーのヤロウに
　狙いを定めたのかもしれねぇ。
　
シナーン・パシャ
　……皇帝の側を離れられねぇ
　ウルージ殿とハイレディン殿に代わって
　あんたが一番ヤツと戦ってたもんな。
　
　わずかの変化も、オレよりあんたのほうが
　気づきやすいってところか。
　
マホメット・シャルーク
　……ヤツが狙いを定めたのなら
　多少は動きやすくなる。
　オレは引き続き独断で動いて構わねぇな？
　
シナーン・パシャ
　ああ！
　頼りにしてるぜ、シャルークの旦那！

？？？
　――おぉーい！
　そこの船！　待て待て、おぉーーーい！！！
　俺を乗せてくれぇい！！！
　
　………………
　
謎の男
　――ッはーーーっ！　助かった！！
　ついでになんか食べ物分けてくれねえ？
　ああ、強奪するつもりはないから、このとーり！
　
　………………
　
謎の男
　……ふー、生き返った生き返った。
　ありがとな、お人好しな提督さんよ。
　
　アンタがいたおかげで助かったから、
　こんなこと言うのもアレだがよぉ…
　ここは危険だぜ、移動したほうがいいぞ。
　
　……え？　知ってる？
　フーン……、変なヤツ。
　ま、ちょうどいいか……
　
　俺も敵の正体を探っててよぉ、
　しばらく厄介になってもいいか？
　この船が拠点となると俺としても助かるし。
　
トルグート・レイス
　そういや、名前聞いてなかったな。
　――プレイヤーか。
　俺はトルグート・レイスってんだ、よろしくな。
　
　事情があってオスマン帝国から離れていたんだが、
　いざ帰ろうとしたら霧に巻き込まれるは、
　知らねぇ海域に放り出されるわ……
　
　とにかく迷いに迷ってようやく
　近くまで戻ってきたと思いきやこの騒ぎだろ？
　――ったく、参っちまうぜ。
　
　ま、アンタの邪魔にならねえようにするから、
　用があったら呼んでくれや。
　俺も好きにやらせてもらうしよ。

トルグート・レイス
　……アンタ、ずいぶん戦い慣れしてるよな。
　どこかの国の軍人か？　……え、違う？
　でも軍事訓練にはいろいろ呼ばれる？　へぇ…
　
　街に投資もするって、商人かよ――は？
　遺跡の発掘もしてるのか？
　つまりアレか、海賊以外はなんでもやるのか。
　
　……ときどき海賊もする……はあ、そうですか……
　
　………怖……
　
　そうウロウロしているなら、オスマン帝国の
　ハイレディン兄弟とか、シナーンとかのことも
　知っていたりすんのか？
　
　…やっぱり知ってたか！　だよな～！
　で、どうよ？　アンタ、あいつらのことどう思う？
　
　…頼りになる、だあ？
　またまた気を遣ったご意見じゃねぇか。
　本当のところはどう――え、俺？
　
　そうだなぁ…、ウルージは急に黙り込むから
　何考えてるのかよく分からねぇし、バルバロスは
　人遣い荒いし、シナーンは――
　
　シナーンは、心配性だよな。
　あぁー、帝国戻ったら絶対に「心配かけるな」って
　殴られちまうわ。帰るのやめるかなあ。

トルグート・レイス
　――よっ、と！　どうよ、様子は。
　あのおっかねぇ敵を止める方法、
　なんとなく予想がついたぜ。
　
　……攻めるのをやめる、だ。
　
　ヤツは自分の領土に敵――
　つまりオスマン帝国の連中が侵入してきたから
　駆逐しようとしているだけなんだろうぜ。
　
　あー…、なんか俺にも原因ある気がしてきた。
　……いやいや、ねぇわ。
　俺ただの迷子だし、仕方ねぇよな。
　
　ともかく――劣勢に劣勢が続いて、オスマン帝国は
　首都目前まで押し込まれているが、
　なんとか耐えきるしかねぇ。
　
　ま、戦えるところまで戦いますか。
　この戦いが終わったら、俺も帝国に帰るとするぜ。

マホメット・シャルーク
　……………
　
シナーン・パシャ
　――はあ…、
　一時はどうなることかと思ったが……
　
ウルージ・ハイレディン
　なんとか押し返したようだな。
　シャルーク、シナーン、よくやった。
　
シナーン・パシャ
　はは…、ウルージ殿…
　功労者はプレイヤーですよ。
　なんせ……
　
バルバロス・ハイレディン
　――よおトルグート、
　ずいぶん長い休暇だったじゃねえか。
　休んだ分、どうなるか分かってるな？
　
トルグート・レイス
　うへぇ…、ほどほどに頼んます。
　
シナーン・パシャ
　……まさかトルグートを連れて帰ってくるなんて
　まったく予想していなかったぜ。
　敵の撃退の他にも世話になっちまったな。
　
ニーナ
　あ、あはは…
　トルグートさんの件は偶然ですけれど、
　お役に立てたようで良かったです。
　
シナーン・パシャ
　そういえば、何かの祭りと勘違いしてたっけな。
　そっちはもういいのか？
　
ニーナ
　あっ！　そうですね。
　そろそろヨーロッパに向かわなくちゃ…！
　
バルバロス・ハイレディン
　相変わらず忙しねぇな、お前らは。
　せっかく出してやった報酬、忘れるなよ。
　
ニーナ
　は、はいっ！
　ありがたく頂戴します…っ！
　
　――ふう…、初めはハロウィンのお祭りと
　勘違いしての出来事でしたけど…
　皆さんのお力になれたようで良かったですね。
　
ロッコ・アレムケル
　報酬もいただいちまいやしたし、
　遠慮なく使わせていただきやしょう！