FR

Last-modified: 2022-09-27 (火) 19:10:50

クルマの駆動方式の1つでフロントエンジン・リアドライブ(FrontEngine・RearDrive)を意味する。

名称の通り、車の前方にエンジンを搭載して後輪を駆動する方式。

この駆動方式の長所・短所を挙げると、
長所

  • 前輪は操舵、後輪は駆動と専用にでき、前後輪で役割を分担できる。そのためタイヤ性能に余裕が生まれ、より大型で高出力のエンジンを積むことができる。同様の理由からタイヤのローテーションの必要がFFに比べて少ない。また、整備性が良くタクシー等の整備が頻繁に必要な車種に向いている。
  • 後輪に荷重がかかる発進・加速時のエネルギーのロスが少なく、FF(前輪駆動)と比較して加速に有利。
  • 前輪の切れ角が大きく取れるため、最小回転半径がFF方式に比べて小さい。*1
  • 後輪が車を押す形になるため、FFに比べてハンドリングには有利である。*2

短所

  • プロペラシャフトなど、部品点数が多くなるため高コストになる。*3
  • トラクション性能、高エネルギー時(高速レーンチェンジや高G旋回)のスロットルのオン、オフ両方での高いスタビリティー、居住性(主に乗り心地)を高い次元で満たすサスペンションの設計が難しいため、シミュレーションや検証実験に時間がかかる。*4
  • プロペラシャフトが中心線を貫通しているため、車内の床に起伏ができ居住性が悪い。運転席と助手席の間の床にトランスミッションのための大きな張り出しが必要となり、キャビンの居住性や運転席の足元スペースを少なからず圧迫する事になる。
  • リア・サスペンションに大きなスペースが必要なうえ、デフ、プロペラシャフトも加わり、有効スペースが少なくなる。車内空間が狭くなりやすい。
  • エンジンやトランスミッションなどが積まれた重い車体前部を相対重量の軽い=接地荷重の少ない後輪が押し進める構造のためスリップしやすく、雨や雪などの悪天候下、荒れた路面では走行安定性が悪い。*5
  • 他の駆動方式に比べて駆動輪(後輪)への荷重が軽いため空転しやすく、少しのくぼみにはまってしまっても抜け出せなくなることがある。*6

かつて自動車が普及し始めたころは、フロントタイヤを駆動する技術が未熟だったために、大衆車(特にセダンタイプの車)はほぼFRを採用していた。しかし、時代の流れとともに前輪駆動の技術開発が進み、英国のBMC・MINIに始まってVWゴルフ、アウディ80、ホンダシビックなど小型車からFF化の潮流が流れ込み、大衆車からFRは駆逐されていった。そのため現在は高級車や、一部のスポーツカー向けの駆動方式として採用されている。

また、意外に思われるかもしれないが、トラックはFR駆動が多い。貨物自体を重量物として利用することからFFにするメリットがない(後ろに積んだ貨物によってトラクションが抜けやすくなる)ためである。*7

一部のスポーツカーでは重量配分を改善するため、エンジンを前輪の車軸と運転席の間に搭載することがあり、「フロントミッドシップ」と呼ばれることがある。*8


*1 FFは自在継手を用いる構造から、前輪の切れ角が大きくとれず、旋回半径が他の方式と比べて大きくなりがちになる。
*2 一方で、直進安定性は前輪が車を引く形となるFFの方が有利である。消しゴムを後ろから押すより前から引くほうが安定するという例えは有名。
*3 FRは構造上、FF方式と共有できる部品が少ないため、FFとFRで別々にパーツを作らなければならない。
*4 これも開発費がかさんでしまうため、高コストの一因となる。
*5 ただし、スリップしやすいということは駆動輪を滑らせやすい、ドリフトさせやすいということでもある。ドリフト走行にFR方式の車が好まれやすいのはこのため。
*6 寒冷地や凍結した路面では顕著。対策としてタイヤへの荷重を大きくするためトランクに重量物を積むドライバーもいる。
*7 ただし、2トンクラスまでの欧州の自動車メーカー製の商用バン・トラックは殆どがFF駆動である。
*8 初めてこの名称を用いたのはSA22C型RX-7である。そのような配置自体は2000GTなど以前からあった。