兄弟をいろいろな部分で対比したものをまとめているところ。主成分は妄想と創作用。

ドラマで描かれるサムの希望とディーンの絶望
ストーリーとしても頻繁にサムは希望が、ディーンは絶望が投影されるシーンが登場する。わかりやすいのはシーズン15、サムを追い詰めたチャックが「サムの希望は砕いた」とはっきり言っているところだが、ほかにも理由がある。
サムは常に善なるものに執着し、普通であることを願ってきた。悪魔の血やルシファーの器という自分の力ではどうしようもないものと孤立奮戦する彼が朽ち果てぬようにと克己としてずっと持っていたのは『自分の運命は自分で描ける』というただ一つの希望だけ。ホープ。
チャックに突き付けられた操り人形の事実はこの努力が無に帰すほどの耐えがたい侮辱であり、生まれてからずっと抗ってきた希望が全否定されたことで「砕かれた」となる。
一方のディーンには絶望とは日常的にあたりまえとして存在するもの。4歳の時点で自分の幸せを捨てたディーンには絶望は悪いものではなく、現実来な終着点。サムが自分の過ちを浄化したがったのとは逆にディーンは汚れとして受け入れているため、だいたいの場合で絶望という諦めが先に来る。「やっぱこういうことなんだよ、いつもいつも!」と怒鳴り散らすシーンが多いのもこのせい。
チャックは二人が絶望に落ちれば諦めると思ってまずサムの希望を砕いたのだが、ディーンが絶望を糧にできる人物だとまでは見抜けていなかったのが敗北の一因となった。
神チャックが想定していたラスト
シーズン15でシナリオをやたらと書いては消してしている神チャックが本来二人にあてがおうとしたラストは「共食いするサムとディーン」である。15-19でディーンが「カインとアベルをやってやるよ!」と言っているが、チャックは地球上の全人類、天使や悪魔、カスティエルさえも消して聖書になぞらえた兄弟殺しで終わらせる予定だった。もしくはどちらも化け物にして他のハンターに殺されるラスト。
余談だがこのときのディーンの言葉はハッタリであり、サムもそれを汲み取って合わせている。ジャックのために神チャックの注意を引いていた。
実はほかにもチャック(ドラマ制作陣)の没案はいくつかある*1が、調べるのが大変なのであとでまとめます。
- もしもチャックの思惑通りになってたとしたら?
- if妄想として、もしチャックの想定通りのラストになっていたとしたら。
おそらく死ぬのはサムになるのだろう。なぜなら「カインとアベル」がそうであるように弟は兄に殺されるのが聖書の時代からその定めにあるから。カインがアベルを殺して人類最初の殺人が起きたのであればディーンがサムを殺すことで人類最後もまた同じ兄弟殺人で幕を閉じるという具合。
サムも兄と世界が救われるのなら、と自分の命を差し出すのも想像できる。その後にひとりになったディーンが絶望どころではない状態になるのも想像できるが。
昼型夜型戦争
| 項目 | ディーン | サム |
|---|---|---|
| 得意時間 | 深夜から明け方 | 日中から夕方 |
| 朝の起床時 | 不機嫌。コーヒーなしでは機能しない。 | 早朝もしくは目覚まし時計通りに起床。ランニングやストレッチ、ヨガなども可能。 |
| 夜間の状態 | 活性化。ハンターの技量も冴える。 | 疲弊、眠気。インパラで仮眠することもある。 |
ディーン
ハンターという仕事は得てして夜間任務が多い。ハンター気質を生まれ持っているディーンはジョンの教育が無かったとしてもそもそも夜型人間。朝は寝起きが最悪なうえに起床直後は大量のブラックコーヒーがないとほとんど動けず、まともな会話も怪しいまである。これはシーズン初期から見られるディーンお馴染みの姿。
この姿勢はそのまま日中まで引きずり、午前中のリサーチや潜入捜査は露骨に嫌がる姿も。脳が覚醒しはじめるのは午後も遅くなってからであり、ここまでの時間帯のハンター仕事はほとんどサムに投げることも。
夜間は実戦を含めた怪物たちとの戦いの時間であり、ここに伴いディーンは完全覚醒に至る。
バーでの聞き込みあるいはディーンの好きなハスラー・ビリヤードなどの賭け事やナンパも夜の娯楽であり、これらも含めるとディーンのバイオリズムは夜と完全一致する。
インパラでの夜間運転もとくに嫌がったシーンは無い。
ディーンにとって夜の闇はただの環境ではなくトラウマや自己嫌悪などの精神的な弱さを隠してくれる防壁になる。明るい太陽の下で人生を謳歌するより夜のネオンやほの暗い照明の下の方が精神的な安らぎを得られる構造特徴があると考察できる。
サム
本来的には昼型だが、ハンター仕事というなかでほとんど無理やり夜型生活を強要されている。
シーズン初期から終盤まで時おり出てくることがあるが、朝のサムは近くの街で早朝ジョギングしたり歯を磨いたり必要ならリサーチを開始したりとすでに覚醒状態に入っている。ジャンクフードを排したフルーツ、オーガニック、野菜などを中心としたメニューはサムが「規則正しいまともな生活」を理想として実際にそのように生活しようと孤軍奮闘しているからこそ。
午前中から脳はフル活動しており、図書館や役所などでリサーチに勤しみノートパソコンで様々な事件調査をする。ディーンがまだうだうだしている時間帯こそ快活に動こうとする。もちろんこの状態は長続きせず、夜半過ぎから徐々にパフォーマンスは低下しているとは思われるがハンター仕事が激務化する時間帯なのも理解しているために表面的には問題なく動いていると考えられる。
太陽の光こそサムのずっと目指してきた「まともな人間生活」の象徴。太陽と共に生きることを求めてしまうのはハンターではなく普通の人として社会生活を送りたいとする未練のようにも考えられる。
ちなみにカスティエルは24時間いつでも戦闘態勢。
寝相
ディーンは戦闘態勢の意味でのあおむけ寝、サムは丸まったようなうつぶせ寝なのはドラマでも事あるごとに出てくるシーン。たまに変わったりもするけど。
咄嗟の自体に即対応できるようにしているディーンと異なり、まるで自分を守るようにうつぶせになるサムの対比が描かれているらしい。心理学的にも繊細な人ほどうつぶせになるらしいしね。
二人ともシーズン初期はモーテル、終盤はバンカーでの寝姿が多いが、インパラでも車中泊や助手席で眠り込むことがある。ディーンは常に運転手なので寝るとしてもドライバー席のままシートを倒して眠り、サムは助手席で窓ガラスを枕に眠る。
ちなみにカスティエルは寝ない。ひたすら座ってるか立ってるガーディアン。
サムとディーンの信仰
サムは「毎日祈っている」とディーンを驚かせるシーン*2がある通り信心がある人物。4-3でも「神や天使を信じるのに抵抗はない」と言い切るなど、信仰心は人並みといったところ。
対するディーンはシーズン初期、天使たち(カスティエルなど)と出会うまで神も天使も信じない人物で、ドラマ内でも「神や天使がいればハンターたちに知れ渡っているはずだが誰も見てない」として真っ向から否定している。
サムの祈りは神に対してというよりは自分のなかの闇や汚れを払いのけるような願いのような祈り。ドラマのなかで教会で無心に祈るシーン*3もあるが、これは自分の過ちを自覚し浄化(クレンジング)するために大いなる何かと対話するものだった。神チャックではないことだけは確かだろう。
一方でディーンからすれば神や天使は救済してくれる存在ではなく家族や家をぶち壊した張本人でしかない。「あんなに祈ったのに誰も助けてくれなかった」という反抗心がある。シーズンが進んでもディーンが祈るのはカスティエルに対してだけである。(ジャックを探していた時に拳から血を流しつつ祈ったこともあるけど)
神チャックが出てきてからはサムは完全に信仰心を捨てて祈るとしても瞑想のような、自分のなかに答えを見つけるようなものになり、ディーンに至っては祈りと言うより宣戦布告のようなものに切り替わっている。
騙し演技の対比
| 演技要素 | ディーン | サム |
|---|---|---|
| 基本話術 | 空間支配(マニピュレーション) 主導権を握り、相手に質問させない | 武装解除(デ・エスカレーション) 聞き手に回る。相手に話しやすくさせる |
| 得意演技 | 威圧、挑発、ユーモアや色気など スピード感あるジョークと言いくるめ | 傾聴、同情、共感 優しい笑顔、苦笑、ポーカーフェイス |
| セリフ例 | 「俺は法(権威)だから答えろ」 | 「僕は味方(理解者)なので教えてください」 |
| ミス対処 | さらに嘘を重ねるか強引に話を逸らす | 理路整然とした言い訳や素直に間違いを認め、下手に見せる |
| 弱点 | ディーン本人の内面の傷や地雷に触れられると演技が続けられず、本音が乗ったりガチギレする | 倫理的ジレンマに遭遇すると良心の呵責から迷いが生まれる |
ディーン
ディーンの演技は外交的なエネルギーによる主導権の掌握、空気そのもののコントロールの強さにある。相手に疑う隙そのものを与えないプレッシャーの強い演技にはディーンの持つ色気や魅力も大いに利用されている。
FBI捜査官や地元警察の刑事など公的な権威力が高いペルソナの変装を特に好んでおり、命令口調やバッジの存在感を主張しつつ悠然と時には傲慢な態度を見せつけつつ相手を「従属」の位置に追いやる。
低いハスキーボイス、堂々とした態度、虚勢もありきの威圧感。これにより相手はディーンの存在感そのものに圧倒されつつも言いなりになりやすい。
- 「俺はFBIだぞ」「警察の調査に協力しないのか?」などやたらと主張する。
- 相手が内気なタイプであれば即座に納得し「イエッサー」と言ってしまいそうな威圧。
- 「FBIならこないだ来たぞ」などと反論されても「調査の残りがあってね」などスピーディーに言いくるめるディーンに相手も自分が間違ってるのかと圧倒される。
サム
サムの演技は内向的アプローチによる警戒心の緩和にある。あえて自分を無害で誠実で下手の人物に見せることで相手の防衛本能を除去して自発的な開示を促す。
技術職や保険調査員、医者や神父などサポート・分析の専門家で主張することが多い。ディーンが場の主導権を持つ一方でノートや資料を紐解きながら補足説明する位置が定番。感情のコントロールも実に精微。
193cmの巨体をあえて屈ませたり首をかしげたりなどをしつつ声もワントーン高めで柔らかく優しい雰囲気を漂わせる。誠実で話を聴いてくれる優しい人として印象を与え、ゆっくりと解きほぐしていく。
- 「どうか僕に話してくれないか」と相手がくすぐられて嬉しいところを的確に探る。
- 相手が本能的なタイプならおだてられて調子に乗って喋ってしまう。
- 「お前なんかに話さない」と壁を立てられても「僕なら君の話をしっかり聴けるよ」と優しくじっくり接することでこの人なら信用できるかもと歩み寄りたくなる。
サムとディーンが同時に操作をしている場合は「バッド・コップ」と「グッド・コップ」のシナジー効果が働き、よりうまく聞き出せるようにもなる。
ディーンが容疑者などにキツい口調で「てめぇがやったのは分かってんだぞ」などと威圧的に問い詰めて心理的な負荷をかける。この時に相手が口を閉ざしたり反発・反逆した場合にすかさずサムが「兄(あるいは同僚・相棒)が失礼を致しました。僕たちも時間が無くて困っているんです」と優しく介入することでより短時間で相手を篭絡または懐柔できる。
合言葉や決まり文句
ドラマ内で時おり出てくるウィンチェスター兄弟の合言葉などの応酬にはそれぞれ意味や理由がある。
- 「Jerk」 / 「Bitch」 (クズ野郎 / ビッチ)
- 吹き替え版では「ガキ」「クソッタレ」に訳されているシリーズを通して最も有名なやり取り。ディーンがサムを「Jerk(クズ)」と呼ぶと、サムが即座に「Bitch(ビッチ)」と返す。これは、深刻な状況から脱した時や喧嘩のあとなど普段通りの兄弟に戻ったことを確認し合うための「愛の挨拶」。
- 「Sammy」 / 「It's Sam」 (サミー / サムだ)
- 吹き替え版では「サミーちゃん」「その名前で呼ぶな」など随時変更もされる。シリーズ後半になるにつれ、サムがこの愛称を否定しなくなる(あるいはディーンが真剣な時にしか使わなくなる)過程に、二人の関係性の変化が表れる。
- 「Poughkeepsie」 (ポキプシー)
- ニューヨーク州の地名だが、兄弟間では「すべてを投げ出して今すぐ逃げろ」という究極の緊急停止信号(安全確認ワード)として設定されている。
- 「Funky Town」 (ファンキー・タウン)
- シーズン7で使用された、電話越しに「今、自分は監視されている(自由ではない)」ことを伝えるための隠語。
ゲイカップルに間違われるサムとディーンのドラマ意図
シーズン1~5あたりで頻発するのがゲイカップル扱いされるサムとディーンのシーンで、1-8『蟲』などでは新居を買う演技をしている時に「同性愛者にも理解を示しますよ」と売り主のオーナーに言われるなどしているがこれはネタでありながらもドラマ的な意図も含まれている。
そのたびに「俺たちは兄弟だ!」と返すのが定番になっているが、本来であれば常に二人で行動し安いモーテルでダブルベッドを共有する関係は世間一般からすればじゅうぶん家族以上に見える。「どれだけ一般社会から浮いた二人組なのか」を演出するため、わざわざ同性愛者だと言われたり誤解されたりというシーンが入れられているのだ。
これはなにもスーパーナチュラルだけに限った雰囲気ではない。スーパーナチュラル放送当時に放送されていた他のハリウッド作品『リーサル・ウェポン』『48時間』も同じくバディムービーであり、こちらでもホモソーシャルな雰囲気が漂う。制作陣はあえてそれを脚本に入れてコメディとして演出したのだ。
- ファンが喜ぶ裏話としてジェンセンとジャレッドは私生活でも仲が良く、ゲイカップルではないまでも共に生活していた時期があった。
- 「僕とジェンセンの私生活での仲の良さがどうしても画面上のサムとディーンの距離感に出てしまう。それが兄弟以上の親密さに見えてしまうのは、ある意味で僕たちの演技の成功だったのかもしれないね」とジャレッドもコンベンションでのトークで語っている。
学校や教師に対するそれぞれの心理
4-13でとくに克明に描かれるのがウィンチェスター兄弟の学校や教師への向き合い方。ドラマ自体が成人後のストーリーなので大きく関係することはないが、幼い頃からの兄弟の性格面を考察するうえでは欠かせない要素となる。
ディーンにとっては学校は学び舎ではない。ディーンはハンターになることを早々に決めていたため、強いて言えば父ジョンが教師である。なので学校やそこにいるクラスメイトたちとの関りは時間つぶしのための場でしかない。肉体派で勉強がそもそも苦手なのもあるかもしれないが義務教育自体が彼の人生のなかで優先順位が低いものである。
転校を繰り返す生活ではまともな関係性も築けない。クラスメイトの女子をロッカールームに連れ込んでキスに没頭したり不真面目ぶっているのもクールな男を演じて自分を守っていた。
教師に対しては冷ややかで反抗的。教師の伝えようとする「社会のルール」というものが自分たちの世界観(ハンターとしての闇のルール)では何の役にも立たないことを知っていたため。
ディーンが学校にいたのは自分のためではなくそこにサムがいたからということに尽きる。サムの監視をすることでいじめっ子だけでなく魔物の類に狙われないようにという守護者としての役目を担おうとしていた。
サムはもともと頭が良く、学校の勉強は自分の世界を広げる手段として捉えた。
学校にいる間はできる限り「普通」を徹底して一人の生徒となり、真面目に勉強を受け続ける。4-13に登場する教師ワイアットはひとりの恩師としてサムの人生に影響を与えた。稼業であるハンター以外の人生を描き、成長後にジョンと対立してでも大学に向かうきっかけになる場となったといえる。バリーやダークなどのクラスメイトとも親しいというほどでなくても知り合いになった。