死と傷
打撲・切り傷・刺突・射撃。裂傷・昏睡・精神崩壊。地獄・煉獄・中毒・損失・摩耗。そして度重なるあらゆる死亡。ハンターとして、天使として、あるいはただの人としてサム、ディーン、カスティエルが背負い続けたすさまじいまでの怪我の歴史をまとめているところ。
死亡

ディーンの負傷
ディーンの負傷は前線で戦う戦士らしく外傷が多い。

- 1-12
- 行きずりの事件で用いた高電圧武器の暴発で心臓にショックダメージを負い、生死の境に追いやられる話。
これまで負ってきた怪我はほとんどが外傷であり対処可能なものばかりだったところでの内臓疾患に太刀打ちできないディーンの絶望が描かれる。
同様にして死の病におかされているレイラという女性と対話するなかでディーンの自己犠牲精神の強さと重さが浮き彫りになっていく。
- 1-22
- シーズン1ラストの回。
アザゼルと対決することで内臓まで届くほどの深手を負い、サムの介助により病院にインパラを走らせる途中で悪魔の乗り移ったトレーラーに激突されて二重の怪我、というよりも重体へと追い込まれる。肉体の限界を超えたダメージとして怪我よりも重い肉体損傷状態が描かれた。
- 2-14
- メグに憑依されたサムから過度な暴行を加えられ、精神的にも追い詰められる話。
敵相手なら怯むことはないディーンが唯一無二の大切な弟に危害を加えられ、ディーンの防衛本能が家族への執着に切り替わる。何があっても弟を守らなければならない、それが成されなければ自分が孤独になるという強迫観念が後押ししている。
- 2-20
- ジンという理想の夢を見せる怪物との戦いにて、ハンター仕事をせず幸せな家庭と人生を送っているというディーンの本質的な願望が露わになるが実際は死の危機に瀕しており現実のサムの機転によりすべて打ち砕かれる。
特筆すべきは「幸せな夢を見ながらも死んでいく」という描写であり、これはディーンに関わる以後の話の伏線にもなる。
- 3-12
- ウィンチェスター兄弟がともに同じ位置*1に悪魔の憑依を防ぐためのタトゥーを刻んでいるのが明確になる。
人間として悪魔などの脅威に立ち向かうと決めた物理的な防壁。タトゥーは一生消えない傷同然であり、ハンターとして一生モノの覚悟を背負った瞬間として描写される。
- 3-10
- 夢のなかに現れた自分自身に「お前は父の道具だ」と罵られながら物理的な攻撃も加えられる。ディーンが抱える「自分には価値がない」という精神的傷跡を視覚化したもの。
- 3-16
- シーズン3ラストシーン。契約の期限により目に見えない猟犬に身体を引き裂かれ地獄に引きずり込まれる。シーズン3序盤ではなんとかなると考え、サムもまたなんとかしようとしてきた「逃れられない運命」が完遂された描写であり、猟犬による傷だけでなく以降の地獄での経験は彼の魂にまで裂傷を作り出すトラウマとなる。
- 4-1
- カスティエルにより地獄から引き上げられたときに肉体に転写された手跡。ディーンにとって、自分が神や天使に「利用される駒」になったことの証明。物理的な傷は消えても、この手形は彼が背負わされた「運命」の象徴として、後のシーズンまで重要な意味を持ち続ける。
- 4-10
- アラステアと再会し、その姿を見た瞬間のディーンの反応はまさにPTSD並み。シーズン4全体でのディーンの行動原理はすべてこの消えない魂の傷*3という名のの自己嫌悪に支配されたものとなる。
- 4-14,21
- サムとの価値観の相違から殴り合いにまで発展して激しく対立する。とくに4-21での殴り合い喧嘩はそれまでの比ではなく、ほとんど殺意が乗り合ったものだった。
これまでの喧嘩はサムがまだ本格的なハンターになり切れていないこともありディーンが兄貴として教育するようなもの、あるいは八つ当たりのような比較的ラフで軽いものだったのがこの「地獄帰りのディーン」というところを起点とした価値観の違いが肉体的な衝突とそれによる損傷となり描かれている。
- 5-18
- 追い詰められているザカリアの攻撃はこれまでとまったく異なる残酷さが乗る。臓器破壊や急性癌化現象(バイオキネシス)を得意とするザカリアによりミカエルの器になるための承諾を引き出されそうになる。自分の肉体が自分のものではないという究極の無力感(精神的傷跡)を植え付けられる。後のエピソードで一度折れかけ、Yesを言いそうになる原因を作る。
- 5-18
- ミカエルの器になると言い出したことが原因でカスティエルにより路地裏で激しく暴行(鉄拳制裁)される。すべてを捨てて天界に反逆した理由そのものであるディーンが諦めたような態度であること自体がカスティエルには怒りを呼ぶものだった。二人の関係が「家族」にかなり寄っていたからこその痛烈な傷。
- 5-22
- シリーズでももっとも美しく凄惨な傷となるのがこの5-22でディーンが耐え抜いた傷。ルシファーに憑依されたサムに一切抵抗を見せず、ボコボコにされても「俺はここにいる(I'm here. I'm not leaving you.)」と告げてサムを信じ続けた。その前のエピソードで「お前(サム)は信じられない」と再三告げていてからのこのシーンは胸を抉るほど。最後に意識を取り戻したサムを見た時のディーンの微笑はこの殺し合いにディーンが勝利した勲章でもある。
サムの負傷
サムの負傷は肉体よりも精神をむしばまれる、見えない傷が多い。自分のなかの闇と対話するようなシーンも多。

- 1-14
- これはドラマ全体でも言えることとしてサムはこの1-14のように精神的な傷、内側から蝕まれる系の『損壊』が多い(ディーンは肉体的な外傷の『損傷』)。普通の人間、生活に憧れながらも体質や運命がそうはさせてくれない残酷な兆候が表れていく。
- 1-16以降
- シーズン1前半はハンター仕事がまだ不安定なことも多くディーンに手助けされることが多いが、シーズン1中盤からはたくましく戦う姿や怪我を負っても立ち上がる姿が多発するようになる。ディーンの相棒として一人前のハンターになっていく過程でもある。
- 2-5
- 鼻血や失神、意識混濁などはどれも超能力を利用することでの影響であり、サムが人間ではないものに近づいていることへの無意識下の拒絶反応とも取れる。能力を使用するごとに肉体にもさまざまに影響が出始める。
- 2-14
- メグに肉体を乗っ取られてディーンを殺しかける。メグの操作によるものだが手首に自傷行為の傷を作ることになり、これは「兄を殺しかけた」という精神的な傷跡としても作用する。
- 2-21
- ジェイクにより背後から襲われ脊髄へ届く傷を負い、死に至る。
信頼し協力関係を築こうとしていたジェイクの裏切りと闘争への精神的ダメージの末に命を奪われるという一連の悲劇。これがきっかけでディーンに悪魔との契約をさせる羽目になったことまで含めてシーズン終盤まで引きずるサムの行動原理の核になる。
- 3-11
- トリックスターによりタイムループに巻き込まれ、何百と繰り返すディーンの死を見せつけられる。
毎日兄が死ぬ現場を目撃させられ続け、しまいには半年もの間をディーン無しで過ごす羽目になるという壮絶な経験をすることになる。「ディーンを救うためなら何でもする」という鬼気迫る心境が形成されるのはこの頃からで、甘さや幼さが徐々に消えていくのも特徴。
- 3-12
- ディーン同様に左の鎖骨下あたりに悪魔除けのタトゥーを刻む。ハンターとして一生を捧げる象徴であると共に一生消えない傷を負ったと同義。サムの場合は自分の中に流れる悪魔の血と自分とを切り離そうとする痛切な境界線の構築でもある。
- 3-16
- 契約の満了によりディーンは地獄に引きずり込まれるが、サムはそれを見ていることしかできなかった。
シーズン3各エピソードでサムはディーンの契約をなんとかしようとしてきたが何もかも不可能・失敗・手遅れであったことの証明となり、この時の無力感は魂の損壊となる。シーズン4で悪魔の血に頼ったりルビーの誘惑に屈することへと繋がっていく。
- 4-21
- シーズン4はその全体がサムの依存症という名の精神疾患を軸にしているが、なかでも刻銘になるのがボビーとディーンに半ば騙される形で放り込まれたパニックルームの監禁。
「出してくれ」という叫びも聞き入れてもらえずサムは狭い部屋で無数の幻覚に苛まれることになる。ことさらに心身を喪失させたのはディーンの幻影であり、お前は化け物だ、弟じゃなかったら殺していたという幻覚の言葉にサムの心はズタズタに引き裂かれていく。良心が本能に負けた瞬間でもあり、暴れ回るのを押さえ込む目的でボビーとディーンに取り付けられた拘束具がより深刻にサムの怪物化を物語る。
- 5-1など
- シーズン5全体に言えることとして、サムは「最終戦争を引き起こした張本人」あるいは「ルシファーの器になる最適人材」として天使や悪魔だけでなく人間からも付け狙われるようになる。5-1では天使のザカリアに、5-16ではハンター仲間のロイとウォルトによりそれぞれ致命傷を受けてしまい、「良かれと思ってやったこと」がことごとく世界に否定される精神的傷跡がサムを追い詰めていく。
- 5-22:悪魔の血の過剰摂取
- 膨大な悪魔の血の過剰摂取。ルシファーの器になると決めたサムが飲み干したこの血はこれまで依存症を意味する忌まわしいものとして忌避していたものだが、人間を超えた存在にならねばならないとした自己犠牲の証として飲み干している。人であることをやめるという決意の証明でもあり、肉体は完全に人間以上となる。低級の悪魔など視線を合わせることもなく一撃で屠れるほどの力すら手に入れている。
- 5-22:魂との別離
- ルシファーを受け入れて自分の肉体がディーンを殴り殺していくのを見ていることしかできないという精神的苦痛はこれまでの精神的なダメージとは比較にならないトラウマを残すことになる。ミカエル(アダム)を伴い地獄の檻に自ら落ちていくという一連の流れを含めてサムの精神と心は深刻なほどズタボロになる。ルシファーの告げた「魂は貰う」という言葉はそのままシーズン6への伏線となる。
カスティエルの負傷
カスティエルの負傷は肉体や精神だけでなく恩寵の損失や摩耗も含まれる。

- 4-10
- カスティエルは天使として頑健な肉体(器)を保持しているため、物理攻撃のほとんどは効果がない。ディーンに顔面を殴られても鉄を殴るような反射音をさせるだけで微動だにしない*5シーンがある。ところがこの話で出てきたアラステアは上級悪魔として天使を痛めつける方法を知っていた。
傷つき倒れて血を流すカスティエルの姿により「無敵の天使」が「傷つき得る個体」として演出されるようになる。
- 4-20
- ディーンの夢のなかに現れたカスティエルは神に逆らう形で真実を告げようとするが事態を重く見た天界の天使たちにより連れ去られ、天界で再教育という名の洗脳を施される。
ディーンの影響で天使として壊れつつあったカスティエルがこのことがきっかけで再び冷徹な天使に戻され、人間味や迷いなどを失ってのちに再度現れるようになる。本人はほぼ無自覚*6ではあるが肉体よりも深い位置に傷を負ったも同然であり、ディーンたちとの間に壁もしくは亀裂を作ることにもなった。
- 40-22
- カスティエル最初の反逆。再教育を施されたばかりのはずがそれよりも強い意志でザカリアに逆らい、ディーンを救い出してチャックのもとに飛んだ。この時にカスティエルはラファエルと対峙して一瞬にして原子レベルで粉砕され、チャックの髪に奥歯と肉片を残すのみで死に至ることになる。
のちに神の手により復活はするが、それは彼がもはや「天界の一兵卒」ではなく独自の役割を持つ特別な存在へと変質したことを意味する。
- 5-17
- シーズン5後半のカスティエルは恩寵を著しく消耗してしまい、ほとんど人間のような状態になる。ただの人間相手でも太刀打ちできなくなりヒーリング能力すら使用できなくなった。5-18では睡眠や鎮痛剤が必要になる描写もあり、ジミーの器の痛みがそのままカスティエルの痛みになる。
天使にとっての負傷が「肉体の損傷」から「人間の生理現象への屈服」へとシフトしていくと共にカスティエルのアイデンティティも徐々に摩耗していく。
- 5-18
- ミカエルの器になると決意したディーンの道を開くために守備についていた天使たちを退けるため自分の肉体に天使除けの魔法陣を直接刻み込み、自爆同然にして複数人の天使もろとも強制転移した。エビ漁船で気を失っていたところを保護され、入院するシーンも。ベッドで痛みに顔をしかめつつ自分の恩寵がもう無に等しいことをディーンに伝えている。
- 5-22
- シーズン5最終話にてボビーと共にルシファーとミカエルの対決に割り入った。聖油を仕込んだ火炎瓶でミカエルを一時的に退散させるがルシファーの怒りを買い、そのまま肉体ごと爆散させられる。格上の大天使に攻撃する自体がただの天使から見ればありえないことであり当然の結果としての描写となる。
とはいえサムがルシファーと共に地獄の檻に飛び込んだ直後に神によってまたしても復活しており、この時点でただの天使としては最上級であるセラフィムに昇格。ディーンの傷を治しただけでなく殺されたボビーすらその場で蘇生させた。
回復後の変化や推移もそのうち。