書き起こし/グリモワール

Last-modified: 2016-01-10 (日) 03:36:16

序幕
 夢見「可能性空間移動船、動作停止」
ちゆり「可能性空間移動船、動作停止」
 夢見「ふっふっふ…」
ちゆり「ああ、閉鎖空間の内部には着いているっぽいぜ」
 夢見「素敵ねぇ…」
   「さて現在の時空軸を報告し給え!」
ちゆり「主観想定での通常時空、西暦二千年前半の日本…」
 夢見「なんだとぉ!」
ちゆり「何が?」
 夢見「そこって、うちらが元いた所じゃないの!
   帰ってきてどうするのよ~」
ちゆり「あんたはバカなのかぁ~?」
 夢見「なんだとぉ!」
ちゆり「今回の目標は、並列体の回収じゃないって言ったのはあんただろうが」
 夢見「あたしが、そんなことを?」
ちゆり「うん」
 夢見「マジでか…。では…私は一体何をしにここに来たと言うのかね!
    て言うか、そもそもここどこぉ~!」
ちゆり「私はアンタから座標を聞いて夢幻遺跡を動かしただけだぜ」
 夢見「目的なんざ知らな…」
ちゆり「あ~!」
 夢見「うるせぇ!」
ちゆり「今、完っ全に思い出したぁ!」
 夢見「通常時空、西暦二千年前半日本、二重の結界により形成される閉鎖空間!
    その目的地に着いたと言うのかね!」
ちゆり「脳がおかしいのか?さっきからそうだと言っているだろうが」
 夢見「ステキ…、ステキよぉ~…
    私の探し求めるブツは、間違いなくここに多分ある!
    コードネーム:幻想郷 にね!」
 夢見「はーっはっはっはっはー」


一幕
ナレーション「博麗神社、幻想郷の東の境に位置する神社である
       木々や野鳥に僅かな春の気配を感じさせている
       ここ数ヶ月は大したトラブルもなく、境内を訪れるものはいつにも増して少ない」
 霊夢「ふんふんふん~♪(鼻歌:少女綺想曲~_Dream_Battle)
    まぁ、こんなもんでいっか。冬は落ち葉が少なくて楽ねぇ~
    雪さえ降らなきゃだけど…。ううっ、寒っ…
    さぁ、こういう平和な日は面倒事が来る前にこたつみかんするのが一番ね~」
  藍「面倒事とはご挨拶だな」
 霊夢「じゃあ、使いっぱの狐が来る前に、に修正」
  藍「ごきげんよう、博麗霊夢」
 霊夢「今は冬でしょう?何、紫の真似事してんのよ~?」
  藍「主人から預かった式だ」
 霊夢「知るか、そんなの。言っとくけど私は、こたつみかんで忙しいの」
  藍「君にはなくても、私と幻想郷には君に用がある」
 霊夢「あらゆる揉め事解決します、霧雨魔法店に御用の方は魔法の森まで」
  藍「先程、無縁坂付近で結界が何者かによって破壊された」
 霊夢「魔理沙んとこ行きなよ~」
  藍「正確に言うと、破壊されたというのは少々語弊がある」
   「消えたんだよ、結界。境界を含む周囲の空間がまるごと、突然ね
    これは大変な異変だ」
 霊夢「ん~?」
  藍「幸い、通常空間の消滅したため外との接触はまだない
    だが、通常空間は時間とともに回復してしまう
    博麗霊夢、君には結界の修復を頼みたい、外との接触を絶たれている間にね」
 霊夢「結界修理の式とかそういうの伝えもの的なものはないの?」
  藍「博麗結界の修理だぞ、そんなものあったら大問題だ
    それに、私は異変実行者の拿捕に向かわなければならない」
 霊夢「拿捕ねぇ~、めんどくさいな~、寒いし」
  藍「そんな薄着をしているからだ、今綿入れとマフラーを取ってきてあげよう
    それを着なさい」
 霊夢「めんどくさい~」
  藍「何をしているんだ君は!」
 霊夢「だってアンタのしっぽ、あったかそうなんだもん」
  藍「だらしがないなぁ君は…仮にも博麗の巫女だろ」
  橙「藍しゃま、御用の品をお持ちしました
    ってあー!お前、藍しゃまに何してるんだ~!」
 霊夢「あ~すっごい、すっごいモフモフ感…」
  橙「離れてよ~!くぅ~…」
  藍「こらこらっ、お前達喧嘩は止めなさい」
  橙「ほらっ、藍しゃま困ってるでしょう!」
 霊夢「文句があるならかかってきなさい」
アリス「何してるの貴方達…」
 霊夢「見てわからない?」
アリス「わからないから聞いているのだけど」
  橙「うぎぎぎ、離れろ~!」
 霊夢「断る」
  藍「橙、霊夢に持ってきた綿入れを貸してあげなさい」
  橙「あっ、はい…ねぇ、これ着れば暖かいから」
 霊夢「仕方がない、譲歩に応じる」
  橙「藍しゃま~!」
  藍「やれやれ…」
 霊夢「で、アリスは何の用?」
アリス「結界に異変が起きたようだから、一応伝えに来たのだけれども
    スキマの使いが居るのならば、話は通っているわね。じゃっ、私はこれで」
 霊夢「まぁまぁ折角だから、炬燵でも入って行きなさいよ」
  橙「おこた!?」
  藍「あくまでも、異変は後回しなんだねぇ、君は…」
 霊夢「そこの猫でも誘いなさい、私は私のやり方で異変の原因を探すわ」
  藍「待ちなさい、原因を探すって…」
 霊夢「もうすぐ、魔理沙が来そうな気がするんだけど」
アリス「だから何?」
 霊夢「あの足手まといは貴方の相棒でしょう?この狐から結界修理を頼まれたのだけど
    どうも気が進まないのよ…」
アリス「なら勝手にしてればいいんじゃない」
  藍「おい、君ぃ…」
 霊夢「私は行くわ」
アリス「魔理沙によろしくね」
 霊夢「なんだ、言っちゃうのか」
アリス「当たり前でしょう?……。あれっ…」
 霊夢「アンタ大丈夫?なんかふらついてるわよ」
アリス「大きなお世話よ」
 霊夢「なんだ、言っちゃうのか」
アリス「当たり前でしょう?……。あれっ…」
 霊夢「アンタ大丈夫?なんかふらついてるわよ」
アリス「大きなお世話よ」
 霊夢「ご飯抜いたの?やはりうちでこたつみかんしていくべきでは…」
アリス「…変わったわね貴方」
  藍「彼女は君の友だちかい?異変に首を突っ込むようなことを言っていたが
    危険を忠告しておかなくてよかったのかい?」
 霊夢「腐れ縁って奴よ、まあ、あの娘も大概だから大丈夫なんじゃない?」
  藍「そうか、君が言うなら問題ないのだろう」
  橙「藍しゃま~、おこた借りてもいいですか?」
  藍「橙、ここはうちじゃないだろ、そういうことは霊夢に断りなさい」
 霊夢「…変わったわね、か。アンタは変わんないなぁ…」


二幕
 ロリス「お母さん、これなぁにぃ?」
  神綺「ご本なの、あなたにプレゼント!」
 ロリス「私に!?ありがとうお母さん!」
  神綺「うふふふっ…」
 ロリス「おっきいご本だねぇ、鍵が掛ってる。これじゃ開けないよぅ?」
  神綺「うふふふっ、いいのよ。これはそう言う物なの」
 ロリス「ふーん」
  神綺「貴方が、心から望む事があったらこの鍵は開いて
     必ず貴方を助けてくれるわ」
 ロリス「そっかぁ…ありがとう、お母さん!大事にするね!」
  神綺「あら、ありがとうはさっきも言ったわよ」
 ロリス「あらっ、お母さんは何も知らないのね
     ありがとうは何度言ってもいい言葉なのよ」
  神綺「まあ、うふふふふっ…」
 ロリス「うふふふふっ…」


三幕
 夢見「その為には、この世界の八雲紫とコンタクトを取る必要がある
    違うかね?」
ちゆり「知らん、主語と目的詞を省くな」
 夢見「妖怪に治められているとかぁ~、そう言う事考えないの?」
ちゆり「頼むから日本語を喋ってくれ」
 夢見「ちゆり君、君は一体何年私の助手を務めているのかね?」
ちゆり「経過時間なら、まだ一年だぜ~」
 夢見「少しは察しなさいよ~!なんでさっきから意地悪ばっか言うの~!」
ちゆり「教授の喋り方が面倒臭いからだ!」
 夢見「なんだとぉ!このぉ!」
ちゆり「…へっ」
 夢見「むぅ…避けたな~!ちゆりの癖にぃ~!嫌い嫌い嫌い嫌い~!」
ちゆり「子供かー…、ああ分かったから、グズるなってば!」
 夢見「はぅー…、話、聞いてくれる?」
ちゆり「ああ、ああ、紫だろ?」
 夢見「あぁっ、どこに居るんだっけ?あのおばさん…」
ちゆり「不定、ほぼ不明」
 夢見「じゃあ、特定しなさい」
ちゆり「うん…、なんつうかさ、紫はやめたほうがいいんじゃないか?」
 夢見「ううっ、ちゆりの癖にぃ~!」
ちゆり「ああ、待て待て、違うっつうの!ほらっ、
    どこの紫も例外なく冬場は冬眠してただろ
    ここもそうなんじゃないかと思っただけだぜ」
 夢見「冬眠?そうだっけ?」
ちゆり「そうそう、それに考えてみろよ
    こんな手段で入ってきたんだ、あの妖怪だったら協力どころか
    あたし達を追いだそうとして、ひでぇ目に遭うぜ、きっと」
 夢見「そんなの仕方ないじゃ~ん、デカイ結界が2個もあるんだから」
ちゆり「大体、捨虫の術を使わず魔法使いになる、
    なんて都合の良いものが本当にあんのかよ?」
 夢見「夢幻遺跡の算出に間違いはないわ
    この世界に必ずその可能性はある!」
ちゆり「分かったよ、んじゃあ取り敢えず博麗神社かな?」
 夢見「霊夢の所に行くの?あの娘と普通に話が出来るのかなぁ?」
ちゆり「そりゃあ、運次第だな、まっここの霊夢が大人しい事を祈っとくぜ」
 夢見「はぅん、出来れば会わずに済ませておきたい所ね」
ちゆり「一番手っ取り早いぜ」
 夢見「あの娘苦手!」
ちゆり「あ~ん…、じゃぁ、人里にでも行ってみるか…」
 夢見「人里?」
ちゆり「安直だけどな~…あっ、確か御阿礼の子が居るのって今じゃなかったっけか
    八か九代目辺り」
 夢見「素敵素敵!凄いタイミング」
ちゆり「よしっ、じゃぁ人里行ってみるか」
 夢見「許可する!今こそ人里に向かい給え!」
ちゆり「徒歩だぞ、行っておくけど」


四幕
 ロリス「ねえ、夢子さん?」
  夢子「どうかしましたか、お嬢?」
 ロリス「どうして私だけ、皆と違うの?」
  夢子「質問の意図が理解出来ません。違うとは?」
 ロリス「うん、私だけヒトなんでしょう?」
  夢子「理解致しました。ご指摘の通り、我々魔族とは種族的差異があります」
 ロリス「どうして、私だけ皆と一緒じゃないのかな?」
  夢子「第一種戦闘態勢に移行」
 ロリス「えっ、どうしたの夢子さん?」
  夢子「種族的差異が原因による迫害を受けたと推察致しました
     直ちに報復行動に移ります。お嬢、対象の固有名と外見特徴を」
 ロリス「まっ、待って夢子さん!そう言うのじゃないから…ナイフしまって!」
  夢子「…了解。戦闘態勢を解除します」
 ロリス「もう…。すぐ早とちりするんだから…」
  夢子「申し訳ございません」
 ロリス「いじめられてなんかないよ。ゆき姉もまい姉も、サラもルイズさんも
     皆優しいもの…」
  夢子「了解致しました。突然そのような質問をされた理由を」
 ロリス「う~ん…。ただ、お母さん達と一緒がいいなって思っただけなの…
     理由は、よくわからないの…」
  夢子「神綺様のお嬢に対する愛情は、偽りのないものと認識しております」
 ロリス「うん、私もお母さん大好き!」
  夢子「種族がどうあれ、お嬢はお嬢です」
 ロリス「でも、夢子さんに聞いてもらいたかった」
  夢子「相談相手が複数いる中から私を選ばれたと仰るのでしょうか?」
 ロリス「うん!夢子さんなら、ちゃんと聞いてくれると思ったから」
  夢子「ご報告します。感情状態が、嬉しいに移行しています」
 ロリス「えっ!夢子さん、嬉しいの?」
  夢子「はい」
 ロリス「うふふふふっ、変なの!夢子さんは変わってるね!」
  夢子「可笑しかったでしょうか?」
 ロリス「だって、顔がいつもと一緒だよ!」
  夢子「嬉しいは、お嬢と出会ってから認識された状態です
     正しい表情の情報が欠落しております」
 ロリス「嬉しい事があった時は、笑うんだよ!」
  夢子「了解。笑う、こうでしょうか?」
 ロリス「あははははっ」 
  夢子「不慣れなため、コントロールができないものと推察されます」
 ロリス「いつか、ちゃんと笑えるといいね」
  夢子「はい」
 ロリス「お話聞いてくれてありがとう!」
  夢子「お役に立てて、幸いです。では、お嬢、私からもお願いを」
 ロリス「はい」
  夢子「先程の私が誤認したような事が起こったら、すぐに教えて下さい」
 ロリス「えっ、だっダメだよ!夢子さん強いんだから
     誰かを虐めるようなことをしちゃダメだよ!」
  夢子「いえ、予め私を諌めて頂きたいのです
     先程認識しましたが、お嬢の指示は私の自意識より順位が優先されるようです」
 ロリス「そっかぁ…うん、わかったよぅ…」


五幕
チルノ「行くよぉ!ダイアモンドブリザード!」
魔理沙「うわー!今のは危なかったぜー!」
チルノ「くそっ!超おしーい!」
レティ「毎度毎度飽きずによくやるわねぇ…」
魔理沙「どうしたチルノ?調子いいんじゃないか?」
チルノ「冬場のアタイをなめんじゃないわよ!
魔理沙「そっかそっかぁ、そういう事なら私も全力で行かせてもらうぜ!」
チルノ「見せてもらおうか、霧雨のスペカの性能とやらを!」
魔理沙「ふぅっ…。行くぜぇ!恋符、マスタースパーク!」
チルノ「わぁー…」
レティ「ワンパターンな奴ら…」
魔理沙「おい、そこの黒幕!お前も相手してやろうか?」」
レティ「遠慮しとくわ、弾幕バカと一緒にしないでくれる?」
魔理沙「おっ、ビビってやがるな!私に負けるのが怖いんだろうか!」
レティ「はいはい、ビビってますよ。チルノの相手が済んだのなら
    さっさと帰りなさい人間!」
チルノ「あたい大復活!ねぇねぇレティも一緒に遊ぼうよぅ?」
レティ「アンタと一緒にしないの、私は人間と馴れ合うつもりはないんだから」
チルノ「レティ、アタイのこと嫌いになったの?」
レティ「誰もそんな事言ってないでしょう?」
チルノ「じゃあ、弾幕ごっこしよう?」
レティ「なんでそうなるのよ?」
チルノ「いいじゃんいいじゃん、レティが見てるだけじゃアタイつまんないよぉ!」
レティ「一回だけよ…ホントは人間と口聞くのも嫌なんだから…」
チルノ「やったぁ!よぉし、そうと決まれば、レティかかってきな?」
レティ「アンタとやるのかい!?」
魔理沙「毎度毎度飽きない奴らだなぁ…。んっ?あれっ、アリスじゃないか?」
チルノ「マジで?よしっ、一緒に遊ぶぞ!」
魔理沙「アリス、よーっす!何時ぞや振りぃ!」
アリス「なんだ魔理沙かぁ…」
魔理沙「なんだとはなんだぁ?失礼な奴だなぁ…」
チルノ「アンタ、暇でしょ?弾幕ごっこするよ、弾幕ごっこ
    二対二な、アタイはレティとチームな!」
レティ「勘弁してよ~」
魔理沙「そういう訳だ~。たまには付き合えよ!」
アリス「呆れた…。何も気付いてないのね…」
魔理沙「おっ、何の話だ?」
チルノ「アタイが最強ってことかな?」
アリス「気になるなら霊夢の所にでも行きなさい」
魔理沙「あっ、おい待てよ~、アリス~」
チルノ「ちょっとぐらいいいじゃんか、折角レティが居るんだからさぁ…」
アリス「丁重にお断り申し上げますわ
    私は貴方みたいな妖精と弾幕ごっこするつもりはないの」
チルノ「アタイ?んっ、何で?」
アリス「貴方程度の娘と勝負なんて、やる前から結果が目に見えているでしょう?
    そんな暇があったら雑草の研究でもしていた方がマシだわ」
チルノ「えっ、アタイはただ、一緒に遊ぼうよって思っただけで…」
アリス「私は魔法使いよ。妖精ごときの遊びに付き合っている時間なんてないの
    そこの黒い紛い物と一緒にしないでもらえる?」
魔理沙「おい、アリス~…」
レティ「乗り気じゃない所悪いんだけど」
魔理沙「うぉ~っ!」
レティ「一身上の都合により、私はすっかり乗り気になってしまったのよねっ」
アリス「レティさん…だったかしら?残念だけど貴方の都合は私にはあまり関係がないの」
レティ「それは、奇遇ね!私も貴方の都合には全く興味がないの」
チルノ「なんかレティ、ノリノリだよっ…」
魔理沙「アリスに相当元気の付く奴いかれたみたいだな…」
チルノ「兎でも食べたのかな?」
魔理沙「雪女って兎でノリノリになるのか!」
チルノ「元気になるって聞いたことある!」
魔理沙「そういうのは、鰻の仕事じゃないのか?」
チルノ「そうだっけ?」
アリス「…っそう?私は行かせてもらうわ」
レティ「どこにでも行きなさい、私は勝手に貴方を襲わせてもらうから」
アリス「野蛮な妖怪…。上海?」
 上海「シャンハーイ!」
レティ「幻想郷の感謝なさい?弾幕ごっこなら、死ぬことはないわ?運が悪くない限りわね
    その生意気な口が、敗北の屈辱を受けたら、どんな声で泣くのか楽しみだわ?」
魔理沙「おいっ、ドSだぞドS!」
チルノ「魔理沙、ドSって、何?」
魔理沙「幽香みたいってこと!」
チルノ「なんだとぉ!あんなのよりレティの方が全然強いぞぉ!」
魔理沙「そうかぁ!?」
アリス「野蛮な上に悪趣味なのね…。良いわ、少しだけ遊んで上げる
    …あれっ…。」
 笑い猫「どうしたのアリス?君らしくもない…」
 アリス「貴方…」
 笑い猫「あいつ、強そうだよ?逃げたほうがいいんじゃないかな?」
 アリス「貴方を読んだ覚えはないわ…」
 笑い猫「勝負は勝たなきゃ意味が無い、だろっ?
     ほらっ、アリスいつものように」
レティ「あらぁ?怖気づいちゃったのかしらぁ?」
アリス「誰が貴方ごときに?……あっ…」
レティ「ちょっ、ちょっと貴方…」
チルノ「あれっ、アリス落ちてるの~?」
魔理沙「アリス~!…っとぅ危ねえ!おいっ!いきなりどうしたんだよアリス!」
アリス「うっ…」
魔理沙「アリス?おい、アリス!」
アリス「嫌、お母さん…」


六幕
 魔梨沙「靈夢!もうやめてっ!勝負は着いたわ!」
 ロリス「ううっ…お母さんをどうするつもりなの?」
  靈夢「ここの親玉?そいつは退治する」
 ロリス「えっ!お願い!やめてっ!お母さんを虐めないで!」
  靈夢「敗者の言葉を聴く筋合いはない」
 ロリス「嫌っ!夢子さん!助けて夢子さん!」
  靈夢「願いがあるなら人を頼るな」
 ロリス「ひっ!」
  靈夢「弱い者の言う事を聴く奴など居ない
     居るとすればそいつも弱者か、さもなきゃタダの馬鹿だ
     思いがあるなら、誰も逆らえないだけの力をつければいいだろ!」
 アリス「理想的な事言わないで!」
 魔梨沙「やめて靈夢!それ以上酷い事しないで!」
  靈夢「霧雨ぇ、アンタは私に命令してるのか?」
 魔梨沙「違うわ、お願いよ!」
  靈夢「私の話を聞いてなかったのか!」
 ロリス「お願い!」
  靈夢「くっ、付き合ってられないわね」
 ロリス「うっ…」
  靈夢「霧雨!どっちみちアンタは足手まといだ、ここで子守でもしていろ」
 ロリス「待って!行かないで!」
 魔梨沙「ダメっ!これ以上靈夢を刺激しないで!貴方をこれ以上傷つけたくないの」
 ロリス「離して!離してよぉ!」
 魔梨沙「ゴメン、ごめんね…」
 ロリス「うっうっ…お母さん…私が弱いから…私が弱いから!」
 魔梨沙「自分を責めないで!貴方は何も悪く無いわ
     私も靈夢みたいに強くない…。でも決めたの、もう負けないって!
     あいつより強くなるって決めたの
     本当に強いって、どういう事かがわかるまで、私はあきらめない
     だからお願い!貴方もあきらめないで!」
 ロリス「お母さん…。私がお母さんを守るんだ!」
 魔梨沙「大丈夫、あきらめないで信じていれば、願いは必ず叶うわ!」


七幕
アリス「理想的なこと言わないでよ!」
魔理沙「気がついたか~?」
アリス「貴方には私の何がわかるって言うのよ!」
魔理沙「うぇ~い、大丈夫そうじゃないかっ!」
アリス「…魔理沙?」
魔理沙「おうっ、魔理沙さんだぜっ!」
アリス「あれっ、私、今…」
チルノ「いきなり落っこちた」
魔理沙「気を失って倒れてたんだよ」
レティ「全く興醒めだわぁ、気絶してスペカ回避なんてねっ」
チルノ「そんで、お母さんってなんだ?」
レティ「女親のことでしょ、主に哺乳類が依存する奴」
アリス「はっ?」
チルノ「霊夢と魔理沙とお母さんが何の関係があるの?」
レティ「そんなの知るわけないじゃない…」
魔理沙「話せば長いけど、長い付き合いなんだぜぇ…」
アリス「えっ、ちょっ、どういう事?貴方達、さっきから何を言っているの?」
魔理沙「何って、お前がデカイ声で寝言言ってたんだぜ」
レティ「お母さ~ん、あ~ん助けてぇ~お母さ~んって
    カワイイ所あるんじゃない?」
チルノ「なんだぁ?お母さんって、アリスの友達?」
アリス「レティさん?悪いんだけど、本当に急ぐ用事が出来てしまったの
    弾幕ごっこはまた今度にしてくださるかしら?」
レティ「ええっ、構わなくてよ?アリスちゃん?」
アリス「ううん?」
魔理沙「おい、アリス~!」
チルノ「あっ、行っちゃったよぅ…」
レティ「チルノに詫びの一つでも入れさせようと思ったんだけどね…」
チルノ「詫び?なんで?アタイなんかした?」
レティ「ん~ん、なんかもうどうでもいいわぁ~」
魔理沙「なんだよ…手伝ってやろうと思ってたのに…」
レティ「人の弾幕ごっこにも首を突っ込むのね、貴方は…」
魔理沙「そうじゃなくってさぁ…、異変がどうとかって言ってたからさぁ…」
レティ「あらそう?どっちみち私には関係ないわね。…んっ?」
チルノ「ねぇレティ?」
レティ「なぁに?どうしたのチルノ?」
チルノ「お母さんって何?」
レティ「チルノ?」
 夢子「…失敬」
魔理沙「うわぁあぁあぁ…」
 夢子「この辺りで、お嬢の魔力を感知致しました。霧雨魔理沙、お嬢の所在を」
魔理沙「えっ、何?誰お前?」
 夢子「お久しぶりです、霧雨魔理沙」
チルノ「魔理沙の友達か?」
魔理沙「ええっと…、ゴメン、誰だっけ?」
 夢子「変化が確認できますが、貴方を霧雨魔理沙と認識します
    誤認がありましたら訂正を」
魔理沙「お、おうっ、私は霧雨魔理沙さんっ、だぜっ?」
 夢子「魔界の一件ではお世話になりました。神綺様の従者、夢子です」
魔理沙「あっ、あ~!夢子ね夢子!はいはい、魔界のね~へへー、えー
    どちらの魔界の夢子さんだっけか…」
 夢子「記憶に欠損を確認、説明を開始しますか?」
魔理沙「おうっ、宜しく頼むぜ!」
レティ「なんか、またややこしそうなのが出てきたわねぇ…
    今日は厄日だわぁ…」


八幕
  夢見「いやはや…人が空を飛んでるとは…非常識な世界ね…」
ちゆり「うん、厳密には妖精、妖怪、それに準ずる何かだ
    幻想郷は、博麗大結界って強力な結界で区切られている」
 夢見「なにそれ?」
ちゆり「結界の外と中を、常識と非常識で区切っているんだと
    だから、ここは言ってみれば非常識の巣窟だぜ」
 夢見「素敵!」
ちゆり「教授の基準が未だによくわからん」
 夢見「食べ物屋の屋台が多いのも、得点高いわ」
ちゆり「んまぁ…そのお陰で飢えないで済んでいるんだけどさ」
 夢見「鴇煮込みが食べられるのも、そのなんとかのお陰でしょう?」
ちゆり「うん、まあとき蕎麦だったら、落語みたいで面白いんだけどな~」
 夢見「素敵素敵~」
ちゆり「汚ねぇ、叫ぶな!」
 夢見「ねぇ、きっと探せばもっと素敵な何かに会えるわ
    他の世界の絶滅種が、ここでは屋台の味噌煮込みよ!」
ちゆり「私は断然、鴨の方が好きだぜ」
 夢見「ちゆり君、好き嫌いなどしていたら、私のように
    偉大な存在に成れんよ」
ちゆり「鴨も嫌いになるように努力するよ」
 夢見「ふーん、調査はもう少し素敵な何かを食べてからでもいいわねぇ…」
ちゆり「春になるまであんまり時間がない、もたもたしてたら紫が起きるぜ」
 夢見「ちゆり君、君は実に小者よの~」
ちゆり「はぁー、そうは言うけどさ、あいつが出てきたら悪くて死亡
    良くても強制退場だぜ」
 夢見「その辺は、臨機応変に対応ということで。
    …んっ、はぁー。ご馳走様でした」
ちゆり「要はアドリブじゃないか。うんっ、後小者ついでに聞いとくけどさ
    お代どうすんだこれ?こっちの通貨なんか持ってないぜ?」
 夢見「その辺は、アドリブで!」
アリス「ちょっといいかしら?」
 夢見「いえっ?食い逃げではないですよ」
ちゆり「食い逃げする気だったのか…」
アリス「貴方達、この辺りでは見ない顔ね」
 夢見「うん?随分可愛らしいヤクザねぇ?」
ちゆり「冗談だからな!冗談。コイツ、ちょっと空気読めない所あってさぁ」
 夢見「こいつだとぉ?」
アリス「私、さっき起きた異変について調査しているの
    話を聞かせてもらってもいいかしら?」
 夢見「異変?異変って、ナンジャラホイ?」
アリス「異変が分からないの?貴方達、里の人間じゃないのかしら?」
ちゆり「その人里を探して放浪中なんだ、えへへへへ…」
アリス「放浪?幻想郷で?貴方達、外から来た人間?」
 夢見「そうそう、外から来たばっかりで右も左も分からないのよ」
ちゆり「おいっ!」
アリス「外から来たばかり…。博麗神社には行ったのかしら?
    帰り道を案内してもらえるわよ」
 夢見「あー、あの娘ちょっと苦手で~」
ちゆり「あっ、コラッ!」
アリス「ふーん、異変が起きたタイミングに現れた
    霊夢を知っている外の人間ね…」
 夢見「あは、はははは…。こりゃ、アウトかな?」
ちゆり「教授が話すと語るに落ちるっていつも言ってるだろ、ドアホ」
アリス「表に出なさい」
 夢見「おっおう…。やっぱ、ヤクザだよこの娘」
アリス「変わった事がなかったかと、聞きつもりだったけど、予定変更ね」
 上海「シャンハーイ!」
アリス「貴方達、幻想郷に何をしたのかしら?」
ちゆり「別に何も?」
 夢見「可愛い!何あれ!」
アリス「いつまでとぼけた態度でいられるかしらね…
    返答次第では、痛い目をみてもらうからそのつもりで」
 夢見「ちゆり君、この娘は私を脅しているのかね?」
アリス「脅しじゃないわ、忠告よ
    この娘達は私が命令すればためらいなく貴方達を殺傷するわ
    無事で済みたかったら、知っていることを洗いざらい話しなさい」
ちゆり「ほら見ろ、もうボロが出た。結局短期勝負になるんじゃいか」
 夢見「私悪くないも~ん」
アリス「五秒あげるわ、五つ数え終わるまでに私の質問に答えなさい、人間
    一つ」
夢見「人のこと人間言うた、変わった言葉遣いが流行ってるのね~」
ちゆり「さっき空飛んでたぜ、妖精妖怪、それに準ずる何かって奴だ」
アリス「二つ」
ちゆり「なぁ、アンタ!私達はあんまし物騒な事は好きじゃないんだ
    ここは一つ、穏便に済まさないかな?」
アリス「三つ」
 夢見「どうしようか~、この娘、やる気満々よ?」
ちゆり「なるべく穏便が好ましいんだがなぁ、この場合」
 夢見「それじゃあ~…」
アリス「四つ」
 夢見「来~い!苺クロース!」
アリス「えっ?」
ちゆり「おかしい、私は穏便の意味を間違えて理解していたのか?」
 夢見「フッフッフッ、さぁお嬢さん?私をどうするんだったかな?」
アリス「気脈が狂った?違う!空間が不安定になっているんだ!」
ちゆり「気配だけで、変化を推察しやがった!教授、コイツただもんじゃないぜ」
 夢見「ふぅーん?どうしたのかな?五つ目のカウントが聞こえないよ?お嬢さん?」
アリス「なにこれ…あの十字架のせい?奴らの能力?」
ちゆり「あんたの事情はよく知らないが、私は人との接触を最小限に抑えたいんだ」
 アリス「戦闘になったら…」
ちゆり「悪いけど、何も言わずに帰ってくれないか?」
 アリス「間違えなくなにか知ってる、でも…」
 笑い猫「こんな訳の分からない連中の相手なんてしないほうがいいよ」
 夢見「お願い、聞いてくれる?」
 アリス「こんな訳の分からない連中、相手にしてられない、わね…」
 夢見「私、嫌いなのよ、弱い者いじめは」
アリス「行くよ、上海」


九幕
 霊夢「こりゃ酷いわね~」
  藍「ああ、何をどうすればこういう状態になるのか、見当がつかないよ
    差当り、自然現象ではないことは間違いない」
 霊夢「ドリルか何かで削ったみたいだわ」
  藍「空間を結界ごと掘削したとでも言うのかい?」
 霊夢「うーん…」
  藍「おいおい、冗談だろっ、紫様の境界は言わば概念のような物だ」
 霊夢「そうなんだけどねー…」
  橙「概念のような物ってどういう事ですか、藍様?」
  藍「分からないか?」
  橙「はい」
  藍「では、教えてあげよう。普通、物を落とせば落下するね」
  橙「はい」
  藍「当たり前の事だろ?」
  橙「えっ?はっ、はい」
  藍「当たり前の事、他にはそうだね…。火鉢に触れると熱い
    食事を摂らないとお腹が空く、魚は水の中でしか生きられない、そうだね?」
  橙「はい、当たり前じゃないですか~」
  藍「そうだね、これら当たり前の事は魔術の類で変化させる事はある程度可能だ」
  橙「陸でも生きられる魚に出来るということですか?」
  藍「その通りだ、橙は賢いな」
  橙「えへへっ」
  藍「紫様の境界は、今言った当たり前、そういう類の物だ」
  橙「えっと、なんとなくしかわかりません…」
  藍「なんとなく分かればいい。当たり前である紫様の境界
    今、その境界がどのような状態になっているのかというと
    簡単に言えば、なかった事になっているんだよ」
  橙「なかった事!?当たり前の事がなかった事って言うと…
    魚が陸でも水でも生きられるって事ですか?
    あれっ、どっちでも生きられないのかな?あれぇ?」
  藍「私にも状態が判るだけだ。どう作用するのかは想像しかできないよ」
  橙「藍様にも分からないんですか!?」
  藍「この境界の作用を考えるに、恐らく…」
 霊夢「ちょっと、大丈夫なんでしょうね、これ~」
  藍「ああ、害はないはずだ、元より幻想郷に生まれた物…
    正しく幻想入りした者にわね…」
  橙「正しく幻想入りした人?それ以外の人ってどういう事ですか?」
 霊夢「人とは限らないわよ?たまに外から迷い込んでくる物があるの
    後は、他の世界から来た奴とか…」
  橙「ふ~ん…。そういうのは、どうなっちゃうんですか?」
  藍「それが分からないんだよ」
 霊夢「とりあえず影響はモロ受けするでしょうね」
  橙「それって、大変な事じゃぁないの?
 霊夢「まぁ、そんなレアキャラの心配はしなくていいんじゃない?」
  藍「そういう事だ。もう暫くで春になる。紫様がお目覚めになられるまでなら
    放置しておいても問題ないだろう」
 霊夢「結界の方も見た感じ、急がなくても大丈夫そうよ」
  藍「おいおい、それは困るぞ。ここまで来てサボろうというのか、君は?」
 霊夢「仕事はするわよ!ただ、な~んか
    今ここにいる場合じゃないような気がするのよね~」
  藍「うん?そうか…。具体的に何か判ることはあるかい?」
 霊夢「有るわけないじゃない、そんな気がするだけなんだから」
  藍「結局、出来る事しかやらない訳か…」
 霊夢「思ったより厄介そうな気がするわよ、この異変…」
  藍「どうする?結界は後回しにするかい?」
 霊夢「他ふらふらするのも面倒臭いし、ここはここで終わらせるわ」
  藍「そうか。ならば私は予定通り、異変実行者の拿捕に向かう」
 霊夢「気のせいついでに、気をつけなさい、と言っておくわね」
  藍「ふっ、私の心配をするのかい?珍しいね、博麗霊夢」
 霊夢「するわよ!アンタは貴重な駒なんだから…」
  藍「…分かった、厳重に用心しよう…。さて橙、お前は霊夢についていなさい」
  橙「ええっ、私も藍様と一緒にいます!」
  藍「霊夢はこれから暫く無防備になる。いざという時はお前が霊夢を守るんだ」
 霊夢「えー…。頼りにならないわね~…。そんな猫、居なくてもいいんじゃない?」
  橙「ほらっ、巫女もああ言ってますよ」
  藍「私の式を貸してあげよう、これで何とかするんだ」
  橙「藍様~…」
  藍「聞き分けなさい、お前は私の式だろ」
  橙「…はい、分かりました…」
  藍「いい子だ、霊夢を頼んだよ、橙」
  橙「藍様…」
 霊夢「さて、と…。邪魔すんじゃないわよ!」
  橙「ひっ、虐めないでね…」


第十幕
 夢見「岡崎夢見、職業:大学教授、好きな食べ物は苺です!」
 阿求「はぁ…」
 夢見「パンツも苺なんだよ…」
 阿求「そう、ですか…」
 夢見「見る~?」
 阿求「ちょっ!」
ちゆり「慎め!ドアホ!」
 夢見「つっ、痛った~…」
 阿求「で、それで…」
ちゆり「私は助手の白川ちゆりだぜ」
 夢見「ちゆり君、もっとしっかり自己PRができんのかね!」
ちゆり「それを言うなら、自己紹介」
 阿求「あっ、ああ、いえ、構いませんよ…
    私が当家の主、稗田阿求です。よろしくお願いします」
 夢見「宜しく頼むよ君ぃ!」
 阿求「はぁ…、えっとぉ…。ご用向きを伺ってもよろしいでしょうか?」
 夢見「どこから話したらいいかなぁ?」
ちゆり「回りくどくてもしょうがないだろ、簡潔に用件を」
 阿求「何か、お知りになりたい事があって、いらっしゃったとお見受けしますが…」
 夢見「うん、そう!」
ちゆり「ズバリ、行け」
 夢見「うん!私ね、魔法使いになりたいのよね」
 阿求「魔法使い、ですか?私の知っている限りでも、何人かおられますねぇ…
    失礼ですが、貴方は…」
 夢見「人間ですよ」
 阿求「そうですか…。では…、私の知識では、人間から魔法使いになるためには
    捨食の術、捨虫の術を経る事が一般的のようですね…」
 夢見「捨食の術って、ナンジャラホイ?」
 阿求「簡単に言うと、魔法使いになる為の術で、この術の修業を経て
    完全な魔法使いへの過程を踏むわけですね~」
 夢見「へぇ~、修行とかするの~…。そういうのは、ないの方向で」
 阿求「ない方向で、ですか?」
ちゆり「捨食の術については、調査済みなんだ、効果なし、というかこの先生
    修行とかそういうのは、本当に、全く、完璧に全然向かなくってさ…」
 夢見「そういう事だよ、君ぃ!」
ちゆり「偉そうに言うんじゃない!」
 阿求「そうなんですか~…。言ってもらいませんと分かりませんよそういうことは」
 夢見「そういう事なんで、それっぽいのを一つ…」
 阿求「まあ…。ない事はないんですけど…」
ちゆり「おおっ、すっげぇ!流石、御阿礼の子」
 阿求「ええっとですね…。魔法の森に、アリス・マーガトロイドさんという方が
    住んでいらっしゃいます」
 夢見「聞いた事のない娘ね…」
ちゆり「ビンゴかもだぜ?」
 阿求「続けてもよろしいですか?」
ちゆり「頼む」
 阿求「この方は、魔法使いです。最近知ったのですが、どうもこの方
    不断の術を経ないで、魔法使いになったっぽいんですよ…」
 夢見「詳しく聞ける?」
 阿求「風説に聞き及んだことですので、あまり詳しくは話せませんが
    よろしいですか?」
 夢見「知っていることだけでいいわ」
 阿求「分かりました。とはいえ、普通に考えられる方法ではないらしい
    という事しか分かりません。ただ…」
ちゆり「ただ?」
 阿求「彼女が大事に持っている魔導書
    それが大きく関わっている事は間違いないそうですよ」
 夢見「なんか、本当に聞きかじりっぽい話ね、誰から聞いたの?」
 阿求「魔界に行った事のある方々です。霧雨魔理沙さんといいます」
ちゆり「魔界?」
 夢見「魔理沙、なの?」
 阿求「霧雨さんと、お知り合いなんですね?」
 夢見「知ってると言えば知ってるし、知らないと言えば知らないかも…」
ちゆり「いちいち混ぜっ返すな!
    そのアリスって娘、魔界と何の関係があるか聞いていいか?」
 阿求「この話は、全て霧雨さんから伺ったもので
    マーガトロイドさんは、魔界から幻想郷に来た方で
    この方は、霧雨さん、博麗さんと…
    あっ、博麗霊夢さんはご存知ですか?」
ちゆり「一応。 続けていいぜ」
 阿求「霧雨さん、博麗さんと親好深く、幻想郷に来た理由というのも
    魔界に居た頃に、このお二人と交流があった事がその理由だそうです」
 夢見「交流ねぇ…」
ちゆり「なんとなく、想像ついちゃったな…。それで?」
 阿求「そんな所です」
 夢見「魔梨沙の情報なら間違いないんじゃない?」
ちゆり「いや、魔理沙はハズレが多い…
    ここの魔理沙がハズレとしたら、眉唾だぜ?」
 阿求「なんですか?」
ちゆり「あっ、いやいや、別に!なんでもないぜ」
 阿求「そうですか…。少しはお役に立てたでしょうか…」
 夢見「ええ!素敵なお話ありがとう!」
 阿求「それは何よりです」
ちゆり「最後に、そいつの見た目を教えてくれないか?」
 阿求「見た目、ですか…」
ちゆり「直接会いたいんだ」
 阿求「そうですね~…。女性です!青い瞳に短い金髪で
    人形のように白い肌をしてらっしゃいます」
 夢見「ふむふむ…」
 阿求「他には…。そうですねぇ…。人形を操る魔法を扱われます」
 夢見「金髪で…、人形…。はて、どこかで…」
ちゆり「おいっ、それって…」


  第十一幕
 ロリス「お母さん、しっかりしてお母さん!」
  神綺「ごめんね、お母さん負けちゃった…」
 ロリス「大丈夫?痛くない?」
  神綺「大丈夫よ、ありがとう」
 ロリス「ごめんなさい、私が弱いから!…」
  神綺「うふっ、いいの。これはね、魔界にとっては、良かったことなのよ」
 ロリス「私がもっと強かったら、お母さんを守ってあげられたのに…」
  神綺「優しい娘…。お母さんはへっちゃらよ。もう、泣かないで…」
 ロリス「強くなりたい。誰にも負けない位
     強くなってお母さんを虐める奴は、皆私がやっつけてやるんだ!
     …えっ、お母さんの本が?」
  神綺「アリスちゃん?」
 ロリス「あれ、ここどこ?」
 笑い猫「こんにちは、初めまして」
 ロリス「貴方、誰?」
 笑い猫「僕の名前は、笑い猫。ようこそ、不思議の国へ」
 ロリス「猫さんが、どうして言葉を話しているの!?お母さん、お母さんはどこ?」
 笑い猫「君と会える日を楽しみにしていたよ…」
 ロリス「貴方もあいつらの仲間?お母さんをどこにやったの!」
 笑い猫「落ち着いて。僕は君の味方だよ」
 ロリス「お母さんはどこ!?」
 笑い猫「君のお母さんなら、外に」
 ロリス「外?外ってどういう事!?」
 笑い猫「外は外さ」
 ロリス「ここはどこ?」
 笑い猫「不思議の国さ」
 ロリス「元に戻して!お母さんの所に返してよぉ!」
 笑い猫「それが君の願いかい?違うだろう?君は別の強い思いがあった筈だ
     それを言ってごらん」
 ロリス「何を言っているの?貴方、誰?」
 笑い猫「僕の名前は、笑い猫。君の願いを叶えるために作られた
     絵本の水先案内人さ」
 ロリス「何、それ…。ここはどこなの?」
 笑い猫「不思議の国。君がお母さんからもらった本の中の世界さ」
 ロリス「そんなおかしな話が有るわけないじゃない」
 笑い猫「僕は嘘は言わないよ。君もこのおかしな世界が普通じゃないことぐらい
     なんとなく、判るだろう?」
 ロリス「う、うん…」
 笑い猫「僕は、君の願いを叶えるために作られたんだよ」
 ロリス「お母さんの、本」
 笑い猫「さぁ!君の本当の願いを言ってご覧?その願い、叶えてあげよう」
 ロリス「だってそんなの…」
 笑い猫「物は試しだよ、騙されたとおもってさぁ…」
 ロリス「私の…」
 笑い猫「さぁ…」 
 ロリス「私は…」
 笑い猫「…よく出来ました…。さぁ!願いを叶えてあげよう!
     僕についておいで、アリス」


第十二幕
アリス「うっ、また頭が…。なんなの今日は…
    それにしても、何だったのあいつら…。間違いなく只の人間なのに…」
 夢見「私、嫌いなのよ、弱い者いじめは」
アリス「異変と関係有るのは間違いないと思うんだけど」
 夢見「弱い者いじめは」
アリス「うっ、ダメよ。ああいうヤバそうな奴はパス
    他に出来る事を探せば良いだけよ…。ん、何この魔力?
    家の中に誰か…居る?」
 神綺「アリスちゃん、お帰りなさーい!」
アリス「わーっと、ちょっと何!?はっ、何するの!ぎゃっ、お母さん!?」
 神綺「元気だった?」
アリス「何で、どうしてお母さんが家に居るの?」
 神綺「アリスちゃんに会いたくって、来ちゃった」
アリス「来ちゃったって、そんないきなり…」
 神綺「ねぇ、もっとよく顔を見せて?」
アリス「や、やめてよ…。こんな顔どこにでも有るでしょう?」
 神綺「少し痩せたみたい。こういう髪型も似合うわ」
アリス「いいから、くっつかないでよ…」
 神綺「お友達は増えた?」
アリス「もぅ、離してってば」
 神綺「照れ屋さん」
アリス「別に、照れてなんか…」
 神綺「アリスちゃん」
アリス「うん…」
 神綺「元気だった?」
アリス「うん…。突っ立ってないで、座れば?」
 神綺「うんっ。綺麗なお部屋ね。お母さんびっくり」
アリス「紅茶でいい?」
 神綺「ありがとう。ちゃあんとお掃除してるのね。安心したわ
    あっ!可愛らしいお人形さんいっぱい!」
アリス「あっ、ちょっと勝手に触んないでよ!」
 神綺「こんにちは、おばさんはねぇ、アリスちゃんのお母さんなのよ…
    あらぁ、おかしいわ?ご挨拶しないのね?
    アリスちゃんのお人形はお話してくれるって聞いたのよ?」
アリス「おばさんねぇ…。魔力切ったから今は動かないよ…」
 神綺「あらぁ…。お話してみたいわ?」
アリス「この娘達は自律で動いてる訳じゃないから
    会話って言っても、魔力を使った腹話術みたいなもんよ…」
 神綺「そっか。この娘達は、アリスちゃんの代わりにお話してくれるのね?んふふふふっ」
アリス「何よ?その笑い…」
 神綺「ねぇ、お話させてよぅ、うふっ?」
アリス「嫌よ、絶対に嫌!」
 神綺「うふっ、分かった。今はアリスちゃんと居るんだものね」
アリス「もぅ…」
 神綺「うふふふっ」
アリス「はいっ」
 神綺「ありがとうっ」
アリス「来るなら来るって、一言言ってくれてればいいのに…」
 神綺「アリスちゃんをびっくりさせようと思って…。どう、びっくりした?」
アリス「したよ、不法侵入やめてよねー」
 神綺「うふっ、アリスちゃんがいない内に、色々見ちゃおうと思って」
アリス「はぁ…。そういうのは、もう間に合ってる」
 神綺「あらっ、反応薄いのね…。」
アリス「それで、あっちはどう?」
 神綺「相変わらずよ、なぁんにも起こらないから平和そのもの
    霊夢ちゃん達、たまには遊びに来てくれればいいのにね?」
アリス「魔界が壊滅しても知らないよ~?」
 神綺「あらやだっ!あの娘達はそんな娘じゃないわよ?
    アリスちゃんだって、ちゃんとわかってるんでしょ?」
アリス「お母さん?買い被り過ぎ!あいつら二人共、ド外道の鬼畜人間なんだから…」
 神綺「ダメよ、アリスちゃん!お友達をそんな風に言っちゃ!」
アリス「友達!?あいつらと!?冗談でしょう?」
 神綺「してるんでしょ、霊夢ちゃんのお手伝い?」
アリス「そこよ!異変が起きたらいつも最初に動いてるんだよ!
    そういうのって、巫女の仕事でしょう?
    霊夢がしっかりしてれば、私はもっと研究に集中出来るのに…
    いつも土壇場になるまで、ボケーっとしているだけなんだよ!信じられない
    魔理沙は魔理沙で人の顔を見ると偉そうな事ばっかり言って
    自分の事、棚に上げてばっかりで!」
 神綺「うふっ、良かった…」
アリス「なんでそうなるのよ!」
 神綺「アリスちゃん、あの娘達と、仲良しさんになったのね…」
アリス「お母さん、話聞いてた?」
 神綺「お母さんはね、なぁんでも分かっちゃうのよ!
    夢子ちゃんもきっと、安心するわ…」
アリス「だから、あいつらとは!…嘘っ、夢子さんも来てるの!?」
 神綺「うん!貴方が家を出てからずぅっと心配してたのよ!
    今日もお母さん、一人で来るつもりだったのだけど、どうしてもって」
アリス「そっかぁ…」
 神綺「嬉しい?」
アリス「そりゃぁ嬉しいに決まってるよぉ!」
 神綺「アリスちゃん?」
アリス「何ぃ?」
 神綺「答えは見つかった?」
アリス「分かんない…」
 神綺「探し物をするために、幻想郷に来たんでしょう?」
アリス「自分が何を探してるのかも、分かんなくなってきちゃった…」
 神綺「まだ、続けるの?」
アリス「うん…」
 神綺「そっか…」
アリス「ごめんなさい…」
 神綺「いいのよっ、アリスちゃんがいないのは寂しいけど、こうしてたまに会えるんだもの」
アリス「お母さん…」
 神綺「そうだっ!相談乗ってあげようか?」
アリス「ダメっ、どうしても一人でやらなきゃいけない…
    ような気がするの…」
 神綺「そっ?」
アリス「うん…。ありがとうお母さん…」
 神綺「いいのよ。でも、たまにはお家にも顔出してね?皆寂しいがってるのよ?」
アリス「そうだね、それくらいなら…。あれっ…?」
 神綺「どうかした?」
アリス「お母さん、顔色悪くない?」
 神綺「あっそう?こっちに来るのに、力使いすぎたかな?」
アリス「疲れてるんじゃない?ちょっと休む?」
 神綺「そうね、甘えちゃおうかしら…」
アリス「うん、無理しないで…」
 神綺「その前に、お話だけ済ましちゃうわね…」
アリス「用事があったの?」
 神綺「大事な事、とても大事な事よ。アリスちゃん?あっ…」
アリス「お母さん!」
 神綺「大丈夫、ちょっと眩暈がしただけ…」
アリス「夢子さんが来るまで横になってて…」
 神綺「アリスちゃん…」
アリス「何?」
 神綺「近い内に、貴方の魔導書を狙う人が現れるわ…」
アリス「後で聞くから…」
 神綺「その人から本を守れないようなら、私と夢子ちゃんで封印します」
アリス「そっかぁ…、その為に来たんだ…」
 神綺「ごめんね…、用事でもない限りは、こっちから会いには行けないの…」
アリス「いいよ、気にしないで。あんまし帰れなかったのは、私も一緒だし…」
 神綺「貴方の魔導書は、誰かに渡すわけにはいかないの…。わかるわね?」
アリス「渡さないよ!お母さんがくれた物だもん!…うん。分かったよ、要はそいつらをやっつけちゃえばいいんでしょう?」
笑い猫「やっつけられるような奴ならね」
アリス「はっ…」
 神綺「それは、そうだけど…。アリスちゃん、どうかしたの?」
アリス「なんでもないよ、何でも…」