流石兄妹の華麗なる休日~百ベビ組手~ 前編 (2)

Last-modified: 2015-06-27 (土) 22:42:32
17 :へびぃ:2007/04/17(火) 01:17:20 ID:???
「ラグビーの動きを応用しての虐殺!いやぁ、お見事だったよ~!」

モララーがすっかり上気しながらフサを褒め称える。
フサは「ありがとうございます!」と一礼。

「それではフサギコ選手、控え室、或いは観客席の方へお戻り下さい!ありがとうございました~!」

ガナーのアナウンスを聞き届けてから、フサは司会、スタッフ、観客の順に礼をしてから、退場口へと消えていった。
―――一方、親しぃは。

「イヤァァァァァァァァァァァ!!ベビチャンガァァァァァァァ!!」

「ビェェェェェェェェェェェン!!ベビチャンガ シンジャッタヨォォォォォォォ!!」

「ハニャーン!ハニャーン!!ハニャァァァァァン!!!」

「アニャニャニャ・・・ベービチャァーン・・・」

愛する我が子とその仲間達が目の前で惨殺された親しぃ達は、完全に狂乱状態だった。
中にはショックから完全に思考回路が消し飛び、抜け殻のようになったしぃもいた。
やがて親しぃ達は、スタッフの手によって強制的に退場(泣き喚く奴・狂った奴は蹴り出して)させられた。


「う~ん、すごいのじゃぁ・・・」

妹者が感心しきった様子で呟いた。
兄者がそれに同意する。

「うむ、まったくだ。だが妹者よ。感心するのはまだまだ早いぞ。これからまだ何人も競技を行うのだからな・・・」

「楽しみなのじゃ!」

兄者の言葉に、妹者は待ちきれないといった表情で笑った。


それから、何人もの挑戦者がバトルフィールドに現れ、ベビ達を虐殺していった。
(ちなみに、競技終了後のフィールドはスタッフが死骸を片した後、機械で土をまるまる入れ替える為、ほぼ元通りになる)
無難に虐殺した者もいたし、中にはかなり特異な方法をとった者もいた。
挑戦者NO.09である、有名料理店『モナ場料理店』の料理人モナーは、何とベビ達を100匹全員ベビフライにしてしまった。
油を高温に熱したり、ベビを捕まえて巨大鍋に放り込むのに時間が掛かった為に優勝は望めそうに無かったが、本人はとても満足した様子。
そのベビフライは司会の2人やスタッフ、抽選で決定した観客に配られた。
誰もが皆、百人百様の虐殺に魅了されていた。


―――控え室。
弟者と共にずっとモニターを見上げていたつーが、不意に立ち上がった。
モニターの中では、挑戦者NO.10の大工ギコが、ベビを鉋(かんな)でガリガリ削っている。『ギヂィィィィィィ!!!』という悲鳴が響いていた。

「ジャ、ソロソロ行ッテクルゼ」

「ん、もう出番なのか?」

つーの言葉に、弟者が反応する。
つーが答えた。

「アア、アタシハNO.12ナンデナ。1ツ前ノ挑戦者ノ競技中ニ、準備室ヘト移動スル事ニナッテルンダヨ」

なるほど、と弟者が頷いた。

「まあ、頑張って来い。前回優勝者だからって、気負う必要は無いさ。リラックスして、な」

「言ワレルマデモネェッテ。・・・アリガトヨ」

弟者の激励につーは微笑んでから、『出場者準備室』のプレートが掛かったドアを開け、その先に続く階段を下りていった。
その背中に確かな自信を感じ、弟者は少しだけ安堵してから、もう一度モニターを見上げ直す。
今度は別のベビが、エアーネイラー(電動釘打ち込み機)で釘を打ち込まれまくっていた。『アニ゙ャア゙ァァァァァァ!!!』というベビの悲鳴が聞こえて来た。


「さあさあ!いよいよ真打ちの登場です!」

モララーの一層大きな声が、スタンド中のAA達の耳を打った。
続いてガナーが、これまた普段より大きな声で告げた。

「挑戦者NO.12!!前回大会優勝者・・・つー選手の登場ですっ!!」

ドワァァァァァァァァ!!!!

その瞬間、爆弾が爆発したとも聞きまがう、凄まじい歓声が轟いた。
恐らくスタンド中どころでは無い。町内広場中に響き渡った事だろう。
歓声と共に登場した、小柄な少女。

「あ、つーちゃんなのじゃ」

妹者がつーに向かって手を振る。兄者も、少し驚きながら唸った。

「う~む・・・前回優勝者はつー族の女の子とは聞いていたが・・・まさか弟者の友達だったとはな」

当の本人は、モララーからのインタビューに答えていた。

「今回も華麗なナイフ捌きを見せてくれると期待してるよ~!ところで今回の目標は?」

その問いに、つーは即座に答えた。

「勿論、V2達成ニ決マッテルサ!アーッヒャッヒャッヒャッヒャ!!!!」

「頼もしいお言葉!!是非頑張ってちょーだい!!」

「ではつー選手、準備をお願い致します!」

司会2人の声に押されて、つーは準備を始めた。

18 :へびぃ:2007/04/17(火) 01:19:16 ID:???
『準備』とは言っても、つーは何やら硬い物がぎっしり詰まっている麻袋を2つ、腰にそれぞれ左右に括り付けただけだった。袋の口は背中の方を向いている。
そして、壁際のボタンを押し込む。ランプの点灯を確認してから、モララーがマイクを手に取る。

「おっと、準備が出来たようですね。ガナーちゃん、ベビの方はスタンバイ・オーケィ?」

「こっちも準備完了ですよ~。それでは、間も無く競技開始です!」

ガナーの言葉通り、フィールドには既にベビしぃが100匹入場完了していた。
前述したが、フィールドは競技が終わる毎に綺麗に掃除される。ベビ達は100匹ずつ完全に隔離されて待機する為、誰一人として『ここで虐殺があった』という事実には気付かない。
それは親しぃも同じだった。

「ベビチャン、イイナァ。ナッコシテ モラエルナンテ・・・」

「デモ、ナンデ ギコクンジャ ナイノヨ!アンナ アヒャッタヤシニ ナッコサセタラ ベビチャンノ キョウイクニ ワルイジャナイノ!」

「マア、シィチャンハ ヤサシイカラ、ダッコサセテアゲテモ イインジャナイ?」

「カワイイシィチャンノ、カワイイベビチャンヲ ナッコデキルコトヲ ナイテ カンシャシナサイヨ!」

そんな喚きが聞こえてくる。バレる気配は全く無い。もっとも、バレた所で防ぎようも無い訳だが。
つーはというと、親しぃの言葉に軽くカチンと来たのか、親しぃの方を睨み付けながら、腰の袋に手を伸ばしたり、引っ込めたりしている。
どうやらあの中には武器が入っているようだ。
しかし間も無く競技が始まるというので、つーは視線を前に戻す。
視線の先には、ベビが100匹。ナッコを要求したり、つーが男に見えるのかコウピを要求するものもいたり、眠っていたり―――。

「では、よ~い・・・」

ギコが空砲のピストルを構える。つーは軽く深呼吸しながら、体を少し屈める。
兄者、妹者を始めとする観客も息を飲む。スタンド中が静寂に包まれた。
―――否。ベビと親しぃだけは騒いでいたが。
そして―――。

パァン!

ピストルの咆哮と共に、流星の如き勢いでつーが飛び出した。
あちこちから聞こえてくる「ナッコーー!!」やら「チィヲ ナッコチナサイヨー!」とか言う声を完全に無視して。
その瞬発力は、確実に本日の出場者の中でも最速だろう。
フィールドの中央付近まで走り込んだつーは、右手を腰に回し、袋の中に突っ込む。
一瞬、風を切るような音がした。はた、と見た次の瞬間、つーの腕は顔の前を通り、右手は彼女の左側頭部の所にあった。
何が起こったのか、観客には全くわからない。
しかし、すぐに分かる事となる。

19 :へびぃ:2007/04/17(火) 01:19:56 ID:???
「ヂィィィィィィ!!」

「ヂギャァァァァァァァァ!!!」

「ア゙ア゙ァァァァァァァァ!!」

という、3つの悲鳴が聞こえて来たからだ。
見やれば、つーの前方5、6m先に居る3匹のベビの顔面に、細めのナイフが突き刺さっていたのだ。
それぞれ眉間、こめかみ、右目。どれもベビの頭部を貫き、後頭部から切っ先が飛び出している。

「な、なにが起こったのじゃ・・・?」

目をくるくると回す妹者に、兄者が解説を開始する。

「妹者よ、説明しよう。袋の中にはあのナイフがぎっしり入ってたようだな。
 で、袋に手を突っ込んだ時にナイフを3本掴んで、投げた」

「でも、投げたようには見えなかったのじゃ・・・」

「―――恐らく、目にも留まらない速さで腕を振って、投げたんだろうな。俺にも見えなかったよ。
 俺達が見た時には既に顔の横に手をまわしていたが、あれはフォロースルーだろうな・・・」

「つーちゃん、凄いのじゃ・・・」

「ああ、全く・・・流石だな」

兄者が説明した通り、つーは目にも留まらぬ速さでナイフを投げた。
そしてそれは、正確にベビの顔を捉えたのだった。
その華奢な腕からは想像も出来ない程の剛速球、もとい剛速刃だ。
顔面に刃を受けた3匹が倒れ伏す間も無く、つーは走り出していた。
そして左手でナイフを1本取り出すと、体制を低くする。
怯えた表情のベビがすぐ傍に迫る。つーは軽く左手を振った、つもりだった。

ザシュッ!!

ベビの両耳、両手、両足が吹き飛んだ。噴出した鮮血の雫が、太陽の光を浴びてきらきらと輝く。
ベビがすかさず叫ぶ。

「チィィィィ!?チィノ オミミー!オテテー!アン」

「ウッサイ!」

聞き飽きたその叫びを皆まで言わせず、つーは達磨になったベビを蹴り飛ばした。
蹴り飛ばされたベビ一直線に飛んで行き、親しぃの観戦席の窓ガラスの上方の壁に激突、そのままグチャリとトマトのように潰れた。
「シィィィィィィィィ!!?」という叫び声が聞こえたが、つーは全く気に留めない。

「チィィィィィィィィ!!ギャクサツチュー デチュヨォォォ!ナッコォォォォ!!」

そんな叫びが聞こえてきた。つーは視線を移す事もせず、その叫びの聞こえてきた方向へナイフを放る。
ザクッ、という音に一拍遅れて

「ギュヂィィィッ!!!?」

ベビの悲鳴が被さる。仕留めたかどうかを確認しようともせず、つーは再びナイフを1本抜く。

20 :へびぃ:2007/04/17(火) 01:20:27 ID:???
その時、真正面からベビの声。

「カワイイ チィタチニ コンナンコトシテ ユルサレルト オモッテルンデチュカ!?イマナラ コウピデ カンベンチテヤルデチュ!コウピ コウピー!」

見ればそのベビは、尻をこっちに突き出しながら少しずつ接近して来る。常人なら確実に眼を背ける光景だろう。
つーは、ぎりっ、と歯軋り一つしてから、言葉と共にナイフを振りかぶる。

「アタシハ・・・」

そして、絶叫と共に腕を振りぬいた。

「―――女ダァァァァァァァ!!」

ブチュンッ!

「ギュッ・・・!?」

短い悲鳴。見れば、ナイフはなんとベビの体をぶち抜いて、貫通していた。
ナイフは肛門から突き刺さり、皮膚を破り、血管を絶ち、あばら骨を折り、心臓を貫いて、最後に口腔内を切り裂いてから口から体外へ出、失速して地面に突き刺さった。
その小さな体からは想像もつかないようなパワーだったが、つー自身はその力に酔う暇も無く、ナイフをまた取り出す。
今度は両手にそれぞれ5本ずつ。すると、つーはそのまま跳躍。高く高く上昇する。
彼女は空中で体制を直すと、ベビ7,8匹が身を寄せ合って固まっている箇所に狙いを定めた。
そして腕をクロスさせると、その両腕を広げるような形でナイフを投げつけた。
ベビの集まりに向けて、上空から風を切り裂いて10本のナイフが襲い掛かる!

ズドドドドドドドドドドッ!!!

「ハギュッ・・・!」

「ヂュィィィィィィ!!?」

「ナ゙ゴォォォォォ!!!」

「アギャァァァァ!」

雨霰(あめあられ)と降り注いだナイフは、余す事無くベビ達に突き刺さった。
顔面、後頭部、胸部、腹部、背中、首・・・被弾箇所は違えど、1匹残らずナイフの餌食。
つーがスタッ!と地面に着地した時には、既に8匹中5匹が絶命していた。
生き残っていたのはそれぞれ背中、腹部、脇腹にナイフを受けていた。致命傷にはなっていなかったが、出血はかなり激しい。溢れるなんてもんじゃない。噴出している。
放って置けば確実に死ぬ―――誰もがそう判断した。それはつーとて例外ではなく、未だにしぶとく「ナ・・・ナゴ・・・」と呟くベビをスルーし、ナイフを新しく抜きながら辺りを見渡した。
今度は両手に1本ずつ。それを構え、つーは突進した。
フィールドを縦横無尽に駆け回り、ベビの横を通り抜ける度に、つーは腕を動かす。
そしてその度に、ベビの体から鮮血が噴き出すのだった。体の一部も一緒に吹き飛ばし、時にはまるまる首や上半身を無くす者もいた。

ウオォォォォォォォォ!!

会場のボルテージは最高潮だった。
阿修羅の如き勢いでナイフを駆るつー。彼女が傍にいたベビの首を切断した瞬間、彼女は大きな声で笑った。

「アーーーーーーヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャ!!!!」

その笑い声は、観客達に最大の興奮を、ベビ達に絶大な恐怖をもたらした。

21 :へびぃ:2007/04/17(火) 01:21:48 ID:???
まるで真っ赤な絨毯を敷き詰めたかのようなフィールド。むせ返るような血の匂い。
その中央で、銀の刃を煌かせながら舞う少女。
彼女が動くたび、フィールドに真っ赤な花が咲く。

「チィィィィィ!モウ ヤァヨォォォォォォォ!!!」

ベビしぃの悲鳴。
しかし、耐え切れぬ恐怖から発したその叫びが、皮肉にもその『恐怖』の根源を呼び寄せる結果となる。
つーが、叫びを発したベビの方を向いた。思わずビクリと竦むベビ。
そして、右腕を軽く振る。放たれたナイフが、太陽光を反射して眩しく光った。

グシャッ!

「ジギュゥッ!!?」

哀れ、叫びを発したベビは、鋭いナイフにその小さな心臓を貫かれて逝ってしまった。
噴水のように噴き出す鮮血にも目もくれず、つーは足元に居たベビを蹴り上げた。

「アニャァァァァ!」

まるでサッカーボールのように高く舞い上がったベビ。
それと同時に、つーはベビと同じ高さまで跳躍する。
空中でくるりと体を捻って1回転してから、つーがナイフを水平に構えた。

「ナッコチュルカラ タチュケ・・・」

「ヤダネ!アッヒャッヒャ!」

短すぎる会話。
そして―――

ザンッ!

「アギュッ・・・」

横薙ぎに振るわれたナイフは、正確にベビを腹部の辺りで真っ二つに切り裂いた。
腸をぶら下げながら飛んでいく上半身と、糞尿になりかけの物体を撒き散らしながら落ちていく下半身。
つーは着地と同時に、少し離れた場所に居るベビ―――最後の一匹目掛けて走り出した。
爆風の如き勢いで迫る、小さな小さな『災厄』。
ベビは、つーに背を向けて逃げながら絶叫した。

「ナッコォォォォォォォォ!!ナコスルカラ ユルチテェェェェェェェェェェ!!」

だが、ベビしぃの渾身の叫びは、つーの心を1nmmですら動かす事は出来なかった。

「ソレシカ言エネェノカ・・・ヨッ!」

ドガッ!

「ヂィィィィィィィィィィ!!!」

あっという間にベビに追いついたつーは言い切ると同時に、ベビを思いっきり前方へ蹴飛ばした。
ベビは悲鳴を発しながら一直線に飛んで行き、そして。

ゴシャッ!!

「ビュギィッ!!??」

何と、親しぃ達の特別観戦席の窓ガラスに激突して張り付いた。

「イヤァァァァァァ!!」

「シィィィィィィ!!?」

親しぃ達の悲鳴が聞こえてくる。と、その時。

「ベビチャン!オカアサンハ ココヨ!!」

最前列に居た1匹のしぃが、ベビに向けて叫んだ。
何と皮肉な事か。顔面を骨折し、鼻血を垂れ流してガラスに張り付く何とも醜い有様のベビを、その母親が眼前で見る羽目になろうとは。
ベビも母親に気付いたのか、声を絞り出す。

「マ・・・マ、マ・・・」

「ベビチャン!ベビチャン!!シッカリシテェ!」

親しぃが、ガラスの向こうの我が子に向かって必死に手を伸ばす。
たった数cmのガラス窓に隔てられた親子。このガラスさえ無ければ、ベビちゃんを助けられるのに。
親しぃは無駄と頭では分かっていながらも、手を伸ばす。
ベビが今生の頼み、といった感じで、言葉を紡ぎだした。

「マ、マ・・・ナ、ナ、ナ゙」

ブシャッ!!!

22 :へびぃ:2007/04/17(火) 01:22:13 ID:???
「ギュピィィィッ!!?」

刹那、窓ガラスが真っ赤に染まった。
たった今まで張り付いていた筈のベビは、頭部をざっくりと割られて一瞬で命の灯火を掻き消された。
噴き出した血が窓ガラスを紅く染め上げ、まるでステンドグラスのよう。
ベビの頭部は真っ二つに分かれて頭の中身をぶち撒けながら落下、窓ガラスには張り付いた首から下が残された。
血飛沫の向こう側に見えたつーの姿を、親しぃ達はきっと生涯忘れる事が出来ないだろう。

「ベビチャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!!!!!!!!」

親しぃの大絶叫。
数cmのガラスを隔てた先で、その若すぎる命を散らした我が子。
「マァマ、ナッコチテ」その最後のお願いを言う事も許されなかった。
叫び終わった親しぃはただ呆然と、我が子の命の残光―――ガラスの血と、残された体を見つめていたが、

パァン!

突如として鳴り響いた、競技の終了を告げるピストルの音と共に、どやどやと入ってきたスタッフ達に押し出されるようにして、強制退場させられる羽目となった。
スタッフに腕を掴まれた瞬間、我に返ったように親しぃが叫んだ。

「ベビチャン!シィノ、シィノ、ベビチャンガァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

だが、スタッフの丸耳モナーが、軽い肘鉄と共に放った、

「五月蝿いモナ!あんな生ゴミ以下の命が無くなったくらいで、ガタガタ騒がないで欲しいモナ」

という、しぃ達にとってあまり冷徹過ぎる言葉によって、黙らざるを得なかった。


「終了ォォォォォォォ!!ブラボォォォォォォォ!!」

鳴り止まない拍手の中、モララーが叫んだ。
彼の顔はすっかり真っ赤、かなり興奮していた。

「つー選手、お疲れ様でした~!いやぁ、本当に素晴らしかったですよ!」

ガナーも彼女を褒め称えた。
その言葉を聞いて、つーは血が飛び散って所々赤い顔でニッコリと笑った。虐殺の疲れを微塵も感じさせないその顔は、充実感と爽快感に満ち溢れていた。

「タイムは・・・おおぉぉぉぉぉぉぉ!!!5分27秒!!早いっ!早すぎるぅ!!」

「アッヒャァァァァァァァァァァ!!!」

モララーが告げた自らのタイムを聞いたつーは、喜びを隠そうともせずに叫んだのだった。
両手を天に突き出し、全身で喜びを表すつー。

「これは凄い!大会史上、第2位のタイムです!!史上最速のタイム、5分21秒と僅か6秒差!!」

「これはもうV2ケテーイかぁっ!?素晴らしすぎる虐殺をありがとうっ!つー選手、戻ってチョーダイッ!!」

興奮の坩堝(るつぼ)と化したスタンドに、司会2人の声が響き渡る。
つーは司会、スタッフ、そして大観衆にまとめて手をぶんぶんと振ると、ガッツポーズをしながら退場口へと消えていった。

23 :へびぃ:2007/04/17(火) 01:23:24 ID:???
つーが意気揚々とフィールドを去った後も、歓声が絶える事は無かった。
その後に出てきた挑戦者達が、これまた見事な虐殺を披露していったからである。
例えば、硫酸プールに次々とベビを放り込んで溶解させたNO.15の科学者じぃ。
プールがスケルトンになっていた為、観客達はベビが溶けゆく様子をじっくり観察する事が出来た。
他にはNO.18、食品工場勤務のニダー。
彼は特製超激辛キムチ用唐辛子ペーストなる物を次々とベビの肛門にぶち込み、まるでジェットの如く糞を爆裂させた。彼は100匹全員脱肛という、ある意味凄まじい記録を打ち立てた。
『我が国の誇り、思い知ったかニダ!ウェーハッハッハッハ!!』と、彼は笑っていた。
そして―――。

「さあいよいよ、最後の挑戦者です!」

マイクを通したガナーの声。
手元の資料を読みながら、モララーが言った。

「ん・・・おやぁ?どうやらこの選手は、飛び入り参加のようですね!これは期待!
 では、ご登場願いましょう!挑戦者NO.20―――流石 弟者選手です!!」

コールを聞き届けた弟者が、入場口からフィールド内へと姿を現した―――その時。


『あーーーにーーーじゃぁーーーーーーーー!!!!頑張るのじゃーーーーーーーーーーー!!!』


スタンドに何百人と集まった観衆の大歓声にも劣らない大声が、スタンド中に響き渡った。
その何百という観衆、そしてスタッフに司会者の視線が、一斉に声の主―――妹者に注がれる。

「お、おい、妹者・・・恥ずかしいからやめてくれって・・・」

隣に座った兄者にとっては、殆ど晒し上げ状態だった。顔を真っ赤にして妹者に囁くと、彼女は

「ふぇ?」

とすっとぼけたような声を上げたが、スタンドに集まった全てのAAの視線が自分に注がれている事に気付くと、

「あ・・・は、恥ずかしいのじゃ・・・」

これまた顔を真っ赤にして、兄者の膝元に隠れてしまった。その様子を見て、スタンド中からどっと大爆笑。
笑いを必死にかみ殺しながら、モララーがマイクを構える。

「く、くく・・・失礼。どうやら、ご家族がいらっしゃるようですね・・・あれは妹さんですか?」

弟者は「・・・え、は、はい・・・」と呟いた。やはり顔が赤い。
それを聞いたモララーは、ニコリと笑って、

「可愛いお嬢さんですね。それに、あんなに大きな声で応援してくれるなんて・・・いい妹さんじゃないですか。羨ましいなぁ」

そう言った。
今度はスタンド中から拍手喝采。妹者はまだ頬を赤らめながらも、立ち上がってぺこぺことお辞儀を繰り返す。
拍手が止んだ辺りで、ガナーが苦笑する弟者に問いかける。

「今回は飛び入りでご参加のようですが、何故参加を?」

その質問に弟者は、

「いやあ、最初は観戦目的だったんですがね・・・兄と妹に薦められたんで、やってみようかなと」

つーに答えたのと同じように答える。
今度はモララーから質問が飛んできた。

「そういえば、弟者選手はあのつー選手と同級生だとか」

弟者が「ええ、結構つるんでます(w」と答えると、モララーは興味津々な顔つきになって、

「つー選手は、学校ではどのような感じなんですか?やっぱり虐殺を?」

と訊く。弟者はニヤリと笑って答えた。

24 :へびぃ:2007/04/17(火) 01:23:49 ID:???
「ええ、そりゃあもう。以前校庭にアフォしぃが侵入した時なんかですね、授業中なのに真っ先に飛び出していって駆除してましたよ。
 で、案の定先生からお説教。『アフォヲ駆除シタンダカラ、ソコマデ怒ル事ナイダロ!』って口答えしたら、デコピン喰らったらしいですよ。
 それだけなら良かったんですが、つーの奴、その先生の授業だけ成績をガクンと下げられましてね。親に怒られるって、涙目になってましたww
 武装したアフォしぃにも臆することなく立ち向かっていくのに、親には勝てないんですね・・・。
 そういえば競技の時も何やら叫んでましたけど、やっぱりよく男に間違えられるそうですよ。そのくせ、男に間違うと怒る。
 だったらもう少し女らしくしたらどうなんだと小一時間・・・」

つーの赤裸々な学校生活を次々と暴露する弟者。実に楽しそうだ。スタンドからは笑いが絶えない。
しかしその時、再び大声が。

「弟者・・・テメェェェェェ!!!ナニ勝手ニ喋ッテンダヨォ!ブッ殺スゾ!!」

見れば、兄者の横にいつの間にかつーが。恥ずかしさと怒りで顔が赤い。

「おおっとぉ、ご本人登場だ!弟者選手、明日の学校が怖いですねぇ・・・情報料として、治療費は半額くらいならお支払いしますよ?」

モララーのこの言葉に、会場がさらにどっと沸く。笑いすぎて椅子から転げ落ちる観客も居た。
弟者は肩を竦め、「おお怖・・・」と呟く。
つーは最後に、

「コレダケ言ッテオイテ、肝心ノ競技ガ全然ダメナラ、本気デ怒ルカラナ!
 モシ全然ダメダッタラ・・・トリアエズ明日ノ学校デ、上履キニゴキブリ仕込ンデヤルカラナ!!シッカリヤレヨ!」

それだけ叫んで、頬を膨らませながら椅子にすとんと着席した。
モララーはニヤニヤと笑う。

「何だかんだ言って、応援してくれてますね・・・これは頑張らないとマズーですよ?」

今度はガナーがぽそりと呟いた。

「いやぁ、仲が良さそうで何よりですね」

思わず弟者は苦笑。

「まあ、せめて文句を言われない程度には頑張ります・・・」

「それでは弟者選手、準備をお願いしま~す!」

ガナーのコールを聞いた弟者は、とりあえずレンタル武器が並べられたテーブルに向かって歩いていった。

25 :へびぃ:2007/04/17(火) 01:25:06 ID:???
(さて・・・どうするべきか)

弟者は思案していた。飛び入り参加の為、武器は持参していない。となればレンタルするのが吉だろう。素手にはそこまで自信が無い。
テーブルの上には剣、ナイフ等の刃物類や槍なんかの長柄武器、ハンドガン、手榴弾、棍棒にハンマーetc―――様々な武器が並んでいる。
他にも絞殺用のピアノ線に、ロケット花火、爆竹、画鋲等の言わば『虐待用』の道具もある。
弟者は暫く武器を眺めていたが、ぽん、と手を打つ。

(この方法で逝くか・・・ならば、まずは相手の数を減らさないとな―――よし!)

弟者はポケットにピアノ線と手榴弾を2,3個ねじ込み、小剣とハンドガンを手に取ると、すぐ傍の壁に設置されたボタンを押し込んだ。
ランプが灯り、司会2人がマイクを構える。

「おおぅ!準備が完了したようです!どうやらスタンダードな方法を採るようですね」

「では、本日最後の挑戦、間も無くスタートです!」

弟者は前を見据えた。フィールド中にベビが散らばっている。
あちこちから、「ナッコ」「コウピ」「ハナーン」「チィチィ」の声。
武器を握る手に思わず力が篭った。

「それでは、よ~い・・・」

ギコの声が聞こえた。

「ちっちゃい兄者・・・」

ぎゅ、と祈るように両手を組んだ妹者が呟く。
兄者は腕を組んで、弟者に視線を注ぐ。
その隣で、つーも同様に彼を見つめている。
そして、

パァン!

ピストルが短い爆音を発した。
弟者は素早く飛び出すと、辺りを見渡す。
ベビが周りから、次々と這い寄ってくる。

「チィヲ ハヤク ナッコ シナチャイ!」

すぐ傍にいたベビが喚く。
よし、と弟者は心の中で呟くと、何の躊躇いも無く手にした剣を足元へ突き出した。
すかさず、

「アギュゥゥゥッ!!?」

ベビの悲鳴が聞こえ、足に何やら生暖かい感触が伝わる。
そして「チィィィィィィ!?」「ギャクサツチュー デチュカ!?」「チィノ ナッコハ ドウナルンデチュカー!」等の五月蝿い喚き声が聞こえてきた。
弟者は血に塗れた剣を振り上げ、そばでナッコナッコと騒いでいるベビの頭上に振り下ろす。
赤い液体がぱっと散り、「ウヂュゥッ!!?」という断末魔。止め処無く噴き出す血と共に、ベビの命も流れ出ていった。

「ハニャァァァァン!!ベビチャンガ シンジャウヨゥ!!」

「ギャクサツチュウ、ヤメナサイ!!」

親しぃの声が聞こえた。弟者は少し眉を顰め、足を振り上げた。
そのまま足元のベビに向かって足を振り下ろす。柔らかい物を潰す、気味の悪い感触が

グチュッ!

という音と共に伝わる。

「グブヂュゥ!?」

異様なベビの声を聞いた弟者は、その無残に潰れ、見るのも嫌気がする死骸を摘み上げる。
そして、そのベビだった肉塊を、未だギャーギャー喚く親しぃの席へ向かって投げ付けた。

ビチャッ!!

元から潰れていたベビ風肉塊はガラス窓にぶつかり、気持ち悪いSEと共にさらに醜く潰れて拡がった。

「シィィィィィィィィィィ!!!?」

という悲鳴が場内に響き渡る。その声は、まさに観客達にとっては興奮剤のようなもの。歓声が一層大きくなった。

26 :へびぃ:2007/04/17(火) 01:25:30 ID:???
ビビらせるには十分だろう、と思った弟者は、今度はハンドガンを構える。
そして、少し離れた所で必死に

「タチュケテェェェェェェェ!!」

「ナッコモ コウピモ ナンデモチュルカラ ユルチテヨゥ!!」

「チィヲ コロチタラ マァマガ ダマッテナイデチュヨ!」

とか何とか言いながら這いずるベビ数匹を捉えた。
本人はかなり必死なんだろうが、動くペースはあまりにスロウ。弟者にとっては殆ど的。当ててくださいと言っているようにしか聞こえない。

「ベビしぃ、必死だな」

弟者はひとりごちると、トリガーを連続で引いた。

パン!パン!パァン!!

競技開始時にギコが鳴らしたピストルに酷似した音が響いた。
発射音とマズルフラッシュを伴って撃ち出された弾丸は、正確にベビの急所―――眉間、左胸、顔面etc―――に風穴を穿たう。

「アギャァァァァァ!!」

「ウジィィィ!?」

「ナ゙ゴォォォッ!?」

口々に断末魔の叫びを上げて、ベビ達は朽ちた。
弟者は特にリアクションする事も無く、再びトリガーを引いた。

パァン!パァン!パァン!

新たに撃ち出された弾丸は、やはり離れた所にいたベビ達を確実に黄泉の国へと誘うのであった。

「ビュゥゥッ!?」

「ナ゙ゴ、ナ、ナ、ア゙ア゙ァァァァァァァ!!」

「ピギャァァァァ!?」」

1匹目は首、2匹目はこめかみ、3匹目は左胸から鮮血を噴き出しながら、そのまま倒れ伏す。
弟者の射撃技術はかなりのものだった。ここまで1発も撃ち漏らす事無く、ベビを仕留めている。
観客席から聞こえて来た『いいぞ~!』という歓声に片手を挙げて応えると、弟者はまた走り出す。
そして、逃げ惑うベビしぃ達を次々と葬っていった。

27 :へびぃ:2007/04/17(火) 01:25:57 ID:???
「せいっ!」

「ナッゴォォォォォォ!!」

気合の掛け声と共に剣を振り抜く弟者。悲鳴を上げるベビ。
弟者の振るった刃は、ベビの意思を一切無視。ベビの腹部を切り裂いた。

「ナギュォォォォ・・・ォ・・・」

間延びした悲鳴と共に、切り裂かれた腹から臓物がこぼれた。蚯蚓の様な腸が、ベチャリと音を立てて地面に墜ちる。
止めを刺そうとはせずに、弟者は手にしたハンドガンのリロード作業を行っている。
グリップの底部から、空になったマガジンが落下。
落ちてきたマガジンは、しぶとく命を繋ぎ止めているベビの、腹部よりこぼれ出る臓物を直撃した。

グチッ

「ア゙ヴィッ・・・?」

何とも可笑しな呟きを残して、ベビが白目を剥いた。
どうやら、落ちてきたマガジンの衝撃が予想以上に強く、直撃を受けた内蔵が裂けたらしい。
弟者はというと、弾丸を詰め終えたハンドガンを前方へ突き出し、狙いを定める。

「ナッコォォォ!ナコスルカラ チィダケデモ タチュケテヨゥ!ナコナコナコナコナコナコ」

パァン!パァン!

「ナコナコナギャァァァァァァァ!!」

ナコナコ五月蝿く騒いで観客を見事にイラつかせていたベビは、弾丸を頭部に撃ち込まれて血液&脳漿を撒き散らした。
そこで弟者は、一旦虐殺の手を休めて辺りを見回してみた。
そこここに自らが仕留めたベビの死骸が横たわり―――バラバラになってて横たわる事も出来ないベビもいたが―――、
残ったベビはあちこちで逃げ惑ったり、怯えている。恐怖のあまり竦んで動けない者もいた。
素早く数を数えてみる。10,20,30―――40匹前後か。

「そろそろだな・・・」

弟者が呟いた。
すると彼は、何と持っていたハンドガンをしまい、剣をその場に放り出してしまった。
スタンド中からどよめきが起こる。それはそうだろう。
1分1秒を争う競技の真っ最中に、武器を放り出すなんて前代未聞だからだ。
しかし、弟者の妙な行動はこれだけでは無かった。
次の瞬間、弟者は何と実況席へと走って行ったのだった。
選手がいきなり実況席に向かってくるなんてこれまた前代未聞。
面食らった表情のモララーに、弟者が早口で言った。

「紙とペン、お貸し願えますか?」

「え、あ、ああ・・・紙とペンね、はい」

突然の要求にモララーは多少慌てながらも、B4サイズの画用紙とボールペンを渡してやる。
弟者は一礼すると、素早く取って返し、まず紙を2つに裂いた。
次に、片足を上げて自らの太ももを下敷き代わりにして、2つに裂いた紙の内、片方に素早く何かを書き込む。
そして、フィールド中に聞こえるように大声を張った。

「ベビちゃん達!よ~く聞いておくれ!」

その言葉に、ベビ達が少しだけ反応する。勿論、かなり警戒はしているが。
しかし、弟者の次の言葉を聞いた瞬間、その目の色が変わった。

「今から俺がこの紙を放るから、それを取って俺の所へ持ってきてください!
 持って来たベビちゃんを、好きなだけナッコしてあげます!」

言い切ると同時に、弟者は紙片を投げた。
そよ風に煽られた紙片は、少し飛ばされてから地面に落ちる。
ベビ達はというと―――

「ナッコ!?」

「チィヲ ナッコチテクレルノ!?」

「ヤット コノチィノ カワイサニ キヅイタンデチュネ!」

「チィィィィ!アノカミサンハ モラッタデチュ!」

ついさっきまで自分の仲間達が惨たらしく殺されていた事などとうに忘れ、その小さな目をらんらんと輝かせ、一心不乱に紙片の元へ向かっていく。
フィールドに残された全てのベビが、紙を目指して這う。
ベビ達にとっては宝の地図の如き紙片には、ただ一言『ナッコ』と書かれているのみだった。

28 :へびぃ:2007/04/17(火) 01:26:25 ID:???
ベビ達の内、紙片から近かった十数匹はあっという間に紙片の元へ到達した。
先頭のベビが、紙片をその小さな手に握り締めた。

「ハナーン!ナッコハ チィノモノデチュネ!」

勝ち誇った顔でベビが言った。だが―――

ドンッ!

すぐに追いついた別のベビが、紙片を握ったベビに向かって体当たりをしたのだ。

「アニャァァァ!?」

体当たりを食らったベビはバランスを崩し、地面に倒れた。その拍子にそのベビが握っていた紙片はその手を離れ、ひらひらと舞う。

「アンタミタイナ クチョベビニ ナッコハ モッタイナイデチュ!ナッコハ コノウチュウイチカワイイ チィニコソ フサワシインデチュ!」

そんな台詞を吐きながら、体当たりをしたベビが漂う紙片へ向かって手を伸ばす。
絶対自分本位という、アフォしぃ的思想はベビの頃から備わっているようだ。
しかし、それは他のベビも同じな訳で、

「マチナチャイ!アンタミタイナ ゲセンナベビハ ヒッコンデナチャイ!」

「ナッコハ チィノモノデチュヨゥ!」

「チィィィィィィ!!ナッコナッコナッコォォォォォォォ!!」

後から追いついたベビ達が、体当たりをしたベビを突き飛ばし、我先にと手を伸ばす。
そこからはあまりにも醜い争いだった。
40匹のベビしぃが、たった一切れの紙切れを求めて、押し合い、圧し合い、取っ組み合い。
口々に「ナッコ、ナッコ」と言いながら、紙をその手に掴まんと、他のベビを押しのけ押しのけ、地面を転がった。
そんな中―――

「イイカゲン アキラメナチャイ!ナッコハ チィノモノト キマッテルノ!」

ドガッ!

「ヂィィィィィ!?」

―――ついに、殴り合いの喧嘩に発展した。
ベビが放ったストレートパンチは、相手のベビの顔面に見事にクリーンヒット。
ベビしぃのパンチの威力などたかが知れているが、相手が同じベビしぃなら威力はかなりの物だ。
殴られたベビは顔中の穴から血を噴いて、地面に倒れた。
それを皮切りに、ベビ達の争いはさらにエスカレートした。
殴る、蹴る、頭突きなんて当たり前。中には、本物の虐殺者よろしく相手を『殺しに』かかっているベビまでいる始末。

「ナッコ!ナッコォォォォ!!」

ブチッ!

「ヂュィィィィィィィ!!ヤメテェェェェ!!」

傷だらけになったベビが、殴り合っていた相手のベビの耳を食い千切った。悲鳴を上げるベビ。
なんと、ついに虐殺の基本中の基本、『耳もぎ』まで登場した。
この時点で、観客の興奮度はピークに達した。
弟者自身は手を下さず、ベビ達が勝手に殺し合う。弟者の真意はそこにあったのだ。
未だかつて無かった新しい虐殺方法―――同士討ち。初めての感覚に、観客達のボルテージは上がりっぱなしだ。
その間も、ベビ達の数はどんどん減っていく。

「チィィィィ!ナッコハ チィノモノナノ!」

ブチィッ!

「チィィィィィ!イチャイヨゥゥゥゥ!!」

―――足もぎ。

「アンタニハ ナッコナンテ ヒツヨウナイノ!ナッコチナイ オテテハ イラナイデチュネ!」

ブシャァァ!

「アギィィィィィィ!!チィノ オテテガァァァァァァァ!!」

―――腕もぎ。

「ナッコナッコナッコォォォォォ!」

ドガッ!ドガッ!ドガッ!

「ナッゴォォォォ・・・ヂ、ヂィィィィ・・・ナ゙ッ・・・」

背中に馬乗りになって後頭部を連打したり、

「サッサト チニナチャイッ!」

ガブシュッ!!

「ヂュィィィィィィ!!?ナッコチュルカラ ユルチテェェェェェェ!!」

腹を食い破ったり。
ベビ達はその体を仲間だったはずの連中の血液と臓物の欠片に塗れさせ、目の前の相手を葬り去っていく。
敗北した哀れなベビは、「ナ・・・ナゴォ・・・」の呟きを残して、命の灯火を消してゆく。
因みに、『ナッコ』と書かれた紙片はすでに千切れてバラバラになり、風に吹かれてどこかへ舞い散っていってしまった。
しかし、そんな事を既に忘れたベビ達は、ただ自らの欲望の為、目の前の相手を叩き潰すだけ。
気付けば、この1分前後の間にベビの数は半分程度になっていた。
―――そこで、弟者が再び動いた。

29 :へびぃ:2007/04/17(火) 01:26:56 ID:???
弟者は残ったもう1枚の紙片に再び『ナッコ』と書き込むと、ベビ達が醜く争う現場より少し離れた場所へ向かう。
そこで、ポケットからピアノ線と手榴弾を取り出すと、何やら細工。
次に弟者は、足で軽く地面を掘ると、細工の終わった2つの手榴弾をそこに置き、ぐいぐいと押し込んで固定してから土を被せた。
そして、土をかけた場所に紙片を置くと、小走りでその場所から離れ、再び大声を張った。

「ベビちゃん達!こっちにも紙があるよ~!」

その声を聞いたベビ達が一斉に反応した。

「コンドコソ チィガ ナッコチテ モラウデチュ!」

「チィィィィ!チィコソガ ナッコデ マターリスルノ!アンタハ ドッカヘ イッテナチャイ!」

「ナッコナッコナッコナッコナッコォォォォ!!」

口々に己の欲望に染まった台詞を叫びながら、ベビ達が一斉に紙の置かれた地点へと向かっていく。

「ヂィィィ・・・ナ、ナッグォォォ・・・」

大怪我をして動けないベビをその場に置き去りにして。
弟者は何故か片手を握ったまま、離れた場所で傍観している。
やがて、動く事の出来る全てのベビが置かれた紙片を射程圏内に捉えた。
そして例の如く、紙片を求めて再び大乱闘を始めた。
骨肉の争いを繰り広げるベビ達を尻目に、弟者は先程までベビ達が争っていた場所へ行く。
体のあちこちを無くしたり、臓物を露出させたりしているベビ達の死体。同族にここまでこっぴどくやられるとは、と弟者は少しだけ戦慄した。
弟者が戻ってきたのは、数多くの死体の中にただ1匹、しぶとくも命の火を燻らせるベビがいたからだ。

「ヂュィィィ・・・ナ、ナ、ナッゴォォォォ・・・」

途切れ途切れの声で、虫の息のベビが言葉を紡ぎ出す。
死にかけのベビは、弟者の姿を捉えると、まだ残っていた左手を懸命に伸ばす。

「ナゴ・・・ナ、ゴ・・・」

まるで最後の願いだと言わんばかりに、ベビは「ナッコ」を繰り返す。
そんなベビを弟者は一瞥した後、足を振り上げて―――

グチッ!

「ナギュッ!」

何の躊躇いも無く踏み潰した。
弟者が足をどけてみると、潰れたベビの死体から、じわじわと鮮血が漏れ出して、周りの土に染み込んでいった。
弟者はその場を離れると、未だに乱闘を繰り広げるベビ達の方を向いた。

「ナッゴォォォォ!!」

グチャッ!!

「アヂュゥゥゥゥゥィィィィ!!?」」

片耳を失ったベビが、相手のベビを思いっきり地面に叩き付けた。
叩きつけられたベビは、頭部が破裂して脳みそを辺りにぶちまける。

「ナッコハ チィノモノナノヨゥ!アンタハ チニナチャイ!」

ブチュッ!

「ヂギィィィィィ!?チィノ オメメェェェェェェ!!」

こちらでは未だに無傷のベビが、両手を失って反撃の出来ないベビの目玉を抉り取っている。
それだけに留まらず、

「ハナーン!ヤッパリ カワイイチィイガイニ ナッコハ ヒツヨウナイデチュネ!サア サッサト チンデチョウダイネ!」

ブチャッ!

「チィィィィィィィィィ!?チィノオミミー!オメメー!!」

嬲るようにして、相手の目や耳を一つ一つ奪っていく。しかも、前述したが相手は反撃不可能。残虐にも程がある。
ベビ達は戦った。ただ、ナッコの為に。時に必死に、時に残虐に。アフォしぃという生き物は、ここまで自分の欲望に素直になれるのか。
しかし、ベビ達は知らない。自分達が戦っているフィールドの真下に、手榴弾が眠っている事を。
思わず顔を顰めた弟者は、一言

「―――これで締めだな・・・」

そう呟いた。
そして、不自然に握ったままの右手を、その場で思いっきりグイッ!と引っ張った。

キュポッ!

何かを引き抜くような音が微かに聞こえた。
しかし、口々に叫びを発しつつ殴り合い、蹴り合い、もぎ取り合いに興じるベビ達にはまったく聞こえなかった模様。
そして数秒の後―――

「チィ?」

「アニャッ?」



ドゴォォォォォォォォォン!!!!

30 :へびぃ:2007/04/17(火) 01:28:09 ID:???
爆音を伴った衝撃波と共に、高々と舞い上がった土煙。そして、哀れなベビ達のバラバラ死体。
お分かりの事とは思うが、弟者がずっと握っていたのはピアノ線だ。そして、そのピアノ線は地中に埋めた手榴弾の安全装置に括り付けてあったのだ。
弟者はそれを引っ張って離れた所から安全装置を外し、見事な遠隔操作で手榴弾を爆発させた。
すぐ真下で2つもの爆弾が爆発したのだ。元より脆いベビしぃで無くとも、無事である筈が無い。
生き残っていた全てのベビが、手榴弾の直撃を受けていた。
両手両足は当たり前、その他首が千切れたり、腹部から四方に爆ぜていたり、中には完全にバラバラに千切れてただの肉片と化したベビも居た。

ボトボトボトッ!

ベビ達の死体が、地面に落下した。
見たところ、爆発から逃れたベビはいない。これで競技終了かと思われた―――が。

「ヂ・・・ヂィィィィ・・・」

落ちてきた死体の中から、声が微かに聞こえた。
見れば何と、下半身を失いながらも未だ生きているベビが、ただ1匹。
どんなに死に掛けであろうと、ただ1匹であろうと、生き残りが居れば競技は終了しない。その間も、時間は経過していく。

「―――なんてこった!」

弟者は素早く駆け出した。
そして、その異常な生命力を持つベビに肉薄すると、足を思いっきり後方へと振り上げ、ベビに叩き付けた。

グシャァッ!

「ニ゙ャッッ・・・」

「ナッコ」の一言も発する事が出来ないまま、ベビは顔面を蹴り潰され、再び高々と宙に舞った。
舞い上がったベビは、すぐに落下してきて、地面に叩きつけられる。そして、その瞬間―――

パァン!!

ギコの手に握られたピストルが、本日最後となる咆哮を放った。

ワァァァァァァァァ!!!

瞬間、観客達が沸きに沸いた。
さらに、大歓声の中から、

『あーーーにーーーじゃぁーーーー!』

の声を聞き取った。見やれば、妹者が両手を思いっきり振っている。兄者は頷き、つーは笑いかけてくれた。
やがて歓声が徐々に収まってきた頃、司会者の2人がマイクを掴んだ。

「いやぁ、素晴らしいっ!お見事っ!!名前通り、流石だぁぁぁぁぁぁ!!」

「弟者選手、お疲れ様でした~!う~ん、これは凄かったですよ!」

今にも脳溢血で倒れるんじゃないかと危惧させる程興奮したモララーと、そんな彼に苦笑しながらも、弟者に労いの言葉を投げかけるガナー。
弟者が一礼で返すと、さらにモララーが喋りまくる。

「それにしても、ベビ同士で殺し合いをさせるなんて、史上初だよ君ィ!
 さらに、手榴弾の遠隔操作!飛び入りとは思えないねマッタク!!いや本当に凄い!!」

まるでガトリング砲の如く言葉を撃ち出しまくるモララーに、弟者とガナーが同時に苦笑。だが、弟者はまんざらでも無い様子だった。褒められれば悪い気はしない。

「忘れがちですけど、その前の小剣とハンドガンによる虐殺も見事でしたよ~」

ガナーもしっかりと弟者を賞賛してくれる。

「最後の最後に凄い奴が居たァァァァァ!!弟者選手、アリガ㌧!!」

終始興奮しっぱなしのモララーのこの言葉を締めとして、弟者へのインタビューは終了した。
直後に沸き起こった大歓声が、再び弟者を包み込んだ。

31 :へびぃ:2007/04/17(火) 01:28:37 ID:???
「結果ァッ!」

「発表ォォォォォォォォォォォ!!!」

司会者2人の気合篭りまくりな声が、マイクに拡張されてスタンド中のAA達の耳を打つ。
同時に湧き上がった大歓声も、司会者に負けず劣らず気合十分。
綺麗に掃除されたフィールドに、弟者やつーを含む全ての選手達が整列している。

「いよいよ、本日の競技の結果を発表します!皆様、お疲れ様でした~!」

「ギコ君が先に説明してくれたけど、1~3位までがメダル!4~5位が入賞!!それから、特別賞が1人!!
 さあさあ、誰になるのかな!!」

改めて説明があった後、用意された折り畳み式テーブルにトロフィーやメダル、賞状、そして景品と思われる小箱が並んだ。
どうやら目録授与役も兼任しているらしい司会者の2人が、司会席からフィールドに降り立つ。
そして、ギコからモララーが金色に輝くメダルを、ガナーがトロフィーを受け取る。
ギコが残りの賞状や小箱を持って、2人の横に立った。そこで再びモララーが口を開く。

「ではっ!ではではではっ!!いきなりですが、本日の優勝者を発表しちゃいます!!
 ・・・とは言っても、皆さん大体察しがついてるとは思いますが・・・」

苦笑しながらモララーが言い、今度はガナーが口を開く。

「では、発表します!
 『第40回百ベビ組手大会』、優勝者は・・・」

ダラララララララララララララ・・・

スネアドラムのロール音が、静寂したスタンドに響き渡る。
誰もが、固唾を呑んで次の言葉を待つ。
選手達も、一様に緊張した様子。そして―――

ダンッ!!

最後に一発、大きな音を立てて、スネアドラムの音が止んだ。ガナーの口が、ゆっくりと開く。

「―――タイム、5分27秒。挑戦者NO.06―――つー選手ですっ!!」

オオオオォォォォォォォォォ!!!

恐らく今、飛行機がこの場で飛び立ったとしても誰も気付かないだろう―――そう思わせるくらいの凄まじい大歓声。
続いて湧き上がる万雷の拍手の嵐をバックBGMに、つーが両手を天に突き出してガッツポーズ。
司会者2人とギコが、喜びを爆発させる彼女に近づいていき、それぞれ目録を手渡す。
モララーに黄金のメダルを首にかけて貰った瞬間の彼女の、金メダルにも負けない程の輝かんばかりの笑顔。皆の目に焼きついた事だろう。
トロフィーや小箱を小脇に抱えて嬉しそうなつーが、表彰台の頂上に駆け上った。
それから、モララーが口を開く。

「なお、優勝商品はメダルやトロフィー、賞状の他に、賞金30万円!
 さらに、大会特製の虐殺用ナイフ10本!!よく切れるよぉぉ!!おめでと~!!」

「ちなみに、2位以降の方にもナイフがプレゼントされますよ~」

ガナーが付け足した。
そのままの勢いで、2人がさらに続けた。

「ではではっ!!続きまして、第2位の発表ですよ~!
 これでも十分誇れます!!では発表!!」

「はい!では、発表します!!第2位は―――」



―――スタンド入り口ゲート。
満足した顔の観客達が、ぞろぞろと吐き出されてくる。
中には未だ興奮冷めやらずといった感じで、身振り手振りを交えて友人同士、あの虐殺が良かった、いやこっちもなかなかだ、と熱く語り合う者もいる。
そんな人込みの中で、兄者と妹者は待っていた。選手として出場した、弟を。或いは、兄を。
そして、見つけた。
両手に何かを持った弟者が、ゲートをくぐって2人の前に現れた。

「ちっちゃい兄者!おかえりなのじゃ!」

妹者が真っ先に見つけ、彼に駆け寄る。
兄者が軽く拍手しながら、弟者の肩をポン、と叩いた。

「いやまったく、流石だったぞ。俺の弟としては、申し分無い結果だったな」

「そ、そうか?ははは・・・ほら」

弟者が少し照れた様子で、2人に持っていた大きな紙を差し出した。
妹者がそれを受け取り、ニコニコと笑いながら言った。

「おめでとうなのじゃ!」




弟者が差し出した紙―――賞状。
そこには、こう書かれていた。


『第40回 百ベビ組手大会 4位入賞 タイム 6分12秒』




【続く】