コール村の真ん中にある、一際大きい家。
クルクレ酋長のコウサイに会うべく、てりやきは家の前に立っていた。
ヴォヴォカ「コウサイ様、吉男という少年がお会いになりたいそうでス。」
すると、家の中からしゃがれ声が聞こえてきた。
コウサイ「どうぞお入りくださイ。」
ヴォヴォカ「あとはお前1人で行くんダ。くれぐれも失礼の無いようにナ。」
てりやき「お・・・おじゃまします・・・」
家の中はワンルームだったが、12畳くらいの広さだった。
その部屋の中心に、褐色の肌をし、沢山の飾りをつけた老人が座っていた。
コウサイ「ワシがコウサイダ。漂着したと聞いたガ、体は大丈夫カ?」
てりやき「どうも、おかげさまで元気です。」
ふむ、といって、コウサイは煙管に火をつける。
コウサイ「ワシに用があると聞いタ。何の用事ダ?」
てりやきは、ヴォヴォカから聞いた、惑乱魔法について説明する。
フェナリアの件と、アグアドの見た夢についても説明した。
コウサイ「ふム・・・成程ナ。大体の話はわかっタ。」
てりやき「その惑乱魔法ですが・・・解除できるんですか?」
コウサイ「この術は大きな魔方陣を書かなければならン。
術者は恐らク、どこか広いところに魔方陣を書いてるはずダ。」
てりやき「・・・どこか広いところ?」
コウサイ「恐らク・・・北の最果テ、"ザルディン"のどこかだろうナ・・・」
てりやき「ザルディン・・・そこに行けばいいんですね!」
コウサイ「だが今は行けなイ。ザルディン全体に結界がはってあるのダ。」
てりやき「結界!?それを解除するにはどうすれば・・・」
コウサイ「そこまではわからン。ゴールドドラゴン様なら知ってらっしゃるかもしれんガ・・・」
巾着袋に視線を移し、コウサイは言った。
てりやき「フェナリア・・・音沙汰無いなぁ・・・向こうで手一杯なのかもな・・・」
コウサイ「だガ、その術者の力を封じる方法はあル。」
てりやき「本当ですか!教えてくれませんか!?」
コウサイは部屋の隅から、石で出来た5枚のメダルを取り出した。
コウサイ「これハ、"古代のメダル"といってナ、古より我らに伝わるものダ。」
てりやき「これを使えばいいんですか?」
コウサイ「この大陸の遥か西、"ソレア"と呼ばれる地域ニ、隠された遺跡があル。
そこにこれを捧げれバ、術者の魔法を打ち消すことができるのダ。」
てりやき「術者の魔法・・・惑乱魔法を?」
コウサイ「いヤ、ワシの予想だガ・・・これで終わりでは無い気がすル。
この大地をわざわざ戦火に包まねばならん理由がわからんのダ。」
てりやき「・・・確かに、そんな大げさなことまでして・・・イリアで戦いを起こす必要があるんでしょうかね・・・」
コウサイ「術者はおそらく次の1手を打っていル。ワシはそう思っておル。」
てりやき「じゃあこれで、その"次の一手"に対抗する・・・ってわけか・・・」
コウサイ「そうダ。だガ、ソレアへ行くには険しいヌベスの山脈と、入り組んだ地下迷路を抜けねばならン。
その道のりハ・・・かなり険しいゾ。」
てりやき「でも・・・少しでも力になれるなら・・・俺がやる!やってやる!
だから・・・そのメダルを、預けてくれませんか!」
コウサイは、にっ、と白い歯を見せると、てりやきにメダルを預けた。
コウサイ「お主ならやってくれると信じておル。何セ、ゴールドドラゴン様のお墨付きだからナ。」
てりやき「はい!必ず・・・術者の計画を阻止して見せます!」
コウサイ「うム。期待しておるゾ。出発は明日にしテ、今夜はゆっくり休みといイ。」
その夜は、豪華なパーティとなった。
誰もがてりやきの無事を願い、計画阻止の成功を願った。
そして翌日、てりやきは村の住民に見送られ、村の南へ旅立った。
必要な荷物は村の住人が用意してくれ、地図でソレアまでの道のりも教えてもらった。
てりやき「・・・まず、ここから南部のラノへ行き、ヌベス山脈を北へ抜ける。そうすれば、辿り着ける!」
ちなみに、村の南の川は住民が船で渡してくれた。
村の住民「見送れるのはここまでダ。達者でナ。」
てりやき「はい!ありがとうございました!」
住民は笑顔で頷くと、村へ戻っていった。
てりやき「さぁ・・・俺もがんばるぞ。みんな!」
てりやき(だから・・・皆もがんばってくれ!)