奥の扉が音も無く開く。
その奥の部屋に、氷の台座に安置された、白い珠があった。
アグアド「さて・・・これで、最後だな。」
風の槍を投げ、その珠を破壊した。
一同「・・・・・・・・・・」
変わった様子は無い。
志菜「えっと・・・これでいいんだよね?」
アグアド「そのはずだけど・・・わっ!」
突然、アグアドの巾着にいれてある鱗が輝きだす。
そこから、声が聞こえてきた。
フェナリア『全部・・・破壊できた・・・みたいだね・・・』
かなりのノイズが混じっており、聞き取り辛かった。
アグアド「フェナ!全部破壊したぞ!これでザルディンに行けばいいんだな!?」
フェナリア『今は・・・パルーだね・・・そこの東・・・細い道・・・行けるから・・・』
アグアド「東・・・?東に行けばいいんだな!?」
フェナリア『そう・・・それで・・・北の、カリダ・・・湖・・・待ってる』
そこで、音声は途切れた。
アグアド「急ごう!何かあったのかもしれねぇ!」
志菜「そうね・・・急がないと!」
アグアド「よし・・・早く行こう!」
志菜「あれ・・・みんなどうしたの?」
4人「・・・・・」
ルーァ、フォールイン。べラム、yasuhiroの4人は、黙って立ち止まっていた。
yasuhiro「申し訳ありません。私達は、ここまでのようです・・・」
アグアド「え・・・?ここまでって・・・」
べラム「その鱗の魔力が、尽きかけてる・・・」
ルーァ「我々4人をこの世に実体化させられるだけの力が、残ってないんだ。」
フォールイン「最後まで一緒に行けなくてすまない。だが、お前の役に立ててよかった。」
志菜「そんな・・・もっと・・・一緒にいられないの!?」
べラム「・・・しなっち、わっしらは元々死んでるんだよ。悲しいことなんて、ない。」
志菜「でも・・・でもぉっ・・・」
泣く志菜の頭を、そっと胸にうずめる。
べラム「大丈夫。2人なら・・・絶対やれるから。信じてるよ。」
ルーァ「改めて、礼を言う。アグアド・・・祖国を救ってくれて、ありがとう。」
フォールイン「お前の仲間の剣士にも・・・伝えておいてくれよ。」
アグアド「・・・わかった。ホントにありがとうな。スゲー頼りになったぜ、フォーさん、ルーさん。」
2人はニヤリと笑うと、光となって消えた。
yasuhiro「最後までお手伝いできなかったのが、残念です・・・」
アグアド「やっさん・・・」
yasuhiro「・・・アグアド君。私は・・・お役に立てたでしょうか?」
アグアドは込み上げてくる涙を必死で抑えながら、笑って言った。
アグアド「最高・・・だったよ・・・あたりまえだろ!」
その顔を見て、yasuhiroも笑った。
アグアド「ずっといて・・・欲しかったよ・・・お前高性能すぎだし・・・頼りになりまくるし・・・」
力を振り絞り、精一杯の、そして力いっぱいの笑顔で、こう言った。
アグアド「あんたとは・・・最初から仲間として、会いたかった。」
yasuhiro「私も、次は人間に生まれ変わりたいものです・・・また会いましょう、アグアド君。」
そう言って、光となり、消えた。
べラム「それじゃしなっち、アグアドと仲良くね。」
自分を掴む腕を、そっと離した。
べラム「それじゃ2人とも。仲良くね。」
志菜「ふぁぃ・・・ありがとう・・・ございました!」
アグアド「約束どおり、また逢える日を・・・楽しみにしてます。」
べラムは、にかっ、と白い歯を見せ、消えた。
志菜「・・・・みんな、いっちゃったね・・・」
アグアド「あぁ。すっげー楽しかったよな。」
そう言って、遺跡を後にする。
目指すは、最果ての地、ザルディン。
そして・・・倒すべき敵、長月誓。
決戦の地へ、少年は赴く。