第32話「去りゆく仲間」

Last-modified: 2011-10-26 (水) 16:44:34

奥の扉が音も無く開く。

その奥の部屋に、氷の台座に安置された、白い珠があった。

アグアド「さて・・・これで、最後だな。」

風の槍を投げ、その珠を破壊した。

一同「・・・・・・・・・・」

変わった様子は無い。

志菜「えっと・・・これでいいんだよね?」

アグアド「そのはずだけど・・・わっ!」

突然、アグアドの巾着にいれてある鱗が輝きだす。

そこから、声が聞こえてきた。

フェナリア『全部・・・破壊できた・・・みたいだね・・・』

かなりのノイズが混じっており、聞き取り辛かった。

アグアド「フェナ!全部破壊したぞ!これでザルディンに行けばいいんだな!?」

フェナリア『今は・・・パルーだね・・・そこの東・・・細い道・・・行けるから・・・』

アグアド「東・・・?東に行けばいいんだな!?」

フェナリア『そう・・・それで・・・北の、カリダ・・・湖・・・待ってる』

そこで、音声は途切れた。

アグアド「急ごう!何かあったのかもしれねぇ!」

志菜「そうね・・・急がないと!」

アグアド「よし・・・早く行こう!」

志菜「あれ・・・みんなどうしたの?」

4人「・・・・・」

ルーァ、フォールイン。べラム、yasuhiroの4人は、黙って立ち止まっていた。

yasuhiro「申し訳ありません。私達は、ここまでのようです・・・」

アグアド「え・・・?ここまでって・・・」

べラム「その鱗の魔力が、尽きかけてる・・・」

ルーァ「我々4人をこの世に実体化させられるだけの力が、残ってないんだ。」

フォールイン「最後まで一緒に行けなくてすまない。だが、お前の役に立ててよかった。」

志菜「そんな・・・もっと・・・一緒にいられないの!?」

べラム「・・・しなっち、わっしらは元々死んでるんだよ。悲しいことなんて、ない。」

志菜「でも・・・でもぉっ・・・」

泣く志菜の頭を、そっと胸にうずめる。

べラム「大丈夫。2人なら・・・絶対やれるから。信じてるよ。」

ルーァ「改めて、礼を言う。アグアド・・・祖国を救ってくれて、ありがとう。」

フォールイン「お前の仲間の剣士にも・・・伝えておいてくれよ。」

アグアド「・・・わかった。ホントにありがとうな。スゲー頼りになったぜ、フォーさん、ルーさん。」

2人はニヤリと笑うと、光となって消えた。

yasuhiro「最後までお手伝いできなかったのが、残念です・・・」

アグアド「やっさん・・・」

yasuhiro「・・・アグアド君。私は・・・お役に立てたでしょうか?」

アグアドは込み上げてくる涙を必死で抑えながら、笑って言った。

アグアド「最高・・・だったよ・・・あたりまえだろ!」

その顔を見て、yasuhiroも笑った。

アグアド「ずっといて・・・欲しかったよ・・・お前高性能すぎだし・・・頼りになりまくるし・・・」

力を振り絞り、精一杯の、そして力いっぱいの笑顔で、こう言った。

アグアド「あんたとは・・・最初から仲間として、会いたかった。」

yasuhiro「私も、次は人間に生まれ変わりたいものです・・・また会いましょう、アグアド君。」

そう言って、光となり、消えた。

べラム「それじゃしなっち、アグアドと仲良くね。」

自分を掴む腕を、そっと離した。

べラム「それじゃ2人とも。仲良くね。」

志菜「ふぁぃ・・・ありがとう・・・ございました!」

アグアド「約束どおり、また逢える日を・・・楽しみにしてます。」

べラムは、にかっ、と白い歯を見せ、消えた。

志菜「・・・・みんな、いっちゃったね・・・」

アグアド「あぁ。すっげー楽しかったよな。」

そう言って、遺跡を後にする。

目指すは、最果ての地、ザルディン。

そして・・・倒すべき敵、長月誓。

決戦の地へ、少年は赴く。